やっぱり失敗のない告白をしたい戸部の甘い考えは間違っていた   作:春の雪舞い散る

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比企谷小町の聖誕祭

 

 三月二日、けーちゃんのお迎えに行ってた川崎と合流して近所のスーパーに向かう俺達だが既にけーちゃんは自分の指定席についている

 俺の肩の上で時々蒼空もしてやるが、そうするとケーちゃんがすねるがこればかりは彼女に我慢してもらうほかない

 

 蒼空がせめて高学年位なら、我慢しろと言うが未だ一年生なんだ仕方無い

 

 俺だって親父にして貰いたいって思ってたんだから蒼空の気持ちはよくわかるからだから無下に断ることもできない

 

 そして俺は超人ハルクとかみたいに二人いっぺんに肩に乗せるとか言う大技は使えんから、一人を乗せるとその間は残った一人には我慢して貰う他はないのだから

 

 そんな訳でトワイライトスクールの蒼空がいない今日は独占しているためすこぶるご機嫌のようで沙希も呆れているし他の皆も苦笑いし

 

 すれ違う通行人は微笑ましい光景に微笑みを浮かべ中には

 

 「○○ちゃんも今度パパがお仕事休みの時にやってもらいましょうねぇーっ♪」

 

 と、言ってるのがどこからか聞こえちょっとだけそのパパさんにすまないと思ったが同情はしない

 

 料理の献立は肉好きの小町の為のメニューを沙紀に頼んであり、必要な食材も書き出してあるからそれに従い買うだけ

 

 ケーキやお菓子の材料の補充品も金居さんと一色が書き出してあるため補充もそれにそってするだけ

 

 買い出しを終えると頃合いを見て都築さんが運転する車で迎えに来た陽乃さんと共に車に向かうと既に乗車していた蒼空が俺達に手を振っているから俺も軽く振って応える

 

 沙希は晩飯の仕度、それ以外の料理班は明日の料理の下拵え、ケーキ班はクッキーやパウンドケーキを焼くことに

 

 因みに小町は明日どうしても仕事から抜けられなかった親父と晩飯を食いに行って、プレゼントを買ってもらってくると聞いている

 

 そして大志は蒼空とけーちゃんの世話担当を任せていたのだが、またしてもいつの間にか現れた雪ノ下ママが二人の面倒を見ててくれてる。どうやら蒼空がいたくお気に召してるらしく川崎に

 

 「今夜はバタバタするでしょうから、貴女さえよければ二人を家に招待して一緒に過ごしたいのですけど」

 

 そう言われて戸惑う沙希に

 

 「未だ私に期待されても困るから一足先に初孫仮体験させてあげてよ。

 

 特に蒼空君は息子を持てなかった母さんには可愛くて仕方無いんじゃないのかな?

 

 だから私からもお願いするよ沙希ちゃん」

 

 そう陽乃さんにまで頭を下げられて

 

 「二人とも、お姉さんのゆーことちゃんと聞くんだよ?良いね」

 

 そう言って用意してあった二人の着替えを都築さんに預けると本当に嬉しそうな顔で二人の手を握り帰っていくのを見ながら都築さんに

 

 「都築さん、二人の事よろしくお願いします」

 

 そう言って頭を下げると都築さんも

 

 「いえいえこちらこそ…あのように少女の頃ような奥様の笑顔を見るのはいつ以来でしょうか?

 

 それに私も比企谷様と同じく天使のお二人に癒される口ですからお世話させていただく機会をいただき喜んでますからお気遣いなく」

 

 そう言って頭を下げると三人を追って部屋を出ていく都築さんを見送り

 

 「俺もだが取り敢えず感謝の気持ちは陽乃さんの誕生日に返そう…

 

 まぁその前に確か一色が四月だったがな?」

 

 俺がそう聞くと

 

 「戸塚君と私は五月だよ」

 

 そう金居さんが声を上げるので

 

 「へーへーわかりましたっ、と…

 

 戸塚の時に二人を頼りにするが一色の時は金居さんが、金居さんの時には一色が力を貸してくれよ。そん時は小町も助けてくれるとは思うがな…」

 

 そんな事を言いながら三年になる来年度はこれまでにないバタバタな一年になるんだろうな…専業主夫の夢が遠退く…

 

 

 翌早朝、作業に取りかかる前の事

 

 「大志と男と男の大事な話がある、すまないが皆は口を挟まないでくれ…」

 

 そう言って大志を真っ直ぐに見据え

 

 「大志、お前は小町をどう思ってる?正直に答えろ…」

 

 俺に今までにない真剣な表情で問われた対し最初こそうつむいていたが真っ直ぐに見返して

 

 「比企谷さんと仲良くなりたい、お付き合いして大人になったときにお互いがその気なら結婚だってしたいっす」

 

 そうはっきりと答えたから俺もはっきりと言ってやる事にした

 

 「覚悟しろよ、大志…うちの親父は小町の兄である息子の俺にまで妬きもちをやく男だ、生半可な気持ちじゃ小町との交際は認めてもらえんぞ?

