お父さんが鎮守府に着任しました。これより私たちのお世話を始めます!! 作:先詠む人
どこまで行けるかなぁ……( ̄▽ ̄;)
今回は、前に文ちゃんに怪我をさせた犯人の正体と佑太を物陰から見ていた子の正体が判明します。
それと、たまに出てくる
既に作中時間では銃殺されています。
それと、今回は残酷な描写があります。
そこをわかった上で読んで欲しいのと、そろそろほのぼのが欲しくなってきたのでみんなのヘイトを集めるくそ野郎が天誅を受けることをお伝えします。
それではどうぞ。
「そう言えば聞きそびれていたんですが………」
今朝のある意味での惨劇からようやく解放された俺は、食堂で同じテーブルになった神通さんにそう切り出された。
「あの子に似たような存在を私はどこかで見たことがあります。それもどこかの海域で。」
「もし、あの子が深海棲艦だとしたら佑太さん。あなたはあの子をどうするんですか?」
俺は、悲痛そうな顔をしながらしてきた神通さんのその質問に対して
「そんなの決まってますよ。」
と前置きしてから
「たとえ深海棲艦だったとしても俺を慕ってくれるんなら受け入れる。そんだけです。それじゃあ、俺はあのクソ野郎に言われた用事があるんでこれで。」
と答えてから朝食が載っていた空になった皿を載っけたお盆を持って立ちあがった。
「ふぅ……佑太さんはあの時と全く変わってなくて良かったです。」
私、神通は佑太さんの答えを聞いて安心しました。
さっき佑太さんにした質問は、あの事件の時に消えた男が連れていかれる最中に佑太さんに問いかけた質問でした。
あの時は先ほどした質問の深海棲艦の所は兵器でしたけど、佑太さんはその時も先ほどとほとんど変わらない答えを私たちみんなの前で言いきってくれました。
「もし何かがあったとしてもあの人には変わらないままでずっといてほしいですね………。」
私はそう言ってから小鉢に入ったほうれんそうのお浸しをつついたところで白露型の子達が集まっているテーブルからこんな声が聞こえてきました。
「それでゆ・う・だ・ち?あなた何でこっそり部屋を抜け出してお父さんの部屋に起床ラッパの前に居たのかしら?」
「え?お父さんと一緒に散歩に行きたかっただけっぽい?何か問題でもあるっぽい?」
「おおありよ!!!抜け駆け禁止って前にみんなで約束したでしょ!!!」
どうやら白露型の子達の間で何か取り決めがあったみたいですが、それを夕立さんが破ったようですね。
それだけならば私も、この食堂にいるみんなも特に気にしなかったんですが……
「そうっぽい?五月雨はどう思うっぽい?」
夕立さんが五月雨ちゃんに話を振った瞬間、時雨さんさんから得たいの知れないオーラみたいなものが流れ出し始めたのに私は気付きました。
「え!?私は……その…「五月雨は何だかんだであの人の部屋に行くことが多いから五月雨に聞いても意味無いよ。」………あぅぅぅぅ。」
急な質問に吃り始めた五月雨さんに被せるかのようにいきなり時雨さんは喋りだしました。
「し、時雨!!そんな言い方するなんていけないじゃないの!!五月雨に謝りなさい!!」
そのあまりの言い方のひどさに白露さんが怒って時雨さんに謝るよう促しましたが、
「……そうかい?まぁ、いいさ。僕は用事があるからこれで。」
そんな白露さんの剣幕をさらりと流して時雨さんは立ち上がり、食堂から出ていこうとしました。ですが………
「待つっぽい。」
目を赤く染めた夕立さんが時雨さんの前に立ちはだかって道を塞ぎました。
「何だい夕立?僕は忙しいんだ。だからそこを退いてくれ。「まだ引きずってるの?それで納得ができないからお父さんを慕う子達に嫌がらせしているの?」………何のことか分からないね。邪魔だから本当に退いてくれ。」
「…………どかない。時雨の本当の気持ちを聞くまではここを通さない。お姉ちゃんたちも春雨たちも協力して。」
