騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ   作:ポジティブ太郎

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4章 闇組織襲来編
二十九話 ダンジョン遠征再び


ここは、【ゴブニュ・ファミリア】の拠点地(ホーム)『三槌の鍛冶場』。

 同じ鍛冶系ファミリアである【ヘファイストス・ファミリア】に並ぶ規模を誇る。

 己の個性を前面に出した芸術気質な人が多い【ヘファイストス・ファミリア】に対して、依頼主の要望に忠実に応える職人気質な人が多いのが【ゴブニュ・ファミリア】の特徴でもある。

 それ故に苦労が絶えない……

 

 

「ねぇー、私の大双刃(ウルガ)直った?」

「……あぁ、直ってるよ。2日徹夜でアダマンタイトを鍛えてな。言っても聞かんと思うが……次は絶対に壊すんじゃないぞ! 絶対にだ!!!」」

「うん、分かった! ありがとねーー」

 

 男三人がかりでようやく持ち上がる程の重さの大剣を片手で持ち上げるティオナ。

 そのまま鼻歌交じりで踵を返す。

 

 

 その隣に立っているのは、アイズ・ヴァレンシュタインと【ゴブニュ・ファミリア】主神ゴブニュ。

 重々しい雰囲気が場に漂う。

 無言で見つめあう中ゴブニュが口を開いた。

 

 

「また、壊したのか………」

 

 ビクッと肩を震わせる。

 冷や汗をかきまくりながら、恐る恐る腰元から一本の剣を取り出すアイズ。

 

「はい……」

 

 それは、修理に出していた愛剣デスペレ―トの代わりである代剣。

 ――そう、【ゴブニュ・ファミリア」から借り受けた物だ。

 

「あれ程大事にしろと言ったのにな。お前は少しも言うことを聞いてくれない」

「すみません……あの、弁償します」

「…………4000万」

「えっ…………?」

「この剣の代金だ。お前に払えるのか………?」

 

 払えるはずがない。

 最上位ファミリアの幹部といえど4000万などという大金が直ぐに手に入る当てなどなかった。

 非情な現実に打ちのめされ、顔を俯かせるアイズ。

 そんな彼女の下に救世主が現れた。

 

「――どうぞ、ここに500万ヴァリス入っています」

「お前は………?」

「【ロキ・ファミリア】のアルトリア・ペンドラゴンです」

「なるほどな……お前が」

 

 

 目を細めて、何かを察するような表情になる。

 

 

「剣の代金には及びませんが、頭金という形で受け取ってもらえませんか?」

「………………………」

 

 ゴブニュは、アルトリアの隣に佇むアイズを静かに見つめる。

 過去の彼女は、全て自分で何とかしようとしていた。いや、せざるを得なかった。

 助け合える仲間がいなかったから。強さを求めるためには、自分と向き合うことだけでよかったから。

 

 

「――いらん。剣の代金は払えるときに返しにくればいい」

「……ありがとう、ございます」

「それと……ほれ、持ってけ」

 

 ゴブニュは、修理済みのデスぺレートを手渡す。

 礼の言葉を告げて、店から出ていく二人の背中を目で追う。

 

 

 

「剣のように尖っていた小娘だったが……そうか、お前にも仲間ができたのだな……」

 

 顔には微笑が浮かんでいた。

 娘を見守る父のような……そんな温かな表情だった。

 

 

 

*******************************

 

 

「アルトリア。ごめんね……」

「いえ、私も普段アイズに助けてもらってますから」

 

 ホームへ向かう道中、先の件について話していた。

 

「でもアルトリア、そんなにお金持ってたっけ?」

 

 アイズの問いにアルトリアは答えた。

 深層遠征においての報酬金がありあまっていたこと。

 金を使うも『豊穣の女主人』で特盛スバゲッティを始めとした度々の食事(おやつ)代のみにとどまっていた事....

 

「アイズ、お金の件なら私も協力します。困った時は、私を......皆を頼って下さい」

「....うん。そうする、ね」

 

 アルトリアの言葉の温かさを噛みしめるように顔を綻ばす。

 

 

「――そーだよ! アイズはいつも一人で考えすぎだよ! いっつも難しい顔してるもん」

 

 ティオナが、後からアイズの肩をポンと叩く。

 そのまま何かしら思案する様な顔になり、名案を閃いたように顔を輝かせた。

 

「いい考えがあるんだけど! 深層に行けばお金稼げるじゃん!! 私もウルガの代金払わないといけないからさ」

「でも、行くならフィンに言わなくては.....」

「だったら、フィンにも来てもらえばいい!」

 

 ティオナの奔走さに呆気に取られる二人。

 団長が直について来るとは....考えにくい。

 

 ――が

 

 

「あぁ、いいよ。僕も同行させてもらおう」

 

 以外にもフィンは乗り気であった。

 

「最近、ダンジョンに潜ってなかったからね。団員達にも経験を積ませるいい機会だ」 

 

 挑戦的な笑みを浮かべ....

 

「――深層遠征の準備だ!」

 

 

 

 団長の決定に新たな冒険への期待に胸を膨らませる。

 だが、知る由もない。

 新たな『未知』が彼らを待ち受けていることを。

 

 

 


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