ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[2030年3月29日1842時/バセット宇宙センター南洋25000ft上空/アークバードⅡ/管制室]
「Asatレーダーの反応に変化あり!奴ら撤退していきます!」
「奴らもさすがに観念したか。だが、かなり損失が出てるのに引こうとしなかった。人のことは言えないが、人間恐ろしいものだ。」
ハーバード機長はゼネラルリソースの執念深さに恐れを感じていた。
「今生きている機は?」
「アルタイル1、2、5、6、7、ADF-02が2機です!」
「よし、着艦させろ!」
アークバードⅡに次々と着艦する。
生き残ったパイロットは管制室に集まった。
「皆ご苦労。少なくとも奴らに一矢報いることができた。」
「しかし、俺たちは死にきれませんでした。これからどうなさるつもりですか?」
ハーバード機長にアルタイル1ことイワン・アレンスキー大尉が問いかける。彼は元ユークトバニア空軍の熟練パイロットだ。
「マクネアリ空軍基地の生存者は最寄りのGRDFの基地に特攻するつもりらしい。バセット宇宙センターから連絡がないということは、大統領と元首は覚悟を決めたのだろう。」
ハーバード機長は目をつぶって一呼吸したのち、口を開いた。
「我々もここでのんびりしているわけにはいかない。そこで、GRDF最大のグラハム空軍基地にアークバードⅡごと特攻する。一旦攻撃を受けない大気圏外へ離脱し、再び大気圏に突入し、速度を維持したまま特攻する。」
衝撃的な作戦だが、作戦を聞いていたパイロットやクルーは覚悟を決めたのか、動揺すらしていなかった。
「だが、さすがに無防備のままだと基地に特攻する前に撃墜される可能性がある。それまでにグラハム空軍基地の戦力の注意をそらしてほしい。艦載機3機、内1機はZ.O.E.で丁度いいと思うが、誰か我こそはという者はいないか?」
「ならば俺がいきます!」
「私に任せてください!」
アルタイル2とアルタイル6が名乗り出た。
「ありがとう。勇気ある2人が作戦開始5分前にグラハム空軍基地に奇襲をかける。そして、戦力があらかた減ったところを狙って特攻する。作戦時間は0000時とする。それまでに各員決意を固め、作戦に臨んでくれ。以上だ。」
こうして生き残ったアークバードⅡは愛国軍の最後の作戦に臨むのだった。
[2030年3月29日2300時/バーナ学園都市南洋25000ft上空/アークバードⅡ/管制室]
アークバードⅡからアルタイル2とアルタイル6操るR-100、Z.O.E.操るADF-02が射出された。
「アルタイル2よりアルタイル6、俺たちの任務はグラハム空軍基地の戦力を減らすことだ。破壊はアークバードⅡに任せるからな。」
「アルタイル6了解。アークバードⅡには有終の美を飾ってもらわないとな。我が祖国に栄光あらんことを。」
3機はグラハム空軍基地へと飛んでいった。
「彼らは離脱したな。アークバードⅡ高度上昇!大気圏外に出る!」
アークバードⅡの6発の複合サイクルエンジンが青い火を噴き高度を上げる。
しばらくすると空がさらに漆黒に染まった。
大気圏外に出たのである。
夜のため地球の青さを確認はできないが、代わりにオーシア大陸が光っていた。
街の灯りである。
「オーシアが光っている。綺麗な光景だ。あの世に行く前に素晴らしい光景を観れるとはな…。」
ハーバード機長らは、高解像度カメラで撮っている映像を管制室のモニターで見ていた。
「綺麗だ。心が拭われるようだ。」
アレンスキー大尉が呟く。
「エレーナにも見せたかったな…。あの世で会ったらこの事を話そう。今仇をとるからね。」
アルタイル5ことフォード・マクドネル大尉が悲しい目をしていた。
彼は元オーシア空軍だが、実はユークトバニアにエレーナ・ダニエリという恋人がいた。
