お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
色々と忙しくて遅くなりました。すみません。
今回は某少女目線でひたすら綴られています。
なんであの子がああなったのか自分なりに考えたり……
あ、それとE2しか回ってないのであんな感じになっちゃってます……。先に謝っておきます。彼女が好きな方々。ごめんなさい。
船だった時に
真っ暗な闇の中、
どうにかして浮き上がりたかったけど、体はその意思に反して沈んでいく……。
(もう嫌だ!嫌だ!!嫌だ!!!)
そう思いながら耳をふさいで心を閉ざしていると怒号も何も聞こえなくなった。
………しばらく経ったような気がしてふと、目を開ける。
するとそこには真っ赤な海と、黒く染まった空を背景に真っ赤な目が目の前にあった。
「ヒッ!!」
無意識に悲鳴を上げて逃げ出そうと考えて、後ろへと走り出したところでふと目の前で素早く上下に動くものに気がづいた。
(……あれ?これ……手?)
私はその時初めて、この世界に船ではない存在としての再びの生を受けたことに気が付いた。だけどそんな考えはすぐに終わらされた。
「ヲ!」
そんな気の抜けたような声とともに後ろから迫ってきたぬるぬるとするタコの足みたいなのに両手と両足を縛られてそれ以上動けなくさせられる。
そのまま私は海上から持ち上げられ、一瞬だけ天地がさかさまになったかと思った次の瞬間
ゴクン!
そんな何かを食べるような音と一緒に私は大きく口を開けた何かに飲み込まれ、意識を失った。
ふと気づくと、また真っ暗な中だった。
「……痛い…。」
鈴のような声がそんな空間に響き、反響する。
「これが……私の声?」
そう呟くも、誰も答えてくれない。
だけど、その声に反応するものはあった。
ズリュっという粘質的な音を立てながら何かが私の体に巻き付いて登ってくる。
「え…?」
そんな唐突な展開についていかない私を放っておいてその巻き付いてきた何かは私を強く締め付け始めた。
「んッ……」
首を緩く絞められてそんなカエルのような声が出た瞬間
「ガバ!?」
必死に息を吸おうとするために無意識に開けた口の中に、さっきから体に巻き付いてきていた何かと同様にぬるぬるする何かが入ってきた。
「んーーー!!んーーー!!!」
必死にまともに動かない体を動かしてそれを引き抜こうとするけれども全く引き抜けなくて、
(嫌だ……助けて……海風!江風!!)
そう思いながら薄れゆく意識の中で脳裏に映ったのはなぜか柔らかい笑みを浮かべてこちらへ手を広げる少女の姿と、手を上に組んで笑っている赤い髪の少女の姿だった。
ここからは完全に私の意識がなかったから後で海風に聞いたことなんだけど、私は中規模作戦の作戦途中でヲ級と呼ばれる敵艦の空母の艤装の中で半裸に剥かれて大量の触手?を体中に突き刺された状態で見つかったらしい。
意識を取り戻してから大本営とか言う場所にいた医者?に聞いた話だと電池代わりにされていたのでは?とか。
ただ私と同じ山風の艦娘の中で私だけがそんな状態で見つかったらしい。ただ、ヲ級の艤装の電池代わりにされていたせいなのかはわからないけど、私には世界に色がついて見えなくなっていた。
おいしいごはんを見ても灰色。きれいな景色と人が言うところを見ても灰色。何を、誰を見ても、灰色。
私のいる世界には色彩なんてものはなかった。
………ただ、あやふやだけど色がついて見えたものはあった。それは
「山風?大丈夫?」
そう言いながら病室で寝ている私を心配してリンゴをウサギ型に切ってくれている海風と
「そんな心配しなくても起きれるぐらいなら大丈夫だろーよー」
と言いながら海風が剝いたリンゴを載せたお皿からぱくっと食べてしまう江風の2人だけだった。
「こら江風!!」
「ててっ!んなろー。いいじゃんかよー」
「これが山風の分なんだからダメでしょ!」
そうやって二人が話しているのを見ていると、心があったかくなってくる。だけど……
「………。」
私は二人の顔を直視できない。直視してもその顔をはっきりと認識できないから。
そのことを申し訳なく思いながらも海風が剥いてくれたリンゴを食べる。だけど、その時の私にはそのリンゴの味すらもわからなかった。
