お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
それと、今日更新した2話と前日に更新した1話のベースとなったアンケートの回答は紛れなき終焉さんの回答です。
お気に入り登録数が減ったり増えたりしていますが、たぶんここから先の更新はアンケート回以外は艦これ以外の要素はそんなに出ないと思いますので
どうか見捨てないでぇーーー!!!(比叡)
先(前話最後参照)の時雨が来る発言に対して俺が般若のような顔(by夕立ちゃん)で白露を問い詰めていると、
「あの~、小鳥遊君?」
申し訳なさそうな顔で富田のおじさんが声をかけてきた。
「あ、すみません。それでソーマ。お前が遠月から帰ってきて俺が大学に行くためにこの辺を離れてから一体何があった?」
「まず最初にパクられたんだ。」
「は?いや、すまん。訳が分からない。」
「わり、言葉が足りなかった。あのおばさん、すみれ印の唐揚げロールを全部丸パクリして、こっちの唐揚げがパクリだって大々的に金を使って宣伝し始めたんだ。まぁ、そんなことしてもこっちもテレビで特集組まれたりしてたから問題はなかったんだけどな。」
「あ~。確かに俺が手伝ってた時に来てたもんな。」
俺が高校1年のときに手伝いをしに来た時の光景を思い出してそう言った。あの時は地元のテレビ局がこのすみれ商店街にやってきて思いっきりもず屋の唐揚げを暗喩した状態でからかったんだっけ。あんとき俺なんて言ったっけな…。
あ、そうだ。
『変な顔のおばさんがえらい椅子に座ってる会社には負けるつもりなんてないですよ。商店街なめんな。』
だったと思う。……俺がそうやって思い出に浸っていると、
「それで客足が遠ざかるどころか多く来るようになった。まぁ、そこまではよかったんだ。だけど」
ソーマが再び話し始めた。だけど、それを遮るかのように
「そこからは僕が言うよ幸平君。」
「富田さん…。」
富田さんが話に割って入ってきて自分でそれからの経緯を話し始めた。
「小鳥遊君が大学に行くためにあっちの方に行ってから一か月後の話なんだけど、唐揚げロールを食べたお客さんの中の数人が食中毒の症状を起こしちゃってね。」
「え?でも、その辺はしっかりと管理してたはずですよね。そこんとこどうだったんだソーマ?」
「あぁ。しっかりと衛生管理は行われてたし、俺もたまに管理状況を確認しに行ったから大丈夫だった。だけど食中毒らしき症状を起こした人が出ちまったんだ。」
「………それなんかおかしくね?恐らく食中毒の原因になると思われる材料は鳥と卵ぐらいだろ。道具もきちんと富田さんのことだから手入れしているはずだし。」
「その道具に細工されたんだ。」
「は?細工って……………いや、まさかメンツをつぶされた仕返しにそこまでやりやがったのかあのおばさん!!!」
「小鳥遊君の予想は多分あってると思うよ。唐揚げロールを包む紙でできた器があっただろう?あれの内側に特徴的な髪形をした女性からお金をもらったバイトの子数人がその女性に渡された瓶の中身をお客さんに渡す前にランダムに綿棒で塗りたくったそうなんだ。」
「俺はその瓶の中身が食中毒菌だったんだと思ってる。それで偶然そのランダムに作られた唐揚げロールを受け取って食べた人が…」
「中った…ってわけか。」
要はこういうわけだった。
前にソーマを中心として駅ナカに入ってきた唐揚屋に対抗するために俺たちが起こした行動でメンツをつぶされた変顔おばさんらしき人物が態と食中毒を起こしてこの商品の価値を大暴落させ、信頼を失わせた。
基本的に食品関係のものは信頼という不定形かつ細いつながりで成り立っている。
例えば一度でも食中毒とか問わずに事故を起こした店は信頼が失われて閑古鳥が鳴くようになる。
この場合はそれが当てはまるケースだった。
「状況がやばすぎるな…。」
頭の中でいったん情報を整理してから俺は今の現状の厳しさに顔をしかめさせた。
「あぁ、だけどお前が気にすることもあまりないと思うぜ。」
「…?どうしてだ?何か策でもあるのか?」
そんな俺に対していつもの楽観視してそうな顔をスマホをいじりながらソーマは見せていたので、その理由を聞いてみると、
「あぁ。だって今さっきあのおばさん自社の売り上げ上げるために食中毒起こしたのバレて捕まったし。」
「「「「「………は?(ぽい?)」」」」」
その場にいた全員の気持ちが一つになった瞬間だった。
