ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年3月31日0758時/アークバードⅡ/食堂]
アークバードⅡのクルーは、調理係が残った食糧で作った朝食を食べながら大型液晶テレビに注目していた。
大型液晶テレビにはテレビ局OBCのCMが流れていた。オーシアのテレビ放送が映るようにベレゾフスキー主任がテレビ電波をジャックしたのだ。
ハーバード機長は起床時刻の0600時に、クルー全員へ0800時前に食堂に集合しテレビを見るように連絡した。
「一体何が始まるんだ?」
「なんか嫌な予感がする。」
「時代を感じるCMだな。」
「ベルカ戦争時代のテレビは初めて見たなぁ。」
雑談しながらテレビを見てると0800時になり、朝のニュースが始まった。
《おはようございます。朝8時になりました。ニュースをお伝えします。まず速報です。昨日13時頃、オーレッド周辺の住民からアークバードらしき飛行物体の目撃情報が相次いで起きました。》
周りがざわつき始める。
《この映像は一般人から提供してもらったビデオカメラの映像です。この白い飛行物体がアークバードに類似しているとのことです。しかし数分後、この飛行物体は突然姿を消しました。アークバードの管轄下にあるオーシア国防空軍からは、我々のアークバードではない事は確認済みですが、この正体が何なのかはわかりません、とのことです。》
ざわつきが大きくなる。
「皆、静粛に!私の話を聞いてくれ。」
ハーバード機長が昨夜にハーバード基地司令官から連絡があった事を含め話し始めた。
「……という事だ。昨日の私の話の通り、いずれは我々の事が公になる。しかし、思ったよりも早いタイミングだったから私自身も困惑している。これから先は食糧・燃料が届くまでは慎重に行動する必要がある。一番重要なのはアークバードⅡの事だ。この機体だけは必ず守り通さなければならない。最悪の場合、この状態でオーシア軍と戦闘になる事を覚悟してくれ。」
ハーバード機長は燃料・食糧が到着するまでにやるべきことを話し始めた。その内容は以下の通りである。
・ベルカ戦争介入作戦の作戦計画の練り上げ。
・残っている武装とその残弾数の確認。
・アークバードⅡの警戒態勢強化。
・オーシア軍のコンピュータをハッキングし、情報収集。
・戦闘機の整備
・機体保全や機内の清掃
「では朝食が済み次第、作業に移ってくれ。解散。」
ハーバード機長は説明し終え、食堂を後にした。
[1995年3月31日0810時/アークバードⅡ/管制室]
アークバードⅡの警戒態勢強化を図るため、クルーの人数を増やし、交代で異常を確認する事になった。
Asatレーダーはこの時代に来てからずっと作動させているが、レーダー出力を最大に上げ、さらにZ.O.E.とリンクさせ索敵能力を向上させた。
一方、ベレゾフスキー主任率いるコンピュータ管理係は、オーシア軍のコンピュータにハッキングを仕掛けていた。
「ベレゾフスキー主任、いくら古いコンピュータにハッキングを仕掛けるとはいえ、バレることはないのでしょうか。正直不安です。」
クルーのひとりが問いかける。
「大丈夫だ。この時代のコンピュータのセキュリティはザルだ。閲覧だけならヘマしない限りバレはしない。」
ベレゾフスキー主任は笑顔で答えた。
「こいつを誰だと思ってる?天才ハッカーのニコライ・ベレゾフスキーだぞ!まぁ、最近調子は良くないがな。」
「おい、最後一言多いぞ!」
同僚のクルーがからかい、場が和んだ。
からかわれながらも、ベレゾフスキー主任はハッキングに成功した。
そこには過去の報告書データや、これから実行する計画書データなどが詰まっていた。
ハッキングしたデータと、アークバードⅡのパーソナルコンピュータに入っている史実の過去データを照らし合せて、合致しない出来事を探すのが今回の仕事である。
(報告書一覧は過去のデータと合致。俺たちがやってくる前は何も変化がない。問題はやってきた後だが、異なるのはオーレッド周辺空域の調査報告書と防空レーダーの異常報告書、一般人の未確認飛行物体目撃情報に関する報告書だな。奴らはどこまで知っているんだ?)
