ACE COMBAT Skies Rewritten   作:遠い空

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一丸となる

[1995年3月30日1503時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 管制室では、インターネットにアークバードⅡのことが公になってないか調べ続けていたが、とある個人のウェブサイトに画像が載っていた。

 画像は薄っすらとだが、高高度にいるアークバードⅡが映っていた。

 ウェブサイトの管理者はアークバードが事故で大気圏に突入したのではないかと判断していた。

「インターネットが普及してからウェブサイトつくってるとはな。金持ちのボンボンか?余計なことしてくれるよ。」

「全くだよ。どのみち、俺たちのことが知られるのは厄介だ。やるには機長の許可が必要だ。連絡してくれ。」

「了解だ。久々にお前さんの出番だな。失敗すんなよ。」

「もう失敗はゴメンだぜ。」

 彼は元ユークトバニア軍のハッカー、ニコライ・ベレゾフスキー主任である。

 ハッカーと言っても、自分の利益のために働くハッカーではなく、国を守るために戦うハッカーである。

 実は環太平洋戦争の時、高校生だったベレゾフスキー主任は軍の情報を面白半分でハッキングしていた。

 その中で戦争の真実を知り、ハッキングしたため軍に逮捕されるが、逮捕される前に戦争反対派に真実を伝え、レジスタンスを創設させるきっかけを作ったのだ。

 その後、真実が公になってからは彼に対する評価は変わり、ユークトバニア軍に招待され軍に入隊。以後、ハッカーの能力を生かした任務に就くことになった。

 愛国軍に入隊してからゼネラルリソースのハッキングをしていたが、セキュリティが非常に堅牢なため、しばらく失敗続きだった。だが、今回ので汚名返上できそうなため、ベレゾフスキー主任は心の中で喜んでいた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1505時/サンド島/来賓室]

 

 

 

「食糧・燃料の手配ができた。大丈夫、信頼できる友人に頼んでおいたから安心してくれ。」

「ありがとう、親父。助かったよ。」

「食糧・燃料の到着には時間がかかる。しばらくはここでのんびりするといい。と言っても、今戦争中だがな。私はお前たちが未来を変えると信じてるからな!」

 食糧・燃料の交渉はうまくいき、今しばらくは待つことになった。

「親父、私たちはアークバードⅡに戻るよ。手元の食糧はまだ数日分は残ってるから安心してくれ。」

 その時、ハーバード機長の携帯端末N.Phoneが鳴った。

「ハーバードだ。何かあったのか?」

《ネットのウェブサイトに我々のことが載っていました。ベレゾフスキー主任がハッキングの許可を求めています。》

「わかった、今すぐ戻る。それまで待機してくれ。」

 ハーバード機長たちは急いで小型船に向かっていった。

 

 

 

 

[1995年3月30日1512時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡの管制室にハーバード機長が戻ってきた。

 ハーバード機長はすぐコンピュータのディスプレイに向かって、椅子に座った。

 画面を見てから複雑な表情になる。

「こいつは厄介だ…。投稿時間から考えて、他の人もそれなりに見ているだろうな…。それに、インターネットに載せないだけで他に目撃者がいるかもしれない…。」

 ハーバード機長はブツブツ呟いて考えている。

 しばらくして、ハーバード機長は椅子から立ち上がって口を開いた。

「できる限り情報漏洩は避けたい気持ちも山々だが、下手にハッキングして消せば余計怪しまれる。どのみち存在は公になる。そのままにしてくれ。」

 クルーは機長の答えに驚いていた。

「何故ですか機長!意味がわかりません!」

 ベレゾフスキー主任は反論した。他のクルーも同じだ。

「その理由は皆に話そうと思っていた。全員を管制室に集合させてくれ。」

 

 

 

 

[1995年3月30日1528時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 管制室にアークバードⅡ乗員56名が集まった。

 ハーバード機長はサンド島の父親たちに話した『未来を変えるための戦い』について全て話した。

 5分くらいの長話が終わった後、その中で様々意見が飛び交う。

 

 

「俺は未来を変えることには反対しないが、同国人同士での殺し合いは必要な犠牲があるとはいえ、受け入れられない。」

「未来を変えるには痛みが伴うんだよ!痛みなしで未来なんか変えられない!」

「そんなことするより、ここでひっそり暮らした方が良いんじゃないか?」

「そうだよ。もし、僕たちのテクノロジーがどこかの国に渡ったら僕たちの知る未来より酷くなるよ。」

「臆病者が!あんな未来を繰り返すのかよ!そんなの絶対ゴメンだね!」

「私たちがタイムスリップしたのも何かの運命よ。きっと意味があるわ。機長の言う通り、未来を変えることが私たちの使命なのよ。」

「彼女の言う通りだ。意味なくタイムスリップするわけないじゃないか!」

「じゃあ、何でタイムスリップしたんだよ!意味があるなら、誰かがタイムスリップを仕組んだのか?」

 

 

 議論は激しさを増す。

「静粛に!」

 ハーバード機長は大声をあげた。

 さっきまでの議論は嘘のように静りかえる。

「アークバードⅡ乗員56名全員に聞く。素直に、単純に、正直に、未来を変えたい、あんな未来を繰り返さないと思う者は、部屋に残ってくれ。」

 しばらく沈黙が続く中、ヒヤマ大尉が口を開いた。

「正直言って、オーシア人や仲間のユーク人を殺っちまうことになるのは嫌だ。でも、未来を変えたい気持ちは誰よりもあるぜ!これ以上、誰も犠牲にしたくねぇ!俺はこの話に乗るぜ!」

「プログラム関係のことは俺に任せてください!この時代のハッキングは容易いことさ。」

 ベレゾフスキー主任も賛同する。

「俺も降りる気はないね。あんな未来を繰り返したくない。整備士としてアークバードと戦闘機を守ってやるぜ!機長について行きます!」

「私は皆さんに料理作ることしかできないけど、皆さんを元気にするのが仕事だもの。私もついて行くわ!」

「正直失敗した時が怖いし、このままひっそりしていたい。けど、僕だってゼネラルリソースの戦いで家族を失ったんだ。この世界の家族を失いたくない!僕は未来を変えるため、レーダー係としての仕事を全うする!」

「俺もだ!」

「僕も参加します!」

「覚悟を決めるよ!」

「戦います!未来のために!」

 

 

 誰も逃げも隠れもしなかった。

 乗員全てがこの戦いに参加する覚悟だ。

 

 

「皆、ありがとう!私の想いに応えてくれてありがとう!今後については、食糧・燃料が到着するまでここで待機だ。作戦はその間に練る。今のうちにゆっくり休んでくれ。解散!」

 

 

 乗員56名が未来を変えるため、一丸となった瞬間である。

 

 

 戦いは幕を開けた。

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
夏休みが明けたので、小説投稿を再開します。
もう暑いのは勘弁してほしいのが本音です。早く冬になってほしいなぁ…。
さて、新しくキャラクターが増えたので、用語集(2030人物編)にニコライ・ベレゾフスキーの項を追加します。
次回もよろしくお願いします。

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