魔法少女リリカルなのはVivid Saiyan   作:伝説の超サイヤ人になりたい。

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全宇宙の中でもっとも環境の整った書き直し版でございます。
<ウソデス‼︎
シュワット!?





対決!この世(ミッド)で一番(胸が)凄い奴!?

 奏でられる金打音。振るわれる鋼の刃を真っ正面から鉄拳で迎え打ち、巧みに動かした腕の側面を滑らせてから払い弾く。

 

「…ほう?」

「はっ!」

 

 いくら非殺傷設定だとしても真剣の刃面に拳をぶつける胆力、拳から腕へと刀身を滑らせる技術力、そんな作戦を一瞬で決断し決行する思考力と行動力。シグナムは自身の愛剣(レヴァンティン)が弾かれながらも感心した様な声を発し、自身に迫るイクサの右拳を冷静に躱して距離を取る。

 

「…なかなかやるな」

 

 強い事は知っていた。【インターミドル世界戦準優勝】という実績があり、主からの依頼もこなしている。興味があった、ずっと手合わせしたいと思っていた。

 

───そして今、叶った。

 

「……ふっ」

 

 シグナムは口端が自然と吊り上がる。一合、互いの武力をたった一合交えただけでイクサを識った。イクサの実力を。

 

───否!!

 イクサの実力の底知れなさを!?

 

 愛()レヴァンティンの柄を両の手で改めて握り直し、正眼で構えるシグナム。

 

───ヴォルケンリッターが烈火の将、主はやてが剣の騎士。

 

 嘗て戦場に生きた英傑の情報から構築されたプログラム体(そんざい)であるシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの四人の守護騎士ヴォルケンリッター、その将である彼女が目の前の強者に敬意を込め改めて名乗りを行う。口から放つのではなく、念話に込めるのでもなく、唯己の心の中でのみ自身の本性を告げた。

 

───シグナム、押して参るッ!!

 

「づっ!!」

「!!」

 

 レヴァンティンを上段へと振り上げ、一気に距離を詰める。移動するのは剣の間合い。踏み込みと同時に振り下ろされる一刀。魔法の使用や非殺傷設定など限定された条件下で繰り出される手加減無しの一振り。防御を許さない肉体ではなく意識を断ち切る剣撃。

 

「ーーっ!」

 

 当然躱される。防御を出来ないのなら後は回避しか選択肢は無い。

 右半身を後ろへ捻り胸の前を刃が通り過ぎてから拳を握り締めた右腕を引き絞る。そして放たれる直前。

 

「甘い!!」

「!?」

 

 躱されて地面に接触するギリギリの位置で刃面を上下逆さに回し切り上げる。完全に終わったと思った一撃から繰り出される二撃目。昇り迫る刃を前に右拳による攻撃を中断(キャンセル)して回避に移る。

過ぎる刃、舞う髪先。直後にバク転を一度、二度、三度と繰り返し距離を取って両方の足で砂浜を踏み締める。

 

「……っ」

 

 右頬を左手の甲で拭うイクサ。左手の下に隠された箇所には非殺傷設定故に裂傷には至っていないがはっきり斬撃痕が刻まれていた。

 

(……ああ、(まず)い)

 

 つー、と汗が一滴額から顎へと流れ、最後に落ちる。

 

(ホントに、ああ…くそ)

 

 手首で隠された口元。

 そこにはうっすらとだが、

 

「───(たの)しく、なってきた」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 それは八神はやての口から自然と溢れた言葉。

 

「え?強ない?」

 

 第二ラウンドを開始したイクサとシグナムの戦いを尻目に家族達に目を向ければ、それぞれが別の反応を見せる。

 

「……ふむ」

「まったくもう」

 

 鋼の守護獣ザフィーラはイクサの動きに感嘆し、癒しの騎士シャマルは困った様な笑顔を見せる。

 そして鉄槌の騎士ヴィータは、

 

「なぁ」

「……どないしたん?」

「シグナムの奴、マジになってないか?」

『え?』

 

 ヴィータの言葉に皆が一斉にシグナムへ目を向ける。

 鋭き剣閃、的確な立ち回り、何よりシグナムの目。主や仲間を守護するザフィーラや傷付いた仲間を癒すシャマル達後衛と違いシグナムと共に前線へ出続けたヴィータだからこそいち早くシグナムの変化に気付く事が出来た。

