魔法少女リリカルなのはVivid Saiyan   作:伝説の超サイヤ人になりたい。

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黒の超越者

 そこは荒野。ミッドチルダとは違う、第30管理世界。

 僅かな雑草と岩山ばかりの偽りの空間(結界魔法)。現実を真似て造られた現実とはズレた幻想の空間。まるで鏡の世界(ナカ)のよう。

 

 そこに二人の黒が在り。

 片方は黒髪黒眼、黒のインナーに赤と金の上着の戦闘衣の少年、イクサ。サイヤ人の血を引き細身で形成された肉体に宿す戦闘力は無双を語るに自負する程。邪魔なモノを削ぎ落とし短所を埋め長所を磨き続けた構えは美しさすら感じる、己が知る中で最たる強者に彼の真たる武技で迎える。

 そして対峙するは少女。艶のある長い黒髪を二つ対になるように結んだツインテールに漆黒の鉄腕を身に付けた蒼目の少女。ジークリンデ。古代ベルカに名を馳せ現代の今でも高い認知度を誇る闘争の一族、エレミヤの末裔。肘の上まで覆う黒鉄の防護武装『鉄腕』と、人間性の無い500年分のベルカの武人、その一族たる先祖達の戦いの経験と記憶。戦闘技術が創り上げた『あらゆる戦法をとれる』コンパクトで理想的な構え。その端整な顔を形成する一部である瞳が全力全開でいくと少年に語りかける。

 両者互いに戦闘衣(バリアジャケット)を身に纏い、向かい合う。

突如、両者の体から戦意を示す白い闘気(オーラ)を放出する。視認できる程に濃密で強力なチカラ。魔力とは異なる純粋な『(リキ)

 大気を震わせ波動を放つ白のオーラに髪を揺らし己が武技を構える。

 

「………」

「───」

 

 強くなり過ぎて並ぶ者を失った二人の超越者。互いの気が戦意と闘気を天井知らずに昇る。

 久しく味わえなかった強者(とも)との戦の高揚に抗うことなく身を委ね流れる血を滾らせる。

 

 向き合い見つめ合うこと数瞬、

 互いの笑みが開戦の合図

 

「ガイスト・クヴァール」

 

 捻ねられた上身を解放し、大振りの滅びの左鉤爪。触れるものを一切合切消し飛ばす破壊の御手。長き永き闘争の中で編み出された一族の技が対面する相手に向けて振るわれる。

 

「───」

 

 胸の前で両方の拳を向かい合わせ、気を解き放つ。目前に形成される直径1メートル程の気塊。そこから右腕を引けば気塊から五条の光の芳流が掌に集束され、腕を突き出す事で撃ち出される。

 

 一撃必殺と謳われる技で開幕を飾る。

 己の必殺は相手の必殺に相殺され、結界を突き抜け現実の大地を、大気を振動させるインパクトを発す。

 愚手(あいさつ)は終わりだ。容易く破られる大技の何が必殺か。ここからが真の闘争、戦いだ。

 

 仕掛けたのはどちらか、───少年(イクサ)だ。

 姿勢を低くして無意識の笑みを隠さず歯をむき出しにして駆ける。

 イクサの笑みに少女(ジーク)も微笑みで返し左右の手にバスケットボールサイズの魔力弾を形成、投擲。並の魔導師の砲撃魔法(バスター)を超える魔力弾をイクサは軽いフットワークで避ける。この程度ではイクサは止まらない。

 懐に潜り込みパンチを一発。容易くガードしたジークは衝撃を利して後退、距離を取る。

 クスッと笑い右手の人差し指を指揮棒(タクト)のように振るい魔力弾を形成。二十はくだらない数の黒い魔力弾がジークを周りを螺旋を描き旋回する。

 

「ゲヴェイア・クーゲル。───ファイア」

 

 ジークの従い魔力弾が飛来する。次から次へと魔力弾が放たれ、魔力弾が即座に補充されるイクサには出来ない魔力をふんだんに使った攻撃。羨ましい限りである、なんて思いながらイクサはジークを中心に周る。魔力弾の配置、発射の順番、補充のタイミングに速度、それらを覚え弾幕の中を潜り回避しながらチャンスを待つ。

 

「っ!」

 

 一定数撃ち込んで補充に入る瞬間イクサが駆ける。咄嗟にジークがイクサを近付けさせない為に一斉発射、全ての魔力弾を放つ。

並の軍なら簡単に一掃出来る面制圧。だが相手は並でもなければ軍でもない。超級の個である。

 体の表面に触れる物は無視、肉体にクリーンヒットする物だけ素手で弾きジークの懐に潜る。腕を伸ばせば打てる、足を上げれば蹴れる、完全な格闘の距離に居る、そしてイクサは片足を軸に()わった。

 

「うそ!?」

 

 吃驚(びっくり)するジークの声が聞こえる。

 身を捻る回転が絶妙なタイミングで二つの魔力弾を躱す。目前のイクサを狙った魔力弾が躱されジークに迫る。姿勢を無理矢理変えてなんとか避ける。身を捻り向き直るイクサと目が合う。

