お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
とはいってもこれからしばらくの間少し投稿ペースが乱れると思います。
その理由は活動報告に書いていますのでそちらを見ていただき、そのついでに感想報告にて行っているアンケートに答えていただけたらと思います。
それでは本編をどうぞ…………急いでゼミのレポート書かなきゃ……
「おい佑太!!」
不意に名前を呼ばれながら肩を揺すられて意識がはっきりした。
「んぁ…?」
組んだ腕にうずめていた顔を上げる。上へと上げた視線の先には大学に入ってからできた悪友である博宣の顔。その顔はにやけきっていた。
「あの子が飯持ってきてくれてんぞ。」
博宣はそう言いながら教室の入口の方を指さす。そこに視線を向けてみれば
「あ、お父さーん!!」
「父上ぇぇ!!」
「……」
楽しそうにこちらへ手を振る文月ちゃんと、俺の姿を見るなり駆け出す菊月ちゃんと、その場でお鍋でほかの人と目を合わせないようにしながら無言でこちらへ手を振る響ちゃんの姿があった。
「いっぱい娘がいるとかその年で大したもんだなオイ!」
そう言いながらチョークスリーパーでもするかのように俺の首の方に手を回してくる博宣へ俺は
「おいおい。首しまってるって!」
大体いつも御遊びでやったりやり返したりしていることなので軽くタップしながら抗議した。
「それにしても佑太何か変わった?」
「そうか?」
軽くタップしながら抗議していると、博宣が入れていた力を抜いてそう聞いてきた。
「あぁ、なんかオッドアイになってから雰囲気が妙に大人びたっていうか…………たまに前には見せなかったそぶりを見せるって感じか?」
「そんなに変わった自覚はないんだけどなぁ…。」
そう言いながら俺は目を瞑る。
すると、視界は多数の文字列で一回完全に埋まってから5つのアイコンに吸い込まれてすっきりした。
今俺の視界に表示されているアイコンの内訳は
・出撃
・改装
・入渠
・建造
・編成
の5つ。
これは本来俺が使えなかった指揮をするための機械を使用した際に表示されるアイコンらしい。
要は、俺は機械を使えないがために指揮をとれない人間として扱われていたが、実際は機械を使わずに指揮を執ることが可能な人間だったらしい。
俺がその事実を知ることができたのは数日前の病室である人物から全て教えてもらったからだった。
また、真実をすべて教えてもらったのと同時に俺は自分の意思で俺のアカウントにかけられていたロックを解除してもらった。
その人物とは……………
叢雲ちゃんだった。
頭を縫ったことでしばらくの間俺は入院することなり、病室のベッドの上で今日の夕方に病室に乱入してきた那珂さんから渡されたCDの内容をイヤホンで聞いていた。
CDの内容は最初のトラックは那珂さんの歌っている曲だったが、その次のトラックからは、俺のことを心配する夕立ちゃんを筆頭にしたみんなのメッセージが入っていた。
「……早く退院したいけど、この目じゃあなぁ………」
両耳にイヤホンを突っ込み、左目を抑えるかのように巻かれた包帯に手を当て、ガラス越しに外を見ながらそう呟く。
みんなからのメッセージを聞いて早く退院したいという思いに駆られるが、あの時明石さんに教えてもらった俺の体の変化のせいで踏ん切りがつかずにいた。
『佑太さん……実は深海棲艦だったりしませんよね……?』
左目がおかしなことになっているせいで混乱していた俺に向けて明石さんが言った言葉だ。当然俺は
『俺は………深海棲艦じゃ………ない………!!!』
と、明石さんの言葉を否定しつつ、
(なんなんだよこれ!?)
