お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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 こんばんは。
 BUMPのHELLO WORLD!を聞きながら執筆していたら曲に集中してだめだということに最近ようやく気付いた先詠む人です。

 今回は一回視点が入れ替わります。

 それでは本編をどうぞ。

…………野戦忍者がコネーーーー!!

この感じじゃ第3よりも第4艦隊の方が先に解放されそうです。(現在榛名、霧島待ち)


叢雲よ。ただの……ね。

 夢っていうのは本来人が眠っている間に記憶を整理するときに生まれる副産物らしい。

 

 しかし………否。だったら今俺が見ているこの光景は一体何なんだろうか。

 

 レ級と呼ばれる少女に腹パンで気絶させられたその日の夜。

 俺はツリーハウスの中に隠れた結果降りれなくなっていた文月ちゃんと弥生ちゃんを下におろしてから食堂で一緒にご飯を食べていた……ところまでは覚えている。

 

 だけど、ご飯を食べている途中でいきなり意識が暗転して、気づいたら両手足を背後の壁のような何かに埋め込む形で拘束されて真っ暗な部屋の中にいた。

 

 よく見えないその目で周りを見渡す。

 自分のほかに4人位のシルエットが見えた。その影たちも拘束されているようで、変な体制で上からつりさげられている。

 そして少し斜めになっている目線を下げると、キリストが磔刑されているかのように十字架のような物体に拘束されている自分であろう影が鏡のように反射している鉄板に映っていた。

 

 それに目が覚めてからずっと思っていたが、なぜか頭がすごく重い。この状況を具体的に言うならば頭の上に国語辞典と漢字辞典を同時に載せている感覚が一番近い。

 

 そう思いながらようやく闇に慣れてきた目で俺が見たのは、見覚えのある少女たちの姿だった。

 

「電ちゃんに五月雨ちゃん、それに吹雪ちゃんに漣ちゃん……ってあれ?俺の声が高い?」

 

 見えたのは全員頭に何かを被せられて生まれたままの姿で俺と同様の形で壁に埋め込まれている少女たち。

 

 そしてそれに気づいたときにふと漏らした言葉で俺の声が高いことに気付いた。

 

「どーなってんだ……」

 

 そう呟きながら自分の体の状態を見ようと首を下げようとするけれども首がまったく動かない。かろうじて見えるのはかすかに視界の端で揺れる長い髪の毛と真っ暗な部屋の状態。それと自分以外に電ちゃんたちが拘束されていることだけだった。しかし闇に目が慣れてきたにもかかわらず、自分の少し下にある鉄板の表面が荒いのか自分の姿はシルエットでしか確認できない。

 

 そこでとりあえずは体をどうにかして動かし、この拘束から抜けだそうともぞもぞしていた。

 

 その時に先ほどは気づかなかったが脊髄にコードをつなげれる形で強固に拘束されていることを突然脊髄に沿って走った激痛と、後ろに引っ張られるような感覚で知ることになった。

 

「痛い…………」

 

 あまりの痛みに涙目でそう呟きながらもこの状況から抜け出す術を考える。そうしていると

 

「………ーバーから巨大なデータが逆流してきてるぞ!!」

 

「今すぐ一時的にルーターとサーバーの接続をカットしろ!!特にF-5にそれが顕著にみられる。急いで本体と切り離せ!!」

 

「今から接続ルームに入ります。恐らく拘束は解けてないでしょうから薬で眠らせ、それから作業に取り掛かってください。」

 

「「了解」」

 

「………なんか騒がしい…?」

 

 この真っ暗な部屋の外から怒鳴り声や叫び声が聞こえてきた。それで俺が周囲をきょろきょろしていると

 

「突入!!」

 

「まぶしっ!?」

 

 突然空気の音を立てながら開いた扉より入ってきた逆光で視界がくらまされる。

 

 明暗差でぼやけた視界の中、部屋に入ってきた特殊部隊のような装備を身にまとった男たちが俺のもとに駆け寄ってきて

 

