騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ   作:ポジティブ太郎

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早めの投稿です。急ぎで書きましたので、誤字等ありましたら教えてくれると有り難いです。


第十六話 決着

極彩色の女怪物と視線を交わす二人。

 先に動いたのはアイズだった。LV.5の膂力を全て注ぎ込んだ加速。

 一気に怪物の懐に潜り込もうと試みたが。

 

『――――ガアッッッ!』

 

 3本の触手がアイズを捉えた。脇腹を打ち据えられる直前、彼女の得物――デスペレートを滑り込ませ防御する。

 攻撃自体のダメージは殺せたが、吹き飛ばされた衝撃までは殺し切れず地に叩きつけられた。

 

 通常のモンスターとは一線を画す反応速度。Lv.5の力を持ってしても手に余る速度と力。

 アイズは瞠目する。彼女自身、数多のモンスターとの死闘を繰り広げてきたが今回は『未知の領域』だからだ。

 高度な戦闘中に敵の弱点を見極め、対処法を練らなければならない。それは、歴戦の冒険者であるフィンやリヴェリアですら至難の技だろう。

 

 だが、ここにはいた。

 彼ら以上の戦闘経験を積み、毎日の如く戦争の作戦を立て続け自国の栄華と存続を為そうとした騎士王が。

 

 

(6本の触手による範囲攻撃が主。他の攻撃手段は、今のところない。つまり、触手さえ躱しきれば勝機はこちらにある。それなら‥‥)

 

 

「――アイズ。立てますか?」

「うん。大丈夫」

「いいですか? 私が後方(・・)から援護します。アイズ、貴方は触手を気にせず全力の一撃を叩き込んで下さい」

「‥‥‥分かった、よ」

 

 再び怪物へと向き直る二人。アイズはデスペレートを胸元で構え、詠唱(・・)した。

 

【風よ】(テンペスト)

 

 リヴェリアの長期詠唱型の呪文ではなく、超短期詠唱。

 その効果は、『付与魔法』(エンチャント)

 風を全身に纏うことで基礎能力の底上げを可能とした魔法だ。

 

 アイズは、呼び起こした風の力を全て速度へと転化させた。

 疾駆する。再び怪物へと肉薄した。

 先程同様に触手を揺らめかせ、叩き落とそうとしている女怪物。

 

【風王鉄槌】(ストライク・エア)

 

 暴風の槍撃。アルトリアが【風王結界】(インビジブル・エア)を応用した突きを繰り出した。

 風は3本の触手諸共右半身を抉り取った。苦痛に呻き怪物は動きを止める。

 アイズは一瞬の隙きを見逃さない。

 

「【吹き荒れろ】」

 

 風が剣先に収束する。

 

「【リル・ラファーガ】」

 

 収束させた風を解き放ち超加速。剣を前方に突き出し風の弾丸と化す。

 そのまま衝突。胴体を貫き、風穴を開けた。

 怪物は歪な単眼を静かに閉じる。勝負は着いたかに思われたが。

 

「‥‥‥‥なっ!」

 

 アルトリアは絶句する。息絶えた筈の『怪物』の胴体が異様なまでに膨らみ始めたのだ。

 彼女は察していた。怪物の武器は、一つではない。

 自身の死亡直後の自爆。これが此のモンスターの真の恐ろしさなのだと。

 先の芋虫のモンスター同様の腐食液を伴った爆発だとしたら、その被害は先の物とは比べ物にならない。

 自身は、防げるとしても逃げている団員達。戦闘直後で疲弊しているアイズの事を考えればこの状況は最悪と言ってもいい。

 

 

 形振り構っていられなかった。アルトリアは『シュナイダー・ブレード』を納刀し、虚空から現れた新たな剣を右手で掴み取る。

 その剣は【風王結界】(インビジブル・エア)の効果で不可視状態になっている。

 

 曰く、剣を見ただけで彼女の真名を知らしめてしまう程の聖剣。

 曰く、人為らざる者の手で鍛え上げられたと言われる神造兵装。

 曰く、人々の願いが込められた最強の幻想(ラスト・ファンタズム)

 

 風が解かれ、その刀身が露わになった。見るもの全てを魅了するであろう黄金の輝き。

 

 アルトリアは両腕を振り上げ、上段の構えを取った。

 黄金の輝きが溢れ出す。アルトリアは口ずさんだ。

 

「【束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流】」

 

 剣先には、極限までに高まった運動エネルギーが集約される。

 アルトリアは、振り下ろした。王の一閃、勝利の剣を。

 

「受けるがいいッ! 【約束された勝利の剣】(エクス‥‥カリバー)ぁぁぁぁ!!!」

 

 轟音と閃光が弾けた。世界が金色の光で覆われる。

 怪物は、光の奔流に飲み込まれ『魔石』ごと跡形もなく消し飛ばされた。

 光が途絶える。戦場に立っているのはただ一人。

 アーサー王こと騎士王――アルトリア・ペンドラゴン。

 

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 アイズは回帰していた。

 どんなピンチも覆して見せた英雄()の背中。

 誰もが不可能だ、無駄だ、と匙を投げ出す様な不条理を覆す圧倒的実力。

 人々から讃えられ、英雄と評された姿。

 憧れだった。誇りだった。自身もこんな風に強くなりたいと思わせてくれる指針だった。 

 英雄が消えた後も一人虚しく追い続けてきた。ただ貪欲に強さを求めて。

 

「‥‥‥‥私は、『英雄』になりたい‥‥」

 

 口から自然と言葉が溢れ出した。胸を焦がす様な感覚に陥る。

 感情に疎い彼女が感じ取った初めての気持ち。

 この気持ちをいつか伝えよう。胸を誇れるような『英雄』になって。

 

 アイズは密かに決心する。そして、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

 そこには。

 

 

 金色の『英雄』が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今話はこの作品の大きなターニングポイントになる回だと思います。
感想や誤字報告をしてもらえると有り難いです。
 
はぁ~、エクスカリバー使っちゃたw。
いずれは使わせる予定だったんですけど。

次回は、遠征編クライマックス&白兎との邂逅を予定しております。




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