お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
……こんなにも遅くなったくせに短い上に恐らく低クオリティなことをどうか許してください。<m(__)m>
「もうちょっとおとなしくしていてくださいね~」
そう言いながら霧島さんは俺を抱いたままでてくてく食堂の方へ歩いていく。
それに対して俺は
「…………」
疲れた中年のような瞳でプラーんと抱かれたままになっていた。
なんでそんな目をしてまで俺がぶら下がっているのかと言うと、事情がある。それは……
(
と、どうしても体を動かすのに躊躇してしまうせいだった。
そしてなんで死んだ目なのかと言うと、この体になってから大人の艦娘、特に古参の皆さんと酒飲みに小さい子供がされるみたいに可愛がられることが多くなったせいだ。
食堂で鳳翔さんの手伝いをしてたら飴をもらうこともかなりあったし、単位を落とすわけにはいかないから大学に行こうと鎮守府を出ようとしたら龍田さんに「あらあらうふふ~」と言われながら撫でられたし……
因みに一番多いのは今みたいに脇に手を入れた状態で抱き上げられて、そのまま色んな所へと連れまわされることだ。
特に空母と戦艦の人にはよくやられるし、何故かそのまま鎮守府の外に連れ出されて生暖かい目で周囲の人に見られたこともあった。……いたたまれなくて途中からフードを深くかぶってずっと顔を伏せていたのは今でも苦い思い出だ……。
そんなこんなで死んだ魚のような目で周囲を見ながら抱かれたままでいると、食堂にたどり着いた。
「佑太さんはここで待っててくださいね。」
そう言いながら霧島さんが俺を下ろして食堂に先に入っていく。
「はーい。」
そんな返事をして俺はおとなしく食堂の扉のすぐそばにあったパイプで足が作られた丸椅子の上に座り、そのまま足をプラプラさせていた。
数分ほど待っていただろうか。
「佑太さんいいですよ。」
と言いながら霧島さんが首をこちらにのぞかせた。
「あ、はい。」
そう答えて椅子から飛び降り、とてとてと音を立てながら霧島さんの後をついて食堂に入った……その時だった。
パーン!パーン!!パパパパパパパパーン!!
乾いた音が一気にたくさん鳴る。
「!」
その音に驚いて体をビクッとさせたが何も起きない。
この体に今もあるのかわからない心臓がばくばくするような感覚を感じつつ、音を聴いて反射的にすくませた首をゆっくりと戻し、前を向く。するとそこには
「えへへ~♪」
少し楽しそうながらも照れ笑いをしながら俺の前に立つ文ちゃんの姿があった。
その手にはクラッカーが握られており、その蓋は既に開いていた。
「くら……っかー?」
ゆっくりと、びくついた状態から回復した俺がそうこぼすと
「父さんが帰ってきたのにそれを未だに祝ってなかったと思ってな。」
そう言いながら長月ちゃんが文ちゃんの後ろからにょきッと顔を出して笑った。
「それを長月が言いだして私たちみんな『あ…』って忘れていたのを思い出したんだ。」
その長月ちゃんのすこし上の方に笑顔の菊月ちゃんのきれいな銀髪が顔を出した。
「それでみんなに相談してね、今日がいいんじゃないかって」
そう言いながらさっちゃんが菊月ちゃんの頭の少し上に顔を出す。
「それを聞いてみんなで準備してたんです。」
さっちゃんが顔を出してからすぐに文ちゃんの今度は長月ちゃんとは反対側に三日月ちゃんの黒いさらさらとした髪が
「うーちゃんは覚えてたもーん!!ぷっぷくぷー」
その三日月ちゃんの少し上で菊月ちゃんとは反対側に両手を頭の上に乗せてうさ耳を模したかのような体勢で卯月ちゃんが
「……卯月、嘘はいけねーよ。」
そんな卯月ちゃんの肩に顎を載せる形で脱力しながら望月ちゃんが。
