魔法少女リリカルなのはVivid Saiyan   作:伝説の超サイヤ人になりたい。

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チチ〜、今回の話ってのは書き直し版なのか?

前回の続き
アイン「では、早速修行を」
イクサ「時間を考えろ、バカ野郎」
アイン「(´・ω・`)」



イクサ師匠の修行、目指せ気の操作!

 ヴィヴィオとアインハルトの模擬戦、そしてアインハルトの弟子入りの次の日。

 最後の授業を終えて大学院を出たイクサが向かったのは約束の場所である公園。その入り口に彼女───昨日弟子となったアインハルト・ストラトスは居た。

 制服姿で鞄を持ったままな事から学院が終わると直で来てずっと待っていたようだ。アインハルトの通う中等部と大学部は終わる時間が違うと事前に言ってあった筈なんだが、と後頭部を掻きながら歩く速度を上げる。

 

「……!」

 

 向こう(アインハルト)も如何やらイクサ到着に気が付いた様で此方に駆け寄ってくる。

 

「よろしくお願いします、イクサさん」

「おう、よろしく」

 

 礼儀正しく挨拶するアインハルトにイクサは挨拶を返す。

 

「では早速此処で?」

「それなんだが、結局の所お前は俺から何を教わりたいんだ?格闘技か?」

「いえ、その、技術もありますが私には覇王流が在りますので。私がイクサさんから教わりたいのは主にその強さの秘密です」

「強さの秘密?」

「はい」

「ふーん。まぁ、あれだ歩きながら話そう」

「あ、はい!」

 

 歩き出すイクサにアインハルトが続く。

 

「それで強さの秘密、だったな」

「はい。イクサさんの身体能力(フィジカル)面や瞬時に行われる判断力。それら全てを含めたイクサの強さを」

「うぅん。……」

 

 顎に手を当てて考え込むイクサ。アインハルトが不安そうな顔でイクサを見上げている。

 

「正直言って判断力は経験が全てだし、フィジカルについてはお前が覇王の身体資質を引き継いだのと同じで生まれつきだしな」

「……」

「あー、いや。アレなら教えられるか?」

「……! 是非ともお願いします!」

 

 まだ内容も聞いていないのに頼み込む姿にイクサは苦笑する。

 

「なら行き先は俺の家だな」

「イクサさんの家に?」

「ああ、今日は特訓というよりは座学に近いかもな」

「……なるほど」

 

 いまいち納得できていないの不満げな様子を見せるアインハルトの頭に手を乗せる。

 急な事で驚きイクサを見上げるが、イクサは優しい笑みをしながらアインハルトに言い聞かせる。

 

「安心しろ、修得する事が出来れば確実にお前の強さに繋がる技術だ」

「……!! はい!」

「いい返事だ」

 

 ニカッと笑うイクサ。

 その笑顔がアインハルトは忘れられなかった。

 

 

 

 

 

 所変わってイクサの部屋。

 昨日の事もありイクサの母に会う事に緊張があったが、意外な事に会ってみれば初めて会ったときの様に優しげな雰囲気を醸し出していた。

 昨日と同じくお菓子と飲み物だけ用意して離れるイクサの母の姿を見送ってからイクサが話す。

 

「お前にこれから教えるのは“気”と呼ばれる技術だ」

「キ? それはいったい?」

「わかりやすく言えば生物が持つ潜在的なエネルギーやパワー、的なものだな」

「……」

「まぁ、魔力とは異なる力と認識しておけばいい」

「わかりました」

「取り敢えず、一度感じてみるか。手を出せ」

「…? はい」

 

 イクサの言葉に従い右手を伸ばす、その手をガシッと掴む。

 

「な、何を?」

「集中してろ」

「……っ」

 

 異性に手を握られた事が初めてのアインハルトは恥ずかしさにモゾモゾと身じろぎしている。どうにも言った通りに集中してる様には見えない。

 

「……!」

 

 だが、それもすぐに止む。自身の手を握るイクサの手からナニカが流れてくるのがわかった。

 

「これ、は?」

「それが気だ」

「これが、気」

 

 不思議な感覚だった。魔力とは違うエネルギー。元からそうなのか、それともイクサがそうしているのか優しく、そして暖かい感覚がじわりじわりと広がる。

 

「……ん、ぁぁ…んん」

 

 心地の良い感覚だった。つい目蓋を閉じてこの心地良さに身を任せてしまう程に。

 だが、ぴたりとそれが止んだ。イクサが手を離したのだ。

 

「こんな感じだ。どうだ、大体わかった…か〜、…どうした?」

「……ぁ。い、いえ。なんでも、ないです」

 

 まさか名残惜しいだなんて言える訳無く俯い小さな声を出すのが精一杯のアインハルト。

 

「ま、いいけど。それで講義の続きだ」

 

 いつの間にか装着していた眼鏡を右手の人差し指でくいっと押し上げてから言葉を続ける。

 

「気ってのはイコール生命力だ。生命力の強さは肉体の強さにも繋がる。強いエネルギーが常に体を満たしている状態になるからな。魔法だってより魔力を多く込めた方が純粋に威力を増すだろ?」

