お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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はい、遅くなってごめんなさい!!〈土下座〉
前回の投稿以降に後期日程が始まったりいろいろと忙しくて執筆する暇がなかったので投稿が遅れました。ごめんなさい。

今回は明石さんが救済されてます。
でも、あとで読み直して何かしっくりこなかったら後々直そうと思います。

それと、執筆作業ができずにいた間にお気に入り登録及び、評価をしてくださって方々ありがとうございます!!

それでは読んで行ってください。


……

 明石さんが急いで運び込まれた部屋から少し離れた廊下の壁に背中を預けて俺はしゃがみこんだ。

 

「………出て行ってください…か。」

 

 頭を抱えて目をつむれば鬼の形相で俺を追い出した夕張さんの顔が浮かんでくる。

 

 どうやら明石さんが俺の言葉で何かを思い出し、そのせいで発狂?してしまったそうだ。そのことを受けて俺はやってきた夕張さんに明石さんがいる部屋から追い出されてしまった。

 

 理由としては、元々危ないバランス状態だった精神を追い込んでしまったからこれ以上の事態の悪化を避けるためだそうだ。

 

「はぁ……明石さんにどう謝ろう…」

 

 頭を抱えてただ動かずにいた俺だったが、

 

「……?」

 

 ふいに声が聞こえた気がして顔を上げた。

 

「誰かを呼んでる?」

 

 俺はその声が聞こえる方に立ち上がって歩き出した。

 

 丁度その時俺の後ろ姿を偶然見かけた霧島ネキはその様子を「一瞬幽霊でも見たのかと思った」と言うほど俺の動きはおかしな様子だったらしい。

 

 そんな後ろの様子を気にすることなく、俺は何かに導かれるように階段を上がり、2階へとたどり着いた。

 

「………こっちか…。」

 

 俺はふらふらと歩を進め、手前から4番目の部屋の中へと入る。

 

 こちらを呼ぶような声に導かれるままに本棚の方へと体を向ける。

 

 気づくと俺の右手には本が握られ左手は本棚の中にある持ち手に手をかけていた。

 

「…?」

 

 自分の意思を無視して勝手に動いていた両手におかしいと思ったが、次の瞬間左手が持ち手を下に下げたことで目の前の本棚が扉のように開いたために思考を中断せざるを得なくなった。

 

「……この奥から?」

 

 声は目の前に広がった漆黒の闇の中から今度ははっきりと聞こえてきた。

 

 とりあえず近くにあったランタンに火を灯し、闇を照らすと映し出されるのは下へと続く石製のように見える階段だった。

 

「……ゴクリ」

 

 とりあえず口の中のつばを飲み込み、俺は声がする方へ、すなわち闇の奥へと進み始めた。

 

 階段を下りていくにつれて声ははっきりと、大きくなっていく。

 

「………でも一体なんで?」

 

 正直俺の中を占める感情はなぜ、こんな隠し部屋にだれかが閉じ込められているのか?という疑問だった。

 

「ううぅぅぅぅうぅうううぅぅううぅうううううぅううう」

 

 一番下の段、と言うか床が見えたのとほぼ同時に風に乗って下からそんな声が聞こえてきた。

 

「………ゴクリ」

 

 俺は再びつばを飲み込んでから

 

「誰かいるのか?」

 

 そう言いながら床へと足をつけた。もともとあまり明るい光を放たないタイプだったらしいランタンの光は思ったよりも広い範囲には届かず、せいぜい1メートル先しか照らさなかった。

 

 しかしこの部屋の奥行き?はそれほど狭くなかったらしく、明かりは目の前の壁を照らしていた。

 

「…………こっちか?」

 

 俺はそう呟きながら風が流れてきた右側の方を向いたその瞬間。

 

 白い影が一瞬で俺の前まで迫り、俺の首を絞めるような形で掴んで左側にあった壁へと俺を押し付けた。

 

「ガッ…!!?」

 

