でもね、仕方ないんだ。ペルソナ5が面白すぎたのがいけないんだ。初ペルソナシリーズのはずなのに凄まじく嵌りこんでしまった。まだクリアできてないけど。
・・・まぁ、実を言えば学業の方が忙しくなったという理由もあります。夏休み反動でいまいちモチベーションが取り戻せていないんですよね。
とかなんとか言いましたが、今回は外伝だよヤッター!本編がまだ全然終わってないけどな!!後先考えずに書いちゃったけど、書いちゃったものは出さないとね。うん(遠い目)
あ、本編は次回です。現在制作中なので、気長にお待ちを。
そう言うわけで『魔法(物理)少女プリズマ☆アルフェ』、はっじまっるよー。まだ序盤の序盤だけど。
・・・単発にならないとイイネ(´・ω・`)
余談ですがネロ祭始まりましたね。超高難易度クエが鬼畜過ぎて草も生えない。
第一演技 十二の試練:マシュで護りながら特攻礼装付きの邪ンヌで6殺。その後立て続けにやられていくも最後の一人になった特攻礼装付きオルタニキで殴り勝つ。
第二演技 光と影の師弟:宝具禁止が解かれた直後に必中付けたアルトリアとセイバーオルタのダブルエクスカリバーで消し飛ばす。
第三演技 百殺夜行:メディア無双。アイリさんとマシュで補助しながらアサシンよりアサシンしてるキャスターさんで持久戦。壊滅させられかけたが特攻礼装付きイリヤでフィニッシュ。
いやぁ、どいつもこいつも鬼畜でしたね・・・。
あと、本編で『ヘラクレスとも殴り合える』とか気軽に書いたけど、マジで殴り合って勝ちやがったよこの兄貴(白目)
追記
色々編集しました。
第一話・全ては黄金の杯から始まる
これは正史では起こらない物語。『もしも』の世界であり、少女たちが立ち上がる現代神話。
一人は『奇跡』を。
一人は『必然』を。
一人は『偶然』を。
――――最後の一人は『終幕』を。
さぁ、役者は此処に揃った。
あり得ぬ物語。実現してはならない至大至高の聖杯戦争。幾つもの理不尽と不条理の織り交ざる物語は一体何を魅せてくれる。ありきたりな王道か。それとも救いの無い悲劇か。何もかもが幸せに終わる笑劇か。
二つの世界を巻き込んだ可能性の集約。
終わる定めの世界と、始まってしまった友情。
君ならどちらを選ぶ?
もし『どちらも』という答えを出したのならば――――ああ、きっと助けてくれるだろう。最後の一人が。
劇場の幕を上げよ。全ては此処より始まる。
奇跡を叶える黄金の杯から――――
◆◆◆◆◆◆
「魔法少女、と言う物がこの現世にはあるらしいな」
「は?」
聖杯問答中、英雄王がそんな突拍子もないことを言いだして私は思わす疑問の声を漏らしてしまった。
何の前触れも無しに「魔法少女」と、あの英雄王の口から出てきたのだ。一瞬頭の中が真っ白になってしまった私は悪くないと思う。ていうか魔法少女って……一体何に影響されたんだか。
「いやまぁ、この国のサブカルチャーとしてはそりゃメジャーといえばメジャーだけど……」
「やはりそうか。この前街を歩いていると『てれび』とやらにそれが映っていてな。面白いと思いDVDなどを買い占めて鑑賞したのだ。中々見ごたえがあったぞ?」
「何やってるの貴方……」
どうして現世にまで呼ばれてアニメ鑑賞なんかしてるんだよこの人類最古の英雄王。
「特に魔法少女サ○ーやセーラー○ーン、ひみつの○ッコちゃんなどは実に素晴らしかった。胸を打つ。……正直に言えば最終回辺りが少々アレだったがな」
「…………うん、いや、その、人の趣味はそれぞれだしとやかくは言わないよ? うん」
まさかギルガメッシュが現代で魔法少女アニメを見る趣味があったとは、こんな光景歴史家が見たら卒倒物だ。いやそもそも信じないか。つか信じられるか。
しかしどうして今そんなことを言い始めたのか疑問だ。何の意図があって魔法少女などと言うイロモノについて語り始めたのか。嫌がらせの類か何かならば納得は行くのだが、口ぶりからどうもそう言ったことでは無いらしい。
ではなんだ? と思っていたら英雄王は無言で先程しまい込んだはずの聖杯の原典を取り出した。
……猛烈に嫌な予感がする。
「……ねぇ英雄王、良ければ今から何をするのか聞かせ――――」
「今の我はキャスターの魔法少女の姿を猛烈に見たいッッ!! さあ聖杯よ、我が願望を叶えよォォォォォォォオォォッ!!!」
