お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
今回は明石さんと佑太がメインで駆逐艦の子達はスヤスヤ夢の中です。
「ガハッ!!!」
俺の体は大きな音ともに壁に激しく打ちつけられ、衝撃で俺の肺からすべての空気が強制的に吐き出させられた。
「まだ…だ…もう一回…。」
そう言って、顔をしかめながら部屋の中心に設置されているあるものへと歩き寄る俺の体を
「佑太さんそれ以上は無茶です!!」
そう慌てた顔で言う桃色の髪の少女が後ろから羽交い絞めにする形で押さえつけた。
……夜戦バカが騒ぐ以外静かなとある夜更け。
この鎮守府に居て、俺を父親と慕ってくれている
……いや、立っていたわけではなく吹き飛ばされていた。平均的な大学生の体型の俺が吹き飛ばされていた理由は今目の前にあるこの機械だ。
「とめないでくれ明石さん。俺が今あの子たちにできることで一番しなきゃなんないことはこれなんだ!!!」
(これが………この機械が原因であの子たちを守れないのなら、俺自身が傷ついてでもこの機械を使えるようにならないと!!)
普段、あの子たちに見せない必死の形相で機械ににじり寄ろうとする俺を後ろから抱きしめて抑え込もうとしている明石さんは
「それでも………だからってあなた自身が傷ついてしまえばそれはそれで
ある意味俺にとって殺し文句である言葉を言った。
「!?」
「あの子たちはあなたが自分のために傷つくのを見て『自分たちのせいでお父さんが傷ついた』って悲しみますよ!」
その明石さんの言葉を聞いて俺は機械に迫ろうとするのを止め、体から力を抜き
「……ごめん明石さん。俺、頭に血が上ってたみたいだ…。」
明石さんの方を向いて謝罪した。
必死に俺を止めようとするあまり、彼女の腕や足には俺が振り回した腕がかすったせいでできた擦過傷ができていたりしたからだった。
「いいんですよ。ただ、なんで佑太さんにだけ
俺の謝罪に対して明石さんは笑って許してくれたが、俺たちの最大の疑問点になっているある問題を口にした。
「ほんと、
俺と明石さんは二人顔を見合わせてから作戦室の中央に設置されている様々なパイプが背後の機械から出ていて、椅子の背もたれの頭を預けるところに頭からすっぽり被るタイプのカバーが付けられているこの指揮用の機械を見た。
俺が横須賀海軍対深海棲艦総合本部、通称大本営から建造と開発しかできない無能と判断されていて、あの変態がこの鎮守府に着任した理由……。
それは艦娘たちの指揮を執るために使われているこの機械を俺が使用しようとすると、まるで機械に意志があって俺がこの機械を使うことを拒絶するかの如く、先ほどのように吹き飛ばされる現象が起きるのが原因だった。
「佑太さんは建造開発はできるんですよね?それならば本当は提督としての基準は満たしているのでこの機械を使用できるはずですし、他の適性が無い人でも佑太さんみたいに吹き飛ばされるなんてことはありえないんですけどね…。」
「……俺がそもそも建造できるようになった経緯がイレギュラーなのでそれが原因なのかもしれないです…。」
この現象が起きる原因について俺が唯一心当たりがあるのはそれだけだった。
それにそれ以外の理由は俺以外の人が触っても吹き飛ばされることは無いから当てはまらないと思う。
「イレギュラー…ですか。ですが、もしあの時佑太さんが建造ラインを握らなければこの鎮守府の艦娘たちは完全に心をなくしていました。だからもっと胸を張ってくださいよ。そんな顔したままであの子たちの前に立っちゃダメですよ。」
明石さんは手鏡を俺の顔が映るように見せてくれながらそう言った。
「ハハハ…ひでぇ顔だわ……。」
明石さんが見せてくれた手鏡の中に映っていた俺は今にも泣きそうでつらそうな顔をしていた。
「こんな中途半端な状態だったら大学にも帰れない。かといって、俺が建造ラインを放棄したらあの子たちは艦娘として生きられなくなってきっとあの変態のことだから碌なことになんない。」