 蹴りがジークのガードをかいくぐりヒットする。腹に直撃した蹴りに吹っ飛ばされ地面を転がる。ばっ、と左右の腕を伸ばして飛び上がり追撃がくるだろうと構える

───いない。目前広がる荒野に人影は無い。

 

「っっ!」

 

 地を馳せる影を視た、それだけで十分。

必要な情報を集め闘争(エレミヤ)の経験に従い即座に後退するジークに隕石が墜ちる。

 ギリギリで回避出来たが衝撃は殺せず吹き飛んで、目前で笑うイクサの攻撃を対処する。

 鉄腕で威力を遮りイクサの拳を(やわら)かに、だがしっかりと握り片方の腕もイクサに伸ばし関節技を決めようとする。が止める。

飛翔し迫るするイクサの片腕、大木を切り裂く刃のような手刀がジークの首を狙う。

 

「うわ!…っと」

 

 咄嗟に手を離しイクサを蹴って距離を取り片手で跳ねて対峙する。蹴られた衝撃で体が揺れ狙いがズレ、修正するのに一瞬有した為手刀はジークに当たることなく右の髪を数本巻き込んだだけだった。

 振り下ろした手刀の姿勢から自然体の立ち姿へ戻し距離を開いたジークを見つめる。

 

「……は、はは、ははは」

「……ぷっ、あははは」

 

 突然我慢出来なくなったようにに笑いだすイクサ。つられてジークも花のように笑う。耐えきれずに吹き出し我慢することなく笑い続ける二人の男女。

 二人は今、楽しくてしょうがないのだ。

 サイヤ人としての、エレミヤとしての、戦闘種族の本能が久々に出逢えた本気で戦える相手に歓喜して全力で打つことができる相手に感激している。

 

 両者にやける顔を隠す気もなく気を放出して構える。

 イクサは前かがみに構え。ジークはしっかり地を踏み受けの構え

 飛び出したイクサ。地面を砕き盛って一歩、白い炎の軌跡を残し近付き互いのオーラが交叉(まじ)る距離で拳を奔らせる。

 一撃目は小手試し、続くは左フック。迫る返し手を顔を傾け右回りの後回転蹴りからの左着蹴りを見舞う。

 地面を削り後退させたジークに向かう。迫るイクサに強く握った魔拳、だが手首を握られ無理矢理矛先を変えられる。そして頬へ向かう拳を受け止められ力比べに成る。能力的には劣るジークはすぐに根負け、腹を蹴り抜かれ岩山を三個貫く。追うイクサに気弾を発射。

 螺旋回転で避けて追撃しようとして背中に衝撃。さっき避けた気弾がUターンして戻ってきた。そこに頬へ強打、ジークの蹴りが突き刺さる。

 空中で身を捻り優雅に音も無く着地する。背後のジークの連打を避けて距離を取るがジークが攻める。イクサのガードをかいくぐり強烈なアッパー、見上げる形となり視界の端に映る右脚を腕でガード、同時に右足でジークの左足を払う。

 そして今度こそしっかりと距離を取る。

 

「いって」

 

 近付けさせない為に気功波を連発して牽制しつつ顎をさする。

 

「えぇい鬱陶しい! 諸共吹き飛ばすで!!」

 

 巧みな気功波になかなか接近することのできないジークが我慢出来ず特大のガイストて気功波もろとも消し去ろうとする。

 小さく舌打ちしてイクサは両腕を腰に添え気を溜める。青白い光が辺りを染めて放たれる。何もかも破壊する黒い魔手に強大な気功波(しつりょう)をぶつけて搔き消す。

 

「くぅ〜、さっすがイクサ!」

「お前もなかなかやるじゃないか」

「けどそろそろ終わりかなぁ。結界ももう持ちそうに無さそうやし」

「……確かにそうだな」

「じゃあ、最後にアレ…やろか?」

 

 返事を聞かずに気を高めるジークに溜息一つ吐いて、

 

 強く地面を踏み込み体に力を入れる。

───(ウチ)じゃ、イクサを本当の意味で本気を出させる事はできひん。

 

 高まる気はとどまることを知らず。

───イクサのほんまの本気を受け止められる奴は居ない。

 

 魔王や覇王も青褪めるようなパワー。

───やから(ウチ)が成る、絶対に!

 

 小さな人の身に惑星を砕く大力を宿す。

───でもな、イクサを()()()()()()()()()ことはぐらいはできる。

 

 

 

瞬間、黄金の閃光がぶつかり爆ぜた。

 

 

 

───やから(ウチ)を、独りにせんでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

「……っ……っ……」

 

 太陽と大地、上下からチリチリと焼かれ汗を流すが動かない。

 今立てば高まった戦闘熱に吹かされ再開してしまうだろう。

 

「どう、やった?」

「マーベラス」

「なんや、それ」

 

 くすくすと笑うジークに釣られてイクサも笑う。

 

「そういえば」

「ん??どうした?」

「弟子、とったんやって?」

「…ああ、あいつの事か。弟子といっても気ぐらいしか教える事がないから手合わぐらいしてやる事ないんだが」

「……やっぱり」

 

 イクサは気付いた。

 アインの事を何故ジークが知っている?

