お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

6 / 51
今回のネタが降りてきた経緯は

大学の卒論のテーマにする予定のまどマギを調べる→虚淵やな→鎧武の脚本そう言えば虚淵書いてたな→鎧武と言えば劇場版サッカーだったな→そうだサッカーさせよう。

てな感じです。

後今回一部軽巡艦娘たちにヘイトかかりますが彼女たちは北上さんみたいなもんだと思ってください。


父上が………(by菊月)

「えぇい!!」

 

「ほわぁ~みかちゃんすご~い♪」

 

「三日月に負けられん!!行くぞ弥生!!」

 

「ん…。」

 

「俺はちょっと離れるけどその間にあんまり熱入れすぎて怪我すんなよ~。」

 

 俺は春特有のポカポカとした温かさを地表へと放つ太陽の下に広がる小さなグラウンドで、黒と白の2色で分けられた一つのボールを追いかけるみんなを見てそう言った。

 

「「「「はーい!!」」」」

 

「お父さんはみんなと一緒にサッカーやらないっぴょん?」

 

 俺がみんなの返事を聞いてから入渠ドックの近くにある医務室へと向かって歩き出すと背中の方からそんな卯月の声がした。

 

「ん?今は卯月の方が心配だからな。今は血が止まってるとはいえさっきまで擦り傷でピーピー泣いてたくせに遠慮すんなって。」

 

「うゅ~。」

 

 今俺は卯月を背負って歩いている。

 理由は、さっきサッカーで俺にいいところを見せようとした卯月がサッカーボールの上に玉乗り状態になって勢いよく顔から地面に突っ込んで顔を擦りむいたからだ。

 

「それにばい菌が入って傷口が化膿したら痛いぞ~。痛すぎてまともにご飯が食べられなくなるぞ~。」

 

「それは嫌だっぴょん……。」

 

「だろ。だから遠慮せずに痛いんだったら痛いって言えよ。超特急で行くからさ。」

 

「超特急?どんなのか見てみたいっぴょん!!あつ!!」

 

 どうも俺が言った言葉に反応して興奮したようだが、その時に唇にできた擦り傷に沁みたようだ。

 

「自分の唾液が沁みたか?だったら急いでいくから舌噛まないように気をつけろよ~。」

 

「は~い!!」

 

 卯月のその答えを聞いてから俺は膝を曲げて腰を少し低くし……

 

「しっかりつかまれよ~」

 

 卯月にそう言って俺の首にしがみつきなおさせて

 

「!!」

 

 勢いよく走り始めた。

 

「きゃーーー♪」

 

 俺にしがみついている卯月も楽しそうに悲鳴を上げているしだったらこのまま………と俺はそのまま医務室へと駆けこもうとした………が

 

「お父さんかけっこしよ!!」

 

 医務室まで残り数10メートルと言うところですぐ横を島風が並走し始めたから俺は一度スピードを落とさないといけなくなった。

 

「今後ろに卯月背負ってるから医務室までな!!!」

 

 俺はそう島風の方を向いて言ってから

 

「肉体は滅び、その魂は英霊として「世界」に召し上げられて……ってやっぱ全部言うのはめんどいから以下省略。アララララララーーーーーイ!!!!」

 

 と叫びながら再びトップスピードで駈け出した。

 

「おぅ!!お父さんはっや~い!!!私も負けませんよ!!」

 

 後ろで島風が驚いたような声を上げたがすぐに俺を追いかけ始め……

 

 

「お父……さん……気持ち悪…い………っぴょん。」

 

「あ……ごめん………。」

 

 結局本気で医務室まで駆け抜けてしかも医務室にダイナミック入室までしてしまった関係で、上下揺れが激しかったために卯月の顔色が真っ青になっていた。

 

 卯月が医務室で夕張さんに絆創膏を貼ってもらう際に夕張さんに部屋から追い出された俺はこれ幸いとグラウンドに戻ろうとしたが

 

「お父さぁ~ん。ウサギはね、さびしいと死んじゃうんだぴょん……。」

 

 と治療中なのに部屋の外に出て来た卯月に今にも泣きそうな顔でそう言われたせいで戻るに戻れず、医務室の入り口扉の横にすがって待っていた。

 