 

「…ッ!ははっ!!」

「オオォッ!」

 

 イクサの拳打を首を傾けて避けるシグナム。続くイクサの猛攻を前に笑いながら剣を振るう。

 

「もう止めた方がいいじゃねぇか?」

「……ザフィーラ」

「はっ、主はやて」

 

 ヴィータの提案を聞いたはやては暫し考えてから自身の守護獣の名を呼ぶ。

 

「いざとなったら、頼むで?」

「御意」

「………」

 

 もう少しばかり様子見を続ける判断を下した主にヴォルケンリッターは従う。

 

「……」

 

 はやては先程までの陽気な雰囲気を捨てて歴戦の勇士の様な面構えに変わっていた。

 

 

 

 

 

「ふっ!!」

「……ッッ」

 

 当たらない。条件下とはいえ全力での剣技をイクサは見切り始めている。

 そもそも初撃の剣と拳の激突は兎も角、その次からの二連斬りを擦り傷程度で抑えられた事事態が彼女にとって予想外と言えた。

 自分は歴戦を乗り越えた女英傑の復元体でプログラムで編まれた肉体の為、データ以上の事は出来ない。だがしっかりとデータが残っている以上その技が錆び付く事もあり得ない。

 

「はあぁ!!」

「…っ!」

 

なら何故こうも自身の剣を躱され続けるのか?

 

 理由はすぐにわかった。

───(イクサ)は、()()()

 

 眠っていた才能が───否、鈍っていた才能が今、戦乱を駆けた女英傑の戦意によって研ぎ磨かれている。

 

「オオッ!」

「くぅっ、はあっ!」

 

 イクサの鋭い飛び蹴りをシグナムは前方に倒れて躱し、左腕で自身を支えて後方に剣を横薙ぎに振るう。

 目前に迫る刃にイクサは地面を殴り付け、その反動で右に跳んでシグナムの剣を避ける。勢い余って背中で砂浜を10メートル近く抉るがぐるりと後転、腕の力で飛び上がり着地する。

 

「ッッはあああああっ!!」

「っっオオオオォォッ!!」

 

 互いに同時に駆ける。自身の武器に渾身の力を込めて今、解き放つ。

 

「そこまで!」

「!?」

「づッ!」

 

 制止の声に反応してピタリと両者の渾身の一撃が───止まる。

 シグナムの剣がイクサの首まで僅か数センチの所で、イクサの拳がシグナムの頭部のすぐ真横で停止していた。

 二人は声の主であるザフィーラの方へ目を向ける。二人の視線を一身に受けたザフィーラは腕を組んで何処か責めている様な、呆れている様な目で返してくる。

 

「二人共、熱くなり過ぎだ」

「「……」」

 

 ザフィーラのセリフに二人は自身の行動を振り返る。次の反応は二人とも別々のものだった。

 

「……ふむ、確かに少し熱くなっていたな」

「……はぁ」

 

 ザフィーラの言葉に納得した様子のシグナムが愛剣を待機状態へ戻し、姿も戦闘衣でもある騎士甲冑から私服へと変化する。

 対してイクサは、

 

「……っ」

 

 シグナムや八神家の人達に背を向けると、握り締めた自身の拳をジッと見つめ、表情を歪ませる。

 

(くそッ!なんてザマだ!?)

 

 内心で自身に悪態をつき、掌の皮を爪が突き破る程強く握り締めた。ぽたぽたと血が砂浜に数滴落ち、小さな痛みを確かに感じる。まるで自身を戒める様に。

 隠し通すと決めた戦闘衝動、抑えてみせると決意した闘争欲求、否定こそしないが肯定もしなかった───自身の半身と言える『サイヤ人としての側面』が表に出ていた。

 この魔法世界(ミッドチルダ)ではこの『サイヤ人としての側面』が不適合なのは百も承知。管理局にとってサイヤ人とは最高ランク危険存在と認識されている。

 

───もしもサイヤ人だとバレれば?

───もしも管理局に狙わたら?

 

 それはこのミッドチルダそのものを敵に回すのと同義。イクサ一人なら問題無い、寧ろ返り討ちにする自信がある。

 

 だが、

 

(だが、もし、───母さんが狙われたら?)

