騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ   作:ポジティブ太郎

25 / 32
皆様、あけましておめでとうございます!
年明け一日目に投稿できてよかったー。


3章 怪物祭編
二十三話 怪物祭


アルトリア着ぐるみ事件の翌日。

 迷宮都市オラリオは、熱気に包まれていた。

 【ガネーシャ・ファミリア】主催の『怪物祭』が行われる為だ。

 祭りの影響は、オラリオの最大派閥【ロキ・ファミリア】にも及んでいた。

 

「ねーー! 皆でお祭り行こうよ!」

  

 大食堂にて、一際大きな声を上げるティオナ。

 天真爛漫な様子で落ち着きなく足を宙に泳がせている。

 

「……ティオナ、あんた忘れたの? 今日、修理に出してた『大双刃(ウルガ)』の受取日よ』

「あーーーー!! そうだった!」

 

 膝から崩れ落ち、やりきれない表情を見せる。

 真横で妹の様子を白けた顔で眺める姉。

 

「ま、どのみち私は、遠慮させてもらうわ! だって、今日は団長とのデートなんだから!」

 

 ティオネの視線は、首脳陣の集うテーブル席に座るフィンに釘付け。

 フィン本人は、ティオネの急変した態度と最高潮に高まった自身の親指の疼きに身を任せ逃走を図る。

 疾風怒涛の勢いで爆走する両者。思わず周りの者達は、「やれやれ」といった感じに嘆息した。

 

 二人の様子を正面の席に座っていたアルトリアは、無言で眺めていた。

 隣に座るアイズが、含みのある顔で見つめている事に気づく。

 

「……アイズ。宜しければ一緒にお祭りに行きませんか?」

 

 アルトリアが、温かな笑みと供に告げた。

 言葉を聴いたアイズの表情が柔らかになったが、直ぐに曇ってしまった。

 アイズは、申し訳なさそうな顔で眉を落とす。

 

「ゴメン、ね。ロキの付き添いで少し出掛けないといけないから、午後からでいい?」

「勿論です! では、アイズ午後に一緒に回りましょう」

「うん。ありがとう、アルトリア」

 

 こうして、騒がしい朝は過ぎていった。

 

 

***************************

 

 東のメインストリート街。

 道脇には、【ガネーシャ・ファミリア】の紋章(エンブレム)の旗が立ち並び、所狭しと様々な屋台が並んでいる。

 片手には、野菜と肉の刺さった串料理。もう片方には、クレープ。

 料理屋台を悉く回りつくしている腹ペコ王がそこにはいた。

 

 

(手軽でありながら、どうしてこんなに美味しいのでしょうか!? あ~、クレープも美味しいです!)

 

 オラリオの料理は、中々に美味しい。ホームの料理人(コック)の腕も士郎ほどではないが、かなりのものですし。

 

 私は、料理を堪能しつつも次の屋台へと足を進める。

 すると、見覚えのある人物が視界の中に入ってきた。

 

 

 ん? あれは……ベル、でしょうか?

 道の往来で右往左往している白髪の少年――ベル。

 落ち着きがない様子で慌てている様に見えますね。声を掛けてみましょう。

 

「ベル、どうしたんです?」

「ア、アルトリアさんっっ!?」

 

 ビクリと肩を跳ねさせるベル。

 怖がられている、訳ではなさそうだ。少し驚かせてしまったのでしょうか?

 

「ごめんなさい。少し驚かせてしまいましたか?」

「いえっ! ち、ちがいます! あの、僕アルトリアさんを探していたところだったんです」

「……えっ? 私を……?」

 

 聞いてみれば、ベルは先日ダンジョンで私に助けてもらったお礼がしたかったらしい。

 全くベルは。本当に真面目過ぎる節があります……。

 

「【ロキ・ファミリア】のホームに直接伺うのは色々問題があったので。直接渡そうと思ってたんです。あの!これ、もし良ければ受け取ってください!」

「これは……?」

 

 

 梱包された箱の中身は、緑玉色(エメラルド)のブレスレット。

 鮮やかな色合いで、太陽の光を反射して緑色の光沢を放つ。

 

「あんまり高価な物じゃないんですけど……」

「いえ、あなたの気持ちが何より私は嬉しい。ありがとう、ベル」

「っっ! あは、はははは」

 

 ベルは茹蛸の様に顔を上気させ、壊れたように笑う。

 

 私は、少年の気持ちに言いようのない感情を抱いていた。

 これは……安心? だろうか?