「ほら、終わりましたよ。はい卯月ちゃん。」

 

「お待たせだぴょん!」

 

 夕張さんに連れられて医務室から出て来た卯月の顔には、いたるところに朧がしているような絆創膏が貼ってあったが、前髪の隙間から見えるおでこの所の絆創膏だけは桃色をのぞかせていた。

 

「よし、行くか。って言いたいけどおでこの絆創膏だけ色が違うんじゃないか?」

 

「あ、お父さん気付かれましたか?ここに貼った絆創膏は~」

 

 俺が卯月に何で色が違うのか聞いてみたら夕張さんがドヤ顔で俺の前に出て来て

 

「卯月ちゃんなのでウサギ柄の絆創膏を探して貼ってみました~。」

 

 そう言いながら後ろから卯月の前髪を持ち上げて見せてくれたが、その絆創膏は桃色をベースとしたデフォルメされたウサギがこっちを向いている絵が描いてある絆創膏だった。

 

「お~。卯月に似合ってんじゃん。」

 

 それを見て俺が素直な思いを言うと、卯月は

 

「本当だぴょん?嘘じゃないぴょん?やった~!!」

 

「良かったね卯月ちゃん。」

 

 夕張さんとハイタッチして大喜びし始めた。

 

「???ま~、とにかくみんな待ってるだろうしグラウンドに早く戻ろうか。」

 

 いまいち俺にはなんで二人があんな風に喜んでいるのかわからなかったが、卯月と手をつないで今度は普通の速度で歩いてグラウンドに戻ってみれば……

 

「!!みんな何があった!?」

 

 俺がこの鎮守府にやってきてからここに着任した軽巡の艦娘たちがサッカーボールに足を置いて立っており、菊月ちゃんや、文ちゃん。そして三日月ちゃんがボロボロになってグラウンドに倒れていた。

 

 慌てて俺はグラウンドの方に卯月ちゃんをお姫様抱っこをして駆け下り、一番近かった菊月ちゃんを揺すって聞いてみると

 

「父上……すまない。ボールとグラウンドを……取られた……。」

 

 そう言って目を閉じてしまった。

 

「おい、大丈夫か?おい!!!」

 

「お父さぁ~ん文ちゃんは一応大丈夫みたいだぴょん。だけどみかちゃんは結構怪我もしてるみたいだぴょん。」

 

「卯月……一応菊月も見ててくれないか?俺はちょっとあいつらと話付けてくる。」

 

「!!わかったぴょん。だけど、お父さんにはう~ちゃんはそんな怖い顔しないでほしいと思うっぴょん。」

 

「ん~。ごめんな。だけど、さすがにこれは俺も我慢できないから。」

 

 俺は卯月の頭を撫でて菊月のことを頼んだ後に未だにボールの上に足を置いて立っている軽巡艦娘……天龍に正対した。

 

「なんでみんなを傷付けた?」

 

 俺が、今すぐに殴りかかりたいのを我慢して天龍に尋ねると

 

「あん?誰かと思ったら無能じゃねぇかよ。」

 

 と天龍が答えた瞬間、卯月や怪我しているせいでまともに動けない三日月たちがいる後ろの方から「お父さんをバカにするなっぴょん!!!」「お父さんをバカにするなら許さないんだからぁ~。」

 

 と言った怒りの声が上がったが目の前の天龍はそれらの声を無視して

 

「俺たちがここを使おうと思ったらこいつらが占領していてできないから実力で排除しただけさ。まぁ、流石に力づくと言ってもこいつらがサッカーをのんきにしていやがったから一方的にのしたんだがな!フフフ怖いだろ。」

 

 と言った。

 

「そうか…。だったら今お前らを俺が実力で排除しても何ら問題ないよな。」

 

 正直我慢の限界だった。

 俺自身が何を言われても我慢はできるし、実際指揮をとれないから無能だと言われても仕方ないとは思ってはいた。

 だけど、駆逐艦娘(あの子)たちに関してのことは別だ。

 

