超次次元ゲイムネプテューヌRe:birth2~黒き魔女の転生記~ 作:佐久間 優
“ひっく…うぇっ…ひぐっ”
“娘よ…何故泣いている?”
声の方を見ると巨大な魔神が不思議そうにわたしを見つめていた。
“みんな…わたしを怖がるの…化け物って…”
”何故だ?普通の人間にしか見えぬが……“
そう言う魔神に触れ、私の体が光に包まれ魔神と同じ姿になる。そして直ぐに元の体に戻る
”わたしはね…誰かに触れるとその人に変わっちゃうの…だからっ…パパもママもわたしを捨てたの……っ“
”そうか……だがお前は化け物ではない“
”え……?“
”それは立派な個性ではないか“
”個性…?“
”あぁ…お前だけの力だ“
そう言って目の前の魔神はニカッと笑った。怖がらず受け入れてくれた……今までみんな怖がっていたのに…
”だから胸を張れ。どうだ羨ましいだろって自慢してやれ、お前を疎む奴が居たら俺が追い払ってやる。だから元気を出せ!“
”ありがとう……貴方の名前は?“
“俺か?俺は炎の魔神…イフリートだ”
「…っ!」
目が覚めると見慣れた客間に居た。今のは夢か……
「あいつと初めて会ったときの……懐かしいな」
あれ以来、忌み嫌っていたあの力を受け入れる事が出来た……まぁ、それはさておき
「倒れたんだったな……はぁイストワールに会いたくないな」
「誰に会いたくないんですか?マジェコンヌ」
呟いた瞬間、地の底から響いたような声が聞こえた……振り向きたくない。そんな心境を読んでいたかのように、イストワールは私の目の前へと飛んできた
「全く、貴女という人は!無茶をするなと言ったばかりだというのに、大怪我をして!どれほど心配を掛ければ気が済むんですか!」
「すまない…」
「謝るんだったら約束の1つくらいちゃんと守ってください……っ」
ジッと私を見つめ、イストワールは言った。心の底から案じているのを感じさせる眼差しをしていた
「分かった。約束は2度と違わないと誓おう。お前の泣き顔は見たくないからな……」
「な…泣いてなんかいません!私は今怒っているんですよ!」
顔を真っ赤にして否定するが瞳にはうっすらと涙が溜まっているので説得力は皆無だ
「ふ…相変わらず嘘が下手だな、イストワール」
「私は嘘を吐かない主義ですから」
零れ落ちそうな涙を指で拭い語り掛ける。恥ずかしいのか顔を背け、拗ねたように言葉を紡いだ。そんな彼女を愛しいと思う
「それよりイストワール、あれからどれくらい経ったんだ?」
「3日です。全く無理し過ぎですよ」
「そうか…あれから犯罪組織に動きはあったか?」
「ここ3日間、目立った行動はしていないわ。別な国で活動している仲間からも今のところ大人しいって聞いたわ」
扉が開き、声が聞こえる。アイエフ、コンパ、ネプギアの3人が部屋へと入ってきた
「アイエフ…」
「目が覚めたみたいね。全く急に倒れるんだもの……吃驚したわ」
「すまん…迷惑をかけた」
「まぁ良いんだけどね……」
「それにしても3日で殆どの怪我が治るなんて…吃驚したです」
「ストレガさんがあの魔神…イフリートでしたっけ?あんなのを使役していた事の方が吃驚ですけどね。随分親しげだったけど、どういう関係なんですか?」
「気になるか?」
「え?まぁ……はい。でも無理にとは言いませんけど」
「良いだろう…その前に私の能力について知ってもらわないとな……ネプギア、ちょっと姿を借りるぞ?」
「はい……え、姿って?」
困惑するネプギアに触れ、体が光に包まれる。久しぶりだな…この感覚
「一体何が……え」
「ぎあちゃんが…2人居るです」
「これが私の能力。他人の姿や力を複製し自身の力として使える…言わばコピー能力だな。この力の所為で幼い頃、化け物扱いされてな」
「そんな…ひどいです」
「まぁ、普通は気味悪がって当然よね」
「そうだな、人は自分の理解を越えたものに遭遇した時、大抵は理解より拒絶するからな……。気が付いたら私は孤立していた。友達どころか親にすら見捨てられて途方に暮れて泣いていた。そんな時さ、イフリートに出会ったのは」
“あの時のお前は何かあるとすぐ泣き出したな”
「…イフリート、勝手に出てくるな。そして余計なことは言わなくて良い」
全くコイツは…デリカシーというもの知らんのか
「まぁともかく、その時に私とイフリートは契約を交わした」
“契約内容がまた可愛くてな、確かずっと
側に居て欲しいって…あだだ!?”