ベレゾフスキー主任はハッキングした報告書のコピーをとり、それを他のクルーに見てもらう事にした。
その間、ベレゾフスキー主任は計画書一覧を見た。
(俺たちがやってきた後の計画書一覧は、史実と一部更新時刻にズレがあるが内容は同じだ。大きなズレはないようだな。だが、定期的に確認しないと。)
計画書一覧は更新時刻以外、史実通りである。
「ベレゾフスキー主任、報告書を見ましたが現段階でオーシア軍は我々の正体を把握してないと思います。」
報告書にはアークバードに類似した未確認飛行物体とだけ書いてあり、その正体までは把握してないようだ。
「了解した。いつ報告書が更新されるかわからんから、これから定期的に確認しよう。今は特にやることはなさそうだな。」
そう言って、ベレゾフスキー主任は背伸びした。
[1995年3月31日0810時/アークバードⅡ/格納庫]
同時刻、格納庫では戦闘機の整備と並行して、今ある武装を確認していた。武装は以下の通りである。
・R-100…3機
・ADF-02…1機
・アークバードⅡ専用下部レーザーユニット…1台
・アークバードⅡ専用AAM発射台…3台
・アークバードⅡ専用30mmバルカン砲…5台
・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー未使用…5台
・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー80%使用済…1台
・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー充電器…1台
・ADF-02専用レーザーユニット…1台
・ADF-02専用レールガンユニット…2台
・ADF-02専用レーザーバッテリー充電器…3台
・ADF-02専用レールガンバッテリー充電器…6台
・SWSB(衝撃波自爆弾)…3発
・アークバードⅡ専用AAM…60発
・アークバードⅡ専用バルカン砲30mm口径弾…2000発弾帯×30本
・アークバードⅡ専用大型ECMポッド…1台
・アークバードⅡ専用クローキングデバイス(光学迷彩装置)…1台
・AOM-3 短距離空対空地艦ミサイル(通称:万能ミサイル)…20発
・AIM-120F 中距離高機動空対空ミサイル(通称:メビウスミサイル)…80発
・LRASM 長距離空対艦ミサイル(通称:音速対艦ミサイル)…20発
・SDBM(散弾ミサイル)…8発
・誘導貫通爆弾…20発
・ECMポッド…7台
・レールガン弾…400発
・R-100・ADF-02専用バルカン砲20口径弾…800発弾帯×20本
整備士は武装リストに記入しながら武装を確認していた。
整備士は確認し終わると、整備長に報告した。
「武装に関してはまだ余裕はあります。しかし、節約しなければ恐らく長くは持たないでしょう。」
整備長は顎に手を置き、考えていた。
「ミサイル兵器や口径弾はこの時代の兵器で代用できる。問題はレールガン弾とバッテリーだな。どうやって充電すればいいか…。」
ADF-02専用のレーザーバッテリー・レールガンバッテリー充電やクローキングデバイスの大容量の電力は、アークバードⅡ専用のレーザーバッテリーから供給する造りになっている。
問題はアークバードⅡ専用のレーザーバッテリーが空っぽになれば、全ての光学兵器は使えなくなるのである。しかもレーザーバッテリーの充電には発電所レベルの施設から充電しないとすぐに充電出来ない。
アークバードⅡ自体は搭載している最新の太陽光発電システムにより、機体の電力を担っている。レーザーバッテリーはその太陽光発電で充電出来なくもないが、アークバードⅡの使用電力をかなり抑えないとまともに充電出来ず、さらに時間もかかる。この状況で1つのレーザーバッテリーを充電しようと思えば、約1ヶ月はかかることになる。
また、レールガン弾に関してはこの時代でも製造は容易だが、この時代で未来の兵器を作るのはリスクが大きく、製造の人間がレールガン弾の図面を見て何か閃いてしまったら、本来なら存在しない筈の何かを作って影響を与えてしまう可能性がある。
大問題であるが、この状況ではバッテリーの充電や武器の確保が難しく、節約する手しか残っていない。
整備長はこのことを報告書にまとめるため、コンピュータを使って報告書を作成し始めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
用語集(2030年兵器編)に以下の項目を追加します。
・AOM-3
・AIM-120F AMRAAM
・LRASM
・レールガンシステム
・レールガンバッテリー
・レールガン弾
・クローキングデバイス
次回もよろしくお願いします。