 頭を強く壁にたたきつけられ、目から火花が飛び出る。

 俺は首を強く絞めようとするその白い手を必死につかみながらその手の持ち主を見た。

 

 まず最初に感じたのは秋雨ちゃんのような普通じゃありえない病的なまでの白さ。

 そしてその次に感じたのはその額から鬼のように生えた角の内の長い方が地味に腹にこすれる程度に刺さってくすぐったいという場違いな感想だった。

 

「くすぐったい……」

 

 俺が息ができない中、辛うじてそう呟くと目の前でその白い何かは顔をこちらへと急に向け

 

「ニンゲン……ニクラシヤァァァァァ!!!!!」

 

 確かにそう絶叫した。

 

「憎……い?」

 

 呼吸ができないせいで視界がチカチカする。

 その上叩き付けられた際に割れでもしたのか後頭部が異様に熱い。

 

「シネ。ニンゲンんんんん?」

 

 そして目の前の人間を憎んでいる何かは、俺を絞め殺そうとその手に力を籠めた。………否、しようとしていたが何故かできずにいた。

 

「ケホッ!!………?」

 

 そしてその手が緩められ、俺の首から完全に離れ、俺は床にしりもちをついた。

 さっきまでの呼吸困難のせいでまともに動けずにいる俺の目の前で、落下したにもかかわらず壊れていないランタンに照らされて白い何かが頭を抱えて悶えていた。

 

()は、いや()は誰?一体何が起きてんだ!?」

 

 目の前で困惑したかのように急に普通に聞き取れる言葉で叫び悶えるその姿は、なぜか以前龍田さんに教えてもらったこの鎮守府でくそに殺されたらしい艦娘たちの後々着任した全く同じ名前の人たちの様子を思い起こさせた。

 

「……天龍、高尾、曙、霞、扶桑、山城」

 

 俺が無意識にその教えてもらった人たちの名前を呟いていると目の前の何かは動きを止め、こちらを凝視した。そして

 

「!?なぜ!!なぜその名前をお前が知っている!?グゥァァァァァァァァァァァ!!」

 

 困惑した様子を見せた後、いきなりその瞳の色を赤から紫、紫から翡翠、翡翠から琥珀、琥珀から赤へとめぐるましく変えながら叫びだした。

 

「?………いったい何が……」

 

 その唐突な変化に俺が頭中に走る痛みすら感じずに唖然としていると

 

「ヴェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 その叫びと共に一瞬だけ沢山の艦娘の影が見えた気がした。

 

「え………?」

 

 その様子を見て、俺は前に夕張さんの手伝いをしているときに見つけたとある資料を思い出した。

 

 ~数週間前~

 

『ごめんねぇ、佑太さん。ちょっと明石さんが体調崩しちゃってヘルプお願いしてもいいかしら?』

 

『ほぇ?まぁ、大丈夫ですけど、俺技術畑の人じゃないんで明石さん程役に立たないと思いますよ?』

 

『所がそうじゃないのよね~。』

 

 そうしたり顔で言う夕張さんについていった俺の目の前におかれたのは大量の書類だった。

 

『これって…?』

 

 嫌な予感がした俺が夕張さんに頬をひきつらせながら尋ねると

 

『これの処理手伝って。』

 

 腰に手を当て、右手の人差し指を俺の目の前で振り、ウインクしながら夕張さんはそう言った。

 

『えぇーーー。』

 

 俺はげんなりしながらも、捨てられた子犬のような目をした夕張産の頼みを断れず、結局目の前の書類の束をさばき始めた。

 

『あっと……。』

 

 しばらく書類をさばいていると、ある資料の束がテーブルの大きな音を立てて落下した。

 

『っくぁー!!』

 

 俺がそう言いながらその束に手を伸ばすと、書いてある内容が目に入った。

 

『深海棲艦のルーツは艦娘の可能性が高い?』

 

 俺はそう呟きながらその資料を手に取り、夕張さんに

 

『夕張さんこの資料についてなんか知ってますか?』

 

