ACE COMBAT Skies Rewritten   作:遠い空

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サンド島へ

[1995年3月30日1409時/宇宙空間/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「青い地球だ…。何度見ても綺麗だ…。」

 モニターに映る地球を見て、アレンスキー大尉は感傷に浸っていた。

「でもよぉ隊長、この綺麗な星で今戦争が起こってるって思うと、なんだか悲しくなるよなぁ。」

 ヒヤマ大尉が問いかける。

「いつの時代だって人間は争うのさ。一昔前だと…いや、今から15年後に起きる戦争だとベルカの陰謀があったとはいえ、俺もヒヤマ大尉は敵同士だった。かつての敵は味方になるかもしれないし、かつての味方は敵になるかもしれない。ちょっとした価値観や思想のズレで戦争は起こる。それは人間だから避けられない。ガキの頃のケンカだって、親に反抗的な態度をとることだって、見方を変えれば戦争と同じことさ。人間はそういう宿命に縛られてるのかもな。」

「まぁ、そう言われりゃあ、俺たちもゼネラルリソースにケンカ売ってたもんな。人間ってそういうところが愚かだよなぁ。」

 二人はモニターに映る青い星を眺めながら呟いていた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1414時/サンド島上空大気圏外/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡはサンド島上空大気圏外に到着し、大気圏突入シークエンスに移っていた。

「オーシア国営放送に周波数をセット。ラジオ放送はしっかり流れています。」

「よし、予定どおり大気圏に突入する。大気圏内に入ったら、この時代だろうと現代だろうとサンド島付近の海に着水する。サンド島分遣隊が現れた場合は争いを避けるため、彼らの指示に従う。皆いいな。」

「イェッサー!大気圏突入開始!」

 アークバードⅡが大気圏に突入する。ラジオ放送はしっかり流れている。

 皆、あの時と同じ現象が起きることを期待していた。

 

 

 だが、何も起こらなかった。

 

 

 アークバードⅡは大きな揺れにも、白い光に包まれることもなく、ラジオ放送も変化なく無事大気圏突入に成功した。いや、成功というべきなのだろうか。

 ハーバード機長は複雑な気持ちだった。

「…何も起こらなかったか…。ひとまず予定どおり、サンド島付近に着水する。」

 アークバードⅡは降下をはじめた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1421時/サンド島]

 

 

 

 

「レーダーに反応!国籍不明機が高高度から出現!降下しています!この進路だと、サンド島近海に落ちます!」

「ウォードックをスクランブル発進させよ!武装はするが、交戦はするな!」

 サンド島基地司令官が出撃命令を出す。

 サンド島からF-14Dが4機離陸する。

 当時のオーシアは軍備増強をしていたため、環太平洋戦争時のウォードックの機体に比べれば高性能な機体が配備されている。空軍なのに海軍機なのは、海に面した土地にいるウォードックとオーシア海軍との円滑な連携を図るためである。

 ましてや、当時はユークトバニアとは連合関係であったものの、仮想敵国と認識していたため、海軍と空軍の連携が意識されたのである。

「ライトニングより各機へ、指示あるまで交戦はできない。各機はいつでも攻撃できるよう配置についてくれ。まずは国籍不明機を誘導する。そこで、俺が国籍不明機と通信を試みる。」

 ウォードックリーダー、ライトニング(電撃)ことマイク・ジョンソン大尉がウォードック隊員に指示を出す。

「国籍不明機と通信だってぇ?さすが隊長だぜ。俺にゃ人見知りの癖があるから、とてもできやしねぇ。」

 ウォードック4番機、ハートブレイクワン(失恋1号)ことジャック・バートレット中尉が呟く。

「こちらスナイパー、俺はフェニックスミサイルぶら下げて迎撃できるよう待機する。」

 ウォードック3番機、スナイパー(狙撃手)ことサム・スヴェンソン中尉が編隊から離れる。

「こちらランス、配置についた。いつでも指示をどうぞ。」

 ウォードック2番機、ランス(槍)ことダッチ・ベイカー中尉がライトニングにくっついて行く。

「こちら管制塔、IFFから国籍が特定できた。だが、驚かないで聞いてほしい…。国籍はオーシアとユークトバニアだ…。1機の国籍不明機からオーシアとユークトバニア、2つの国籍が出てきた…。」

「こちらライトニング、こっちでも同じ反応が出た。どういうことだ?意味がわからん。」

 ライトニングはIFFの反応に困惑していた。

「ひとまず通信を試み…、ん?向こうから回線を開いてきた。俺たちの周波数を知ってるのか?」

 国籍不明機側から無線が開き、通信が流れてきた。

《こちらはアークバードⅡ。我々は敵ではない。攻撃意思はない。信じられないかもしれないが、我々は未来からやってきた。だが、燃料が少ない。燃料補給を求む。繰り返す、こちらはアークバードⅡ…》

「何やら変なことほざいてる奴らだぜ。未来からとかふざけた話だなぁ。どうする隊長?」

「ブービー、これは俺たちではどうにもならん。基地司令官に通信する。」

 ブービーとは、ハートブレイクワンの当時のあだ名である。

 ライトニングは基地司令官に通信する。

「こちらでも通信を傍受していたが、彼らを受け入れる。国籍がベルカでない限りは我々の敵ではない。あとは私に任せてくれ。」

「さすがは頼りになる基地司令官です。あとはよろしくお願いします。」

 基地司令官は国籍不明機に通信した。

 

 

 

 

[1995年3月30日1425時/サンド島上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「こちらはアークバードⅡ。我々は敵ではない。攻撃意思はない。信じられないかもしれないが、我々は未来からやってきた。だが、燃料が少ない。燃料補給を求む。繰り返す、こちらはアークバードⅡ…」

 ハーバード機長はサンド島基地に交信し続けていた。

 すると、サンド島側から連絡が入ってきた。

《こちらサンド島基地司令。本当に未来から来たのか?念のために聞くが、ベルカの人間ではあるまいな。いつでも攻撃の準備はできている。》

 ハーバード機長はニヤリと笑った。

「この懐かしい声、久々に聞いたなぁ。あなたは1940年3月29日生まれ、オーシアのバーナ学園都市で生まれた。1967年7月9日に息子を授かり、今その息子は傭兵としてベルカの戦地に向かっている。」

「機長は一体何を…?」

 クルーはハーバード機長の奇怪な言動に首をかしげていた。

《なっ…何故?何故、私の経歴を…。声は歳をとってるが、どこか聞き覚えのある声だった…………。まさかお前は、ジョン・ハーバードか?!》

「その通り!久々に親父の声が聞けたよ。」

「おっ…親父だってぇぇ?!」

 ヒヤマ大尉は大声をあげて驚いた。

「燃料が少ない。親父、近海に着水させてくれ。このアークバードⅡという巨大航空機には着水機能がついている。」

《信じられん…。あの馬鹿息子が未来から…。》

「親父、聞いてるか?」

《あぁ…すまん。このことはオーシア国防空軍本部には内緒にしておく。近海に着水してくれ。我々が海上から迎えに行く。色々聞きたいことがある。》

 アークバードⅡは徐々に高度を落とし、サンド島近海に着水した。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。今、用語集(人物編)を作成中です。まだ時間がかかりますが、楽しみにしてください。これからもこの小説をよろしくお願いします。

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