ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年3月31日0703時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/総司令室]
オーシア首都オーレッドを拠点にオーシア軍総司令部が存在する。
史実ならば、ベルカ占領地奪還作戦の作戦会議の真最中だ。しかし、別の問題が発生したため今はその対処に追われていた。
それは、アークバードⅡの出現によることだった。
はじめは防空レーダーの故障で片付いた問題だったが、防空レーダーの修理に向かった部隊から異常が見当たらないと報告がきた。
さらに追い討ちをかけるように、防空レーダー反応区域周辺の一般人のアークバード目撃情報が相次いでやってきた。
情報では白い影が突然現れてしばらくして消えたという。その影は航空雑誌に載っていたアークバードにそっくりだったらしい。中にはビデオカメラに録画した映像をビデオテープに写し、そのビデオテープを送りつけた人もいる。この情報に対し、一般人からは反感の声が上がっている。
当時のアークバードの管理はオーシア空軍の管理下にあった。しかし、色々課題の多いアークバードは世論から不安を誘い、しかも軍備増強にはしるオーシア軍は平和を望む一般人にとって反感の的だった。さらにベルカ戦争開戦でさらに反感が大きくなっている状況だった。
「ああ全く、戦争のことで手一杯なのにアークバードが突然現れただと?ふざけやがって…。」
オーシア軍総司令官チャールズ・ミラーは頭を抱えていた。
考え込んでいると、ドアのノックがなった。
「失礼します、ミラー総司令官。当該空域を調査していた航空部隊クローバー隊を召喚しました。それと、防空レーダーに異常が発生した時刻にアークバードは宇宙空間でSOLG組み立て作業に従事していたとのことです。」
「了解した。レーダーに映ったのはアークバードではないということだな。クローバー隊から見たものを吐かせてもらわないとな。早速クローバー隊に事情聴取を行ってくれ。私も行く。」
ミラー総司令官は部屋を後にした。
[1995年3月31日0708時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/取調室]
取調室にはクローバー隊4人と、空中管制官が並んで座っていた。5人には嘘発見器が取り付けられていた。
すると部屋に取調官が入ってきた。ミラー総司令官は隣の視聴室で様子を見ていた。
「すでに聞いていると思うが、昨日君たちが調査した空域でアークバードに類似した未確認飛行物体の目撃情報が相次いでいる。空域を調査したとき、何かを見たのか?報告では異常はなかったと聞いているが?」
取調官がクローバー隊らに質問する。
すると、空中管制官のユキマサ・ヨネダ管制官が答える。
「私は当空域でレーダーを確認したときは、アンノウンを捕捉できませんでした。これは事実です。信用できないなら彼らの意見を聞いてください。」
クローバー隊隊長マイケル・ハワード大尉が続けて答える。
「我々が当空域を確認したときは、レーダーにも周囲を目視したときも異常はありませんでした。もちろん、高高度を調査したときも怪しいものは確認できませんでした。」
クローバー隊らは事実を言ったまでだが、それを聞いていたミラー総司令官は納得できなかった。
「例の映像を見せろ。」
ミラー総司令官が部屋にいた兵士に指示を出した。
兵士はビデオテープを持って取調室に入り、ビデオレコーダーに挿入した。大型ブラウン管テレビにアークバードに類似した未確認飛行物体の映像が映る。
映像はビデオカメラで拡大撮影したため解像度は低いが、色は白く、形状は尖った三角形をしているのがわかる映像だ。数分後、突然その飛行物体は姿を消した。撮影者が慌てて探して映像が荒ぶったところで映像が終わった。
「この飛行物体が君たちが調査した空域で出現した。映像は100%本物であることも確認済だ。本当に何も知らないんだな。既存の航空機で一瞬にして姿を消す航空機は存在しない。普通に考えて撮影者がただ単に見失っただけか、ベルカがアークバードに類似した姿を消す最新兵器を作ったかだ。当たり前だが、嘘の報告は処罰の対象になる。嘘なら今のうちに答えろ。処罰が重くなるよりマシだ。」
あの飛行物体がその空域にいたのは事実である。だが、クローバー隊らがその存在を確認できなかったのもまた事実である。
「我々はこの飛行物体を確認していません!本当です!」
ハワード大尉は事実を突き通した。
嘘発見器には何も変化がない。
取調官は予想外の結果に頭を抱えていた。クローバー隊らが嘘の報告をしたのだと思い込んでいたからだ。
取調官は取調室を出て、視聴室に入りミラー総司令官に報告をした。
ミラー総司令官も同じくクローバー隊らが嘘の報告をしたと思い込んでいた。
