お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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新年あけましておめでとうございます。今年も今作品をよろしくお願いします。

(注)
色々と忙しすぎてパソコンを起動する暇すらなかったので2時間クオリティです。


今年もよろしくお願いします。

「お父さん起きないですね……」

 

 お父さんがあの決闘の後に倒れてから5日後。医務室で未だに眠っているお父さんを見ながら私はそう呟いた。

 

「おどうざん……」

 

 一緒に来たのはいいが隣で雪風が顔をくしゃくしゃにしながらえづいているためイラっとしたので

 

「雪風うるさいです。周りのみんなのことを見てから泣くなら泣いてください。」

 

 とついつっけんどんな態度をとってしまった。そんな態度をとったせいでさらに雪風は泣きそうになり、それを見た陽炎姉さんが

 

「不知火!!」

 

 と、私を怒鳴りつけたが私はそれに対して

 

「私だって泣きたいんです!!だけど、お父さんが目を覚ました時私たちが泣いていたらどう思うと考えているんですか!!」

 

 と正論を返すと

 

「うぐ……そうよね。そうだよね…。」

 

 そう言って黙りこくってしまいました。

 

「早く起きてくださいお父さん……不知火には話したいことが沢山あるんです。」

 

 そうお父さんの髪をなでながら呟くもその閉ざされた瞳は開かれることはないです。

 お父さんが倒れて目覚めない理由は未だにわかっていないけれど、お父さんが倒れてから一時間後、お父さんを心配して集まったみんなの前で明石さんはこう言っていました。

 

「恐らく佑太さんの体に何か異変が起こっているのだと思われます。」

 

 そう言って下を向く明石さんは唇をかみしめて手から色が抜けるほど強く握りしめていました。

 

「しかしその異変が何なのかがまったくわからない以上、私には打つ手がありません。」

 

 そう呟いてから明石さんはその場で私たちに向けて

 

「本当にごめんなさい。」

 

 頭を深く、とても深く下げて謝っていました。

 

 そうやってお父さんの髪を撫でるふりをしてそのままこっそりおでこにキスをするタイミングを狙っていると

 

「交代の時間っぽい!」

 

「お父さんのお世話を変わるわよ~。みんなは夕飯を食べてきたらどうかしら?」

 

 夕立さんと村雨さんがやってきました。………これはもうあきらめるしかないですね。仕方がありません。また今度にしましょう。

 

 私はそううまく納得できない自分を無理やり納得させていまだに眠っているお父さんのすぐ横に置いていた椅子から立ち上がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 結局、お父さんが目を覚ましたのは私たちが交代してから数時間後。日付が今年最後の日に変わったタイミングでした。

 

 

 

 

 

「…………体が重い…。」

 

 すごく空けるのが億劫な瞼を開くと同時に俺はそう漏らした。

 

 霞んだ視界の中、目線を動かすと俺のおなかの方に金色の犬耳を模した頭があった。

 

(そりゃ重たいわな…)

 

 そう内心思いながらおなかに乗っている頭に右手を載せ、撫でる。

 

「んん~……」

 

 俺が撫でると夕立ちゃんは一瞬だけたじろいだが、すぐにまた俺のみぞおちに頭をめり込ませるような感じで俺に顔をこすりつけた。

 

 それを俺は優しく見守りながら撫で続けているとガシャンと何か金属製のものが床に落ちるような音がした。

 

「ん?」

 

 そう言いながら音のした方を見るとそこには

 

「………」

 

 目を見開いて両手を口に当て、入口の方に立っている村雨ちゃんの姿があった。

 

「……おいで。」

 

 俺がそう言ってこちらに手招きすると村雨ちゃんは

 

「お父さん!!」

 

 と、感極まった様子で俺の方に飛び込んできた。

 

 そうして村雨ちゃんが飛び込んできたことで俺のおなかの上で眠っていた夕立ちゃんが目覚め、抱き着いていた村雨ちゃんに嫉妬して叫び、みんなが寝間着姿で急いで医務室に転がり込んできた。

 

「心配かけてごめんな~。」

 

 そう言いながら俺は「甘やかして~」と言わんばかりに俺に抱き着いてくるみんなの頭をなでていく。

 

 そんな中で何故かひしっとでも効果音をつけれそうな勢いで俺にしがみついて離れない子たちがいた。

 

「「………」」

 

「そんな捨てられた子犬のような目でこっちを見られてもなぁ……。」

 

「でもお父さんがこのまま離れて行ってしまいそうで嫌なので…」

 

「妾も同様の理由じゃ。父上がいなくなったら妾は悲しすぎて部屋に引きこもってしまうぞ?」

 

「初霜ちゃん俺はどこにも行かないよ。それで初春ちゃん、引きこもるのは誰の得にもならないから止めなさい。」

 

 同じ初春型の2人は俺がいくらそう言ってなだめても俺から離れようとしなかった。

 結局、俺はその日二人の頭をなでている途中で寝落ちしてしまった。まさかそれがただでさえ忙しい大晦日に面倒ごとを持ち込むことになるとは思ってもいなかった。

 

 

 

 

 朝医務室で目を覚ますと、俺のおなかの上が重かった。

 

(なんかデジャブ…)

 

 そう思いながら視線を重さの主たちのもとに向けるとそこには……

 