「そう言えば、『今は春休みだから俺のことは気にしなくても大丈夫』ってあの時言ってましたけどもしかして?」
俺がつい漏らしてしまった弱音を耳ざとく聞いていた明石さんは俺がこの鎮守府に”お父さん”として着任したときに話していた内容を引っ張り出して聞いて来た。
「はい、1週間後には大学の授業が始まっちゃうんですよ。ここに来ることになった
「だからあんなに必死で今日も提督に頭を下げていたんですね…。『鎮守府の外にお前を出すわけにはいかない』って一蹴されてましたけど。」
「あちゃー。それも見られてましたか…。」
「だとしたら、今日いきなり作戦室でこの機械を起動させようとしたのも提督のあの言葉が原因ですね?」
「そこまで御見通しでしたか…。その通りですよ。あの変態俺がこれに起動はおろか触ることすらできないのを知っていて『どうしても大学に行きたいのならば自分で指揮を取れるようになるんだな!』って。」
「ああー、前々から思ってましたけど提督佑太さんに対してひどすぎません?さすがの私たちにも黙って見ていられる限度がありますよ?」
「多分………理由としては
「……それ初めて聞きましたよ?本当にそんなことを提督は?」
「………はい。前に艦隊の指揮を執っている際のログを霧島さんが俺の意見が欲しいって見せてくれたことがあったんですけど、その時にあの子たちを捨て駒にするような指揮を執っていて、それを問い詰めに行ったところまでは良かったんですけど………」
「もしかしてその話は提督を殴り飛ばしたって言うあの日のことですか?」
そこまで喋ったタイミングで俺はその時しでかしたことを思い出してつい言い淀んでしまったが、明石さんはそのことをすぐに思い出したようで話を続けてくれた。だけど、その時に俺はかなり大暴れしてしまって何人もの艦娘たちに迷惑をかけてしまったので
「…………はい。そうです。あの時はほんとにご迷惑をおかけしました…。」
どうしても謝らないといけないと思ってしまう。
「いえいえ、謝らなくてもいいですよ。実際あのアホ面をさらして宙を舞っているのを見てスカッとした子も結構いたみたいですし。」
明石さんは俺を慰めるかのようにそう告げた。
「…………それならいいんですけどね…。」
だけど、あの一件が原因で変態の俺への態度が以前よりも悪化したのは事実だ。
そうやって「どうしたもんかなー」と明石さんの目の前で頭を抱えていた俺は明石さんが小さい声で何やらぶつぶつ言いながら考えていることに気付いていなかった。
「所で佑太さん。今日はもう遅いですし、寝たらどうですか?」
俺がこの問題の答えを見いだせずに考え込んでいると、明石さんは急に顔を上げて俺にそう言った。
「え、でもまだ「明日は三日月ちゃん達と外で遊ぶんじゃなかったんですか?それだったらもう寝ないとさっきまでのダメージもあるでしょうし…」……わかりました。せめて片付けだけで「あ、しなくて良いですよ。私がついでにしておきますんで」……すみません。それだったらお願いします。」
結局、しゃべる度にそれを潰すかのような勢いで俺に寝るよう迫ってくる明石さんの迫力に負けて俺は自室へと作戦室から出て帰った。
「………佑太さんはもうここからかなり離れましたね……。そこにいるのはわかってますよ。出てきたらどうですか?」
私は佑太さんが開けっぱなしにしたまま去っていった廊下とこの部屋を繋ぐ扉の方へ向かって告げた。
「ありゃりゃ…気づかれてないと思ってたんだけどねぇ~。」
するとそんな声と共に私が大本営付きの子だと予想していた通りの艦娘が廊下の闇の中から出てきた。
「大本営付きのあなたにお願いがあります。」
私は佑太さんがこれ以上苦しまないようにという意志を持って彼女にある頼み事をするのと、先程立てたある計画の後ろ楯を彼女の背後にいる誰かに頼むために話し始めた。
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段々この鎮守府の過去も書いていこうと思ってます。