お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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今回はちょっと短いですが、アンケートに回答してもらった内容への繋ぎ回みたいな物です。

それではどうぞ。


アベシッ!!(by佑太)

「お兄ちゃん。お母さんが今度家に帰って来いってさ。」

 

 食堂の畳の部屋で気絶し続けていた俺を無理やりたたき起こして、詩歌はいきなりそう言ってきた。

 

「…………は?なんでいきなり。」

 

 無理やりたたき起こされたことで頭がまともに動いてない俺がそう返すと、

 

「なんか部屋を掃除してたらお兄ちゃんに相談したいものが出てきたみたいだよ~。」

 

 赤と白の女王様が支配している摩訶不思議な国に落ちた少女の話に出てきた、霧状の不定形な猫みたいに口をゆがませながら返してきた。

 

「ほぇ~。………ベッドの下から?」

 

「うんにゃ?そんなこと言ってなかったよ。」

 

「ほ~、ま。見られても何も痛くないから別に問題はないんだけどな。」

 

 実際、ベッドの下といっても中に入ってるのはガ○プラと、筆記用具ぐらいだし。

 

「ほいじゃあ、来週末に帰るって言っといて。あ、それと母さんきちんと家事できてるか?俺が一人暮らし始めた時からずっと心配だったけど。」

 

「………えぇっと~。うん。………お邪魔しましたーーー!!!」

 

「おぃ待て!!………ったく。あの感じじゃ絶対家の中大惨事じゃねぇか……。」

 

 俺が家の様子を聞いたら逃げ出した詩歌の様子から今の家の様子が見て取れた。

 恐らく掃除以外の家事はまともにできてないんだろう。

 

「はぁー。外出許可取りに行くか……。」

 

 俺は食堂の入口の方に高速で逃げ出した詩歌を追いかけるのをあきらめ、首を少し振ることで思考を戻し、よろめきながらも立ち上がった………が

 

「ん?」

 

 ある程度動いたところで何かに引っ張られるかのように服が伸びて俺は動きを止めざるを得なくなった。

 

「叢雲ちゃん……………みたいだけど誰?」

 

 引っ張られている箇所を見てみると、そこには黒色の革製の指ぬきの手袋がはまっている手と叢雲ちゃんみたいな雰囲気を少し残して大きく成長したような女性が眠っていた。

 

「オワッ!!!」

 

「………いかないで…………。()()()()やだ……。あなたにはまだいろいろと教えてもらいたいのに………ンン…」

 

 俺がその少女の寝顔を見ていると、いきなり俺を引き寄せるかのように俺の服のつまんでいるところを引き寄せながら謎の寝言を呟き、目をしかめてから開けた。

 

「……………おはよう眠り姫?」

 

「………………(ボッ!!!)!?!?!?!?!?!?!」

 

 俺が、なんとなく思いついたことを目の前の少女に言ってみると、少女は顔を真っ赤にして

 

「何言ってんのよ!!」

 

 という言葉とともに、裏拳を顔めがけて飛ばしてきた。それに対して俺は

 

「アベシッ!!」

 

 距離速度ともに人間がよけれる限界を超えていたため、なす術もなくその裏拳によって再び意識を刈り取られることになったのだった………。

 

 結局、俺が目を覚ましたのは次の日の朝5時半だった。

 

 「……………飯食い損ねた…。まだ鳳翔さんがやってる食堂も空いてないだろうし今日も学校だししゃあねー。自分で弁当作りを兼ねて飯作るか……。」

 

 どうも、結局鳳翔さんが気を聞かせてくれたのか、俺は食堂内の和室で布団に入って寝ていたのでそのまま布団をたたんだのち、和室から出てご飯を研ぎ始めた。

 

 「あら、佑太さん。起きたんですか?」

 

 俺が6升もあった米を研いで全部業務用のおかまに入れて炊き始めたタイミングで鳳翔さんが食堂にやってきた。

 

 「えぇ。5時半ぐらいに目が覚めまして。それで自分の弁当を作るついでで朝飯も作ろうかな…って。」

 

