お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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オムニバス形式は無理だったよ……

また、バレンタインからきちんとした文体に戻すので怒らないでください。


みんな(実質ほぼ4人)の14日間

<表>とある医師の記録帳

 

 1月1日

 

 06:34 小鳥遊佑太が謎の症状を発症し意識不明に。そのまま海軍病院のICU(集中治療室)へ搬送される。同伴者は夕張、明石。

 

 06:40 ICU(集中治療室)2号室へ無事に小鳥遊佑太(患者)を載せたベッドを移動完了。以降、モニタリングを開始。

 

 07:44 白露型駆逐艦4番艦夕立が同型2番艦の村雨と一緒に病院へ来院。集中治療室で治療を受けている小鳥遊佑

 太の元へ

 

 09:35 ICU(集中治療室)2号室の内部で大きな破壊音が鳴り響き、慌てて警備員が向かったが入口の所で先に夕立と一緒に部屋へと入った村雨により事情説明を受ける。音の原因は駆逐艦夕立が強引に患者がいる隔離部屋へと侵入しようとしたことによるものだと判明。この隔離部屋の仕切り自体は以前顔に大けがを負った結果失明した艦娘が暴れた際に大多数の被害者が出たことの反省から大和型でも破壊できないものになっているため、駆逐艦程度ならば問題ないと判断。厳重注意の後に詰め所に帰還。

 

 10:00 09:35に一度向かった時以上の轟音が病院中に鳴り響き、前例があったために緊急装備に身を固めた状態で2号室へ急行。仕切りは破壊されていなかったが、その代わり駆逐艦夕立の足の甲が青黒くはれ上がっていた。

 そのため、暴れる駆逐艦夕立を数人がかりで抑え、鎮静剤を注射。そのまま整形外科の医師の元へ連れて行き、診断してもらうと足の甲の骨が粉砕骨折していた。このレベルの傷は入渠で治るかどうか不明のため、一旦固定をすることを医師が提案し、包帯でとりあえずの所固定。帰投後、粉砕した骨の形の整形手術を行ってから入渠し、回復状態を見ることに。

 

 11:00 姉の背に揺られて駆逐艦夕立は鎮守府へ帰投。同伴したのちに仮眠室にて仮眠をとっていた夕張、明石が目を覚ましたのでこちらも帰投するように進めたが本人たちは患者の意識が戻るまでは帰らないとのことなので病室に滞在を許可する。

 

 12:00 小鳥遊佑太がICU(集中治療室)から姿を消した。24時間体制で録画されている映像を確認したところ、夕張、明石両名がいる目の前でベッドごと消失。どういった方法を使ってベッドごと小鳥遊佑太をどこかへ何者かがどのような目的で連れ出したのか不明。

 

 

<裏>とある影の記録

 

 06:48 監視対象”鳥”が何らかの異常を起こして海軍病院に搬送されたのを確認。海軍病院内には協力者がいるため、気を見て欺瞞装置を起動するよう指示を出す。

 

 08:27 上層部の一人”博士”からの指示で”鳥”を研究所に拉致するよう指示を受けた。欺瞞装置で一緒についてきている艦娘の目を欺きながら誘拐するとなると一度騒ぎを起こす必要がある。タイミングは協力者に任せ、拉致の準備を進める。

 

 09:37 ”鳥”を見舞いに来ていた駆逐艦の犬が病室で大暴れしたため警備の目が厚くなった。本日中の任務の遂行は厳しい可能性が高い。

 

 10:30 例の犬が今度は足の甲の骨を折るほどの大騒ぎを起こした。そのタイミングで一度全員が病室から出たため拉致することに成功。監視カメラの映像はひたすら同じ映像を流すように仕込んでいるため問題はなく。仕切りの扉を開けるコードを提供してくれた協力者には死と言う名の報酬を与えため仕切りの問題と情報漏れの心配はない。今頃誰も使わなくなった別棟の薬剤室で宙に浮いていることだろう。欺瞞装置自体はあと数時間の間は何も問題なく起動しているはずだ。ただ、拉致する際に電池(バッテリー)の残量を確認したところかなり少なくなっていた。正午まで保てばいい方だと考えられる。

 

 11:00 ”鳥”を”博士”直属の兵に引き渡し完了。これにて通常任務である暗殺業務へ戻る。

 

<表> 夕張の日誌

 

 1月4日

 佑太さんがいなくなってから妖精さんの協力を借りてあの部屋を調査した結果空間に立体映像を投視する機械が見つかったわ。となると、私たちが知らない間に佑太さんは攫われていた可能性が高いわけで……あぁ、もうわかんない!!