「夕立……。君には失望したよ。」
暫く問答を続けた後に、時雨さんはいきなり艤装の砲塔を展開すると同時に夕立さんに向けました。
これは流石に私たちも見てられないので動き出そうとしましたが
「そんなもんで私は止まらないよ?だって私はお父さんの最初の娘だから!!」
そう言った刹那で、時雨さんの射線から体をずらして夕立さんはどこからか取り出した小太刀を時雨さんの首筋に当てていました。
「なんで文ちゃんに軽巡の人たちの格好をして怪我させたりしたの?私もそれを聞くまでは動こうとは思わなかったよ?」
小太刀を首筋に当てながらそう尋ねる夕立さんに時雨さんは夕立さんからはそっぽを向いて
「もう………………もういっそのこと殺してくれよ!!あの人を慕っていた仲間はもう一人もいないし、結婚を誓ったあの人まで居なくなって僕にはもう生きている意味がないんだ!!なのに呑気にしている彼女達が憎かった!!恨めしくて仕方なかった!!何がいけなかったんだ!?僕はあの人と幸せに生きていたのに!!」
涙を流しながらそう叫びました。
恐らく時雨さんは、自分が泣く顔を誰にも見せたくなかったからそっぽを向いたんでしょうけど、その角度だと私たちに見えてます。
それにしても、やはり時雨さんにあの事件で刻まれた心の傷は深かったんですか…。
………あの事件の時にこの鎮守府に登録されていた艦娘の中で駆逐艦の子達は数十名いましたが、実際は時雨さんを除いて全員捨て艦、若しくはあの男の虐待の対象となっていました。
その頃の私たちは自分の心が死ぬのが嫌で他の人のことを全く考えていなかった為に気づいていませんでしたが、あの男の趣味として生きたまま解体された子も居たそうです。明石さんはあの男の指示でそれをさせられ続けて発狂しかけたと以前言っていました。今でも希にその時の叫び声などが夢に出てくるそうなので、睡眠薬から手を離せないそうです。最近は佑太さんのお陰で飲む頻度は減ったと言っていましたから大丈夫だと思いますが……………。
……そしてそのような経過を経た結果、あの事件が起きた日にデータ上ではなくて、この鎮守府に実際に所属している駆逐艦の子達はもう既に夕立さんと時雨さんしか残って居ませんでした。
しかし、その夕立さんはあの事件の日に産まれたために、居たという扱いになっているだけで本当はそれまでの鎮守府のことを私たちから聞いたレベルでしか知りません。
そしてこの鎮守府にずっといたにも関わらず、何故時雨さんは何もあの男にされなかったのかというと彼女があの男の秘書艦であるのと同時にケッコンカッコカリを唯一済ませた艦だったからです。
それだからでしょうか、彼女は指輪を貰ってから1度も執務室から出ることはありませんでした。
そして、何時も幸せそうに笑っていたんです。
そんな幸せそうな時雨さんに対して私……いや私たち現在もこの鎮守府にいる生き残り組は、大破しようと、どうなろうと高難易度海域に放り込まれ、それでも何とかして生き残っていました。
そして、運命の1月の最終週の日曜日。
相変わらず地獄のような日々が続くなかであの事件が起こり、あの男は憲兵に連れていかれることになりました。そして、佑太さんがここにやって来たんです。
時雨さんは未だにあの事件のことを引きずっているようですね………。
私はこのままわだかまりがあるままだといけないと思ったので立ち上がり、彼女達の方へ歩き出しました。
感想、評価をよろしくお願いします。
感想で質問が来たのでここに答えを書いていこうと思います。
Q.時雨とケッコンカッコカリしたのとみんなを虐待していたのは同一人物か?
A.はい。残念ながらその通りです。
時雨の前では仮面を被って好い人を演じていましたが、他のみんなの前ではその残虐な本性を発揮していました。