ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年4月3日1512時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/甲板]
シーサーペント作戦からオーシア第3艦隊はオーレッド湾北西部からベルカ方面に移動しつつ、オーシア陸軍の支援要請を行なっていた。
空母ケストレルにはF-14AやF-14D、F/A-18C/D、F/A-18E/F、E/A-18G、E-2Cなどのスタンダードな艦載機をはじめ、当時の最新鋭ステルス艦載機F-35Cが艦載されていた。
艦載機は常に哨戒を行なっているが、前の戦いで、攻撃能力を持った艦載機は半分以上失っていた。
さらに戦死者も出たため、パイロットが不足していた。
現在ケストレルに艦載機されている機体は以下の通りである。
・F-14A…2機
・F-14D…1機
・F/A-18C…2機
・F/A-18D…2機
・F/A-18E…1機
・F/A-18F…1機
・E/A-18G…5機
・F-35C…1機
・E-2C…3機
・EA-6B…6機
・SH-60…3機
・HH-9B…3機
《ウォードックリーダー、ライトニングより空母ケストレルへ。空軍本部の命令通り第3艦隊の支援に来た。着艦を求む。》
「こちら空母ケストレル。着艦を許可する。遠方からの航空支援に感謝する。」
ウォードック隊の4機のF-14Dがランディングギアを展開し着艦態勢に入る。
先頭のF-14Dが減速し高度を下げつつケストレルに接近する。
主脚がケストレル甲板に接触したと同時に着艦フックがワイヤーに引っかかる。
そのまま前進しつつ、前脚が甲板に接触し減速、そして停止する。
ケストレルのクルーに誘導され機体を移動し、続けて2番機が着艦。
同じ流れで残りの機体が全機着艦に成功した。
「ふう、久々の空母だ。甲板の海風は気持ちいいなぁ〜。」
機体から降りたベイカー中尉が呟く。
「でもよ、これからここの艦長にこき使われるだろうぜ。」
スヴェンソン中尉が応える。
「わかるぜ!大体艦長ってのは人はいいが、人使い荒いからな!はっはっはっはっ!」
バートレット中尉が大声で話す。
「馬鹿!失礼なことを大声で話すな!お前らもお喋りは後にして艦長に挨拶しに行くぞ。」
ジョンソン大尉は引き連れている隊員に注意して、ケストレルの中に入って行った。
[1995年4月3日1512時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/艦長室]
艦長室に頭の禿げた黒髭の男が、書類に印を押していた。
この男こそ、空母ケストレル艦長のダグラス・ウィーカーである。
彼は急遽、公試運転のケストレルの艦長を任せられた。
しかし、かつては別の空母を始め、イージス艦など様々な軍用艦の艦長を経験した素晴らしい経歴を持つ人物である。
そのためケストレルの艦長になってからも、上手く統率が取れていた。
ドアからノックが鳴る。
「入れ。」
ウィーカー艦長が入室許可を出すとドアが開き、ウォードック隊員4人が入ってきた。
彼らは横一列に綺麗に整列した。
「オーシア国防空軍第108戦術戦闘飛行隊、サンド島分遣隊ウォードック、只今を持ってオーシア第3艦隊の艦隊防衛任務に着任します。」
ジョンソン大尉が敬礼をしながらハキハキとした口調で着任宣言をする。
「はるばる遠方からご苦労。よく来てくれた。君たちの艦隊防衛能力の高さは聞いている。これからよろしく頼む。」
ウィーカー艦長は労いの挨拶をする。
「聞いての通り、ベルカ空軍は非常に強力だ。搭乗機体、パイロットセンス、これらはオーシア空軍以上の戦闘能力だ。先の戦いではこの差で何人もが戦死した。心して任務に取り組んでほしい。」
ウィーカー艦長はベルカ空軍の脅威を伝えた。
「了解しました。ベルカ空軍の恐ろしさは承知の上です。我々はその覚悟でケストレルへ参りました。必ずや、オーシア第3艦隊を守り抜きます!」
ジョンソン大尉はウォードック隊の意思を伝えた。
「頼もしいな。期待してるぞ。今後の作戦は今のところは未定だが、近々上から連絡が来るだろう。その間はゆっくり羽を伸ばしてくれ。私からは以上だ。退室してよし。」
