騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ 作:ポジティブ太郎
許していただける方ありがとうございます! 許していただけない方、サーセンした!!
では、14話どうぞ!
「遠征の最終目標は59階層――未到達階層への進出だが、その前に一つ冒険者依頼クエストをこなしておきたい!」
団員達の先頭に立ち、よく通る声で話しかけているのは、【ロキファミリア】団長のフィン。
小人族であり小柄な体格ながら、他を率いるに値する実績と風格を有している人物。
「そこで、今から2つのパーティーに分かれてもらう」
フィンの提案は、クエスト内容を達成するパーティーと天幕付近に待機し異常事態イレギュラーに備えるパーティー。ダンジョンには何時如何なる時も危険が付き纏う、そんな危険な場所なのだ。
それに、フィンは予感していた。自身の親指が嘗て無いほど疼いている事がそれを裏付けている。
「それでは、パーティーを発表する。クエスト達成班は‥‥」
クエスト達成版は、フィン、ガレス、ベート、アイズ、ティオナ、フィオネを含めた第一級冒険者を主体としたパーティー。下位、中位団員の殆どが野営地待機という形になった。
だが、フィンは野営地を立つ前にリヴェリアに一言。
「リヴェリア。頼んだよ・・・・」
「――ッ! 分かった」
引き締められた表情でフィンがリヴェリアにすれ違いざまに告げた。
リヴェリアは、いつもと異なるフィンの態度に驚きを露わにするが、直ぐさま彼の真意を察する。
距離を置いた箇所から、二人のやり取りを眺めていたアルトリア。
彼女もフィンと同じ心境だった。数多の経験を積んできた彼女の直感も感じ取っていたのだ。
この後、起こる異常事態イレギュラー。ダンジョンの『怒り』を‥‥‥。
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「リヴェリアどうしたんです? 随分強張った顔をしていますが」
「そうか? いや、すまない。気にしないでくれ」
フィンたちが洞窟へと足を踏み入れてから、一時間近く経過した頃。
野営地全体が緩やかな空気に包まれている中、リヴェリアだけが顔に緊張の色を示していた。
その様子を見たアルトリアは静かに声を掛けた。
「フィンやアイズ達は、大丈夫でしょうか?」
「心配は無用だろう。こう見えても付き合いは長い。フィン達は無事に帰って来る。だが、気がかりなのは‥‥‥」
リヴェリアが言葉を紡ぐ最中――それは突然起こった。
まるでダンジョンが叫んでいるか様に地が揺れ動く。待機していた団員達も、突然の出来事に誰もが動きを止め混乱に陥る。
「リヴェリアっ! これは‥‥‥?」
「分からん、こんな事は初めてだ! さっきフィンが言っていたのはこの事だったのか‥‥!
それに‥‥‥あれは‥‥‥!」
丘の様に盛り上がった場所に位置している野営地から、地表を見下ろすとそこには。
巨大なモンスター。全身黄緑色を基調として、プックリと膨れ上がった体皮には極彩色の斑模様が点々としている。長平な下半身の上に厚みのある上半身が乗ったような異様な姿。左右から飛び出した腕らしき器官。
まるで芋虫を彷彿とさせるモンスター。数え切れない程の大群が岸壁を登ろうとしていた。
「‥‥‥‥『新種』、か」
リヴェリアは眉をひそめながら呟く。
安全地帯セーフポイントでのモンスターの出現という事実。それに加え新種モンスター、『未知』との遭遇。フィンの予感と自身の不安の正体がこの時やっと分かった。
「全員戦闘準備! 魔道士・弓隊は後方支援、他の者は前衛で奴の足止めだ!」
リヴェリアの指示で武器を持った団員達がモンスターへと肉薄する。
手に持つ得物でモンスターを斬りつけた瞬間――爆散。
体液を撒き散らし、そのまま消滅した。
「があああああああああああああ!! ぐぅぅぅっっっ!!」
体液を全身に浴びた団員の悲痛な叫びが響き渡る。白煙を上げながら、体を溶かされてく。
モンスターを斬りつけた筈の得物は原型を留めていない程、腐壊していた。
「ッッ! 前衛攻撃を止めろ! 盾で動きを押さえ込め!!」
『新種』の脅威に瞠目しつつ、リヴェリアは更なる指示を前衛に送る。
前衛にて大盾で動きを止めるが時間の問題。魔道士や弓隊の攻撃により数は減らしているものの、戦いの終わりを感じる事は微塵も出来ない。
リヴェリアは、自身も戦闘に加わろうと詠唱を開始しようとしたその時。
「なっ! そんなバカな! う、後ろにも!!」
心底怯えきった団員が地面にへたり込んでいた。モンスターと交戦している真逆の地表にも大群の姿。
第一級冒険者として数々の修羅場を乗り越えてきたリヴェリアでさえも、絶望の二文字を感じていた。
団員達の数は、足りず指揮官として場を仕切るのは自分以外いない。交戦の手立てはないかに思われたが。
「リヴェリア。こっちは私に任せて下さい! そちらは頼みました」
――金色の影が飛び出した。
アルトリアは、小さな体躯を凄まじい速度まで引き上げて、加速しながら『新種』の大群へと単騎突撃していく。
背中に携えられた鞘から、抜くのは――【シュナイダーブレード】不壊属性『デュランダル』を付加された長剣。抜くと同時に横薙ぎ一閃。三匹同時に両断され腐食液を撒き散らした。
腐食液を浴びる前には、次の敵を切り伏せていく。
「‥‥‥すごい‥‥‥!」
誰の声かは分からない。ポツリと呟かれた言葉。危機的状況でありながら、臆すること無く敵に挑む勇姿。
そして、リヴェリアはアルトリアの姿を幻視していた。
かの英雄の武勇伝が伝えられている『英雄譚』に描かれた英雄の姿を。
「さあ、掛かってきなさい! キャンプは落とさせません!」
アルトリアは再び銀の剣閃をモンスターへと繰り出した。
前回の息抜きと比べると急展開すぎるだろっ! と感じている方も少なくはないと思われます。ですが、この先も何話か同じ展開が続きますのでご了承下さい!
休憩回は暫く先になると思います。