やっぱり失敗のない告白をしたい戸部の甘い考えは間違っていた 作:春の雪舞い散る
海浜の玉縄の提案により『 男子もチョコ作り女子贈るべきだ 』 と言う主旨のイベントを行う八幡は、このイベントを利用することを考えました
それは一月末の寒い日の事だった
(全く…朝っぱらからリア充共がウェイウェイうるせぇんだよ
葉山ならともかくてめえ等がチョコをもらえるわけねぇだろ?
はぁ?人の事いえんかってか?
わりぃな、俺はちゃんと義理チョコ貰えるあてはあるんだよっ!
って義理チョコかよ…
まぁ俺的に小町とけーちゃんがくれりゃ後はどうでも良いんだからな…はぜろリア充っ!)
そんな事を思っていた俺がバレンタインの手作りチョコを女子に贈る事になろうとはこの時の俺は夢にも思ってもいなかった
入試目前の最後の追い込み中の小町と大志を呼び出し大した依頼もなく暇な俺達は二人の受験勉強を見ていた
理数系を川崎、文系を俺と言った役割分担で…
そんな空気なので三浦は
「 ここに来て留年してヒキオやサキと一緒に卒業できないのはヤだし 」
と、言い一色も
「 ですね、小町ちゃんは好きですけど同級生になるのはいただけませんね… 先輩、私の勉強も一緒に見てくださいよ 」
と、言い三浦からも
「 あーしらと勉強会しろしっ! 」
と、言われ川崎からも
「 優美子と姫菜にゃけーちゃんも世話になってるしね 」
そう言われた八幡も溜め息を吐き
「 だな、俺も理数系に関しては余裕があるとは言えねぇからな 」
そんな奉仕部に二つの依頼?が舞い込んだ
一件はクリスマスパーティーでお世話になった家庭科クラブの来年度の存続の危機
以前から噂はあったのだが三年が自由登校になった今本格的な危機的状況に陥っているのだそうだ
クリスマスの件世話になってるし家庭科クラブの顧問の鶴見先生には親しくさせてもらってるしな…
そう思いながら頭を悩ませているところにうちの生徒会長と海浜の玉縄が現れて
「 奉仕部にと、言いますか比企谷先輩にお願いします 」
「 バレンタインに行われる海浜、総武の合同イベントの… 」
「「 総監督を引き受けてほしい ( ください ) 」」
そう言われて
「 いや、そう言うのは女性がやった方が良いんじゃないのか? 」
そう言って断ろうとしたら
「 僕はそうは思わないよ? 比企谷君… 知らないのかい? 日本くらいなんだよ、女性が一方的にプレゼントを贈るのはね
それに僕も参加できるならチョコを渡したい女性がいるんだからさ、比企谷君も日頃お世話になってる奉仕部の皆さんに贈ってはどうかな?
それに今の時代、男もただ待ってるだけじゃダメだと思うよ? 」
玉縄の言葉に奉仕部の女子達の視線が俺に突き刺さる
うん、断りたいけど断れない…
( あ、なんだ… 俺が恥ずかしいのを我慢すりゃ家庭科クラブの案件も一気に片付くんじゃね? )
そう内心思ってたら
「 お兄ちゃん、顔がものすごい事になってる… 気持ちわるいよ? 」
( 小町ぃ、お兄ちゃんこのまま帰って布団と同化して良い? )
小町の言葉に落ち込む俺に
「 ほら… 八幡しっかりしなよっ! なんか名案が浮かんだんだろ? 」
そう川崎に促された俺は
「 この人は金居さん、うちの家庭科クラブの部長さんだが部員不足で存続の危機に陥っているのだそうだ
玉縄もクリスマスパーティーでうちのブースでケーキ班に居たから見覚えがあるかも知れんがあれだけの実力がありながら廃部は惜しいとは思わないか? 」
そう話すと基本的にはスペックは高い玉縄はすぐに俺が言いたい事がわかり
「 勿論だとも、僕もせっかく贈るなら美味しいものを渡したいからね、是非実務面の協力をしてください 」
と、いきなり玉縄に言われ戸惑っている金居さんに
「 成る程ね、体育系の部活みたい目立つ実績を残せない家庭科クラブがバレンタインイベで活躍すれば新入部員が集まるかもしれないって訳だね?