「ルーターF-5の覚醒を確認!直ちに処置に入る!!」

 

 と首元につけていたトランシーバーに向けて言うなり俺の首筋めがけて注射器を突き刺し、何かを注射した。

 

 体の中に何かが入れられる感覚がする。それと同時に俺の意識が薄れていく感覚に陥った。

 

 完全に意識がなくなるその寸前にくらんだ視界が回復した俺が見たのは、男たちが被っているヘルメットのバイザーに映ったその素肌をさらしている今にも目が閉じそうな叢雲ちゃんの姿だった。

 

 

 

 

 

「……ぅさん!?お父さん!!」

 

「ぅぐ…………」

 

 激しく文月ちゃんに揺さぶられて目が覚めた。真横になっている視界から察するに俺は倒れてしまったらしい。

 

「よかったぁ~、弥生ちゃん。お父さん起きたよぉ~!!」

 

「よかった……です。」

 

「………今……のは………?」

 

 心配そうに俺を見る文月ちゃんと弥生ちゃんを無視して俺は先ほど見たあれが頭から離れなかった………。

 

 なんで、俺の視界のはずなのに先ほど見た夢で俺の姿は叢雲ちゃんになっていたのか…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~レ級をつぶしてから佑太が目覚めるまでの間~

 

「んんんーーー!!!(みたいーーー!!!)ンむんむぐむぐー!!(みたいんだよおー!!)」

 

「そこで五月雨に手拭いで口もふさがれて抑えられているあれは放っておいて始めましょ……って何してるの吹雪に電。」

 

「……う”る”さ”い”の”で”す”!!漣ちゃんを黙らせるのです!!」

 

「電ちゃん落ち着いて!!今の私たちいつものデータじゃなくてほかの子の体を借りてるからそれで叩いたら黙るんじゃなくて死んじゃうから!!」

 

 はぁ……漣は口に手拭いをかけられて強制的に黙らされているし、五月雨はそのために全力を使っているから動かせない。それを見て電は黒くなって錨を振り上げ、そんな電を必死に吹雪が抑えている。

 

「…………あんたたちいい加減にしなさいよ!!」

 

 私は艤装を解除してから勢いよく足を振り下ろしてその場にいた全員に向けて怒鳴った。

 

「こうやってグダグダしている間もこの子に負荷がかかり続けてるんだから急がなきゃ駄目でしょうに!!」

 

 そして怒鳴りながら目の前で意識を失っているあの子が着ていたTシャツを脱がして背中を向けさせる。

 すると予想通りあの時に()………いや、彼女がつけてしまった傷が淡く緑色に光る穴と化していた。

 

 普通ならその光景を見て引くのかもしれない。だけどその穴に私はまったく躊躇せず

 

「ふん!!」

 

 手袋を外してから左手を突っ込んだ。手を突っ込んだ瞬間彼の体が陸に上がった魚のように跳ねあがる。そのまま細かくけいれんし始めた彼の体を、慌てて吹雪と電が抑えて動かないようにした。

 

 穴の中はまるで海の中に手を突っ込んでいるかのように抵抗がない。それもそのはず。なぜならこの穴の中は彼の体ではなく、私たちが普段いるサーバーが彼の体を利用して実体化されているだけなのだから。

 

 今の彼の体は外側は皮膚に覆われているけれどもその中は筋肉や内臓ではなく、この今私が手を突っ込んでいる1と0で構成されたデータの海で作られている。

 

 そのデータの海の中を私は結局肩まで浸からせながらあるものを探す。

 

 それは昔レ級にサーバーに侵入された後悔から作った緊急時に強制的にこの子をサーバーから切り離すレバー。恐らくこれだけは物質化するように作ったから探せばいつかは見つけれるはず……あった!!!