ウィーカー艦長がそういうと、ウォードック隊員は一礼して部屋を出た。
[1995年4月3日1547時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/休憩室]
ジョンソン大尉は休憩室の窓から水平線を眺めていた。
「今日は薄っすらと曇っていますね。海もやや荒れていますし。」
ベイカー中尉が話しかける。
「ああ、そうだな。予報だと明日からしばらく天気が悪いらしい。作戦に影響が出なければいいが…。」
ジョンソン大尉は水平線を眺めながら応える。
「僕は正直不安です。ベルカ空軍がどれほどの強さなのか想像できません。僕も覚悟の上で参加しましたが怖いです。」
ベイカー中尉は自分が不安に思っていることを話す。
「俺もそうだよ。確かに怖いさ。でもな、みんなで助け合えばいいさ。俺たちは個性豊かなチームだからな。まぁ、正直ブービーに助けられたところもあるけどな。」
ジョンソン大尉はベイカー中尉を見て話す。
「えっ、バートレットにですか?」
ベイカー中尉は驚く。
「あいつは馬鹿だ。でも、裏を返せばポジティブなんだ。俺がベルカ空軍のことで不安になった時に、ベルカ空軍なんざボコボコにすればいいって言った。あいつのおかげで固く考えてた俺の気持ちが和らいださ。」
ジョンソン大尉は話しながらバートレット中尉の方を向く。
バートレット中尉はスヴェンソン中尉と談笑しているようだ。
「まっ、俺も人のことは言えんが、要するに固くなんなってことだよ。」
ジョンソン大尉は笑顔で応える。
「ありがとうございます!これからのことを前向きに考えたいと思います。あっ、あれはC-2ですね。着艦態勢に入ったみたいです。」
ベイカー中尉が礼を言った時、C-2が着艦態勢に入った様子が窓から見えていた。
「わかった。ようし、C-2が到着した。荷物を取りに行くぞ。」
ジョンソン大尉が隊員に伝えると、全員空母甲板に向かって行った。
[1995年4月7日1921時/サンド島近海/アークバードⅡ/物資搬入口]
サンド島からウォードックが飛び立ってから4日後、セントヒューレット軍港から出港したタンカーが到着した。
セントヒューレット軍港から出港したのは2隻で、うち1隻はサンド島の物資を積んだタンカーのため、サンド島に向かった。
アークバードⅡの物資を積んだタンカーは、ハーバード機長の無線指示によって、指定のポイントに停泊し、積み下ろし作業が始まっていた。
「こんな夜遅くにご苦労様です。おかげで助かりました。物資と燃料の輸送ありがとうございます。」
ハーバード機長はタンカーの艦長にお礼の挨拶をした。
「いえいえ、どういたしまして。あと、輸送した物資のリスト用紙です。問題がなければその紙はあげますので、大切に保管してください。秘密裏の輸送のため、我々が持っていると要らぬ証拠になってしまいますので。」
ハーバード機長は用紙の内容を見た。
以下、輸送した物資リストである。(物資の具体的な量は省略しています。)
・ジェット燃料(アークバードⅡ+艦載機)…約4週間分
・ロケット燃料…約2週間分
・生活用水…約1ヶ月分
・食料…約1ヶ月分
・その他生活必需品…約1ヶ月分
・AIM-9 サイドワインダー(予備)…8発
・AGM-65 マーベリック(予備)…8発
・AIM-120D AMRAAM(予備)…16発
・20mm口径弾(予備)…800発弾帯×8本
・その他アークバードⅡ、艦載機整備機材(予備)
「ふむ、確かに希望した物資を受け取りました。」
ハーバード機長は用紙を折りたたんで胸ポケットに入れた。
「燃料は今の積み下ろし作業が終了次第、タンカーを移動させて作業させて頂きます。どこに移動すればよろしいでしょうか?」
タンカーの艦長はハーバード機長に尋ねる。
「翼の中と一部胴体が燃料タンクになっています。アークバードⅡの側面に給油口があるので、整備士に案内させます。給油はタンカーから直接できるように設計されていますので、整備士の指示に従ってください。」
ハーバード機長はN.PhoneでアークバードⅡのモデルを立体表示し説明した。
「わかりました。しかし、その謎の端末といい、このアークバードに似た機体といい、あなたたちは何者ですか?」
タンカーの艦長はここに来てから疑問に思っていたことをぶつける。