手を振り回しても消えることなく左目の視界一杯に表示されるユーザー登録欄と書かれたボードを必死になって消そうとしていた。
『でも佑太さんの目が…』
そう言いながら寝転んだまま動けない俺の顔の前に明石さんは鏡をかざす。それに映っていた俺の左目は
『な………』
本来鳶茶色であるはずなのに、その色を
そこまで思い返した時にいきなり窓を反射して廊下の光が部屋へと入ってきた。
「!?」
今の時刻は夜の10時。看護師の巡回は12時のため、部屋に入ってくる看護師は本来いない。そのため、本来面会謝絶のはずな時間帯の訪問者に警戒して俺はイヤホンを外して扉の方を向いた。
「佑太。」
部屋に入ってきたその人物の服装は闇の中に紛れるかのように真っ黒なコートを着ていた。
「……親父?なんでこんな時間に。」
親父だった。
「少しこの子に頼まれてね。」
そう言いながら体の位置をずらした親父の後ろにいたのは
「叢雲ちゃん?」
普段は橙色の目をしているのに、その色を真っ赤に染めた叢雲ちゃんだった。
「真実を話しに来たわ。本当はほかの子たちもつれてきたかったけどそういうわけにはいかなかったから私一人よ。」
「真実?どういうこと?」
俺がその言葉の意味がよくわからずに尋ねると
「佑太。お前は5歳の時に何か事件に巻き込まれた覚えはあるかい?」
親父が俺にそう問いかけてきた。それに対し
「ある。………とはいっても断片的にだけど。」
俺は記憶の中でうっすらと残っている様々な場面がつながった地獄絵図とその中で見た少女の姿を脳裏に浮かべながら答えた。
「そう……ならこの姿に覚えはある?」
そう言っていつの間にか俺のすぐそばまで近づいていた叢雲ちゃんの姿は、普段は結っているその髪をまっすぐにおろし、どこからか持ってきたバイザーを被り、上半身裸になっていた。
「ちょっ!?と……兎に角叢雲ちゃん服着「……やっぱり覚えてないのね…。」……………いや。違うよ。」
俺が服を脱いでいる叢雲ちゃんの姿を見て反射的に目を手で隠しながら服を着るように言うと、それに対して叢雲ちゃんは悲しそうに言葉を被せてきた。
だけど、あんな反応をしてはいたけれども、俺の記憶の中にはその姿の少女についての記憶があった。
「俺は其の姿の少女を血まみれの地獄の中で見た。」
目を覆いながらもそう答えた途端叢雲ちゃんがいた方から息をのむような気配を感じた。
「……よかった…。」
そして若干嬉しそうに叢雲ちゃんはそう呟いていた。
「……僕もその姿を見たことがある。まぁ、後ろ姿だけどね。」
手で覆っているから真っ暗な視界の中で、親父がそういう声が聞こえた。
「……親父も見たことが?」
俺が声の聞こえた方に顔を向けて聞いてみると
「そうだね。佑太を助けに行ったときにね。」
親父はそう答えた。そしてそのタイミングで
「もう目を開けてもいいわよ。服は着てるから。」
叢雲ちゃんがそう言って俺は覆っていた手を外した。
必死に抑えていたせいか、焦点がなかなか合わなかったがそれでも叢雲ちゃんが服を着ていることだけはわかった。
「…それで一体あの姿と叢雲ちゃんに何の関係が……?」
俺が叢雲ちゃんの方を見てそう尋ねると
「あれが私や、電たちの本来の姿。…と言ったら納得する?」
叢雲ちゃんはそう答え、俺と親父は
「え?」
「どういうことだい?」
即座に聞き返した。
「今、私が使っているこの体を含めた第3世代の艦娘はとある深海棲艦から始まった……とでもいえば納得できる?」
「そんなことあるわけが………!?」
「?」
俺たちがした質問に対しての叢雲ちゃんの答えは俺にはいまいちわからなかったけれども、親父には何かピンとくるものがあったらしい。
「まさか……いや、だからこそか?君たち初期艦と呼ばれる5人の姿はあの船に乗っていた犠牲者の少女たちに酷似しているのか?」
「そうね。その通りよ。初期艦として扱われている5人の駆逐艦娘は《始まりの5人》と同型の艦娘で構成されているわ。そしてその《始まりの5人》が人としての姿を取る際にモデルにしたのはあの時
「ちょっと待ってくれ。親父も叢雲ちゃんも一体何の話をしているのか全く分からない。順に説明してくれよ。」
俺はそこで話に割り込んだ。さっきから何の話なのか全く分からなかったからだ。
「そうね。ほとんどあの時のせいであなたも忘れているみたいだから簡単に説明しましょうか。」
そういうと、叢雲ちゃんはおもむろに何かを取り出し、そして展開させた。
「これを見て。」
そう言って叢雲ちゃんが見せてくれたものに映し出されていたのは誰か視点の
その映像は水底から始まっていた。
急速に視点が水底から水面へと上がっていく。
そして水面に上がった誰かの視線の先には大きな船が映っていた。