「だって、ほら。」
そう言ってソーマが見せてきた画面に書いてあったのは
『もず屋他店との売り上げ競争に勝つために食中毒を起こす』
という見出しとともにもず屋の経営者であるあのおばさんが食品管理法とかを違反したことで捕まったと言うことと、他店の経営者たちから名誉棄損で訴えられているという記事が表示されていた。
「やっぱあのおばさん叡山先輩がいなかったら駄目だったな。ま、その叡山先輩も今は完全に料理人として終ってしまったからどうしようもないのかもしれないけど。」
「あ~。うん。富田のおじさんも一緒に名誉起訴で訴えたら?」
「そうしようかな…。」
「そんじゃ憂いもある程度張らせそうなところで、ソーマ。おっちゃん帰ってきてるか?」
「いやいや、先月から北海道行くって言って店開けて帰ってきてないよ。」
「そっか…。あ、そうだ。あれから3年以上経つのに唐揚げロール一択って悲しいから」
俺はそこで自分の方に握りこぶしの親指を向けて
「俺と」
そして人差し指をソーマの方に突き付けてから
「ソーマでどっちがうまくてコスパが稼げそうな新メニュー考えるか勝負しようぜ。」
というと、ソーマはにやりと笑って
「面白れぇ!審査員とかやる日ははどうする?」
と乗ってきた。
「だったら場所はゆきひら、やんのは今から1時間後。審査員は富田のおじさんが適当に残り二人を商店街の店長さんから見繕ってください。」
俺はそう言って腰のウェストポーチに入れていた手拭いを勢いよく引っ張り出して右掌の中から垂らした。
「さぁ、前に毎日やってたみたいに一発勝負だぜ!!」
俺はそうしてソーマに宣戦布告した。
…………勝負の結果…?
負けたよ。完敗だった。
伊達に遠月学園で主席卒業しただけあって料理がもうやばかった。
おっちゃんに初めて食べさせてもらった麻婆以来だと思う。人が作った飯食ってヴァルハラっぽいの見たの。あとは見たことあってもなんか地獄っぽい光景だった。そうなったのは大体ソーマが作ったゲテモノのせい。
勝負のときに俺が出したのは商店街のパン屋さんで売ってたパンズにソーマと同じ肉屋で買った鶏肉をサクッと揚げたものを八百屋で買ったレタスと一緒に自作のマヨネーズソースではさんだハンバーガーみたいなやつ。
正直、これならいけると思ってた。
だけど、ソーマが出してきたのは………もう、単純に嗅いだだけでよだれが止まらなくなりそうな臭いを放つハンバーガー。
そう、その品を出そうと考えた思考は一緒だったけどソーマの方が俺よりも1枚どころか何枚も上手だった。
そのハンバーガーには漬物屋のばあちゃんが毎朝漬けているらしい梅干をベースにした梅肉ソースが使われていて、その上梅干特有の酸っぱさを感じさせないように醤油を使って味を調整していた。
しかも、鶏肉に揚げる前にひと手間加えることで俺の作ったハンバーガーよりも食べやすくなっていた。
パンズは、俺と同じものを使っていたからかあまり差はないはずなのにソーマの手によって完全に別物になっているような錯覚を覚えた。
「負けた………。」
「おっしゃーーー!!!!これで367戦287勝80敗だな!!!」
「ちげーし!!96勝271敗だ!!!」
「なにをーー!!!」
「なんだとーー!!!」
「「ぬぐぐぐぐぐぐぐ……」」
「ごめんごめん。遅くなっちゃった……ってあれは何をしてるんだい?」
「よくわかんないっぽい…。」
「ま、男と男の譲れない戦いってところかしらね?」
「祭りとけんかは江戸のはn「言わせないよーー!!」」
「はわぁ~~~~。このハンバーガーを食べたら天国が見えます~~~。」
「ふわぁ~~~~、幸せ~~~~。」
結局、俺が折れる?ことで話は決着して、俺は実家に帰らないで勝負中に合流したみんなとそのまま一緒に鎮守府の方へと帰る電車に乗って帰った。
ただ、春雨ちゃんと五月雨ちゃんはその時に食べたハンバーガーの味が忘れられないようで俺に料理を教えてと頼みに来たのはこの鎮守府での些細な変化といえるだろう。
あ、それと結局ソーマが作ったハンバーガーを新商品に加えて富田のおじさんが店を開けて待っていたら俺が帰ってから2週間後には元の客足が戻ったらしい。
ソーマから商店街がにぎわっている様子の写真が添付されたメールが送られてきた。
ただ、あいつメールに
『俺の勝星に+1な』
って書いて送ってきやがったから
『んなわけあるか(笑)』
って書いて送り返してやった。