「「「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?」」」」
とんでもない爆弾が落とされた。それを聞いて何故か円卓三人組は光の速度で立ち上がる。なんでだ。
私の静止の声などもう届くはずもなく、ギルガメッシュが空高く掲げる黄金の聖杯は煌びやかにこの場を光で包みこむ。奇跡を叶える万能の願望機と謳われた黄金の杯は見事その願いを聞き届け、現世に奇跡を降臨させる――――
――――と思いきや、特に何も起こらなかった。
「…………ん?」
光が晴れてギルガメッシュの声が静寂の空間に木霊する。
何も起こらなかった。証拠に私の姿に特に変化はない。決してヒラヒラした服装に変わってなどいない。不発か? ――――皆がそう思った瞬間、聖杯から光が発せられる。
聖杯は独りでにギルガメッシュの手から離れたかと思いきや、テーブルの中央に着地して空中に映像を投影した。ホログラムだ。二千年前の代物なのにえらく近未来的すぎないか。
そんなツッコミは誰も聞き届けることなく、皆がその映像に注目する。鬼が出るか蛇が出るか。
ついにホログラムに映像が映し出される。
一番最初に移った光景は――――
裸で狼狽している銀髪幼女の映像だった。
「……………………ねぇ英雄王、これって」
「待て! 我は確かに控えめな胸が好きではあるが幼女は対象外だ! 誤解するなキャスター!!」
「え、違うの?」
「違うわ! そもそも聖杯はどうしてこんな映像を……いや、待てよ、まさか……」
「――――子供になった姉さんかぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」」
若干興奮気味のアルトリアがそう叫ぶと、皆の脳裏に電流が走る。何で走ったし。
この場の私と比べて幾分と小さくなっているが面識は残っている。アレは間違いなく私だ。十歳ぐらいに幼児退化した。とはいえ私自身この世界に生まれたのが大体14、15ぐらいだから確証は持てないが――――私に詳しいアルトリアがそう叫んでいることから、きっとアレは私なのだろう。たぶん。
問題はどうしてそんな物を聖杯が映し出したのか、という事なのだが。
「そうか! 今のキャスターは魔法少女と名乗るには少々キツ……いや厳しい年齢。故に幼児化した分体をどこかに送り込んでそれを映し出したというわけか!」
「なんてことをしてくれたのだ英雄王! 今貴様を初めて同士と認識したぞ!」
「ランスロット! 急いでカメラを! 急げェェェッッ!! これは勅命だァァァァッ!!」
「お、おい、皆落ち着こうぜ……? つかテメェら見んなボケ! 姉上の裸を見ていいのは俺だけだぞゴラァッ!! 欲情すんじゃねぇぞランサー!」
「するかアホ!? 俺はもっとこう……ピチピチの若い大人の女が好きなんだよ! 子供の裸程度で欲情するわけあるか!」
「それは姉上の裸を見て欲情しなかったという侮辱だなァァァッ!! 表出ろテメェェッ!!」
「いやどうしろってんだよ!?」
「うーむ、余としては幼女は範囲外なんだがのぅ……」
「…………何なのこの盛り上がりは。ねぇルーラー、何か言って――――」
助けて求めて私はルーラーの方に視線を向けると、よくわからないが口から涎を垂らして興奮気味に吐息を漏らしている彼女の姿がそこにあった。
……え。
「ハァ……ハァ……! なんでしょう、この気持ち。凄く保護欲と母性が刺激されますっ……! これは早く確保せねば……!」
「いや待って。本当に待って。何するつもりなの貴女」
「放してください! 私は今、自分の人生に革命を起こそうとしているんです!」
「何言ってるの貴女!?」
「待っていてください我が妹よ。今お姉ちゃんが行きますからねぇぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっ、誰かこの人止めてぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
速攻で羽交い締めしてルーラーを止めるが、何の補正か凄まじい怪力でルーラーは抜け出そうとする。
クソッ、これがシスコンパワーか……! 使えるのは私だけだと思っていたのに……! しかしまともだと思ていたルーラーが暴走しだすとは。私の子供姿に何か魔力でも感じたのか?
