騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ   作:ポジティブ太郎

30 / 32
暫く振りの投稿です。忙しすぎて、執筆にあてる時間が……(汗)



二十八話 和解(後編)

「テメェ………!」

 

 ベートは、険しい表情で両の目を細める。

 二人の間に沈黙が訪れた。

 

 

 ――き、気まずい。

 よりにもよって、今一番会いたくない相手と会ってしまいました。

 

 

 件の冒険者ベートの登場に戸惑いを隠せないアルトリア。

 話さなければならないと自身を急かす思いに反し、重い口を開くことが出来ない。

 

 

「あの………」

 

 とりあえず何か言わなければと、言葉を発しようとしたアルトリアだったが……

 

 

「おい……少しツラ貸せ」

 

 ベートが一言静かに告げた。そのまま中庭へと歩いていく。

 アルトリアは、ベートの後を追う。

 館内へと繋がる外階段に腰を下ろす二人。普段人目につきにくい場所であるためだ。

 両者の間には、依然として緊迫した雰囲気が漂っている。

 

 

「俺は………」

 

 沈黙を破ったのはベートだった。

 言葉を続ける。

 

 

「俺は、テメェを雑魚だと思ってた。だが、俺はテメェに負けた」

 

 固く握られた拳が、微かに震える。

 

「戦う前から俺は、テメェに負けてたんだ。実力を見極める事もしなかった。テメェを雑魚だって言った事は謝る」

「ベート………」

 

 己の過ちを悔いるように口を歪める。

 だが、確固として譲れないとばかりに言う。

 

「今後、考えを変えるつもりはねぇ。雑魚は雑魚だ。この都市には、自分の力を過信した下級冒険者なんざ幾らでもいる。俺は、認めねぇ……絶対に」

「……………」

 

 ベートの揺るがない信条を目の当たりにしたアルトリアは、黙考する。

 これ程弱者を見下す……いや、認めない理由は何なのか?

 どんな経緯でこの様な考えを持つようになったのか?

 

「あなたが、何故そこまでして弱者を認めないのか……私には分かりません。ですが、今回の件で私とあなたの間に出来た蟠りを残したくありません。ベート、怒りにまかせた行動の数々許してくれますか?」

「あれは、ただの決闘だ。謝るんじゃねぇ」

 

 顰めっ面で苦々しく言葉を吐き出す。

 いつしか二人の間には、緊迫した雰囲気は漂っていなかった。

 アルトリアは、口元を微かに和らげた。

 

「テメェ……何笑ってやがる!」

「いえ……ベートあなたは、私が思っていたよりも素直な人だったんですね」

「あァ!! そりゃどーゆう意味だコラァァァァ!!!」

 

 今なら、ロキの言っていた「ツンデレ狼」という意味が分かるかもしれない。

 性格は、捻曲がっているものの根は優しい。そんな気がする。

 

 ギャアギャアと叫びちらしているベートに、アルトリアは笑いかける。

 

「ベート。昼食まで、まだ時間があります。どうです? 一緒に鍛錬でもしませんか?」

「……いいぜ。やってやらァ……おい、勘違いするんじゃねーぞ。あくまで、俺個人の為だ他意はねぇ。っておい! 何笑ってやがる!!」

 

 ――ほら、やっぱりツンデレじゃないですか。

 

 心の中で一人、アルトリアは呟いた。

 

 

*****************************************

 

 とある地下空間。

 松明の仄かな光に照らされる祭壇に座る巨躯の老人。

 それに向かい合って立っている全身を黒のローブで覆い隠す人物。

 二人の人物の姿がそこにあった。

 

「神ウラノス。良い知らせがある」

「何だ」

 

 ウラノスと呼ばれた老人は、彫刻のように表情一つ変えることなく応える。

 

「深層の件だ。使えそうな冒険者が見つかった」

 

 声音からは、興奮と期待の色が伺える。

 

「……冒険者の名前は?」

「アルトリア・ペンドラゴン」

 

 ウラノスの表情が動く。

 

女神(ロキ)の団員か」

「……ウラノス。接触の許可を」

「…………許可する」

「ありがとう」

 

 黒衣の人物は、感謝の念を伝え、地上へと向かう階段へと歩みを進めた。

 

「ウラノス。私は、驚いているんだ。外界の新たな可能性を。アルトリア・ペンドラゴン……彼女のような異端者が時代を変える。そんな予感がしているんだ」

 

 

 そう言い残し、闇の中へ溶け込んでいった。

 




ご読ありがとうございました。
次回以降からは、再び新章に入ると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。