クリスマスの時みたいに裏方なんかじゃなくってさ 」
そう川崎が補足すると
「 さすが比企谷先輩、細かい内容についてはこれから話し合う予定が大まかな方向性まで打ち立てくれちゃいまして…
それと総監督の件もよろしくお願いします 」
残念ながら忘れてくれなかったから諦めよう
「 まぁ俺がそんなもんなったら女子が集まるのか不安しかないまであるがこちらも家庭科クラブの件を頼む以上俺は知らんとは言えんからな… 」
そう自嘲気味に俺が言うと
「 ナニ言ってるんですか?先輩、稲毛神社でのスリの現行犯逮捕スゴいじゃないですか?
しかも犯人は警察がマークしていたほどの大物だって話じゃないですか? 」
そう言われて
( そうだよなぁ~っ、あの始業式の校長の騒ぎぶりは見てて帰りたかったくらいだからなぁ~っ… )
が、まぁあの一件が奉仕部の立場と、言うか俺の立場を微妙にした…
今までは黙認されていたい眠りが
「 英雄は模範たれ云々 」
と、言われ寝かせてもらえなくなってしまったのだ
以前の葉山ポジにいる俺にむやみやたらと話し掛けて来る奴は居ないから三浦様様なんだがな
まぁ良い、俺も覚悟を決めるとしよう
② 戸部、再び翔る
イベントの数日前、俺はある男を呼び出していた
そいつの落胆ぶりが痛すぎるから鬱陶しいので何とかしてほしいとの教師達からの依頼だ
しかも平塚先生経由で…
何せ現在総武校内で先生は株価は天井知らずの高値をつけているからな… まぁそんな事はどうでも良いんだが呼び出したヤツが来たようだ…
「 今更こんな所呼び出してなんの用だよ?ヒキタニ君… 」
その元々のキャラからは想像つかない憔悴ぶりに呆れた俺は
「 お前、もうすっかり諦めたのか? 」
そう直球で質問をぶつけると
「 諦めたくなくてもあんなんじゃもう諦めるっきゃないしっょ? 」
その力ない言い訳に
「 俺に言わせてもらえば未だお前はフラれていない…良いから黙って聞けっ!
海老名さんは自分の気持ちを無視した告白に腹をたてただけでお前自身は否定していないしそれ以前にそもそもお前はスタートラインにすら立ってねぇじゃねぇかよ?
今すぐは無理でもいつかもう一度真正面から告白してみろよ?
まぁ無責任に結果は保証せんし変な小細工はせんが遊びにいくときにお前を誘ってやるくらいの協力をしてやるが焦らず腰を据えてこのミッションに取り組めるか?相手はてごわいぞ? 」
そう言ってニヤリと笑うと
「 そう… だよな… 無理矢理俺に向けさせるんじゃなくっておれ自身が男を磨いて海老名さんを振り向かせなきゃいけなかったんだよな?
やっとわかったよ、俺のナニがいけなかったのか… 比企谷君、俺もう一度最初からやり直してみるよっ!
フラれるならフラれるできっちりけじめつけなきゃ諦めつかないもんな 」
そう言ってる戸部の表情は明るさを取り戻しつつあったから
「 そこで早速お前に朗報だ、今度海浜との合同イベントするのは知ってるな? 」
そう質問するとやはり男達の認知度は低いらしく内心溜め息を吐きつつ
「 お前、ナニその貰う気の発想はバカじゃねぇの?
今んとこ参加すんのは俺、戸塚、玉縄だけだがそれぞれ日頃お世話になってる女子に贈るために俺達も自分で作るんだよ
さすがに本命チョコは図々しいがこれをきっかけに『 以前のようには難しいだろうけど友達戻ってくださいって言ってみろよ? 』
手助けはできんが声援くらいは送ってやるぞ、どうするよ? 」
そう重ねて聞くと
「 ヤッパ比企谷君はパネェわ… せっかくの比企谷君出してくれたパスを受け取らないわけにはいかないっしょ? やべぇ、まじやべぇーわ比企谷君は~っ♪ 」
そう言って嬉しそうに俺の手を握る戸部に
「 戸部、嬉しいのはわかるが言動に気を付けような?今の俺とお前、お前が望まない形で海老名さん喜ばせてるからな? 」
と、注意したが屋上入り口で様子を伺ってるのは気付いてるんですけどねぇーっ、女子の皆さん?
過ちをただすことを憚ることなかれ ~ 奉仕部のバレンタインデー ③
③ バレンタイン当日…
ナゼだ、なぜお前がここにいる? お前を呼んだ覚えはないっ!
