ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
漂流
[?年?月?日?時/オーレッド周辺空域上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]
ハーバード機長はグラハム空軍基地の特攻作戦を中止し、状況を確認していた。
「アルタイル1よりハーバード機長。一体何が起こったのですか?それにアークバードⅡの揺れは一体…?」
「今わかることは夜なのに昼だということだけだ。」
「夜なのに昼?わけがわかりません。どういうことです?」
「私もこの状況を理解できん。今は有事に備えて艦載機で待機してくれ。」
アルタイル隊に待機の指示を出す。
「機長!目標のグラハム空軍基地が存在しません!奇襲部隊とは通信途絶!」
「グラハム空軍基地がないだと!?何かの間違いじゃないのか!?」
「間違いありません!地形、現在座標から判断するにグラハム空軍基地の存在していたオーレッド周辺です!」
「なんだ!?何が起きている!?」
管制室のクルー達は理解不能な状況に頭がパンクしそうになっていた。
ハーバード機長もパンク寸前だ。長い機長経験を通した彼でもこんな経験はしたことがないから無理もない。
「機長!奇襲部隊と通信を試み続けた結果、ラジオ放送の電波を傍受しました!」
「よくやった!とにかく今は情報だ!つないでくれ!」
「しかし、この電波は今は滅んだはずのオーシアの放送です…。しかも、ラジオ局オーシア国営放送のものです。2011年に倒産したはずの…。」
オーシア国営放送は2010年の環太平洋戦争時にタカ派軍人が運営し、プロパカンダ放送を流していた。
しかし、戦争の真実が表に出てからはプロパカンダ放送を流していたオーシア国営放送が国民と平和主義の政治家・軍人から叩かれるようになり、ハーリング大統領の権限により倒産した。
「何故倒産したはずのラジオ局が…?まさか…タイm…?いや、今はラジオの内容が優先だ!つないでくれ!」
オーシア国営放送の周波数に合わせる。
すると放送が流れてきたが、信じられない内容だった。
《3月25日、ベルカはウスティオでの天然資源発見を期に、ベルカ隣国を侵略しました。しかし、オーシア・ユークトバニア・ベルカ周辺諸国は連合を組織。正式名はまだ未定ですが、4月に入ってから反攻作戦を本格的に実施するとのことです。》
「…………ベルカ…戦争…だと…?」
ハーバード機長の顔色が青ざめていく。
《今日のニュースは以上です。オーシア国営放送が3月30日、午後1時をおしらせします。ポッ、ポッ、ポッ、ピーン。続いては…》
「皆、今の放送を聞いたな…。」
「はい…、我々はまさか1995年に…?」
「なんとも言えないが…、可能性はあるな…。ベルカ戦争時代に…、タイムスリップしてしまったのか…?」
しばらく沈黙が続いたのち、ハーバード機長は何かを思い出したように声を出した。
「光学迷彩を作動させろ!姿を見られてはマズイ!タイムパラドックスが起きるぞ!」
「タイムパラドックス!?りょ、了解!光学迷彩作動!」
アークバードⅡは蜃気楼のように姿を消した。
光学迷彩はゼネラルリソースがグランダーIGを奪取してからアンチステルス技術が進み、実戦では役に立たなかった。
しかし、光学迷彩がこんなところで使われるなんて誰も思いもしなかった。
「機長、タイムパラドックスってなんですか?」
「例えば過去に戻って自分の親を殺す。そしたら過去が変化したから自分が生まれなくなる。要はそういうことだ。」
「ということは、我々が1995年に現れたことによって過去が変化し、我々の知る未来や我々の存在が変わるということですか?」
「ああ、そういうことだ。」
その時、クルーのひとりが声をあげた。
「大変です!Asatレーダーに接近する航空機を補足しました。IFFは…オーシア空軍…です…。」
管制室の空気が一気に凍りついた。
[1995年3月30日1304時/オーレッド周辺空域上空15000ft]
アークバードⅡが出現したオーレッド周辺空域に4機のF-2Aが向かっていた。
「こちら空中管制機ストラタス。オーシアの防空レーダーが国籍不明機を捉えたが、見失ってしまった。クローバー隊各機は周辺空域を警戒せよ。」
「クローバー1了解。クローバー1から各機へ。分散して警戒行動に移る。何か見つけたら報告しろ。」
4機のF-2Aは分散する。主に反応があった周辺を警戒していた。
しばらく散策したが、結局何も見つからなかった。
「クローバー1よりストラタスへ。異常なし。今日もオーレッド周辺は問題なしだ。」
「了解。帰投せよ。防空レーダーの故障だろうな。あとでオーシア国防空軍本部に報告しておく。任務ご苦労。」
4機のF-2Aは撤退していった。
[1995年3月30日1319時/オーレッド周辺空域上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]
「オーシア空軍機の撤退を確認。ふぅ…。一時期はどうなるかと思いましたよ。」
「ひとまず、防空レーダーの故障でこの一件は片付くだろう。高解像度カメラで捉えたオーシア空軍機の解析は完了したか?」
姿を隠し、オーシア空軍機が撤退するまでの間、高解像度カメラでオーシア空軍機を撮影し解析を行っていたのだ。
「機体、エンブレムからF-2Aのクローバーエンブレム。当時の資料を検索してみたら、この部隊は1990年から2004年まで実在しています。部隊名はオーシア国防空軍第9航空師団第132飛行隊クローバー隊で4機のF-2Aで編成されている部隊です。」
今までの怪奇現象を総合して、ハーバード機長は間違いなくタイムスリップしたことを確信した。
「我々は本当にタイムスリップしてしまったようだな。ひとまず此処は危険だ。東へ向かいオーシア防空圏外にでる。燃料はまだあるな?」
「大丈夫です。燃料はまだ余裕があります。」
「よし、我々はこれより東へ向かい光学迷彩を解除したのち、再び大気圏外に出て大気圏に突入する。もしかすれば元いた時代に戻れるかもしれない。」
アークバードⅡは進路を変え、東へ向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回はタイムスリップネタのため、非常に書きやすかったので早めに投稿出来ました。次回もよろしくお願いします。