 

 ましてや結婚なんざ生半可な覚悟で乗り越えられる道程じゃねえって事だ

 

 だから今お前にいってやれることがあるとしたらまずは小町に惚れさせろ、俺もお前にならって思える男になりゃ母ちゃんはちゃんと見てくれる

 

 だから男を磨け…でかい人間目指してな、それでも親父がごちゃごちゃゆーようのなら俺が一発言ってやる」

 

 皆が息を飲むのを感じなから

 

 「こいつは雪ノ下家以外の大抵の家に言えるんだが…

 

 親父、てめえだって惚れた女を女の両親から奪っといていざ自分が奪われる立場になったからって小町の結婚に反対するたぁ一体どーゆー了見だっ!とな?」

 

 そう言ってニヤリと笑ってみせると陽乃さん以外がポカンとするなかその陽乃さんが

 

 「な、なるほど…それは確かに婿養子の家は例外派だね…

 

 しかも私か雪乃ちゃんのどちらかも婿養子を迎えるんだろうから尚更ね」

 

 そう言ってお腹を抱えて笑っているが気を取り直した優美子が

 

 「なら大志…アンタはついてる、すぐそばに目標にできる男がいるんだからソイツの背中を見失わずに追えしっ!」

 

 そう言って軽快に大志の背中をたを叩くと海老名さんも

 

 「なんたって君のお姉さんの惚れた男だからねっ♪」

 

 と、こちらは背筋がぞぞっとするような笑顔を見せて言って来たが取り敢えずは気付かないふり…は彼女には通用しないんだろうな…

 

 「まぁその辺りはよくわからんが今日は俺のサポート任せるし奉仕部に本気で来る気なら先輩としてできるだけの事はするつもりだ、さぁ仕事に取り掛かるぞっ!」

 

 そう言って俺達は仕事を始めることにした…

 

 

 料理を持ってパーティー会場に入った俺は息を飲んだ…すっかり準備が終わってる部屋を見て

 

 隣を見ると忍び笑いをする陽乃さんと目が合い

 

 「小町ちゃんが可愛いのは比企谷君だけじゃないって事」

 

 そう言われて部屋の中を見ると何度か見たことのある小町の友達がいた

 

 「そう、たまたま知り合ったあの子達が私たちも小町の為に何かしたいって言って来たからか以上の飾りつけをしてもらったんだよ」

 

 「はーちゃん、はーちゃん、けーちゃん蒼空も、蒼空も一杯お手伝いしたよっ♪」

 

 「はーちゃん、はーちゃん、けーちゃんもいっぱいいっぱいお手伝いいしたよっ!」

 

 と、笑顔で報告する蒼空とけーちゃんに二人を笑顔で見守る雪ノ下ママと都築さん

 

 「後は料理を並べるだけだから比企谷君は服を着替えて都築と一緒に小町ちゃんのお迎えに行きなさい、場所は都築が知ってるから」

 

 陽乃さんがそう言うと

 

 「比企谷様、ご案内します」

 

 そう言われて別室に行き渡された服は都築さんが着ているものと同じデザインの燕尾服…

 

 「…」

 

 驚きのあまり声もでないがパニクってる暇はないから黙って着替える俺

 

 着替え終えると出掛ける前に一応会場に顔を出して声を掛けたがやはり似合ってなかったらしい…

 

 それまでに賑やかな声がしていた会場が一瞬で凍りついたんだからな

 

 って俺っていつの間にそんな高度な冷却系の魔法を身に付けてたの?ははっ、目から汗が…

 

 憂鬱な気持ちのまま小町の迎えにいくと小町までもが凍り付いた…もう泣いていい?泣いて良いよね?

 

 内心涙を流しながらアニメと都築さんを見てえた知識を駆使して

 

 「小町お嬢様、お迎えに上がりました」

 

 何度か目にしている陽乃さんを迎えに来たときの都築さんを真似て小町の執事を演じて小町をエスコートすると小さく頷く都築さんだったが俺はそれに気付けなかった

 

 

 

 二人並んで座る車内で顔真っ赤にして激おこな小町をどう宥めれば良いのかわからない俺は

 

 「小町…そのドレスよく似合ってるな…」

 

 そう声を掛けると

 

 「うん、高そうだから遠慮したんだけど陽乃さんが

 

『もう雪乃ちゃんも着れないサイズだからやっとで番が戻ってきたその子は着てくる人がいて嬉しいんだから気にしなくても良いの』って…」

 

 戸惑いながら答える小町に

 

 「小町、その感謝の気持ちは今の俺達に返せる形で返せば良い

 

 会場に使わせてもらう会議室を管理してる総務には

 

 『比企谷君が焼いたマカロンを差し入れてあげてよっ♪』

 

 って陽乃さんに言われてるし陽乃さんの誕生日には…な?

