お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
今回はほぼ全編佑太の出番はないです。
それと、睦月ちゃんがにゃしぃちゃんではなくてアニメ版の方で今回喋らせています。
それでは、本編をどうぞ!!
レ級に腹パンされたせいで俺が意識を失ったのとほとんど同じタイミングに、鎮守府内の4か所で異変が起きていたらしい。
それを俺は目を覚ましてから明石さんに報告書を読ませてもらいながら教えてもらった。
これがその報告書の内容、っていうか音声データだ。
~異変の報告(睦月編)~
『それでね~、その時に夕立ちゃんが………どうしたの吹雪ちゃん。』
そのとき、私は吹雪ちゃんとお話ししながら司令棟の陰の方に隠れてました。それまでは楽しそうに私たちは会話していたんですが、
『…………うん…………わかってる。行かなきゃ。』
その直前まで私と楽しそうに会話していた吹雪ちゃんが、いきなり遠くを見てそう呟いたかと思うと私たちが隠れてた場所から勢いよく飛び出したんです。
『吹雪ちゃん!?』
いきなりのことに驚いた私を無視して吹雪ちゃんは居住区の方に走っていきました。私もそれを追っかけようと思ったんですけど、その時吹雪ちゃんの姿が一瞬見たことない姿に変わっていたのに驚いて、その間に見失ってちゃいました。
ケイドロが終わってから初めてお父さんが深海棲艦に襲われたって聞きました。
そしてその時に吹雪ちゃんが電ちゃん、五月雨ちゃん、叢雲ちゃん、漣ちゃんと一緒にそれを撃退して、そのまま医務室にお父さんがいる閉じこもっていることも聞きました。
一体吹雪ちゃんに何が起きているのか私にはわからないです。ただ、夕立ちゃんがお父さんの危機に駆けつけていなかったのに、吹雪ちゃんがそれに気づいたのは気になりました。
~異変の報告(涼風編)~
そのときあたいは五月雨と一緒に工廠の方にだれか隠れてないか探しに行ってたんだよ。
それで工廠の外側を辿るように歩いて回ってたら五月雨が急にこけてさ。それであたいが転んだ五月雨を起こしに行ったのさ。そしたら
『いい、大丈夫。』
って普段なら絶対言わないこと言ってさ。あたいもおかしいと思ったんだよ。だから頭でも打ったのかって医務室に手を引っ張って連れて行こうとしたら
『行かなきゃいけないの。だからごめん。』
って言って急にあたいの腹に掌底入れてきたのさ。それであたいの意識は真っ暗さ。さっき起こされるまで完全に何が起きてたのか知らなかったよ。それと五月雨に聞いてみたら本人そのこと全く覚えてないんだと。
五月雨曰く
『転んだ時に私の中に何かが入ってくるような感じがして、それからさっき涼風ちゃんに揺さぶられるまで記憶がないの……』
だってさ。目を見ても嘘ついて売る様子はなかったし多分それは本当なんだろうけど。それだったらあの時五月雨の中に入ってただれかっていうのは誰なんだろうね?明石さんならわかる?
~異変の報告(菊月編)~
私は最初は望月と一緒に泥棒側の子たちを探していたが、あまりにも望月が使い物にならなかったから適当な場所で置いてけぼりにして一人で探していた。
『ん?あれは漣と電か。二人してこちらの方に逃げてくるとはありがたい。』
私が居住区の方を探しに行ってみていると、居住区の方から漣と電がこちらへ向けて走ってきていた。どうやら二人は何かから逃げるかのように走っていたのだが、その時の私にとっては好都合だったのでそのまま二人を捕まえた。
しかし、実際捕まえてみると二人の口から出たのは父上が危ないということと、雷のような深海棲艦が父上を狙っているということが分かった。
だから私は大人の艦娘の人の力を借りようと司令棟の方へ一緒に行こうと3人で駆けだそうとしたのだが、二人の様子が何やらおかしなことになっていた。
二人とも急に瞳孔が開ききったかと思うと、その場で倒れ、すぐに起き上がったかと思うと
『『菊月はそのまま司令棟の方に行って助けを呼んで。』』
と言うなり居住区の方へ駆け出した。二人だけでいかせてはならないと思った私もそれを追おうとしたのだが、体が私の意思を無視して司令棟の方へ向いて駆け出したため叶わなかった。
明石さん。一応、あとで私の体に何か変調が起きてないか調べてもらえないだろうか。
もし、海に出たときにあのようなことになれば生死にかかわるし父上が心配して倒れてしまう。
~異変の報告(夕立編)~
明石さんもう話していいっぽい?なら話すね。
その時はお父さんが危ない目に合ってるって叢雲ちゃんと一緒に行動してるときに感じたっぽい。だから急いでお父さんのところに行こうとしたら
『夕立。あなたはここにいなさい。いいわね、これは命令よ!』
って言って叢雲ちゃんが勢いよく駆け出して行ったっぽい。
叢雲ちゃんだけがお父さんの方に行くなんてズルいと思って夕立も追っかけようとしたんだけど、体がその場に縫い付けられたかのように動かなくなったっぽい。
だから必死に動こうとしてたんだけど、今度は腰が抜けて動かなくなったっぽい。だから、さっき加賀さんに助けてもらうまでまったく動けなかったから辛かったよ!
