お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!!   作:先詠む人

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どうも、おはようございます。もしくはこんばんわ&こんにちわ。

あと少しで第1部が終わります。
その後はアンケートの回答にあった内容を書いていきながらほのぼのしていきたいと思います。


意外に優秀な…(by???)

「先ほど報告は聞いた…。すまなかったね。」

 

 大和さんに連れられて部屋の中に入った俺はいきなりあの元帥と呼ばれていた男性に頭を下げられていた。

 

「?何のことですか?」

 

 何で謝られているのかわからなかった俺が尋ね返すと

 

「君に暴行した男たちのことだ。まず君の誤解を解くために最初に言っておかなければならないのは、あの男たちの所属は憲兵隊ではない。別の秘密の組織の所属と言うことが分かっている。帰りの時は私の腹心の部下をつけるから安心してくれ。」

 

「は?」

 

 話し始めたその内容に何それ?何の責任逃れですか?と正直思って、それが顔と声に出てしまった。

 

「いきなり、憲兵さんの服着た男たちに拘束され、視界もふさがれてどこかわからない場所に連れてこられたかと思ったら半殺しにされてそれでその一言で納得しろと?運が良かったのか悪かったのか正直なところは俺にはわかりませんでしたが俺は殺されていてもおかしくなかったんですが!!!」

 

 俺は怒りを隠しきれずに後半は声を荒げながら元帥の胸ぐらにつかみかかろうとした……が

 

「おやめください!」

 

 掴みかかる前に俺は大和さんに首根っこをつかまれてその場に引き倒された。

 

「ご自身の命が脅かされたせいで気が立つのも元帥の対応に腹が立つのもわかります。ですが、話を聞いてください!!」

 

「………。」

 

「フゥー!!フゥー!!フゥー………」

 

 俺は普段あの子たちに見せない憤怒の表情で俺をそのまま押さえつける大和さんとその奥にいる元帥を睨み付けていたが、結局元々が怒りがそんなに長続きしない性格のせいで落ち着……

 

「……で、俺に用件って何なんですか?あの事件のことで俺が銃殺刑にされることが決まったんですか?そうでしょうね。あなたたち軍からしたら俺は民間人が勝手に機密に触れてしかも命令権に近いものを持った目の上のたんこぶよりもひどい存在だからでしょうねぇ。だから、今さっきだって半殺しにさせたり、提督として着任した奴に俺を鎮守府内に軟禁されたり、俺の家族と連絡を取れなくするように手配したんでしょうねぇ!!」

 

 ……く訳があってたまるか!!!

 

 先ほどの男たちの感じからして、俺はこのまま今度はこの建物に軟禁されてそのまま銃殺刑に処されるのだろうと確信していた。

 だから、例え目の前にいる人物がどんなに高位の軍人だとしてもどうせこの後殺されるのならもう不敬もクソもねぇと、毒を吐き続けていた。

 

 実際、あの事件の二日後に変態が来てから家族と連絡が軍を通してもできなくなった。

 それまではできていた鎮守府の外へ文ちゃんたちが欲しがっていたものを買うための外出すらできなくなった。

 最終的にはさっき殺されそうになった。

 

 そんなひどい目にさらされ続けているのにどう信用しろって言うんだ。温厚と昔からの友人から言われていた俺も、殺されかけたのにあんな簡単な一言で済まされたせいで堪忍袋の緒が切れていた。

 

 俺が睨み付けながら一方的にまくし立てているのを元帥は黙って聞いていた。そして

 

「……その件の解決を知らせることが君を今日ここに呼んだ理由なのだが、君は先ほどの一件のせいで完全に誤解してしまったようだね。」

 

 そう悲しそうに言うと

 

「大和、例のものを出して彼に渡してくれ。」

 

「はい。」

 

 そのような会話をすると、大和さんは俺を解放すると、今回は腰に付けたポーチから封筒を取り出して俺に手渡した。

 

「……これは?」

 

 俺が、むすっとした表情でそう言うと

 

「調査報告書と君がいる鎮守府の所属艦娘が書いた嘆願書の写しだ。その嘆願書によって私たちは動き出すことができたし、君の家族を保護することができた。」

 

「……は?」

 

 俺は数瞬固まって、急いで封筒の封を破り中身を取り出した。

 

「……………………。」

 

 報告書の内容は簡単に説明すると、A4用紙十数枚で、そのうちの半分は変態が行っている艦隊指揮のデータをまとめたものと現在の鎮守府の状態。そして俺が駆逐艦娘の子達と一緒にあいつから受けている不当な扱いについてまとめてあった。

 そして、残りの半分の内のさらに半分は俺の家族が監禁されていた軍施設についてまとめたものとその奪還戦の様子。さらには現在の家族の保護先の病院の場所と現在の容体が書いてあった。

 

 俺が報告書をそこまで見たところで元帥が

 

「これで私たちのことを信用してくれたかい?」

 

 と、声をかけて来た。

 

「えぇ、当座は……といった所ですが。それにしてもこの報告書のところどころに書いてある()()()って一体何なんですか?」

 