 冒険者(ベート)の悪意によって、多少なりとも心に傷を負ったであろうベル。

 だが、こうしてベルの笑顔を見れている。

 

 私は、ベルに貰ったブレスレットを手首に付ける。

 その最中、何処からか視線を感じたが私は、それが誰なのか気づけなかった。

 見定めるようなその無遠慮な視線を。

 

 

**************************

 同刻。場所同じく東のメインストリート街。

 とある喫茶店の二階に、ロキとアイズ、そして【美の女神】フレイヤがそこにいた。

 料理を運んできた男性店員にフレイヤが流し目を送ると石の様に硬直してしまう。

 相変わらずの様子に嘆息しながらもロキは、話の本題を切り出す。

 

「なぁ、あんた。次はどんな子を狙っとるんや?」

 

 威嚇とばかりに、ドスを効かせた声。

 フレイヤの行動の変化に不振を抱いた為だ。

 突然の神会への参加、男神を誑しこみ不審な情報収集。

 この女神がこのような行動を起こすのは、決まってコレが原因だ。

 

「そうね。今は、まだ弱いわ。とても、頼りなくて直ぐに泣き出してしまう……そんな子」

 

 訝しげな顔のロキに「でも」と言葉を続ける。

 

「綺麗だった。透き通っていた。あの子は、今までに見たことない色をしていたわ」

「はぁ~? よう分からんけど。うちの【ファミリア】の期待の新人とは比べられんな」

「期待の新人……?」

 

 自慢げに威張るロキを、興味深げに眺めるフレイヤ。

 

「そや、次の『神会(デナトゥス)』で正式に二つ名が決まるんや。オラリオ史上最速のLv2昇格なんやで!おまけに美少女や!アイズたんにも負けない美少女剣士!!」

 

 話半ばでフレイヤの表情が変わる。

 先ほどまでの温かな笑みとは異なり、真剣な表情。

 静かにフレイヤが尋ねる。

 

「ねぇ、ロキ。その子の名前は?」

「何や? 気になるんか? いいで、教えたる! アルトリア・ペンドラゴンや! 名前も超プリティーやろ」

「……そうね。いい名前だわ」

 

 鼻息荒く上気した顔で、尽きることの無いアルトリア愛を語るロキを他所に、窓から外の景色を覗くフレイヤ。

 そこに。入ってきた。金と白の髪を靡かせながら走り過ぎて行く少年少女が。

 フレイヤは、静かに席を立つ。ロキは、突然のフレイヤの行動に目を丸くする。

 

「おい! 何処いくんや!? 話はまだ終わって……」

「ごめんなさい。急用を思い出したわ」

 

 料理の勘定を支払いフレイヤは足早に店を去る。

 

「何や、アイツ……」

「……………」

 

 腑に落ちない顔のロキと終始無言のアイズだけが、その場に取り残された。

 

 

 

 

 眷属達が待つ白亜の塔へ向かう美の女神――フレイヤは笑っていた。

 

 

「フフっ。ごめんなさい、ロキ。私、嘘を吐いたわ。私が好きな子は二人いるの」

 

 頬は紅色に彩られ、恍惚とした表情。

 

「でも、あの『子』を最初に見つけたのは私よ」

 

 美の執着、追求には他の追随を許さない『美の化身』。

 全ては出会いの時から、未知の『子』がこの世界に来たときから。

 

 

 

「アルトリア・ペンドラゴンは、私が貰うわ」

 

 

 

 

 

 




みなさん、良いお年を!

次回は、アルトリア主体の話なる予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。