教官   作:takoyaki
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外伝その2です。



大変、お待たせしました。




申し訳ありません!!


てなわけで、どうぞ!


(来い!俺の青春!)

「…………」
ベイカーは、部屋に戻るとそのまま倒れた。
薄汚れ打ち身だらけのベイカーは、そのまま起きあがらない。
「おかえり。遅かったな」
「…………ただいまエラリィ」
ぐったりと力なく返すベイカー。
同部屋の二人は、基本的にエラリィの方が部屋に戻っている。
「大丈夫………には見えないな」
「あ、やっぱり?」
「とりあえず、風呂入ってこい」
タオルをベイカーに放り投げる。
「…………わかった……」
ベイカーは、タオルを頭に乗せてズルズルと這いつくばって進んだ。
エラリィは、そんなベイカーを見て首を傾げる。
そして、ポンと手を叩く。
「そうか、ナメクジに似てるんだ!」
「お前、覚えてろよ」
ベイカーは、それだけ返すと風呂場へと向かっていった。







◇◇◇◇◇





「それで?結局今日はどうだった?」
「ルイーズ教官にボコられた」
「期待を裏切らないな、お前は」
もぐもぐと口に飯を運びながらエラリィは、どうでも良さそうに返す。
因みに今日の飯はカレーだ。
ハズレのない食事として人気の高いメニューだ。
その言い草にカチンと来たベイカーは、額に筋を浮かべる。
「そりゃあ、お前はそんなことないよな!技師として入ったんだから!ルイーズ教官の無茶苦茶な罰だって、全然関係ないもんな!」
「主にその罰を受けてるのは、お前だ。周りを見てみろ」
「ぅぐ………」
エラリィは、淡々と返す。
そう言われてしまえばベイカーも黙るしかない。
そんなベイカーに構わずスプーンを運ぶ。
「にしたってさ!訓練終わった後もこんな自主練メニューを用意してんだよ!おかしいでしょ!!」
そう言ってベイカーは、自分の練習メニューを机にドンっと乗せる。
エラリィは、カレーを運ぶ手を止めて、書類を眺める。
「へぇ………これはこれは………」
「訓練終わった後も予定がびっちり……ハァ………薔薇色の青春くらい望んでもバチは当たらないと思うんだけどなぁ……」
「まあ、お前の返り血で薔薇は真っ赤だ。よかったな薔薇色の青春だ」
「ソダネ」
ベイカーは、そう返すとさっさとカレーをすくい始めた。
エラリィは、ため息を吐く。
「単純にルイーズ教官への闇討ちを止めればもう少し、違う生活が送れるはずだがな」
「それは無理」
「お前、そんなにルイーズ教官に辞めて欲しいのか?」
エラリィの質問にベイカーは、スプーンを止める。
「別に悪い人ではないだろ。まあ、いい人でもないが」
「教官いたら殺されるぞ、お前」
エラリィは、肩をすくめる。だが、話を止める気は無さそうだ。
ベイカーは、顔をそらせる。
「負けっぱなしは、嫌なんだよ」
ベイカーのポツリとした言葉にエラリィは、黙って耳を傾ける。
「俺、結構自信あったんだよ。実際憲兵相手に勝ったしさ、だから、ルイーズ教官にあっさり倒された時は、全部ひっくり返った」
思いの外、子供っぽい理由をエラリィは、笑わずに聞いている。
「だから、なんとしても勝ちたい!そう思うのは自然だろ?」
エラリィは、眉間を揉む。
「なんだよ」
そんなエラリィが気に食わず思わずぶっきらぼうな口調になる。
エラリィは、肩をすくめる。
「別に。ただまあ、何となく色々わかった」
「雑だなぁ……本当に分かってんの?」
「まあな。それより、ルイーズ教官の移動の経緯って知ってるか?」
エラリィの質問にベイカーは、首をかしげる。
「さあ?聞いたことないな………」
エラリィは、ベイカーの反応を見て眉をひそめた後首を横に振る。
「何でもない。忘れてくれ」
「よく聞く台詞だけど、それで忘れられるほど、出来た脳みそした奴っているの?」
ベイカーは、呆れたようにエラリィを問い詰める。
「何かルイーズ教官の秘密を知ってるの?」
エラリィは、身を乗り出すベイカーにスプーンを投げつける。
ベイカーは、飛んできたスプーンを掴む。
「僕も噂を耳に挟んだだけだ。脳筋のクセに噂話が好きなのか?」
エラリィは、ジロリと睨みつけるとベイカーは、降参したようにスプーンを返す。
「………まあ、確かに本人から聞くのが一番だよね。言わないってことは、それなりに理由があるってことだし」
「ま、そう言うことだ」
エラリィは、返されたスプーンを使ってカレーをすくいながら言葉を続ける。
「とにかく、ルイーズ教官は女性であんななりだ。ナメられる要素は、少しでも減らしておきたかったのだろう」
エラリィの考察にベイカーは、カレーをすくいながら考える。
「その言い方、ルイーズ教官の秘密がまるで弱味みたいに聞こえるけど………」
「解釈は、お前に任せる。それを知った時、お前が、どんな行動をとるのかもな」
そう言うと皿に残った最後のカレーをエラリィは、口に運んだ。
「また、意味深なことを………」
「………まあ、そのうち、教官に聞くまでもなくわかるだろうがな」
エラリィは、席を立って食器を片付けに行った。
「あ、ちょ、ちょっと待てよ!」
ベイカーは、慌てて全部飲み込むとエラリィの後を追った。