「何ですかこれ。」
俺はその音声データをすべて聞き終えてから明石さんにそう言った。
「う~ん、ほんとによくわかってないのよね~。だから、君に見せたら何かわかるかと思ったんだけど何かわかった?」
いいえ全く。俺自身の記憶はあの少女(あとで話を聞いたらレ級という名前だそうだ)から逃げて、最終的に掌底をみぞおちに決められたところで終わっている。
それから後の記憶は………少しぼやけているが大量の小さい窓が乱舞する様子をただひたすら見ていたような気がするぐらい……だな。うん。
そこまで考えたところでこっちを心配そうに明石さんの陰から見ている叢雲ちゃんの姿があったけど、その姿は前に一度だけ見た大人のような姿だった………。
「ちっ!!」
本気を出した関係で後ろへとすさまじい勢いで流れていく景色の中、私は舌打ちをした。
その理由はいたって簡単。私以外の他の4人がこちらに降りてきた。いや、
「まったく!また漣にグチグチ言われるじゃないの!!!」
そんな風に愚痴りながらあの子のもとへ急いで駆けつけていると、この体のリミッターが強制的に解除されたことに気付いた。
「まさかそこまでつながったの!?」
本来、私たち最初の5人以外のすべての艦娘の体にはその力で自分自身を傷つけないためのリミッターがかけられている。
私たちは元が元だった関係でそのリミッターがなかったから最初から全力が出せたけど、それ以外の子たちはそうはいかなかった。
もし、無理やりリミッターを解除していきなり最終段階まで力を開放すると、その力自体に体が耐え切れなくて内側から崩壊する。
あの戦いの初期のころの轟沈の理由の大半は実はそれだったりするのよね。
だからこそ、この今私が憑依している子たちのような体には厳重にリミッターがかけられている。なのにあの子はサーバーに接続したときに恐らく私たち5人のリミッターを無理やり管理者権限で外したみたいね。とはいってもあの子がそんなことわかるはずがないからあの子自身の意思じゃなくて私が
そこまで考えたところで私はそれと行き会った。
第6駆逐隊の服を着ているけれども私にはわかる。
こいつは
「あんたがこんなとこに来るなんてね。明日は魚雷が降るんじゃないかしら。」
私はサーバーと繋がったせいで意識のないあの子を、荷物のように肩に担いでいるレ級に向けて厭味ったらしく言ってやった。
「ン…。オ前モ同類カ?見タ目ハ艦娘ナノニ気配ハ同ジジャナイカ。」
「…………覚えてないのね。あの日のことを忘れているのか別個体なのか。そんなことは知らないけれどその子を返してもらうのと一緒にあの日の復讐もさせてもらうわよ!!」
私は忘れていない。
ある戦いで電が雷を助けるために私たちの制止を振り切って取り憑き、そして救った。
…………にもかかわらずその反動で生まれたこいつが憑依状態が解除されていなかった電の目の前でむごたらしく雷を殺したことを。そしてその際に呆然自失となっている電を使ってサーバーに強制的に割り込み、あの子と繋がろうとしたことを。
そのせいであの子がサーバーからの負担で髪の色が一時的に抜けるほど苦しんだ。
それだけで一番色濃くあの子への思いを彼女から
私はレ級を睨みつけながら艤装を身にまとう。
本来なら艦娘は深海棲艦と違って陸上で艤装を身にまとうことはできない。だけど、私を含めた5人はその出自からそれが可能だった。
そしてその影響がリミッターを解除されたせいでこの憑依しているこの体の方にも出ているみたい。
怒りで無意識にとはいえ改二の艤装を身にまとっていても何ら違和感がないのだから。
私は酸素魚雷を構えた。
一方でレ級は人質を取っているという余裕からか、ハナウタを歌っている。