「余計な事を喋るのはこの口か!?」
“すまん!もう喋らんから止めてくれ!”
渋々、イフリートの頬を引っ張っていた手を離す。次に余計な事を言ったらどうしてくれようか
「お前は少しプライバシーというものを知れ」
“むぅ…冷たいな。まぁ良い。病み上がりのお前の魔力を消費するのも悪いしな、時に女神候補生よ”
「あ、はい。なんでしょうか」
“意地っ張りで淋しがり屋の愛しい娘を…頼んだぞ”
「な…イフリート!」
そう言い残しイフリートは消えた。最後の最後に余計な事を……
「え?娘…?」
「誰の事ですか?」
「……私しかいないだろ」
「「「えぇぇっ!?」」」
イストワール以外の3人が驚き、声をあげた。驚き過ぎではないか?
「やはりお前は知っていたか、イストワール」
「えぇ、貴女の次元のイストワールとは記憶を共有していますから。まぁ最初は驚きました。魔神が人の子を育てたなんて聞いたこと無いですから」
「まぁ普通はそうだ。泣いている私を放っては置けなかったらしい。だからアイツには感謝しているんだ……今こうして『人』として生きていられる事をな…」
「そうだったんですか…何だか素敵ですね」
「その言葉、イフリートには直接言ったことは?」
「有るわけないだろ……」
「駄目ですよ、感謝の気持ちはちゃんと伝えなきゃいけませんよ」
「だが今更な気もするし……それに」
「それに……なんですか?」
「面と向かって言うのが恥ずかしい……」
「ぷっ…」
「……笑うな」
「ごめん、ちょっと安心しちゃって」
「は…?」
「ちょっと変わった力があるだけで私達と何も変わり無いんだってね」
「…気味が悪いとは思わなかったのか?」
内心は嬉しいのだが、素直ではない私はひねくれた言葉を吐いてしまう
「そんな事無いです、凄いなって思いました。ストレガさんは初対面の私を助けてくれた、そんな人をそんな事くらいで嫌ったりしません」
そんな私に対してネプギアは真っ直ぐ私を見つめ言う…臆面なくそう言えるのはアイツと同じか。流石、姉妹だな…
「イフリートが言ってたように意地っ張りみたいだけどね」
「五月蝿い…放っておけ」
茶化すように言うアイエフの言葉に、顔が熱くなり、顔を背けた……だが嫌な気分では無い。やはり人との繋がりは暖かいな
「ストレガさん 」
「どうした、ネプギア」
「あの…迷惑掛けたり、足引っ張ったりするかもしれませんけど…これからもよろしくお願いします!」
私を見つめ真面目な顔でネプギアは言った。全くどこまでも律儀だな
「あぁ、私の方こそよろしくな?ただ…」
「みにゃっ!?ふぁにふるんれふかぁ…」
「もう少し肩の力を抜いた方が良いぞ?」
そう言い、ネプギアの両頬を摘まんでいた手を離す。全部とは言わんが少しは姉を見習った方がいいな
「そうね、あんたはちょっと頑張りすぎるきらいがあるからね……あ、電話だ。もしもし…え?本当に!?うん、分かった…気を付けて」
「どうしたんですか?」
「ラステイションで下っ端らしき人物を見かけたった仲間から連絡が入ったの」
「そうか……手遅れになる前にも向かわんとな」
「マジェコンヌ……無茶はしないでとは言いません。どうせまた破られてしまいますからね」
「すまん…」
拗ねたように言うイストワール。事実だから反論できん……
「ただ…これだけは必ず約束して下さい。どんなに無茶して傷付いても、必ず此処に……プラネテューヌに帰ってくると」
「分かった。決して違わぬと誓おう……必ずお前のもとに帰ってくるよ」
「かならずですよ。では…気を付けて」
「あぁ…皆、行くぞ。手遅れになる前にな」
「「「はい!(えぇ)」」」
決意を新たに次なる目的地、ラステイションへと目指すのだった……
女神のオラトリオend…next”第2章 相剋のインターセプション“