 「それだったらお手伝いしますよ。」

 

 「あ~、それだったら自分は弁当のおかず作るんで朝食の準備をお願いできますか?邪魔にならないように隅の方でやってますんで。」

 

 「ウフフ。」

 

 「?どうかしたんですか?」

 

 「あ、いや。何でもないです。」

 

 「?」

  

 「それじゃあ、作っていきましょうか。」

 

 「ん~?ま、いっか。」

 

 俺は鳳翔さんの反応が気になって首を少しかしげたが、気のせいかと割り切って弁当を作るために動き出した。

 

 その日の朝は、俺が厨房に入っていたのが珍しかったのか、たくさんの艦娘が厨房に押しかけようとして包丁を持った鳳翔さんに追い出され、静かに朝食を食べる光景が見られることになった。

 

 なお、その間俺は妖精さんに絡まれて調味料の分量を何回か失敗することになったのをここで言っておく。

 甘い卵焼きを作ったはずなのに、その日のお昼に大学で食べたそれはなぜか塩っ辛かった……。

 

 そして時間は流れて………

 

 

「久しぶりに実家に帰ってきたなぁ~。今年の正月に帰って以来だから4か月ぶりか…。」

 

 俺は艦娘寮の自室に置いている荷物の中から一部を取り出し、ボストンバックに入れ、鎮守府から数十キロ離れた場所にある実家の前に立っていた。

 

「……………で、だよ………。」

 

 俺はそう呟いてから駅を出て以来ずっと気づいていた電柱に隠れているへたくそな尾行者のもとへ全力で駆け寄った。

 

「ぽいっ!?」「なになにー?」「あははは……。」「はいはーい!!」「てやんでぃ!!」「ご、ごめんなさい……」

 

 電柱の陰に隠れていたのは、ノースリーブの純白の制服を着たそっくりな青系統の色をしている髪を持つ少女が二人。茶髪や金髪、ましてや桃色の髪の色を持った黒い制服の上にカーディガンやマフラーをつけていたりしている少女が4人…… 

 

「なんでうちの鎮守府にいる時雨ちゃん以外の白露型大集合してんの?」

 

 どうやって俺についてきたのかはわからないけれど、電柱の陰には今うちの鎮守府に着任している白露型7人の内の時雨ちゃんを除いた6人が隠れていた。

 

 まぁ、全員電柱の陰という狭すぎるスペースに隠れ切れてなくって、春雨ちゃんに至っては完全に体ごと電柱の外に出ていたから怒るよりも先になごんでしまったのは隠したい事実だけど。

 

「こないだ詩歌ちゃんから話を聞いてお父さんのお母さんがどんな人なのか気になったのと……」

 

「お父さんの実家の部屋って面白いって詩歌ちゃんが言ってたから見に行きたかったっぽい!!」

 

 俺が一人内心でいろいろと考えていると、さっき尋ねたことに対して隠れていたみんなを代表して春雨ちゃんと夕立ちゃんが答えてくれた。

 

「許可は?」

 

「もうもらってるよ~♪」

 

 俺が許可を取ったのか聞いてみると、村雨が楽しそうにカーディガンの中から許可証と書かれた書類を取り出して俺に見せてきた。

 

「電車代は…?」

 

「憲兵に村雨が色仕掛けでせしめてたよな!!」

 

 と、涼風が楽しそうに頭の後ろに手を組みながら答えてくれたので

 

「村雨ちょっとこっちに来なさい。」

 

 俺はただそう言って村雨の頭をアイアンクローでひっ捕まえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなから離れた場所でくどくどと説教して村雨が灰になった後に、再びみんながいた場所に戻ると

 

「あらあら~、佑太帰ってきてたのなら早く言いなさいよ。こんなにかわいい子たちをいっぱい連れてきてお母さん困っちゃう。」

 

「…………母さん。ちょっとこっち来ようか…」

 

 どうやら、俺が実家に帰るまでにはいろいろと困難が立ちはだかりそうだ……。




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……月曜日についに筆記試験受けに行くぞーーーー!!!(一発で合格しなきゃ懐がやばい)

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