「なるほど」

「気ってのは割と汎用性が高くてな。肉体の強化や純粋な破壊エネルギーに変換して放出したりバリアの様に展開して身を守ったりと攻守にも使えるし、応急処置や空を飛ぶ事にも使える。わざわざ魔法式を用意しない分魔法より手軽かもしれないな」

「……」

「ある程度自由に気を操作が出来る様になれば今度は外の気の感知も出来るようになる。見えない相手の位置を把握したり、相手の気の大きさから実力を判断したり」

「……」

「俺の強さに気が関わっているのは間違いないな」

「……!」

「どうだ? 興味湧いたろ?」

「はい!」

 

 それからイクサはアインハルトに気のコントロールを教えた。最初は勿論最も簡単で基礎中の基礎である放出。

 まずはイクサが手本を見せる、両掌を胸の前で向かい合わせ手と手の間に小さなアメ玉くらいの大きさの気の塊を形成する。暖かな光を放つ黄色の小球体。

 

「こんな感じだ。兎に角、真似してみろ」

「……はい」

 

 イクサと同じ様に両の掌を向かい合わせて集中するアインハルト。だが、イクサの様に小球体はなかなか出来上がらない。

 

「……んっ、んん」

(りき)むな、落ち着いて、ゆっくり、力を引き出す様に」

 

 イクサはそう簡単に出来る事では無いとわかっていながらも間違いを正したりとアドバイスする。気の感覚は自分で掴まなくてはならない、仮に此処で手助けして気の感覚を覚えてもそれはイクサありきの方法だ。そうなればアインハルト一人では気を扱うことができなくなってしまう。だからイクサは口で説明するだけ、コツ自体はアインハルトに自力で見つけてもらわないといけない。

 

「……(頑張れアインハルト)」

「……ふっ、くぅ」

 

 時が経つのを忘れてアインハルトは気の扱いの特訓を続けていたがアルヴィナが二人を夕食だと呼び掛けた事で一時中断となった。

 

「すみません。私の分も用意していただき」

「ふふ、気にしないで。大切なお客様ですもの。はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

 チキュウのニホンと呼ばれる国で主食として好まれているコメと呼ばれる食べ物を茶碗によそってもらい受け取るアインハルト。

 黙々と箸を進めるイクサの正面でアインハルトが箸の扱いに苦戦したり、息子の初めてのガールフレンドが幼すぎるのでは? とアルヴィナが茶化してアインハルトが口に含んでいたコメを吹き出してイクサの顔がコメまみれになりアインハルトが何度も謝罪しアルヴィナはイクサに制裁されたりといつもより騒がしい夕食だったとイクサは語る。

 

「…ぅ…ぅぅ…ぁ、ぅ」

 

 夕食後も続けて気の放出の特訓を行うが、ずっと集中していた精神的な疲労、そして夕食で腹が満たされた事で眠気が募りうつらうつらとしだす。かく、かく、と何度も落ちそうになるのを我慢するがやがて寝落ちしてしまう。

 

「……しょうがないか」

 

 座ったまま眠ってしまったアインハルトを抱き上げ自分のベッドに寝かせるとイクサは椅子に座り机にノートと教材を広げて勉強する。

 かりかり、とペンの走る音とアインハルトの規則正しい寝息のみがこの部屋を響いた。

 

 

 

 

 

 

「すみません。こんな時間まで」

「気にするな」

 

 夜の十一時を超えた時間、イクサとアインハルトは二人はアインハルトの住むマンションの前で話していた。

 数時間程眠っていたアインハルトは夜も遅いとイクサに起こされ、泊まっていかないか? とアルヴィナに聞かれるも明日も学院があるからと断り、ならばせめてイクサが送る事になった。アインハルトは最初こそ渋るもイクサとアルヴィナの二人に強引に押し切られてしまった。

 

「……」

 

 夜の暗闇に紛れて見難いがアインハルトの表情は暗い、今回気の放出が上手くいかなかった事を気にしているのだろう。

 

「暫くは気の操作の特訓に専念するぞ」

「……はい。わぷっ」

「あまり重く捉えすぎるな」

 

 俯き気味のアインハルトの頭に手を乗せて乱暴に撫でる。

 

「最初から上手く出来る奴なんかいない、俺だって最初は苦労したさ」

「そう、なんですか?」

「ああ。こればっかりは感覚の問題だからな。俺の方でも何か良い方法を考えておくよ」

「はい」

「よし、いい子だ。あ、今日はもう夜更かしせずにシャワーでも浴びて寝ろよ」

「わかり、ました」

 

 若干気恥ずかしそうなアインハルトを見て満足するとイクサはバイクに跨りヘルメットを手に取り被ろうとしてやめた。

 

「あ、そうだ」

「……?」

「なぁ、アインハルト」

「はい、なんでしょう?」

「こらからお前の事、『()()()』って呼んでもいいか? アインハルトって少し長いしな」

「え?…あ、はい。構いませんが」

「そっか、ありがとよ。それじゃあまたなアイン」

「──……はい、イクサさん」

 

 今度こそヘルメットを被り、バイクをエンジンを付けて帰っていった。

 アインハルトもマンションに入り自身の部屋に戻る。

 

───またなアイン。

 

「イクサさん」

 

 何故だかイクサに呼ばれた愛称と声がアインハルトの頭から離れなかった。


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