新次元ゲイムネプテューヌ 反響のリグレット【完結】   作:ジマリス

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14 VSしつこいやつ

パープルシスターがビームソードで斬る。

オレンジハートが叫んでメガホンから音波を飛ばす。

ネプテューヌが剣と銃のコンビネーションで翻弄する。

私が爆発弾と衝撃弾を織り交ぜて、隙をついてメタルアームで叩く。

 

圧倒的な力を持っていても、四対一という物量差には敵わないようだ。

マジェコンヌはぐるぐると巨体を回すだけで、これといった反撃ができていない。そのくせ傷は増えていく。

 

あちらから見れば、こっちの四人は全員遠中近距離の攻撃を行うことができるのだ。

事前に防御しようとしても、必ず備えていないところから攻撃をくらってしまう。

 

ようやくマジェコンヌはそのことに気付き、私をキッと睨んで、脚の間にある口から黒い魔弾を飛ばしてきた。

すでに足に装備していたメタルブーツに力を入れると、かかと部分から小さくジェットが噴射された。

それは身体を押し出し、一瞬のうちに十メートル移動する。

 

「わっとと……」

 

少しバランスを崩したが、容易に攻撃を避けられた。

こういうのは本来実戦で試すのは危険だが、実践は実験に勝るというのがここ最近で学んだことだ。

たとえ相手が犯罪神だったとしても。

 

新たなギミックを前にして驚くマジェコンヌの不意を突いて、私は飛び上がる。

 

「うずめ!」

 

「わかってるよ!」

 

オレンジハートと私で、マジェコンヌの両肩を思い切り殴る。

巨体に構わず振りぬくと、マジェコンヌはぐらりと揺れた。

 

「ネプギア!」

 

「え、は、はい!」

 

お次はネプテューヌとパープルシスターが同時に前足が上がった状態のマジェコンヌの身体目がけ体当たりした。

よろめいたマジェコンヌはついに倒れ、ずずんという大きな音を立てて仰向けになった。

 

すかさず、私たち四人は空へジャンプし、各々の武器を構える。

私は右腕のスイッチを押し、落下の勢いを借りて全力で叩きつける。

オレンジハートも同様に拳を、パープルシスターは銃剣を、ネプテューヌはパーカーワンピから伸びるすらりとした脚を。

踏みつけるような同時攻撃が成功すると、マジェコンヌの身体を通して衝撃が地面に伝わり、ひびが入る。

 

「う、ぐぐ……」

 

うめいてはいるものの、立ち上がる気配はない。

姿は犯罪神のままだが、どうやら体力はゼロ。

 

「だいしょうりー!」

 

戦闘後とは思えないあっけらかんとした笑顔でネプテューヌがVサインをする。

私は銃を構えたまま、警戒を解かない。

義腕の充電も足パーツも急ごしらえだったため、もうすぐでパワーがなくなりそうだ。

気を抜いていて、反撃を喰らって死んでしまいましたなんて冗談にもならない。

 

「馬鹿な!この私がこんな小娘ごときに負けるなど……」

 

「それが実際に負けちゃってるんだなー、これが!」

 

煽るネプテューヌもいることだし、怒りで急に起き上がってくる可能性もある。

ま、冷静さを失わせるために私もさんざん煽ったけど。

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

ぐうの音も出ずに転んだままなのを見ると、どうやら本当に力尽きているみたいだ。

私はいつでも攻撃を避けれるように身構えながら、銃をしまった。

 

「あれ?もしかして二人って女神様だったの?」

 

伏している敵をよそに、ネプテューヌがいまさらなことを聞いてきた。

うずめもネプギアも変身を解いて一息つく。

 

「まあな。名乗り遅れたが、俺の名はうずめ。この国の女神だ。さっきは助かったよ」

 

「おーっ!うずめって普段はカッコいいんだね!」

 

やたらと嬉しそうに笑うネプテューヌに、うずめもまんざらでなさそう。というかにやにやしている。

 

「ネプギアは女神化を解くと、名前じゃなくて見た目も私とそっくりさんになるんだね。私に妹がいたらきっとネプギアみたいな子なんだろうなぁ。いいなあ、妹ほしいなあ」

 

「え、えと……」

 

ということは、このネプテューヌには妹がいないということね。

あぁ、超次元(あっち)のネプテューヌと一緒のパーティになったらどっちをどう呼べばいいのかしら……。

 

「ところで、このグロテスクなのどうするの?マザコングって言ったっけ?」

 

「どうしましょう?倒した後のこと考えてなかったかも……」

 