視線の主はその船へと突貫していく。途中銃か何かで撃たれているかのような音がしているものの、視線の主はそれをまったく気にせずに進んでいた。
そして船へと取り付いてその外壁を破壊、そこから船の中へと入っていく。
船の中に入り、その通路を突き進んでいく。その通路の両側には檻のような何かが見えるが主の速さが早すぎてそれを映像越しでもしっかりと見ることはできなかった。
道中何人もの外国人が何かを叫びながら銃を乱射しているが、視線の主は突き進む。そして階段をすさまじい音を立てながら昇って行った。
最終的にその勢いのまま止まれずに天井を突き破り、どこかの部屋の中で止まったが。
その部屋はまったく光源がなかった。唯一光源と言えるのは先ほど視線の主がぶち破った穴だけ。
『う……』
その部屋の奥の方からそんな声がした。
その声が聞こえた途端親父の雰囲気がこわばったのだが、映像を集中して見ていた俺はそれに気づかなかった。
『だれか……いるの?』
その映像に映ったのはボロ布をまとい、左目の周辺を血まみれにしながら瞑っている今にも死にそうな少年の姿だった。
「佑太……」
親父が小さい声でそう言いながら俺の方を見、視線が合ったことで俺は其の少年が俺自身の幼い姿だということを確信した。
その少年の姿は死にかけているということと左目を瞑っていることを除けば、俺が5歳のころに撮られた写真に写っている姿と全くそっくりだったからだ。
『たす………けて』
映像の中で幼い俺はそう言いながら倒れこんだ。
それに対して視線の主は最初は俺を喰らうかのように近寄って行ったが、何か行動した後いきなり先ほどあけた穴から下へと飛び降りた。
下に飛び降りた後、数回バウンドしたのちに動きが止まる。
それから今度は先ほどは完全にスルーしていた通路の両側の檻の中へと入っていく。
それからしばらくの間は首輪などで拘束されている少女たちをレーザーみたいな何かでスキャンするみたいな行動が映し出されていた。
そんな行動を数十人ほど済ませたのち、主は再び階段を先ほどのようにすさまじい音を立てながら登り、穴から幼い俺が倒れている部屋へと入った。
『………』
映像に映る俺の姿はまるで死体のように真っ白でピクリとも動かない。
それをただ見ていると、いきなり視点が高くなった。そして両手が映し出され、感覚を確かめるかのように開いたり閉じたりしている。
「……なにこれ?」
俺がその様子を見て呟くと叢雲ちゃんが
「仕方ないでしょ!!!に…人間の体なんて初めてだったんだから………」
「?」
一旦声を荒げて抗議してきたかと思うと、すぐに顔を真っ赤にして尻すぼみになった。
映像は俺がそんな叢雲ちゃんの様子を見て首をかしげている間も進んでいる。
その手をしばらくグーパーグーパーと開いたり閉じたりを繰り返していた視線の主だったが、その後幼い俺を抱えてまず最初に部屋を出た。
そして月明かりの下で俺の閉ざされている瞼をその手で開くと、その下は伽藍洞ではなかったとはいえ大きな切り傷が眼球に走り、そこから腐りかけていた。
すると今度はいったん右手を視線の主自身の顔に近づけたかと思うと次に映し出されたのはそのきれいな指から血が流れ出る様子だった。
そして視線の主はその流れ出る血を俺の左目に流し込んだ。
すると、血が触れた個所から緑の光が走り、その光が消えた後俺の目は傷も腐りかけていた箇所もどちらもなくなっていた。
それを確認して安堵したのか一瞬視界が下に揺れ、その後幼い俺の体はひっくり返されて今もなお、跡が残っている背中の傷跡が映し出された。
先ほどと同様に背中に空いた穴の中へ血が流し込まれる。すると、細胞がそこのあたりだけ別のものを埋め込んでいるかのように傷跡が表層側から再生していった。
「な………」
その様子を見て絶句する俺を、叢雲ちゃんは優しく包み込むかのように抱きしめた。
そしてそのあとは映像が終わるまでずっと俺は視界の主の手によって赤子のように抱かれていた。
「………これがあの日の真実なのかい?」
映像が終わり、さっきからずっと口を閉ざしていた親父が口を開いた。
「ええ。そして、そのあとに一人だけ異質の進化を果たした深海棲艦が一人だと確実に守れないからと弱体化するのを覚悟で5つに分かれたのが《始まりの5人》の原型よ。」
「………そうか。それでなんで君はそのことを詳しく知ってるのかい?」
「っ………それは…」
親父のその問いに一瞬言い澱んでから
「それは私がその
叢雲ちゃんははっきりと俺たちの顔の方を見ながらそう告げた。
感想、評価を楽しみにしています。
活動報告
アンケート
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投稿が遅れそうな理由
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