 自分でも大概親ばかになってきてはいるな~とここ数日思ってはいたが、どうも俺は俺のことを親としてあの子たちが慕ってくれてる限りは父親としてありたいと思っているようだ。

 

「お前らがサッカーであの子たちをなぶったんなら俺もサッカーでお前らのプライドズタボロにしてやんよ!!!」

 

 俺はそう言うと、自分の中のスイッチを高校卒業以来久しぶりに入れた。

 

 

 

 

 数分後……

 

 グラウンドには息一つ切らさずにボールを足元でコントロールしている俺と、そんな俺を尊敬のまなざしで見つめる菊月達といつの間にか来ていた神通。そして今にも倒れそうな状態で立っている天龍、川内、阿賀野の姿があった。

 

「おら。盗りに来ないのか?さっき言ってた一瞬で終わらせるってのは嘘だったんか?」

 

 と、俺が足元でボールをコントロールするのをいったん止め、煽ると川内と天龍はアイコンタクトを一瞬したのちに両サイドから俺へと突っ込んできた。

 

 ………だが

 

「甘いな。」

 

 俺はその両サイドから足元を狩るとでも言いたい勢いで迫ってくる二人の足を上空に跳んで避けた。その際に右足のかかとと左足の甲の間にボールを挟んでおくのを忘れない。そうすると、二人の足は俺の脚という共通の目標がなくなって………

 

「くそがぁ!!」「ふぁぁぁあああ!!!」

 

 ……互いに衝突しお互いの突進エネルギーで自爆し、その反動でお互いの頭をぶつけて終わる。

 

「さて、あとはあんただけだけどどうすんの?」

 

 俺は阿賀野の方を見て告げた。

 

「……私はこれ以上続けるのは遠慮しておくわ。天龍達みたいに怪我したくないし、それにこの後出撃予定が入ってたはずだからね。」

 

「そうか。じゃグラウンドは返してもらうぜ。」

 

 阿賀野の答えに対して俺がそう言うと

 

「それでいいわよ…。龍田さ~ん手伝って~。天龍さん運ぶの私ひとりじゃ無理~。」

 

 阿賀野はどこかへ向かって大きな声で叫んだ。すると

 

「あら~、天龍ちゃんボロボロじゃない。誰がやったのぉ~?」

 

 頭の上の方にぷかぷかと天使のわっかのような艤装を浮かべた龍田がどこかからいきなり現れてそう言った。

 

「おぅ、龍田さん。それ間接的にやったの俺だわ。」

 

 この人に隠し事をするとホントに後が怖いので俺は龍田さんの質問に対してすぐにそう言った。

 

「どうして天龍ちゃんを傷つけたのかなぁ~。」

 

 すると、予想通りに理由を聞いて来たから

 

「家の子を先にそいつらが傷つけて、俺があの子たちの代わりにプライドもろとも木端にしただけさ。」

 

 正直に答えた。この人に変に隠し事や嘘をついたら後が怖い。これはあの時この鎮守府に居たみんなが見ていたから言えることだ。

 

「傷つけられた子って言うのは~?」

 

「そこで神通さんと一緒に目をキラキラさせてる子達だよ…………ってあれ?弥生ちゃんは?」

 

 と、龍田さんの質問に答えたときに俺は弥生ちゃんがいなくなっていることに気が付いたが、その時小さな子特有の間隔の短い足音が聞こえて

 

「龍田さん……いた………やっと……見つけた……けど………もう終わってた………。」

 

「あ、弥生ちゃん。」

 

 弥生ちゃんが玉のような汗を額に浮かべつつ、息を切らせながらグラウンドに入ってきた。

 

「お父さん……私もう疲れました…。」

 

 俺の方へとよたよたと今にも倒れそうな状態で歩いて来た弥生ちゃんを俺は抱きしめて頭を撫でてやった。

 

「お疲れ。俺か龍田さん探しに行ってたのか?」

 

 そう言って弥生に聞いてみると

 

「はい。……だけど医務室に行ったらお父さんはもうグラウンドに戻ったって聞いたので龍田さんを探しに…」

 

 そんな答えが返ってきた。

 

「そっか……。」

 

「少し眠ってもいいですか…?」

 