 とたずねてみたら

 

『え?……うーん、ごめんわからないわ。』

 

 との返事が返ってきた。

 

『…………』

 

『佑太さん?』

 

『あ、すみません。ちょっと内容が変に気になったのでぱらぱらっと流し読みしてました。』

 

『もぅ。急に黙り込んで鬼気迫った表情で残像が見えるスピードで資料をめくり出したからどうしたのかと思ったじゃない。』

 

『いやはや、ほんとにすみません。』

 

 その時俺はうそをついた。

 

 その資料の内容が気になったどころじゃない。俺はあの時、その資料に何が書かれていたのかを()()()()()()()()()()()

 

 見たこともないはずの資料を、だ。

 

 俺の中にいつの間にか入れられていたその知識は、艦娘と深海棲艦は同じルーツをたどっているがためにその装備の一部は互換性があるというところまででそこから先はわからなかった。

 

 そして俺が見つけた資料も同様だった。

 

 その資料はこんな風に締められていた。

 

 ”深海棲艦がよく確認される地域は第二次世界大戦時に激戦区となった海であることが多い。

 そのため、艦娘=深海棲艦というこんな仮説が立てることが可能である。”

 

 実際、人型の深海棲艦の中には艦娘と鏡写しのような存在もいると前に誰かに教えてもらった覚えがある。

 

 しかし、《《本当にそうなのだろうか?》》人類は、いや、俺は何か大事なことを()()()()()気がする。

 

 と、そこまで考えたところで俺は夕張さんに肩を無理やり揺すられて、やむなく資料を再び捌かざるを得なくなった。

 結局、そのまま忙しさで寝落ちしてしまい、ついさっきまでそのことをすっかり忘れていた。

 

 そして今

 

「明石の居場所を教えろ!!!」

 

 目の前の何かは俺の頭をわしづかみにして、はっきりと俺に目を合わせてそう言ってきていた。

 

「もし教えたらあんたは明石に何をするつもりだよ。」

 

 わしづかみにされたせいで動かせない自分の首を情けなく思いながら俺はそう言ったが、

 

「お前には関係ない。……そうだ。これでお前の記憶を読み取ればいいんだ。」

 

 目の前の何かは俺に言葉につっけんどんに返すのと同時に俺の頭を掴む手に力を籠めた。

 

「痛ぇ!!!!」

 

 その強さに耐え切れず俺が叫ぶと

 

「なーに、痛みは一瞬だ。」

 

 目の前の何かはにやりと笑いながらそう言った。

 その瞬間、俺の脳は急速に流し込まれた大量の何かに耐え切れずに俺の自意識を落とすことで脳そのものが破壊されるのを防ごうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん!!!!お父さん!!!夕張さん、お父さんが!!お父さんが!!!」

 

「父上!!父上ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 体を揺すられて意識が戻った。

 だが、先ほどまでのダメージのせいか目の焦点が合わない。しかもなんかよくわからないものが視界にかぶさるかのように見えてるし。

 

 目の焦点が合わない中、それでも認識できたのは夕立ちゃんのほんのり桜色に染まった金髪と、菊月ちゃんの流れるような銀髪だった。

 

「あ……ぁ……え……」

 

 ろれつが回らない。声がまともに出ない。

 

「夕立ちゃんのいて!!……やだ!!こんなの家の設備じゃ対応できないじゃない!!」

 

 俺を心配そうに見つめる二人をとりあえず下がらせて、見慣れた緑のポニーテールが揺れているのを見たところで俺の意識は再び暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うぇ」

 

「あ、佑太さん。意識が戻りましたか!?」

 

 目を開き、声が聞こえた方を向く。

 

 今度はあの時と違って焦点が時間がかかったもののきちんと合った。

 

「本当によかった……」

 

 声が聞こえた方を向くとそこにいたのは桃色の髪の一部を隠すかのように鉢巻を巻いている明石さん……てあれ?