◇◇◇◇






部屋に戻るとベイカーは、柔軟をやっていた。
これもルイーズの自主練メニューの一つだ。
そしてエラリィは、本を読んでいる。
眼鏡をかけ、本を読む姿は中々に頭脳派。
様になっている。
なっているのだが、それと同時に見たくないものまで目に入る。
「………あのさ、エラリィ」
「なんだ?」
「いい加減自分の机の上片付けない?」
そう言われて指差された場所はごちゃごちゃと何かが積み上がっていた。
大部分は本だが、その中にはノートやら何やらが見える。
それだけ沢山のものは見えるのに机の木の板が全く見えない。
「せめていらないものは捨てるとかさ……」
「捨てるものはない。すべて俺に必要なものだ」
「………あぁ、そう。先週から全くその山の形変わってないけど」
つまり使っていないということだ。
「どこに何があるのか分かってんの?俺はイヤだよ、また夜中にお前の探し物手伝うの」
「安心しろ。今度は早朝にやる」
「いや、そうじゃなくて!!」
そう言って更に注意をしようとしたが、エラリィの部屋着が目に入る。
同じ部屋になった時からずっと聞きたかったことだ。
「それとさ、そのTシャツなに?」
白いTシャツに赤いヒトデがプリントされている。
「砂浜戦隊サンオイルスターレッドを知らないのか!?」
「いや、知ってるけど………小さい頃見てたし……」
「愚か者!!いいか!砂浜戦隊サンオイルスターとは、子供だけではない!大人もハマる重厚なストーリー!子供理解してんの?と言うようなネタ!更に大人でも引くような鬱展開!しかし、それでいて子供心を掴むストーリー!これが、魅力なのだ!!」
熱く語るエラリィをベイカーは、冷めた目で見ていた。
「なんだその目は!だいたい、今時子供でも見ているんだ!何故お前は見ていない!?」
どうやらスイッチが入ってしまったようだ。
お気に入りのTシャツまで引っ張りだして来た。
黙っていればモテそうな顔つきなのにこういう所があるからダメなのだ。
(……何で俺の周りはこんなのばっかなんだろう………)
これから小一時間は、サンオイルスターの魅力を寝るまで語られるのだろう。
そう考えるとげんなりしてくる。
自分にとって興味のない話を熱く語られるほど、辛いものはない。
ベイカーが睡眠時間を削る覚悟を決めた瞬間、部屋備え付けの電話が鳴り響いた。




ナンバーディスプレイにある番号を見てベイカーは、首をかしげる。
「どこだろう?これ?」
訓練生の間はGHSを回収されてしまうためこの電話を使うしかないのだ。
エラリィは、黄色のヒトデが書かれたTシャツを持ちながらディスプレイを見る。
「ふむ。これ女子部屋の番号だ」
ホームズに衝撃が走る。
「女子………!一体誰が!?何のために!?」
慌てるベイカーを他所にエラリィは、顎に手を当て考える。
残念ながらTシャツは、赤いヒトデのままだ。
「こんな話を聞いたぞ。夜女子部屋から電話がかかってくる」
「ほうほう」
「女子がいったい何の用かとおもい電話に出る」
「それでそれで?」
「するとこう言うわけだ『ずっと前から好きでした。付き合ってください』と」
「マジか!!お前の女声気持ち悪いけど、マジか!!」
「今二人は、付き合いお前で言うところの薔薇色の青春を送っているらしい」
エラリィの言葉と同時に電話に出る。
(来い!俺の青春!)