「ん?いいよ。だけど後でちゃんと他のみんなと一緒にお風呂に入っておこうな。」

 

「は………い……スゥ……」

 

 俺が抱きしめていて安心したのか、弥生ちゃんはそのまま寝てしまった。

 

「普段は頑張って気張ってるけどそのあたりはやっぱり年相応だな…。」

 

 と、その寝顔を見て俺が言っていると

 

「フフ…いい顔してるわね~。」

 

 天龍さんをまるで荷物のように肩に担いだ龍田さんが俺にそう言ってきた。

 

「ええ。可愛い寝顔です。」

 

「いや、そうじゃなくて佑太さんあなたの顔のことよ?」

 

「え……?どういうことですか?俺普段通りの顔だと思うんですけど?」

 

 俺は龍田さんの言ってる意味が分からなくて聞き返した。

 

「そうかなぁ~。だって今のあなた……」

 

 龍田さんはそこで一瞬貯めて

 

「とても幸せそうな顔してるわよ~?」

 

 笑顔で俺にそう言った。

 

「やっぱ俺顔に全部出ちゃうのか……。」

 

 と、俺が軽く自己嫌悪していると龍田さんが俺の耳元まで自分の顔を近づけてきて

 

「でも~、(そんなに”お父さん”していて本当に”提督として”みんなを送り出せるのかしら?)」

 

「!?」

 

「それじゃあ天龍ちゃんを医務室に連れて行かなきゃならないから私はここで帰るわね~。あ、神通はそこの夜戦バカをお願いね~。」

 

「あ、わかりました。」

 

 龍田さんに小声で言われた言葉で()()()()()()()()()()()()()ことを龍田さんは知っているという事実を暗に教えられて俺は驚いて固まった。

 

 しかしそんな俺を尻目に龍田さんは未だに目をキラキラさせていた神通さんをつれて医務室がある方へと歩き去って行った。

 

「……なんで龍田さんはそのことを知ってるんだ?というか、今の言葉の真意って……。」

 

 俺は、結局龍田さんの言葉の真意をつかめずに呆然とその背中を見送ることしかできなかった………。

 

 そうやって呆然としていた俺の肩を

 

「佑太さん。」

 

 そう言って叩く誰かがいた。

 

「うわぁ!!……って明石さんですか。驚かさないでくださいよ……。」

 

 呆然としていたせいで完全に周囲の警戒が緩んでいた俺は急に肩をたたかれたせいで異様に驚いて勢いよく振り返ってしまった。

 

「みんなのケガ。処置し終えましたよ?」

 

「え?」

 

 振り返った先には明石さんが笑顔で立っていて、その後ろにはだいぶ回復した様子を見せるみんなの姿があった。

 

「お父さ~ん、さっき天龍さん相手にしてた技ふみぃもやってみた~い。」

 

「父上、さっき川内さんをかわすときに使ってた技を私はやってみたいぞ!!」

 

「お父さんう~ちゃんにもかまってかまって~」

 

 みんな笑顔だった。だから俺も

 

「よし、俺がやってたのはいきなりするのは難しいと思うから簡単なのからやろうか!」

 

 笑顔を作ってそう言った。

 

「「「は~い(だぴょん)!!」」」

 

(この笑顔が守れるなら俺はなんといわれても構わない…ってまた親ばか思考に走ってら…)

 

 俺はそんな自嘲をしながらさっき龍田さんに言われた言葉を意識の奥に押し込み、そこから先を考えるのをやめた。




佑太は大学受験のために引退するまでの間は強豪サッカー部でテクニカルな方のFWしてました。
なので、力業でガンガン来る彼女たちをあしらうのは簡単でした(笑)

龍田と神通はたまに触れられているあの事件の時から佑太と面識がありますので、佑太が顔に考えていることが出やすいのを知ってます。

後神通さんが目をキラキラさせていた理由は………読者の皆様のご想像にお任せします。

因みに弥生ちゃんのイメージは先詠む人の中ではごちうさのチノちゃんに近い……かもしれない。(難民じゃないから断言できないんだけど)

感想、評価をよろしくお願いします。
なんやかんやで励みになるので。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。