 

「あ…か……し………さん?」

 

「はい。私はここにいますよ?私はもう大丈夫ですから、安心してくださいね。」

 

 そこにいたのはやけに凛々しい顔をした明石さんだった。

 

「私がおかしくなってしまった理由でもあるあの部屋は、佑太さんが眠っている間に妖精さんの手を借りて完全に閉鎖しました。」

 

「それと、あの部屋にいた彼女について佑太さんは聞きたいと思いますがどうでしょうか?」

 

 俺は明石さんの問いに答えようとしたが口を開くのも億劫だったために顎を引いて答えた。

 

「彼女は、あの子たちは私があのクズの命令で解体した子たちの怨念…と言いますか、執念?とでもいえばいいですかね。それらが固まってわずかに取りこぼされていた資材を使って出来上がった深海棲艦みたいなものでした。」

 

 俺がその言葉を聞いてあの時の言葉を思い出し、明石さんのことが心配になっていると、

 

「あの子たちは今は私と一緒にいますから大丈夫なんですよ。佑太さんからコピーした記憶であのクソが死んだことも、私があの子たちを殺してしまったことで今も苦しんでいること。これらを知ったみたいで私のもとにたどり着いた時には敵意も何もなかったそうです。佑太さんがあの隠し部屋で瀕死になっているのを教えてくれたのも彼女ですよ。」

 

「とはいってもそういう私自身もおかしくなってたから本当に何が起きたのかはわからないんですけどね。」

 

「ただ、あの子たちは私を恨んでないと言ってくれました。」

 

「あれが夢だったとしても、そうじゃないって信じたいんです。それにその方が私が目覚めたときに私の周りに人の形をした状態で資源が積み重なっていたことに対しての説明ができますから…。」

 

「あ、そうそう。佑太さんはまだ気づいていないかもしれないですが左目の瞼からこめかみにかけて切り傷ができてましたから包帯を巻いてます。佑太さんが起きたついでに巻きなおしておきますね。」

 

 明石はそういうと、立ち上がって包帯を取ってきた。

 

「それじゃあ力を抜いてください。あ、自分で動かなくてもいいですからね。後頭部を10針以上縫ったらしいんでそれが開いたらいけないので。」

 

 そういうと明石は俺の顔の左側に手を当てて何かをし始めた。その時にやっと俺は自分のおでこから左目にかけて圧迫されていることに気付いた。

 

(俺気づくの(おせ)ぇ……)

 

 そんな風に自分で自分を嘲っていると左目の圧迫感が完全になくなった。

 

「いったん左目を開けますか?」

 

 そう明石が聞いてきたので俺は左目を開けた。

 

 その瞬間明石はいきなり息を飲み込んで

 

「……佑太さん。その眼は一体…」

 

 と後ずさりながらつぶやいていたが俺はそれどころじゃなかった。

 

(………なんだこれ!?)

 

 左目の視界を覆うように大量の緑色の半透明なプレートが高速で動いており、目を開いた瞬間にそれをいきなり認識したせいで俺の理解力のキャパを大きく超えていた。

 

 そして大量に動いていたプレートの中の一枚がまるで意思を持っているかのように左目の視界一杯に広がった。

 

(………え?)

 

 そのプレートには小学校に入学した位の俺の顔写真と、俺の名前。

 

 そしてその下に<該当アカウントはホストによってロックされています。>と言う赤い文字で書かれた警告文が書かれていた……。

 

 




明石さんはクズのせいで死んだあの子たちの力で明石懐から明石改(改修Max)になりました。
これは二次でしか読んだことないですが、HSD×Dの木場君覚醒シーンをモチーフにしてます。肝心の本人も主人公も意識がないという状況ですが(苦笑)


そして、佑太がなぜ指揮するための機械を使用しようとしたらあんなことになるのかの情報開示も行っています。

ホストと呼ばれる何者かにアカウントをロックされている→指揮(ログイン)しようとして弾かれる(物理)

です。

感想、評価を楽しみにしています。

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