それがあの子が幼いころに好きな曲だったから私はなおさら頭に血が上った。
あの子からしたら夢の中だったとはいえ、あの子に直接教えてもらったその歌をお前が歌うんじゃない!!!」
私は途中から叫びながら酸素魚雷をレ級に投げつけた。
それをレ級は
「キヒヒヒヒ」
と言いながら避ける。
酸素魚雷を投げつける。レ級が避ける。酸素魚雷を投げつける。レ級はそれを避ける。
そして私は
「吹雪!!!」
酸素魚雷を避けた直後で体制を一瞬崩したレ級の後ろに気付かれないように近づいていた仲間の名前を呼んだ。
「わかってる!!その子を離して!!!」
吹雪は体勢を崩したレ級の背中を掴んで引き倒しながら足を引っかけ、
「漣ちゃん!!」「ほいさっさ!!」
その吹雪の後ろから迫っていた漣の方にレ級の頭の方を向けた。それと同時にあの子の体をしっかりと掴んでレ級から引きはがすのを忘れてはいない。
「それじゃあ、私たちの大事な子を返してもらいましょうかね!!っと!!」
そう言って漣は勢いよくレ級の顔めがけて魚雷を振り下ろした。それに対して反射的に目をつぶりながらもこちらへと反撃しようとするレ級。だけど、これはブラフ。この振り下ろされている魚雷は実際には爆発はしない。
本命は……
「お任せください!」
「電の本気を見るのです!!!」
その更に後ろから五月雨を足場にして勢いよく上に飛んだ電の錨での打撃攻撃。
流石にレ級が戦艦でもその高さによる重力+錨の重さ+電の振り下ろしの威力には堪え切れられなかったようで地面に頭を埋めた。
埋まってからしばらくの間、レ級はその体を痙攣していたが、その後ピクリとも動かなくなった。
「で、むらっち。なんであの子がこんな風に危険な目にあってるんですかね?ね?あなたその体に憑依するときに言ってましたよね。『私があの子を守るからあなたたちは手出し無用よ!!』って。それなのにこの体たらくはどういうことですか?」
「う……うるさいわね!!まさか、レ級が陸地に上がってまでこの子を狙うなんて思ってもなかったんだから!!それにあんたたちもなんでこっちに降りてきてるのよ!!手出し無用って言ったでしょ!!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。ほら、とりあえずはあの子をサーバーから引きはがさないと戻ってこれなくなっちゃうよ。」
「「う……」」
「様子はどうですか?」
「ひとまずは大丈夫そうなのです。だけど、おなかを強く攻撃されたみたいなのです。だから心配なのです。」
「それじゃあ、私がサーバーから切り離しをやりますね。電ちゃんは私のフォローをお願いします。」
「わかったのです。」
「あのぉ。私はどうしましょうか……」
「五月雨はとりあえずこの子の体の状態を見てたら?多分サーバーから切り離すときにフィードバックで体に何か影響があると思うから。」
「わかりました。」
「成長したあの子の裸ktkr!!」
「……やっぱり五月雨はその変態を抑えといて。多分そのままにしておくといろいろとやらかしそうで怖い。」
「漣ちゃん……」
「漣さん………」
「漣さん………」
「やめてそんな目で見ないで!!」
「自業自得でしょ!!ほら、さっさと始めましょ!!」
私はみんなを急かして作業を始めさせたわ。
はぁ……。
この子がこんなことに巻き込まれないように気を付けていたはずなのになんで巻き込まれちゃうのかなぁ………。
私の吐き出すようなそんな言葉は誰の耳にも届かずに茜色に染まり始めた空へと消えた。
感想、評価を楽しみにしてます。
今月21日にタウイタウイ泊地に着任しました。
何かの縁があれば宜しくお願いします。