 犯人として考えられるのは前の提督が所属していたか言う一派だけどそれが佑太さんに何かしようとしている?としても何を?

 そのことが気になって作業に身が入らなかったからか主砲の改修私のせいで失敗しちゃった。ごめんね明石さん、大和さん。

 

 1月5日

 三が日を過ぎたあたりから妙に調子がおかしかった指揮システムがどうも完全に落ちたらしい。

 夕食の時に食堂でラーメンを食べていたら指令室に行っていた明石さんがそう言って愚痴ってきた。

 回線がショートしたわけでもないからハードの問題ではなさそうなのにシステムが起動しないそうね。

 だから私が半分冗談で「本部のサーバーが落ちたのかもね」と言ったら急に何かを悟ったかのように立ち上がって指令室の方へ走って行ったわ。それからちょっと経ってから指令室の方に行ってみたらパソコンを指揮用の機材に接続してすさまじい勢いで画面の文字列を精査していたわ。

 何をしているのかは私にはわからなかったけれど明石さんには何かがわかったみたいで満面の笑みで振り返って感謝されたわ。いまいちよくわからなかったから理由を聞いてみたらどうも、大本営の方にある指揮システムの本部に何かあったみたい。そのせいでその下部端末であるうちの鎮守府の機材が落ちたみたいね。

 この話は大本営のプライドがどうこうって問題になるだろうから誰にもしないということで二人でまとまったわ。

 

 1月10日

 佑太さんが今どこにいるのかわかった。その情報を提供してくれたのはなぜかやけに発育がよくなっている自称叢雲さん。今朝がた鎮守府の門の前になぜか制服でもないボロ布一枚を身に纏って倒れているところを佑太さんを心配して探しに行こうとしていた龍田さんが見つけたの。

 見つけた時点でかなり衰弱していたから今は医務室で安静に無理やりさせているけれど少しだけ話を聞くことができた。

 自称叢雲さんは大本営の地下に作られた秘密の研究所で他の4人と一緒に監禁されて生体サーバーの部品にされていたそう。正直そこまではよくできた作り話だなって思えたんだけどそこからの話でそう思えなくなった。

 1月の4日。最初に指揮システムの調子がおかしくなったあの日にこの自称叢雲さんはその施設から逃げ出したそうなのよ。

 そして本人曰く「同時に5人全員が逃げ出したからサーバーを保てなくなってるはずだけどどう?」とどや顔で言ってきましたが、確かにその通り。

 まぁ仮に彼女が言うことを信頼するとして、佑太さんがいるという場所は大本営の地下にある秘密の研究所。

 元々佑太さんをそこに拉致監禁して実験体のサンプルにする計画があったらしくてそれを実行に移した可能性が高いって。

 聞いた時点でもう日が変わっていたから明日起きてすぐに全員に相談しなきゃ。

 

 1月12日

 

 研究所に奇襲をかける計画を立てて実行に移した。

 参加者はこの間来た子たちを除いた駆逐艦の子たちほぼ全員と、古参とも呼ばれている霧島さんたち。

 この作戦は提督に話を通していない非公式の作戦だから軽々と実行に移せないと思っていた。だけど、提督が昨日急にタウイタウイの方に出張になったから実行に移せたのよ。

 研究所に侵入して白衣を着た男たちを無力化していく。

 龍田さんはその持っているなぎなたの柄で下腹部の少し下あたりを重点的に狙っていたけどそこはちょっと狙っちゃダメな場所じゃない?