と、思ったのは俺だけではないらしく女子達も皆さんひいていたし玉縄すら苦笑いを浮かべていた
さすがに来るなとは言わんだろうが…』なんで来たの? 位は思っているようだが心配するな、そう思ってないのは天使のけーちゃんと戸塚に材木座を構ってる余裕ない戸部くらいのものだからな
もっともけーちゃんは材木座なんぞ興味ないし優しい戸塚は…うん、いつものように友達として呼んだんだろうがある意味空気を読まない戸塚らしい…
因みに俺は事前に特訓を受けているから今回の目標であるマカロンは成功率は努力の結果80%になったまである
何でって? 当日の参加者が多い場合指導者が一人でも多いに越したことはねぇじゃねえか、そうだろう
そんな訳だから俺の担当テーブルには当初は戸塚、ルミルミ、けーちゃん、戸部、玉縄、材木座で俺が指導してたのだったんたが
なんや知らんがいつの間にか名も知らん女子達に包囲されていた
いや、俺が一体ナニをしたって言うのだ?ナゼ奉仕部の女子達は俺を睨み戸塚は呆れたと言わんばかりの溜め息をつくのだ?
まぁ悩んでも仕方無いのだから今は自分の果たすべき役割を果たそう
そう思ってチョコ作りと指導に集中する事にした
因みに今回俺が用意したのは戸塚に友チョコ…女子同士がありなら俺達だって有りだよな?友チョコの交換
奉仕部の女子面々に小町とルミルミにけーちゃん、うちのかあちゃんに折本に金居さんっ城廻先輩のに贈った
迷ったのが陽乃さんで本命を渡すのも憚られるが他のみんなと同じで良いのかと?
そう悩みながらガトーショコラに挑戦したらまぁまぁの仕上がりにになり
「 喜んでくれてると良いんだが… 」
そう呟いてラッピングした物を陽乃さんに受け取ってもらった
戸塚は俺への友チョコとお母さん、テニス部の女子達に用意し玉縄は折本にまさかの本命チョコを渡し多いに会場を沸かせたし多くの女性を羨ましがらせた
その様子を見ていた俺は実はめちゃくちゃ罪深い事をしでかしてしまったんでないかと気づいて恐怖していると
「 望めば何でも手にはいる訳じゃないし、チョコだって貰えないべ?
なら貰える奴を羨んで指くわえてみてないで逆に俺の方からチョコ上げるのも有りだって教えてくれたのは比企谷君じゃん?じゃあ覚悟決めて行ってくるわ 」
そう言ってチョコを二つ手に取ると
「 俺の甘えた考えでグループ壊してごめん、簡単に許されるとは思わないけどまた仲間に入れてくれたら嬉しい… かな? 」
そう言って差し出されたチョコを見ながら
「 戸部、答えな… 何であーしが姫菜より先なんよ?理由を言えし 」
そう問い詰められた戸部は
「 あの件で一番迷惑を掛けた三浦さんに謝ってからじゃなきゃ海老名さんに謝る資格ないんじゃないって思ったから… 」
その答えに頷いてチョコを受け取り
「 戸部、お前の気持ちはわかったけどあーしは八幡ほど優しくないから今度姫菜を困らせたら次はないから覚悟しな
それと、特別に前のように名前呼びを許してやるから八幡に感謝しろし
じゃあ覚悟決めて姫菜に謝ってきな 」
そう言って三浦に背中を押された戸部が
「 あの時はごめん、海老名さんの気持ちも考えずに告白を押し付けようとした俺を許してほしい
俺、もっと自分を磨いて比企谷君みたいな良い男目指して海老名さんに振り向いて貰えるようになるから見ててくれるかな? 」
そう言って頭を下げてチョコを差し出すと
「 わかったよ、戸部くん… 私も結論は急がない、勿論先の事は私もわからないけど八君と優美子が許したんだから私も仲間としてなら受け入れるよ 」
そう答えてチョコを受けとると参加者から盛大な拍手を送られて照れる二人
試食用チョコをつまみながらあちこちで女子の皆さんがコイバナで盛り上がってるため小数派の俺達は身の置き所がないんですがね… 特に俺と材木座にとってはな
正直この耐えられない空気のこの場からさっさと逃げ出したいのだが留美とけーちゃんに捕まって逃げるに逃げられない… 一応主催者だしな…
イベントも無事に終わり施設の管理者と区役所に挨拶と関係者にチョコを配って回ると心配してた通りに男性職員の皆さんが女性職員の皆さんに睨まれながら
「 皆さんも少しは比企谷君達を見倣ってくださいね、特に玉縄君は会場で同級生に本命チョコを渡したそうですからねっ! 」
と、言われているのを見て
( やはりこーなったか… )
と申し訳ない気持ちで一杯だった
こうして俺達のバレンタインを無事終えることができかなり好評だったときいてイベントの成功の手応えを感じていた
完