「『やっほー!ルイーズ教官だ………』」










速攻で電話を切った。










「おい、ベイカー………?」
「あぁ、イタ電だった。悪ふざけの塊が電話してきた」
そんな事を言っていると再び電話が鳴る。
ベイカーは、渋々受話器を取った。
「もしもし」
「『やっほー。ルイーズ教官だよ〜。おやすみからおはようまで、あなたの教官ルイーズだよ』」
「やめて下さい。寝かさない気ですか?」
普通は、おはようからおやすみだ。
「『さっきは突然切れたからびっくりしちゃったよ〜。電波悪いみたいだねぇ』」
「ソウデスネ」
ベイカーは、イライラしながら返す。
「それで、本題は?まさかおやすみなさい電話するためにかけてきたんじゃないでしょ?」
「『リクエストするなら、やってあげてもいいよ』」
「遠慮しときます。寝つきが悪くなりそうなんで」
「『じゃあモーニングコール』」
「朝から教官の声は聞きたくないです」
「『つれないねぇ……私泣いちゃう!』」
受話器の向こうからは、下手な嘘泣きが聞こえてくる。
ベイカーの受話器を握る手が強くなる。
「いいから!本題は?!」
「『敬語』」
「………本題は何ですか……!」
イライラ最高潮のベイカーに構わずルイーズは、ようやく本題に入る。
「『渡したいものがあるから、今すぐ共同ルームまで来ておくれ』」
 男子寮と女子寮で分かれそれぞれ異性立ち入り禁止にているこのエレピオス軍の寮の中で、唯一両者がいることが許されるスペースだ。
 しかし、時刻は午後十時を回る。
 特に今日は疲れたので、ベイカーとしてはもう休みたかったのだが………
「今ですか?」
「『今です。じゃあ、待ってるよ』」
 どうやら要件は、それだったようだ。
 ベイカーは、すっぽかして寝てしまおうと思ったが、それをしてしまえば明日の訓練にどう響くか分かったものではない。
 ため息一つ吐いてベイカーは、決意を固めた。
「『あぁ、そうだ、ベイカー』」
「何ですか?」
「『告白電話でなくて残念だったねぇ』」
ベイカーは、無言で受話器を叩きつけた。











◇◇◇◇








 「遅い」
 「おかしい、俺の方がここに近いはずなのにどうして教官の方が早いんですか?」
 「女は秘密があった方がステキだろう?」
 ルイーズは、人差し指を口に当て面白そうに笑っている。
 「ソウデスネ」
 心が全くこもっていないベイカーの言葉にルイーズは、頬を膨らませる。
 そんなルイーズに構わずベイカーは、先を促す。
 「それで、何のようですか?」
 ベイカーの質問にルイーズは、顔を赤らめ突然もじもじとする。
 辺りには誰もいない。
 ちらちらとベイカーに視線を送りながら意を決したように拳を握る。
 「あ、あのね、実は前から君に渡したいものがあるの」
 「そういう小芝居いらないんで、必要なものをすぱっと渡して下さい」
 冷め切った口調で遮ったベイカーにルイーズは、つまらなそうな顔をしながら、紙を渡す。
 「どこで気づいたんだい?」
 「あんなキャラじゃないことやっといて、よくそんな自信がありますね」
 「ほら、ギャップだよ、ギャップ。どうたった?」
 「キャップで蓋して捨てたかったです」
 「次の訓練覚えていたまえ」
 「カワイカッタデス」
 ベイカーは、棒読みで返しながら紙を読む。
 紙には、部隊希望書と書かれていた。
どうやら自分の希望部隊を選んで書くようだ。
それぞれの部隊の仕事と隊長の名前が記されている。
 ルイーズは、ベイカーが読んでいるのを見届けると欠伸を一つして踵を返す。
 「んじゃあ、それ来週までに提出だからね~。忘れたらひどいよ」
 そう言って手を振りながら部屋による戻っていった。
 ベイカーは、それを見送りながらもう一度紙を見る。
 「………………?」
 思わず首を傾げてもう一度見直す。






 部隊希望書には、しっかりと太字で書かれていた、











 ルイーズ隊長と。





「ハァアアアアアアアアアアアアアア!?」
思わず叫ぶベイカー。
波乱の幕開けまでのカウントダウンが始まっていることをこの時の彼はまだ知る由もなかった。









軍の寮とかは、全部捏造です。


何となく、こんな感じかな?でまとめて、こんな感じだといいな?と思って作りました。



では、次回がいつになるか分かりませんが、お楽しみに!!