ミラー総司令官は取調室に入り、嘘発見器の結果を見たが、その結果に唖然としてしまった。
「君たちが言っていることは確かに真実だ。だが、我々は戦争のことで忙しい。小さな問題は早期に解決させたくてねぇ。何か隠していることがあるんじゃないか?」
ミラー総司令官はクローバー隊らを脅す。
「隠し事なんてとんでもありません、総司令官!そんなことしてません!我々を疑うのですか?!」
ヨネダ管制官が怒鳴った。
嘘発見器には何も変化がない。
「わかった、わかった。そこまで怒らなくてもいいだろ。今は思い出せないだけかもしれないからな。一旦君たちを解放する。何か思い出したら連絡しろ。同じ軍なんだから、我々に協力してくれ。」
全員が解放され、取調室を出て行った。
「嘘発見器は故障してないのか?」
ミラー総司令官に言われて取調官が嘘発見器を調べるが、異常は見つからなかった。
「そうか。何もなかったか。はぁ…あいつらが目撃したって話してくれれば解決したのに、本当に何も見てないとは…。全く、余計な仕事ばかり増やしやがって!」
ミラー総司令官は怒りながら取調官を出た。
[1995年3月31日0811時/オーシア首都オーレッド/国道3号線]
クローバー隊ら5人は自動車に乗って、クローバー隊の所属するサンダース空軍基地に向かっていた。
サンダース空軍基地は国道3号線沿いのオーレッド郊外にあり、オーレッド防衛の要となっている。
後に、住民の騒音問題などの苦情により、ハーリング大統領に変わった2003年からはサンダース空軍基地を撤去した。その代わりに騒音問題が少なく済むオーレッド周辺の海岸線にオーシア最大規模のグラハム空軍基地を建設し、2008年に完成した。
サンダース空軍基地は首都防衛の要の基地であるため、当時最大規模の空軍基地だった。
残念ながら、後にできるグラハム空軍基地に大きさは越されるも、グラハム空軍基地にはサンダース空軍基地の名残が残っているため、グラハム空軍基地はサンダース空軍基地の生まれ変わりと言ってもいいだろう。
サンダース空軍基地に向かっている自動車の中では総司令部召喚のことの愚痴で賑やかになっていた。
「総司令部の奴ら、あの言い方からして俺たちが嘘の報告したってでっち上げて、問題解決しようとしてたじゃねえか。ふざけやがって!俺たちをなんだと思ってんだ!」
「俺らが真実言ってるってわかってガッカリしやがってよ!道具としか見てねぇのか!」
「思い出すだけでイライラするぜ。あの見下したような上から目線よ!何が戦争のことで忙しいから協力しろだ。俺たち関係ねぇだろ!」
この頃のオーシア軍上層部はタカ派で、兵士を使い捨ての駒としか見ていない腐った軍人ばかりである。
小さい問題は誰かに責任を被せ、問題解決することも何度か行っている。
今回の件は大きい問題のため釈放したが、クローバー隊らに責任を被せたかったのは事実である。
「そうカッカすんな。腐った上層部のやり方はいつもああだから、愚痴ったところで何も変わらんよ。」
ハワード大尉は運転しながら隊員を諭した。
カーラジオからは朝のニュースが流れている。
内容はアークバードに類似した未確認飛行物体についてだ。目撃情報が相次いだため、マスコミが情報を聞きつけ報道したのだ。
「ハワード大尉はアークバードそっくりな飛行物体についてどう思う?私は宇宙人の偵察なんじゃないかって思う。姿を消すテクノロジーなんて、いくらベルカでも厳しいんじゃないかな。」
ヨネダ管制官が意見を述べつつ、ハワード大尉に問いかける。
「確かに、宇宙人はあり得るかもな。今の技術水準で映画のような光学迷彩はありえない。でも、俺は未来からやって来たんじゃないかって思う。アークバードにそっくりってところが最大の特徴だからな。」
ハワード大尉が意見を述べる。
「あれは未来のアークバードってことか?そう考えればわからなくもないが、タイムスリップなんていくらなんでもあり得なさ過ぎる話だ。宇宙人の方がまだ現実的だ。」
「宇宙人の方が現実的か。言われてみればそうだな。過去に戻るなんて夢物語だ。過去を悔やんでも何も変わらないのが現実だからな。」
ヨネダ管制官とハワード大尉が互いに意見を述べ合っている間にサンダース空軍基地が見えてきた。
「そろそろ着くぞ。色々理不尽な目に遭ったが、今日のことは忘れよう。次から戦争で忙しくなるだろうから今のうちに休んどけよ。」
ハワード大尉がそう言って、サンダース空軍基地に自動車が入っていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は新たにオーシア視点のシナリオを作りました。別視点のシナリオも考えています。
あと、クローバー隊の搭乗機体についてですが、勢力設定で矛盾が出たので、F-20AからF-2Aに変更します。
今回は勉学で忙しく、投稿がいつものペースより遅くなりました。しばらく、このペースだと思いますが、次回も楽しみにしてください。