夜。大湊から柱島へと行こうとしたあの日と同じで静かな空間の中に一人。
ただ、あの日と違うのはここが陸の上であることと本当に誰もいないこと。
そんな中で何も考えずにぼーっとしているとふとしたタイミングで体が変にうずきだす。
よくよく考えたらその度に私の世界からは色が、臭いが、何もかもが消えて行っていたような気がするけれど、本当はどうなのかなんて私にはわからなかった。
昼には海風と江風が来ていろいろしてから面会時間ぎりぎりまでいてくれる。
夜には何も考えずにぼーっとしている間に体がうずいて私から何もかもが消えていく。
そんな風に病室で過ごした数日後、私は退院して海風たちと一緒に海風たちの提督について鎮守府に行くことになった。
海風たちと同じ改白露型のものと言って江風に渡された制服に身を包んで海風と江風と一緒に建物から外に出る。するとそこには海風たちが提督と呼ぶ男の人が沢山の子たちを連れて立っていた。
私が来たのを見てからその男の人を先頭に結構大きな車にみんな乗り込んでいく。
私は江風に背中を押されながら車に乗り込んだ。
鎮守府への移動中にふと、窓から外を見た。窓の外には灰色の海がどこまでも広がっていた。
そう認識した瞬間、一瞬だけ視界がぼやけ、窓に反射で写る私の目が赤く染まる。
その眼はあの日何かから逃げ出した時に見た目と全く一緒だった。
「!?」
慌てて窓から離れるかのように後ずさる。すると横に座っていた海風が
「?どうしたの?」
と言って私の頭を優しく抱きしめてそのままなでてくれた。
私はただ、そのやさしさに甘えるしかできなかった。
気づくと寝ていたみたい。相変わらず世界には色がついていないけれども、どうやら鎮守府についたようだった。
横で私を抱きしめるような形で寝ていた海風を起こし、二人一緒にバスを降りる。
そのまま絡んでくる江風をどうにか躱しているとふと鎮守府の入口の方に誰かが立っていることに気が付いた。
その人は横にだれか女の子を連れて立っていた。
その人は黒い髪をうるふかっと(後で聞いたら夕立がそう教えてくれた)にしていた。
その人は赤いチェック柄の服を黒いコートの中に着こんでいた。
その人は肌色のズボンをはいていた。
その人はきれいな黒い目と赤い目を持っていた。
その人は少し褐色じみた顔色をしていた。
そしてその人からは……どこか懐かしい感じがした。
……そして、その人は私にこの世界ではっきりとした色彩を初めてくれた。
そのあと、お父さんと呼んでいいと呼ばれたから呼んだら大騒動になったけど別に構わない。
そして、それが私に何かを起こしたのかわからないけれどもその日以降私の体が夜にうずくこともなくなったし私の世界に彩りがはっきりと与えられはじめた。
お正月の早朝にこっそりと侵入したお父さんの部屋の中でふとそれまでを振り返りながら私はこう思う。
(私が見ているのは
シュルリと海風がまいてくれた帯がほどけて床に落ちる。
それをまったく気にせずに私はお父さんが寝ているベッドの上に手をかけよじ登る。
「すぅ……」
「フフフ…」
無意識に笑みをこぼしながら私はお父さんの布団の中へもぐりこんだ。
そのまま布団の中で
「?」
ふと疑問に思って布団の中を持ってきていた小型の探照灯で照らす。すると中には
「くぅ……もぅ食べられないっぽい~。」
そんな寝言を言いながら夕立姉が
「……………」
そんな夕立姉の様子を見なかったことにして私は私の目的を果たそうと
「…………丈夫。」
そんな声が聞こえた。
声の聞こえた方を見ようと下に向けていた顔をあげようとしたところで私は
「大丈夫……だって俺はここに居るから……」
そう言いながら頭を撫でられた。
「………」
顔が熱くなるのを感じる。
目の前にあるのは未だに目を瞑ったままの
(…………もう我慢しなくても良いよね…)
誰に言い訳するわけでもないのに言い訳めいたことを考えながら私は
……その少し乾いているように見える唇まで後………
数センチ。
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