 最終的に研究所の奥深いセクションで緑色の液体が詰まったメスシリンダーみたいな筒の中で酸素マスクを口につけられ、大量のコードとパイプを体中にハリネズミのように突き刺されている佑太さんを見つけた。

 隣にある端末からその筒を制御できるようだったから部屋に入って真っ先に排水、排水後すぐに筒のふたを開けた。

 そしてそれが起きた。

 そのときのことを私は忘れてはいけないと思う。

 私の呼びかけに対して佑太さんは目を少し開けて反応した。だけど、すぐに目を閉じてしまった。

 するとその直後、一瞬佑太さんの体が冷たくなったかと思うと現在大本営で確認されているありとあらゆる種類の深海棲艦を無理やり一つの艦にまとめたかのような姿になって暴れ始めた。

 

 まず最初にすぐそばにいた私がドアの方に吹き飛ばされる。そのまま私は壁に背中を打ち付けられた衝撃で意識を失ってしまったからどういった経緯があったのかはわからないけれども最終的にあの叢雲さん?が駆けつけて佑太さんを鎮めたらしい。

 意識を取り戻した時に私が見たのは叢雲さん?の胸の中で眠る体中からぽろぽろと鉄片を落としながら脱力している佑太さんの姿だった。

 

 明石さんと一緒に佑太さんの体を調べる。

 すると恐ろしいことが分かった。彼の体はその7割が深海棲艦のものと置き換えられていた。

 残りの2割が艦娘と同じものになっていて、脳だけが人間のDNAのままだった。

 このままだと深海棲艦となって暴れ出すかもしれないし、かといって他の深海棲艦のように倒したら艦娘となって現れることは佑太さんは人間だから絶対ない。

 となると、私たちにできることは佑太さんの体の深海棲艦のものと置き換えられた部分をクローン技術か何かを用いて人間のものと置き換えることしかないだろう。

 

 1月13日

 叢雲さん?の助言を受けて佑太さんの身体から彼の魂?を一度サルベージすることになった。

 叢雲さん?曰く、このままだと意識を取り戻すことはおろか死ぬ可能性が高いだろうとのこと。

 佑太さんが死ぬのは嫌なので彼女の言うことに従い、いまだに眠りながら鉄片を体から生み出し落とし続けている佑太さんを連れて研究所にあったとある装置と佑太さんをつなぐ。

 生命維持装置をその装置を起動させる前に必ずつけることと叢雲さん?から厳重にくぎを刺されたので先に生命維持装置を佑太さんにつけたのを確認してから叢雲さん?がその装置を起動した。

 その瞬間、佑太さんの鼓動と、脳波が止まった。

 人工心肺が動き出し、目の前の装置のモニターに虹色のパターンが走り出す。

 装置の画面を見て一息ついている叢雲?さんに一体何が起きたのかと問い詰めると今目の前にある佑太さんの体に佑太さんの魂が入っていないから脳波が止まって、目の前の装置の方にその肝心な魂そのものは移されているそうだ。

 

 ただ、その話を聞いてそれだと佑太さんが救われないなって思った。

 

 1月14日

 明石さんに起こされて件の装置の前に連れていかれる。

 明石さんは何故か自信満々にこういった。「佑太さんに体を与えることができそうなんだけど。どう、やる?」と。

 それに乗らないなんて彼に対して失礼だと思う。

 そういうと明石さんはにっこりと笑って「じゃあここで待ってて」と言い残してその場を離れ、それから5分ぐらいした後に佑太さんが入れられているのと同じような筒をベッドに載せて帰ってきた。その中身を見て私が受けた衝撃は言い表せないかもしれない。

 なぜならその筒の中に入っていたのは深海棲艦である戦艦レ級だったのだから。

 

「まさか体ってこれの事ですか?」

 

 私が驚きながら明石さんに尋ねると明石さんはまじめな顔で

 

「そうよ。これなら佑太さんも自衛できるし一石二鳥でしょ?」

 

 と言っていたがそういう話じゃないと思う。そう思って明石さんを止めようとしたが、明石さんは私を放っておいて勝手に準備を進めていた。そしてスイッチを入れようとしているところでその手を掴んだんだけど、結局明石さんは普段全く見せない力強さで私の制止を振り切ってスイッチを入れる。

 

 装置の画面に映っていた虹色のパターンが消える。

 そしてその代わりに灰色のパターンが画面に走っていた。

 

「ふぅ。」

 

 とやりきった感を出す明石さんの背中は何故か逆光関係なく闇に染まって見えた。

 

 




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