「………は?」

 

「ん……お父さんは私が、守ります……」

 

「ふむ。妾をそうして慕うがよいぞ…?」

 

 ほんの少し、大きくなったような感じがして、その上寝間着姿だったはずなのに見慣れぬ制服に身を包んだ初春ちゃんらしき少女と初霜ちゃんらしき少女が二人して俺にしがみついていた。

 

「え?」

 

 一体何が起きているのか、そんなことが一切わからずに混乱していると

 

「むにゅ……、あ。お父さんおはようございます。いい朝ですね。」

 

 と、初霜ちゃんがのそのそと動き出し

 

「うぅむ……朝はつらいのじゃ…。」

 

 そう言って初春ちゃんも目をこすりながら動き出した。そして二人は顔を見合わせて

 

「「……どなた(誰)ですか?」」

 

 と、声を合わせて言った。俺はそれを見て額に手を当ててから

 

「明石さーん!!」

 

 叫んだ。こういった事態で困ったときには明石さんを呼ぶに限る。ここ最近起きたことで俺が学んだことだった。

 

 

 

 

 

「………これは見たことないですね。」

 

 医務室に入ってきてそうそう明石さんが言った言葉がこれだ。

 

「これは武器を入れ替えるというよりは本質そのものを改装しているような感じがありますね。」

 

 そういうと明石さんはどこかに連絡を取り、

 

「初霜さんと初春さんは残念ですけど鎮守府で年を越せないかもしれないですね。」

 

「え?」

 

「さっき報告をしたら元帥直属の研究機関で調べるそうです。もしかしたら夕立さんみたいにこれまでとは比べ物にならない状態になっているのかもしれませんので。あ、それと皐月さんも一緒に行きますのでさみしくないですよ?」

 

 そう言って明石さんは小悪魔のような笑みを浮かべた。

 

 勿論二人が反対の意を述べ、少しだけ場が荒れたが最終的には研究機関に連れていかれることが決まったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 そうやって、数人が減った駆逐艦娘寮の台所に俺はあるものを持って立っていた。

 

「年越しそば作るぞ~~~!!!」

 

「「「「「おぉーーーーー!!!!」」」」」

 

 持っているあるもの、それはそば粉である。

 

「それじゃあ、始めるよ!」

 

 俺はそう言ってそば打ちの準備を始めた。

 

 

 

 

 ……青年少女そば打ち中……

 

 

 

 

「できたぁ!!」

 

「あ、そっちも!?こっちも負けてられないね!」

 

「陽炎姉さん落ち着いてください。そば粉が飛び散ってしまいます。」

 

「あ、ごめん」

 

 そんな風にみんなの楽しそうな声が台所中にあふれる。俺はそれを見ながらみんなが打ったそばを湯がいてきれいに並べていた。

 

 そうやって楽しみながら打ったそばをまとめていると

 

「お父さん赤白始まっちゃうよ?」

 

 と、文ちゃんが俺の裾をそう言いながら引っ張った。

 

「え?本当に?やばっ急がなきゃ。」

 

 俺は急いでみんなが作ったそばをまとめ、みんなが移動し始めた駆逐艦寮内で唯一テレビが置いてある娯楽室へ歩き始めた。

 

「あ、今年ラスボスでないんだ。」

 

 俺が今年の赤白のラインナップを見て思った感想がこれである。

 

 そうやってみんなで赤白を見ながら用意した大きな卓で先ほどみんなで打ったそばを湯がいて水で〆たざるそばを食べる。

 

 みんなはその美味しさで喜んでいた。

 

 そうして夜は更けていき、いつも10時には寝ている数人の子たちが脱落し始めた中で俺たちはその瞬間を迎えた。

 

「あ、そろそろだ。」

 

「そろそろっぽい?」

 

「そうだね。そろそろだ。」

 

「ふわぁ……お父さん今何時…ってそろそろだねぇ~。ほら弥生ちゃんもみんな起きてぇ~。」

 

「ん…?あ、58分じゃん。お父さん起こしてくれてありがとうな~。」

 

「お父さん……」ヒシッ

 

「あ、山風!もぅ…」

 

「お父さんそこ見ないで…恥ずかしいよ…」

 

「……ぼのたんやっぱりツンデレじゃん。」

 

 そうやって眠っているものを起こそうとするもの、あまり関係ないが俺にしがみついて離れないようにするもの、ずっと起きていたもの。

 

 各々様々な状態から起きたりそのまま眠っていたり、夢の中で俺と何かをしていたりしているときにそれは流れた。

 

 ポッポッポッピー!!

 

「あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします。」

 

「「「「「「「「「「「「「あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします。」」」」」」」」」」」」」

 

 俺が最初にやった挨拶に合わせてみんなが挨拶する。

 

 それからみんな娯楽室から解散して俺はその場の後片付けをしてから自室で眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間後…

 

「お父さん……もう起きてる?」

 

 世話焼きな姉に着付けられた緑色の髪の少女が部屋に入ってきて

 

「……起きてないみたい。そっか…」

 

 と、そのまま俺のベッドの方に迫り、

 

「フフフ…」

 

 と言いながらほほを上気させ、服をはだけさせながら俺のベッドにもぐりこんだことに完全に熟睡していた俺が気付くわけがなかった。




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