 俺はその言葉だけが全然わからなかったから聞いた。すると

 

「それは今君が持っている報告書の残りにまとめてあるじゃろう。それにその思想に取りつかれておるのを君は数人見ておるはずじゃが?」

 

「…………?」

 言っていることの意味が分からなかったが、結局俺は黙って報告書を読み進めることにした。

 

 すると、今の軍のいびつな様子を知ることができた。

 

 その報告書によると、今の海軍は艦娘を自立可能ないくらでも増産できる人型兵器と考える()()()と、艦娘たちは戦える力を持った少女であると考える()()()の2グループに分かれていて、そして目の前の元帥は人情派のトップ。俺があの事件の時に会った前の提督と今の提督は兵器派だということが書いてあった。

 

(……だから、あの時あの男はあんなことを………)

 

 その一文を見て、俺の脳裏にはあの男が憲兵さんに連れて行かれる時の記憶がよみがえった。

 

『……虫けら。お前はなぜ兵器側から触られているのに嫌がらない?なぜ兵器に好感をもたれているのに力づくで抑え込もうとしない?なぜ………なぜおまえは人型兵器にそこまで入れ込むんだ?』

 

 目を血走らせ、狂人のような顔をした男は憲兵が引っ張るのに抵抗して夕立に抱き着かれている俺(その頃にはいろいろと説明を受けた後だったから何だかんだと開き直っていた)の前で立ち止まり、そう言った。

 

『は?あんた何言ってんの?兵器がこんなに暖かいわけないじゃん。』

 

 俺は背中に抱き着いてくる夕立のほっぺをつついて

 

『こんなに柔らかいはずもない。だからこの子は女の子だろ。証明終了、そんなことしか言えないあんたと話すことはねぇよ。』

 

 そう言ってから俺はあくびをかみ殺した。

 

『おら!行くぞ。』

 

 憲兵さんが男に付けられた手錠に巻きつけられた縄を引っ張り、進むよう催促した。

 

『最後に……』

 

 すると、男は俺の方を睨み付けながらそう漏らした

 

『あ?』

 

 俺が反射的に聞き返すと

 

『最後に一つ問わせてもらう。お前はこの子たちが兵器だと確信したときはどうするつもりなんだ?』

 

 そんな一番聞きたいことが全く分からない質問をしてきた。だから俺は

 

『……何が言いたいのか本気でわからんけど、一応答えてやる。たとえ兵器だとしても俺をこんな風に慕ってくれてるなら受け入れる。そんだけでそれ以上も以下もねぇよ。』

 

 そうやって答えてから背中に抱き着いて今度は俺の耳を甘噛みし始めた夕立の頭を撫でて止めさせた。

 

『…………そうか。ならせいぜい後々後悔するんだな。』

 

 俺の答えを聞いて男はそんな捨て台詞を履いてから憲兵さんに連れていかれて行った。

 

『……知るかよそんなこと。』

 

 俺はそうその場でつぶやいてあの男が連れていかれる光景をただ見ていた。

 

 

 

 

「何やら回想に浸っているところ悪いんだが、彼女たちが来た様だから紹介させてもらおう。入ってきたまえ。」

 

 あのときの記憶を思い出しているさなかにそんな元帥の声で俺は現実に引き戻された。

 

 元帥は俺が現実に返ってきたのを確認した後、扉の方を向いて外にいる誰かを部屋の中へ呼び寄せた。すると扉から入ってきたのは

 

「どうも~、お前が例の子クマか?球磨は意外に優秀な球磨ちゃんだクマ。」

 

「隠密行動が得意な多摩だにゃ?」

 

「さっきは助けるのが遅れてごめんね~。って大井っち近いよ~」

 

「北上さん!!北上さん!!」

 

「お、あの時は世話になったな。木曾だ。」

 

「………は?なんでここに居るの木曾さん!?」

 

 入ってきた5人の女性たちの内の2人は俺と顔見知りだった。

 

 さっき俺をこの場所へ連れてきた同じ鎮守府所属のはずの北上さん。

 俺が鎮守府に軟禁され始めたときに、俺が今釣りをしている場所で「姉さんたちのバカやろーーー!!」と叫んでいるのを偶然見かけたせいで相談に乗ることになった北上さん同様に同じ鎮守府所属のはずの木曾さん。

 

(北上さんはともかく何で今哨戒任務中で昨日の夜から出ているはずの木曾さんがいるんだ?)

 

 いきなりの展開に混乱しきった俺のそんな疑問に答えてくれるかのように、元帥は微笑みながら

 

「私の優秀な部下たちだよ。」

 

 と言いきったのだった。




その頃、鎮守府正面海域から海岸線に沿って数十キロ離れた辺りでは…………

「ポイ~~~~~!!!!!!」

金色の髪をなびかせ、目を赤く光らせて、マフラーを翻しながらある少女がそう吠えつつ佑太がいる建物へとすさまじい勢いで迫っていることに誰も気づいていなかった…。

感想、評価を楽しみにしています。

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