長い年月をかけ愛が実り、オーシアで国際結婚し、エレーナはオーシアに国籍を移して夫婦仲良く生活していた。マクドネル大尉が愛国軍には入っても、エレーナは彼についてきた。
しかし2029年12月、GRDFとの戦いに巻き込まれ死亡。
マクドネル大尉は彼女の死に嘆き悲しんだ。
そして、彼は国の為よりも彼女の復讐の為に戦うようになった。
「機内にいるアルタイル隊はどうする。機内に留まるか、艦載機に乗って戦うかは任せる。」
ハーバード機長の問いにマクドネル大尉が即答する。
「もちろん艦載機に乗ります!愛する国の為にも!」
「本当は彼女の復讐なんだろう。だが、別に構わないさ。俺たちはどうせ死ぬ。死ぬのなら満足して死ぬのが一番だろう。彼女の為に戦ってこい!」
ハーバード機長は檄を飛ばした。
「マクドネル大尉だけに行かせはしないぜ。俺もアルタイル隊隊長として出撃します!」
「俺のことを忘れんなよな!間違ってイジェクションレバー引かないように整備兵にぶっ壊してもらったぜ!」
アルタイル7ことコウセイ・ヒヤマ(飛山鋼生)大尉は元オーシア空軍パイロットで腕はそこまで強くない。
しかし悪運の強いパイロットで機体がボロボロの状態で帰還したり、エネミーラインでイジェクトしても必ず生きて帰るなど、ISAFの某パイロットと似ている。ちなみにそのパイロットとは別人である。
「よし、わかった。大気圏突入後、高度25000ftになった時に射出する。すぐ射出できるよう準備してくれ。」
「イェッサー!」
アルタイル隊はすぐに格納庫へと飛び込んでいった。
[2030年3月29日2355時/グラハム空軍基地]
「レーダーに反応!3機の航空機が接近中!愛国軍です!奴ら戦闘機でこっちに向かってます!」
グラハム空軍基地から警報が鳴り響き、戦闘機が離陸した。しかし、遠距離からADF-02のレーザーで撃墜された。
「愛国軍の奴らはどこまで懲りないんだ。ディジョン機、離陸する!」
GRDFは戦闘機を出すが、突然の事態と先の戦いで疲弊しているため、万全の状態ではなかった。
しかし、愛国軍側も3機しかなく、内2機は人間であるため疲労が溜まっていた。結局は五分五分といったところである。
ただし、注意を逸らすという本来の作戦を達成してるため問題はなかった。
[2030年3月30日0000時/グラハム空軍基地上空大気圏外/アークバードⅡ/管制室]
「時間だ。作戦開始!大気圏に突入せよ!」
アークバードⅡは突入体勢に入る。
少しづつ高度を下げ、大気圏に突入した。周りが赤くなる。突入は順調に進んでいた。
「大気圏突入順調に推移。異常ありません。」
だが、突入1分後に異変が起きた。
次第に機内の揺れが大きくなりだしたのである。
「揺れが激しい!何か身近なものに掴め!」
ハーバード機長は注意を促すと同時に疑問が横切った。
「馬鹿な!アークバードⅡは大気圏突入時にこんなに揺れないはずだ!大気圏突入は何度かやっているがこの揺れはおかしいぞ!」
「機長!モニターの映像が赤ではなく、真っ白になってます!宇宙空間の黒も白く…、全て真っ白です!」
「アークバードⅡの故障か?!」
「いえ!システムには異常は確認できません!」
「大変です!Z.O.E.システムに異常発生!奇襲部隊のADF-02とオフラインになりました!」
「全員冷静に!何が起きているかわからんが、ひとまず大気圏突入を続行する!」
高度が下がり、大気圏内に入った。
入ってから徐々に揺れが収まり、真っ白な空間がなくなり色が出てきた。
しかし、待っていたのは衝撃の光景だった。
「機長…。現在時刻は0007時でよろしいのですよね…?」
「確かにそうだ…。時計は正しくセットしている…。だが…、モニターの映像はなんだ…?」
「真夜中のはずなのに…、太陽が出て…、青空が広がっています…。」
この状況に皆絶句していた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。次回からベルカ戦争編に入るのでよろしくお願いします。