 

 それにな、本当に良い服ってのは母から娘、姉から妹へと受け継がれるもんなんだ

 

 だから小町は陽乃さんにそのドレスを受け継いでほしいって思ってくれたんだと思うぞ?

 

 なら、今お前のなすべきは遠慮じゃなくその陽乃さんのその思いに応える事

 

 今すぐの事じゃない、上を目指しドレスに負けない女の子になることだ」

 

 そう言って頭を撫でると

 

 「うん、頑張る…」

 

 そう声をつまらせ答えて小町は答えてくれた

 

 

 小町が会場入りしどよめく声を聞いて俺は思った

 

 (今日のこの小町の姿を生で見られない親父ざまぁっ!)と…

 

 マジ良い気味だと思いなから

 

 「 大志、本気ならいつまでもこのポジを俺にとられてるんじゃねぇゾッ! 」

 

 そう発破を掛けてやったら会場のみんなから笑われてやがった…しっかりしろ、大志

 

 いわゆるところのお誕生日席に案内すると驚き一杯に見開いてケーキと俺の顔を見比べている

 

 俺達は誰一人として本職のケーキ職人じゃないし料理モノの登場人物達みたいなすごい技を持ってるわけでもない

 

 だから俺達は俺達にできることをした

 

 チョコクリームで小町のにがお絵描き背景は色とりどりのクリームで少女漫画の主人公よろしく花々を背負っている

 

 出来映えを知らせてないケーキ班以外の面々も驚いて目を見張って写メっているがこのケーキが更なる騒動の元になるのまた別のはなし

 

 だがなぜ俺にカメラを向ける? 新たな苛めか? 写メと一緒に似合ってねーとかとか呟くのか? 止めて、ハチマンのライフはとっくにゼロよ?

 

 ろうそくを立て火を点けてバースデーソングを唱和してバースデーパーティーが始まったんだが…

 

小町とのツーショットに始まりいろんな女の子とのツーショットや記念写真を頼まれ俺は仕事がなにもできない事態になってしまった…済まん皆…

 

 一応皆には謝っておいたがなぜか苦笑いされた

 

 因みに俺が小町に用意したプレゼントはバースデーケーキとは別にプリン好きの小町のために作った特製のカスタードケーキ…

 

 が、少々作りすぎたらしく

 

 「お兄ちゃん、さすがにこれは作りすぎだよ…だから激オコの小町は執事のお兄ちゃんに命じます

 

 ただ今から執事のお兄ちゃんは希望するお嬢様にアーンのサービスをして差し上げること

 

 ただしお兄ちゃんに食べさせるのはなしね順番取りが凄惨な事になるからまずは…

 

 都築さんから見たら陽乃さんのお母さんは当主になった今でもお嬢様…なんでしょ?」

 

 そう聞かれた都築さんが

 

 「はい、小町様のおっしゃる通り口にこそ出しませんが先代からお仕えする私には今でもお嬢様でございますとも」

 

 そう答えると声をつまらせる雪ノ下ママを見てうんうんと頷くと

 

 「じゃあ一番最初は陽乃さんのお母さんでけーちゃんに男の子だけど蒼空くんに戸塚さんで後の皆はじゃんけん頑張ってくださいねっ♪」

 

 そう小町が言ったとたん会場内にスゴい殺気が…

  

 ナニこれ?俺生きて帰れるの?めちゃくちゃ怖いんですけど…

 

 怯えつつ雪ノ下ママ、けーちゃんに蒼空、互いに顔を真っ赤期して戸塚にアーンしたとんに誰とは言わんが真っ赤な噴水?を吹き上げ沙希と優美子が大騒ぎした

 

 結局俺はパーティーが終わるまで休む間もなくずっとそれをやらされていた

 

 まぁ小町が終始ご機嫌だったからそれはそれで由としよう…と、言うかそう思って諦めるしかないな…

 

 参加者も喜んでくれてたみたいだし

 

 

 こうしてまたひとつ新たな伝説を打ち立てた俺はプロデーサーとしての地位を確立…なわけねえな

 

 今夜くらいははよ寝よ

 


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