 

「どんな子、なん?」

「いい奴だ、俺みないな奴の弟子なのに真面目にやってる」

「やっぱり、強くするのが目的?」

「間違っちゃいない。覇王の末裔なだけあって才能もあるし若い。育てれば光るだろうさ」

「覇王……の、末裔」

「………」

 

 さっきまでとは裏腹に気の沈んだジークの声。

 

「なあ、イクサ」

「…なんだ?」

(ウチ)は、もういらんの?」

「──」

 

 ああ、そうか。確かにこいつ(ジークリンダ・エレミヤ)には依存癖があったな。

 幼い頃、望まぬ記憶と技術そして常人を超える能力を背負った少女。自分の大切の物、友人の大切な物、オモチャ人形ペンダント机ベッド、壁床天井。砕かれ抉られ塵と成る。

 何も触らず何も持たず誰とも居れず、何も無かった少女。そんな彼女が初めて出会った壊れない人間。

 

『お前が破壊王か!?』

 

 それがイクサだった。

 目を輝かせながらとても少女に付けるアダ名じゃない名で呼んだ少年。

 

『……(ウチ)に近付かんといて』

『なあなあ!お前強いんだって!』

『………あぅ』

 

 人の話をろくに聞かない少年イクサに困惑する少女ジーク。

 

『おれと戦ってくれよ!』

『え、そんな』

『よぉし、いくぞー!』

『あわ、待って───え?』

 

 急な事だった。話を聞かずにパンチしてくる少年イクサにエレミヤの本能が反応した。子供がだすべき速度と威力じゃないパンチが迫り咄嗟に破壊の爪(ガイスト)を振るってしまった。

 だが少女が驚いたのはそこじゃない。

 

『───いってぇぇえ!?!?』

 

 一瞬で襤褸に成った服を着た少年が勢いよく転がりまわった。

 少年は自身を襲う魔の手に対し()()()()()を行なった。

 

 まず、気を波のようにばらまき威力を落とした。次に全身を全部の気を総動員させて覆り膜を張った。バリアーだ。

 そして申し訳程度のものだが衣服を簡易的な魔法で強化した。

 

 過剰かと思うかもしれないがそんな事は決して無い。

 何者でもないイクサ本人がこれだけ必要と、いやできる事ならもう少し欲しかったぐらいだと感じたのだ。

 仮に何もせずに受けていたのならイクサはこの世に居なかっただろう。

 

『───うそ』

『いちちちちち』

 

 ここから二人の関係は始まった。

 身に余る力を宿した二人が対等にぶつかる事のできる相手を見つけたのだ、二人は何度も話し遊び競い比べそして高めあった。少し歪な関係は彼らにとって普通の人達が言う友達と同義だった。

 互いに初めての友達、笑い怒り泣いて絆を固めた。

 そしてやがて完全に力のコントロールをできるようになり友達や知り合いが増え、様々な友人と色々な場所に遊びに出掛けた。

ジークリンデ・エレミヤにとってイクサは自分を変えてくれた人、幸せを連れてきてくれた人。最愛の人なのだ。

 

 

 

「なあ、どうなん?(ウチ)は、いらん?」

「………」

「お願いや。独りにしんといて。どんな事でもする。体やって差し出す。やから、」

 

 一緒に居てください。

 

「───アホか、お前は」

「………」

「お前は、モノじゃないだろう」

「え」

 

 ジークと目を合わせる。

 

お前(ジークリンデ)お前(ジーク)だ。あいつ(アインハルト)あいつ(アイン)だ。代わりなんていない、一緒にはしない」

「───」

「次、似たような事言ったらぶん殴るからな」

「うん。…うん!わかった!」

 

 溢れ出て止まらない涙を両腕で拭いながら笑う少女に何笑ってんだと顔を背け立ち上がる少年。

 

「ほらはやく泣きやめ。ヴィクターの所にいくぞ」

「うん、ごめん。すぐ、すぐに止めるから。───うん、止まった!」

「はぁ。じゃあ転移の魔法式入力するから魔力渡せ」

「ああぁ、イクサ」

「なんだ?はやくしろ」

 

「魔力無い!」

 

「は?」

「やから魔力無い!スッカラカンや!!」

 

 目尻の赤い満面の笑み。

 

「───何笑ってんだアホ」

 

 イクサも釣られて二人で笑った。




ジークリンデ・エレミヤ
『エレミヤの真髄』を既にコントロール済みの伝説の(スーパー)ミッド人。
戦闘力は大体7500ぐらい。
イクサがサイヤ人の血を引くことをしる唯一の人物で全力に近いイクサと戦える唯一の人間(ミッドチルダの人間で)。実は強さの理由はエレミヤの血だけじゃない。

回想シーン。
描写されてないがヴィクターも居るよ!

おまけ
実はジークは最初ヤンデレ枠だった。
そしてヴィクターはヤンデレ仲間(同士)

次の投稿は、果たしていつになるのでしょう(白目)

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