「ここで戦うなんて思ったもなかったものね。ま、とりあえず市中引き回しのち拷問のあと解剖かしらね。技術向上とこれからの対策も兼ねて」

 

「げっ、イヴ、お前むごいな……」

 

私たちの会話を聞いて、マジェコンヌが明らかに焦り始めた。

 

「わ、私にはこれ以上貴様らと戦う意志はないんだぞ!それでも女神か!?女神なら女神らしく捕虜の扱いは法律に則ってだな!」

 

動かない身体をよじらせて、被害者アピールをしてみせるが、

 

「私は女神じゃないし」

 

「この国の女神は俺だ。だから俺が法律なんだよ!」

 

私とうずめは腕を組んでNOを押し付ける。

 

「暴力はいけない!」

 

「飛行機は戦闘機、科学は爆弾、インターネットはエロサイト。物事が前進するには、ある程度の悪が必要なのよ」

 

最後は違うくないか?という海男の小さなツッコミを無視して、工具を取り出そうとすると、

 

「待って待って!暴力はダメだってば―!」

 

ネプテューヌが止めに入った。

 

「あら、意外ね。ノリノリでやってくると思ったのに」

 

「私をなんだと思ってるのさ!このグロいのは、私が標本にするって決めてるんだから、ダメなの!」

 

ネプテューヌが力んで言った。

そのとき私たちの頭に浮かんだ言葉は、

は?

である。疑問符一色。

 

「だって見てよ、この紫色の羽根。いかにも毒を持っている珍しい蝶って感じだし、絶対レアな生物だって!だから生きたまま標本にして、私のコレクションにするんだー」

 

「う~~~~~~ん、うん、うん、ちょっと待ってちょっと待ってどこからツッコめばいいのかしら」

 

「……ある意味、一番たちが悪いな」

 

呆れたように海男がため息をつく。

確かに登場の際に、昆虫ハンターだとか言っていた気がするが、これを見て虫って思うかしら?

わりと無茶があるような……

 

「そんなわけで、きゅーしゅー!えーい!」

 

ネプテューヌがごくごく普通の紫色のB5サイズのノートを開くと、青白い渦巻きが立ち上がった。

だがそれに襲われたのはマジェコンヌだけだ。

渦巻きに囲まれたマジェコンヌはそのまま小さくなっていき、本へと吸い込まれていく。

ついには本より小さくなったところで、テープで張り付けた。

 

「どういうあれよ」

 

目の前の光景に思わず語彙力がなくなってしまう。

 

「へえ……すごいな、この本。あんなにデカかったやつがこんなに小さくなって張り付けられてやがるぜ」

 

「おい、これはなんだ!この私を誰だと思っている!今すぐ解放しろ!」

 

私たちはそのノートをまじまじと観察した。

小さくなったせいか、高い声でわめくマジェコンヌもこうなってしまえば恐くはない。

 

「けど、こんなに厚さがあるんじゃ、本が閉じないんじゃないかな?」

 

「それならだいじょーぶ。えいっ」

 

いまのマジェコンヌはステーキ肉ほどの厚さがあるにも関わらず、ネプテューヌは本を閉じた。

すると、みるみる厚さが無くなっていき、最終的には開ける前のような、見た目には何の変哲もないノートになってしまった。

いまはシールみたいになってるのかしら。

 

「わっ、潰しちゃった」

 

「大丈夫大丈夫。よくわからないんだけど、こうして閉じちゃえばさっきのまま保存できる便利な本なんだ」

 

「不思議だが、これならば持ち運びも便利だし、あとでゆっくり彼女から話を聞きだすこともできるだろう」

 

これでマジェコンヌ関連に関しては心配がなくなったと言ってもいい。

海男もようやく安心してほほ笑む。

 

「俺としては、ぼこり足りねえけどな」

 

「ま、それはあとのお楽しみでいいんじゃない?」

 

「そうだな。でっかいねぷっちも一緒に来るか?」

 

「いいの?」

 

うずめの提案に、ネプテューヌが首を傾げた。

 

「助けてくれたんですし、当然です。何かお礼もしたいですし」

 

「わーい、やったー!いやー、一緒にいた男の人とはぐれちゃって寂しかったんだよねー。それに食料も尽きそうだったし」

 

ネプテューヌはばんざいしたあと、お腹に手を当てるアクションをした。

お腹すいててあの戦力とは、いやはや恐れ入る。

 

「なら、礼に腹いっぱい食わせてやるよ」

 

「本当!?ありがとう!!」

 

男の人?