そう言った風に千手観音の手の部分をみんなの頭で代用したかのような形で文月観音が俺の目の前に降臨していた。
「あ……はは。」
その姿を見て何故か見えた後光によって、心の中の暗雲が晴れていくような感覚を覚える。
(なんだよ……別に一線を引く必要なんてないじゃんか。)
そう心から思って無意識のうちに笑みがこぼれた。
それは俺がこの
(そうだよな。別にこの体になったからって一線を引いて自分を押し殺す必要なんてないよな。)
俺はそんなことを考えながら文ちゃんの頭をなでた。
「えへへ~きゃぅ」
頭をなでることで文ちゃんが顔を若干朱に染めながらうつむく。それを見て後ろにいたみんなは
「文月だけズルいぞ!!」
「お父さん私も撫でて欲しいっぴょん!!」
「父上!私も……私も!!」
「…………早くなでてください。」
「もっちーは行かないの?」
「ん、もうちょっと落ち着いたらね。」
一人、水無月ちゃんと話す望月ちゃんを除いてみんな俺の所に一気に殺到した。
「いいよいいよ~。」
そう言いながら文ちゃんの頭の上に置いていた手を離して両手を広げる。
そのまま俺はみんなを抱きしめていた………
その様子を見て
「陸奥!!後生だから行かせてくれ!!」
「……駄目。あなたが今行ったらみんなつぶれちゃうじゃない。それに提督さんからも『長門が余計なことをしないよう見張っていてくれ』って頼まれてるしね♪」
「後生だぁぁぁああああ!!!」
と、とある戦艦姉妹は駄々をこねる姉を妹がテーブルに押さえつけて動けないようにしていたし、
「…………さすがに気分が高揚します。」
「(パクパクムシャムシャパクムシャパクムシャ)かわいい子たちが騒いでいるのはいいですね~。あ、加賀さん。もうひとバスケットお願いします。」
「どうぞ。」
と、とある食う母たちはこっそり隠してあった
そんな中、ある一人の少女は………
「今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は我慢今は…………」
「ゆ……夕立ちゃん?」
「今は離れた方がよさそうにゃしぃ……」
髪を逆立て、目の色を赤く染め、魚雷片手に今にも襲い掛かりそうな雰囲気でひたすら欲求に耐え、それを見た友人を困惑させていた。
~十数秒後~(ぱっぽ~)
「もう我慢できないっぽい~~~!!!!!」
「うわっ!!夕立ちゃんなんてことするの~!!」
「おい夕立!!どこに行く!!夕立!!父上をどこに連れていくんだ!!夕立!!夕立ぃぃぃぃぃぃいいいい!!!!!!」
どんがらがっしゃーん!と何かがひっくり返ったかのような大きな音周囲一帯に鳴り響く。
その場にいた全員がその耳の奥に響くかのような甲高い音に身をすくめた瞬間、少女たちの悲鳴とともにどたどたとたくさんの足音が鳴り響いた。
夕立に首根っこを摑まえてどこかへと拉致されていく佑太と、それを大慌てで追いかけて食堂の外へ駆け出して行った睦月型の子たち。それを目の当たりにして状況についていけずにポカーンとなる少女と、慌ててその追跡劇に参加する少女たち。
その一方でひっくり返ったものを直し始める女性たちなど食堂に居た人たちはその事態に対して各種様々な行動をとり始めた。
「…………まぁ、こうなるわな。」
それを見ながらお猪口片手に一人熱燗を呑んでいた<瑞雲>と書道体で背中に書かれている緑色の法被を着た女性はそう呟きながら酒杯をあおり、
「…………どうだ、伊勢。お前も一献。」
「バカ日向!!今そんなことしてる場合じゃないでしょう!!ほら、早く手伝って!!」
同じ緑色の法被を着た姉にお猪口を勧めて怒られるのであった。
クオリティが低かったらごめんなさい。
長らく待たせてごめんなさい。
俺……頑張るから、見捨てないでください。