 

 そして探していたレバーをつかみ、急いで下へと下がっている状態から上へと持ち上げる。すると穴の中を漂っていた1と0のデータが次第に減っていく。そうすると加速度的にあの子の体の中を構成していた緑色の部分が減っていき、人の肉体である赤へと変じていく。

 

 私はそれが完全に変わる前に急いで手を引き抜いた。このときに引き抜き忘れたら私の腕があの子の体を貫いて下手をすれば殺してしまう。

 

 急いで手を引き抜いてから数秒後。最終的に先ほどまでは緑色に淡く光っていた穴となっていた傷跡は、うっすらと赤みが差しているものへと戻っていた。

 

「ふぅ……疲れたわね。」

 

「叢雲ちゃんお疲れさま。」

 

「お疲れ様なのです。」

 

「ンんんんーーーーーー!!!!!!!!!」

 

「………あぁ、もう落ち着いてください!」

 

「…………まだやってるのあれは?」

 

「もう病気と割り振るしかなさそうなのです……」

 

「アハハ………」

 

 そうして苦笑いする吹雪を見ていたら

 

「あなたたち!どうして逃げてないの!?」

 

「っておい!!そこに埋まってるのレ級じゃないのか!?」

 

「っ!!急いで佑太を連れてその場を離れろ!!聞いてるのか!!?」

 

 この鎮守府で近接戦闘に長けている龍田、天龍、木曾の三人が日本刀と長刀を持ってかけつけてきたわ。今更来るとか遅いのよ。

 

「もう終わったわ。」

 

 私は疲れたことを隠そうともせずに来た三人にそう告げた。

 

 そんな私たちの様子を見て、駆け寄ってきた三人はまず最初にレ級の脈が完全に止まっていることに驚き、次に私たちの様子が普段と違うことに気付いた。

 

「……なぁ、()()()()()?」

 

 三人の混乱は天龍が私に聞いてきたその一言に集約されていた。

 

「叢雲よ。ただの……ね。」

 

 私は未だに意識がないあの子に服を着せ、他の4人が恨めしそうに見つめるのを肌で感じながらそう答えた。

 

 今の私は叢雲。あの日、あの子と出会ったことで進化した彼女から分かれた一人。

 

 そして彼女からあの子への思いを一番受け継いでいると自負している。

 

 今はこうやって他の子の体を借りることでしか会いに来れないけれども、いつかは自分自身の体でこの子に会う。

 

 そのためにもこの子にはこの戦いで傷ついてほしくないし、本当だったら深海棲艦が全滅するまでは艦娘にもかかわってほしくなかった。

 

 だけど、すでにこの子は深いところまでかかわってしまっている。

 しかもサーバーに接続している影響が出ているのかこの子にいつもべったりだった夕立のリミッターが壊れていた。

 

 だから、彼女は本来まだ練度的な問題で至れるはずのない改二へと進化している。本当ならあの子の体がもつはずがない。

 だけど彼女の体はあの時に無理やりリミッターを解除して改二へと姿を変えたあの子たちと違って健康そのものだ。それは多分あの子が建造したということも関係しているのだろう。

 

 だからこそ今度はあの子が軍部の腐った思惑で私たちのような目に合わないように気を付けなくてはいけない。

 

 

 このままだとこの子がとられてしまいそうで怖い。他の艦娘たちにも、腐りきった軍部たちにも。

 

 

 

 ………………………そして深海棲艦たちにも。

 

 そんな思いを抱きながら私は彼をおんぶして

 

「医務室までこの子を連れて行くわ。話を聞きたいのならそれからにしてちょうだい。」

 

 そう告げてから三人の間をすり抜け、他の4人と一緒に医務室の方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………この子大きくなったからかあの時と違って重たいわね!!私も驚きを隠せないわ!!」

 

「だったら漣と変わります?そうすれば万事解決ktkrですが。デュフフフフ。」

 

「………電。」

 

「はいなのです。」

 

「殺ってよし。」

 

 キヤァァァァァアーーーーーーーーー!!!!!

 

「これで良しなのです。あとは向こうに帰ってからするのです。」

 

 この子を五月雨と吹雪で交代交替で背負う私たちの後ろを、意識を失った漣の体を引きずりながら電が歩いていた。




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………………変態は必ず撃たれる(ポソッ

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