ということは、この次元にもう一人誰かいるってことかしら。

味方か敵か。

ネプテューヌを見る限り、敵ではないと思う。

 

そう思いたい。

 

 

 

 

 

 

目当てであるアイテム、サンシローの入魂パッチを見つけ、急いで帰ってきた俺たちは教会の一室、ネプテューヌたちの集う部屋の扉を開けた。

 

「ただいま、あいちゃん、こんぱ。いーすんの様子はどう?」

 

「おかえりです、ねぷねぷ、ユウさん。いーすんさんは相変わらず、気を失っているです」

 

俺はベッドに寝かされているイストワールを見た。

うなっている様子もなく、すぅすぅと寝息を立てていた。

起き上がる気配はないが、出ていく前より容態は安定しているようだ。

『気合で復活する』ということから、このまま寝かせておいても回復はするだろうが、こちらは一刻を争う。

ネプギアのことが心配だ。

零次元に現れたというマジェコンヌが、もし犯罪神と同等の力を持っていたとしたら、シェアが充分に得られない向こうでは危険すぎる

しかもネプテューヌがこちらに来る直前、他の二人は傷を負っていたそうだし。

 

「ネプ子のほうはどうなの?例のアイテムは見つかったの?」

 

「じゃじゃーん!ちゃんと見つけてきたもんねー!」

 

ネプテューヌはアイエフたちに向かってカセットを掲げた。

 

「わぁ!すごいです、ねぷねぷ!やればできる子です!」

 

「とはいえ、ずいぶん他の女神に助けられたけどな」

 

「なら、あとでちゃんと他の女神様たちにお礼は言うのよ?」

 

俺は頷いた。

転換期という大変な時期で手が回らないはずなのに、手伝ってくれたことはありがたい。

ノワール、ユニ、ベール、ブラン……

 

「あぁ、しまった。ブランのこと思い出しちまった」

 

「ブラン様、あなたが去ったあとかなりご機嫌悪いみたいだったわよ」

 

「身に染みてるよ」

 

怒号がまだ耳に残っている。

イストワール、ネプギアときて、次は俺が助けてもらおうか。

 

「けど、こんなカセットタイプのアイテム、どうやっていーすんに差し込むの?」

 

ネプテューヌの疑問はもっともだ。

こんなカセットを差し込むような場所は無いように思える。

アイエフも首を横に振った。

取扱説明書を一通り見ても、そんな記述はない。

アイテムがあっても、これじゃ意味がない。

 

「そうだ!だったら、このカセットをいーすん口にセットするのはどうかな?」

 

「はぁ!?」

 

アイエフと俺が口をそろえた。

どうかな?と言われても、なに言ってんだこいつとしか思わない。

 

「無茶すぎじゃないか。いくらなんでも口に差すなんて……」

 

「大丈夫大丈夫!いーすんならこのくらい平気平気。よいしょっと」

 

俺が止めようとする前に、ネプテューヌがイストワールの口にカセットを押し込んだ。

あられもない姿になったイストワールを尊重して、これ以上見ないように目をそらした。

 

「この顔、絶対誰にも見せられないわね……」

 

アイエフが眉間にしわを寄せて、イストワールをしげしげと見る。

やがてアイエフの眉が動いた。

 

「自動プログラム起動。アップデートパッチを確認。インストールを開始します」

 

聞こえたのは、機械的ではあるが確かにイストワールの声だ。

どうやらアイテムもインストール方法もあっていたようだ。

差し込み口くらい用意してくれたっていいのに……

 

「案外、昔の女神さんもねぷねぷみたいな性格だったのかもしれませんね」

 

俺はコンパに同意した。

ネプテューヌといい、プルルートといい、プラネテューヌの女神というのはどこかネジが外れているのかもしれない。

もしかしたら、小言を言うイストワールの醜態を見るためにこんな方法を残したのかもと邪推してしまうほどに。

 

「ところで、インストールってどのくらいかかるのかな?」

 

「さあな、気合で復活っていうくらいだから、いまにも起きてガミガミ言ってくるかもしれんぞ」

 

「うっ……それは嫌だけど、いーすんが元気になるならそれでいいや」

 

ネプテューヌは安心したように笑ってイストワールを見た。

果たして、どれくらい時間がかかるのか。

俺はもう一度、携帯端末を取り出して連絡を取ろうとした。

しかし、やはり返事は返ってこない。

 

あいつのことだ。お得意の主人公力とやらできっと無事でいるはずだが……

ちらりと隣のネプテューヌを見る。

似ているが、やはり成長するといろいろと違って見える。

 

あのネプテューヌはいまごろ何をしているだろうか。


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