「信じられないことかもしれませんが、何らかの現象により未来から今の時代に漂流してしまったのです。何故こんな事になったのか、よくわかりません。しかし、私たちはこの時代でやるべき事を見つけました。」
ハーバード機長は質問に答えた。
「未来人…なのですか?その…やるべき事とは?」
タンカーの艦長は彼らが未来から来た存在である事に動揺していた。
「まぁ、簡単に言えば未来を変えると言ったところでしょうが、詳しくは言えません。恐らく後々わかるかと。」
ハーバード機長は大雑把に答えた。
「は…はぁ。と、とりあえず、私はタンカーに戻ります。」
タンカーの艦長は冷静になるため、ひとりタンカーの船橋に向かった。
[1995年4月7日2301時/アークバードⅡ/作戦会議室]
物資・燃料の補給は無事完了し、タンカーも何事もなく帰って行った。
その後、今後の予定の説明のためクルー全員を作戦会議室に集めた。
「皆の協力のおかげで無事に補給作業は終了した。ありがとう。」
ハーバード機長は初めに礼を述べた。
「さて、今後の予定だが、何回か話している通り介入作戦は予定通り4月10日に行う。」
ブリーフィングシステムGASAが内蔵されている円卓が起動する。
「4月9日の2300時にサンド島近海から大気圏を離脱し、2350時にベルカ防空システムにハッキングを仕掛け、防空網を麻痺させる。」
円卓の立体映像に地球と大気圏を離脱するアークバードⅡのモデルが映る。
「その後は4月10日0000時に作戦を開始。エクスキャリバーにレーザー攻撃を行った後、大気圏に突入しベルカ領空内に侵入。艦載機を射出し、イエリング鉱山とアヴァロンダムにある核貯蔵施設の核搬入口を破壊。核を完全に封印する。また、イエリング鉱山で組み立て作業中のXB-Oも破壊する。」
アークバードⅡのモデルはレーザーのエフェクトを出しエクスキャリバーのモデルを破壊。大気圏に突入し、艦載機を示した矢印が分散する。
「その後は艦載機を回収し大気圏を離脱。事前に録画した声明をマスコミにリークし、我々は北極付近で大気圏に突入する。その後は光学迷彩を作動させ着水し、世界の様子を伺う。」
アークバードⅡのモデルは大気圏を離脱し、北極付近で大気圏に突入する。
「当日になったらまた同じ事を話すが、とりあえず頭の中によく焼き付けてほしい。何か質問はあるか?」
ハーバード機長はクルー全員に尋ねる。
するとマクドネル大尉が手を挙げ返事をした。
「作戦とは関係ない質問ですが、タンカーの船員たち結構いましたし、不思議そうな目で見ていましたが、彼らは僕たちが行動する前に情報をバラさないでしょうか。」
マクドネル大尉は不安そうにハーバード機長に質問する。
「大丈夫だと信じるしかないさ。サンド島基地司令官の友人はオーシア国防空軍の航空参謀だ。かつて私も会ったことはあるが、あの人の元ならそういう事をさせないような措置を執るだろう。」
「それは初耳でした。この時代ですからスミス航空参謀の事ですよね。優れた人格者だと聞いています。確かに安心できますね。」
ハーバード機長の答えにマクドネル大尉は安心したようだ。
「私としたことが皆に言い忘れていたな。すまない。極秘にだがオーシア国防空軍の航空参謀が味方に付いている。あの人は裏切ることはないし、信用できる人だ。今回の件はその航空参謀の管轄下にあるから安心してほしい。」
ハーバード機長はスミス航空参謀が味方についていること、そして信頼できる人である事を話した。
他のクルーもとりあえず安心した様子だった。
「他に質問がなければ解散するが…。誰も居なさそうだな。今日は皆ご苦労様。ゆっくり休んでくれ。解散。」
ハーバード機長は解散の指示を出した。
作戦会議室からクルーが出て行き、最後に残ったハーバード機長は円卓の電源を落とし、電気を消して部屋を出て行った。
騒がしかった作戦会議室は夜の沈黙につつまれた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
3ヶ月も期間を空けて申し訳ありませんでした。
以後気をつけます。
さて、今回はシナリオの進行速度を少し上げてみました。そのため、細かなところは前と比較して省略しています。特に問題がなければ次回もこのシナリオペースで執筆したいと思います。