 

 それが、何よりも怖い。

 

───きっと彼女ならイクサを助ける為なら一人犠牲となるだろう。

───きっとイクサが捕われれば彼女は一人で管理局に挑むだろう。

───きっと自身がイクサにとって重荷になるとわかれば自ら命を断つだろう。

 

 彼女は家族の為なら平気で死を選べる女性(ひと)だから。

 

 父が()()()()となった時、誰よりも多く長く涙を流し続けた母。愛する夫を失った悲しみ───()()()()、何も出来なかった悔しさから涙を流した母の姿がイクサの脳裏に刻まれ、今この瞬間浮かび上がる。

 

(二度と…ッ!二度とあんな思いをさせるもんか!)

 

 だから隠す、墓場まで隠し通してみせる。

 

「……」

 

 決意を新たにするイクサの後ろ姿をはやてだけが見つめていた。そしてイクサに話し掛けようと一歩踏み出そうとした時。

 

「み、みなさーーん!!ようやく、みつけましたーー!!」

 

 少女の大きな声が全員の耳に届く。疲労と喜びの混じり合った声だ。

 

「はぁ…はぁ…」

「……ミウラ」

 

 声の主は桜色の髪の少女ミウラだった。ミウラはイクサ達のやってくると乱れた息を整えてから「ボク怒ってますよ!」といった様子で詰め寄る。

 

「もぉ〜!酷いですよボクを一人置いていくなんて〜!」

 

 ムーっと頬を膨らませるミウラをはやてとシャマルが宥めている。

 

「……」

 

 突然のミウラの登場に怒りも鎮まり幾分か冷静になったイクサはザフィーラの元へ歩み寄る。

 

「ザフィーラさん、今日の所は帰ろうと思います。助言の方、参考にさせてもらいます」

「……そうか」

「ありがとうございました」

 

 深く頭を下げる礼をした後、背を向けて歩き出すイクサの背中をザフィーラはじっと見つめていた。八神はやてと同じくザフィーラもイクサの変化を感じ取っていた。そして何か言葉を掛けようと思った。けれどザフィーラには何と声を掛ければいいのかわからなかった。結局、口から出たのは「そうか」なんていう愛想の無い一言のみ。

 ザフィーラは小さく自己嫌悪に陥りながらイクサの後ろ姿に目を向ける。

 

 

 

 

 イクサの後ろ姿に目を向ける者がもう一人いた。

 

「……」

 

───シグナムだ。

 イクサと戦った彼女はイクサがバイクを運転して見えなくなると、シグナムは自身の左頬に触れる。つい先程、イクサの拳が掠めた箇所である頬を。

 

「……」

 

 シグナムはIF(もしも)、を考える。

 もしもあの時、ザフィーラが止めなければ。倒れていたのは()()()()のだろう、と。

 シグナムの刃は彼の首に届いていなかった。それに比べてイクサの拳はシグナムの頭の横にあった。ズラしたのだ。

 

───つまり、イクサの拳は、あの時届いていた。

 

「ザフィーラが制止するより一瞬先に我に返っていたのか」

 

 つい、口端が釣り上がる。

 シグナムは先程終えたばかりだというのに再び戦いたい欲求に駆られた。彼の性質は善()()だ。彼となら主はやての為(騎士として)でなく、誰かの為(管理局員として)でもなく、余計なしがらみなど無く一人の戦士(ジグナム)として全力で戦う事が出来るだろう。

 

「嗚呼、楽しみだ」

「シグナム?」

「…なんでもないさ、ヴィータ」

「……そっか」

 

 ヴィータがシグナムから離れる。何か思う所はあったのだろうが聞きはしなかった。聞いた所でしょうがないというもあったのだろうが、一番の理由はそれがシグナム個人の想いだと直感で理解したからだろう。

シグナムは気付いているであろうヴィータの行動に感謝しつつ、この想いだけは胸に秘める。主は勿論、他者を巻き込まない、果たされるかもわからない自分だけの想いなのだから。

 そしてシグナムは振り返る。イクサが居なくなっている事に今更気付いて項垂れるミウラにあはは、と一部を除いた者達が苦笑いを浮かべている家族の元に。




【女英傑】騎士シグナムの好感度がアップしました。
新たなサブイベントが解放されました。

半サイヤ人193「要らない」

ミウラちゃんてさ、ちょっといじめた後の反応が一番可愛いと思うんだ。

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