「そこを退け英雄王! 姉さんの裸がよく見えないだろうがァァァァッ!!」
「ハッ! この場所に座りたくば力づくで奪うがいい、アヴェンジャー!」
「上等だ……! 唸れ私のエクスカリバー! 姉さんの裸を拝むために!」
「貴様に原初の地獄を見せてやろう……元素は混ざり、固まり――――」
アルトリアの方は凄まじく不潔な理由で聖剣(元)を抜き放とうとしており、何故か英雄王は己の一番の切り札のはずの乖離剣を構えていて。
「しまったっ……! カメラを購入する資金が無い! 仕方あるまい、せめてこの目にあの
「オラ死ねランスロット! 『
「え、ちょ――――マ゛ッ゛!!」
円卓二人は勝手にコントを始め出して。
「うわ、口に料理を目いっぱい詰め込まれたランサーが気絶してる!」
「ランサーが死んだ!」
「この人で無し!」
現場に居るマスター組(アイリスフィール&ウェイバー)は世界の意思にでも強制されたのかどこかで見た様なやり取りを初めて。
「うーむ、酒を飲み過ぎて体が火照ってきたわい。此処はいっちょ、余の裸踊りを披露してやる機会――――」
何かを言おうとした征服王の後頭部に英雄王と争っていたアルトリアが振るった剣が流れ弾気味に叩き込まれ、ライダーはそのままズボン半脱ぎのまま地面に突っ伏した。股間についているモノは当然丸見えである。
直視した物はこの世の深淵を垣間見たそうな。
――――
この場を形容する言葉はそれしか無い。それ以外にあるだろうか。あるとしたら『阿鼻叫喚』か『地獄絵図』だろう。見ているマスターたちが頭を抱えていることから恐らく間違いない。
ただ一人、というより一匹蚊帳の外だった竜種はその光景を見てこうつぶやく。
『……ナニコレ』
……私にもわからない。
◆◆◆◆◆◆
………よーしよしよしよし、落ち着こう。落ち着け。餅つけ、いや、餅ケツ。違う、落ち着け私。
確か私は聖杯戦争をしている最中だった。途中、ライダーである征服王イスカンダルの誘いに乗って『聖杯問答』に参加し、適当に料理を作って持って行ってどんちゃん騒ぎしていて――――それで、ギルガメッシュが聖杯におかしな願いを告げて……どうなったんだっけ。
まずは状況確認だ。
頬をつねればちゃんと痛覚が帰ってくる。触覚は正常。手汗を舌で舐めとるとしょっぱい味が広がる。味覚も正常。指を鳴らせばその音はしっかり耳に入ってくる。聴覚も正常。親指を噛み千切って血を滲ませれば血の匂いが鼻腔に広がる。嗅覚も正常。
最後に視覚。私は閉じていた目をゆっくりと開く。
――――正常。どこかはわからないが、裏路地らしき景色が映る。五感、全て問題無し。
次は記憶の確認だ。確か最後の記憶は、英雄王が「キャスターの魔法少女姿が見たい!」とかなんとかアホなことを抜かした場面だ。何故かそこからばったりと記憶がぶった切られている。
考えられる原因は三つ。
一つ目、単純に酒を飲み過ぎて記憶が欠如した。
二つ目、何かの魔術で眠らされてどこかに運ばれた。
三つ目、全部英雄王のせい。
まず一つ目について考えよう。はっきり言うがあり得ない。私はそこまで飲酒をする性格ではないし、酒自体宴会の場でもないと飲まない。それに酒は強い方だと自負しているから、よほどの量でも飲まない限りこの線は無い。
次に二つ目。これもあり得ない。私の体には常時対魔術障壁を幾重にも展開しており、神代の魔術でもなければ全て障壁に弾かれてしまう。疑似的なAランクの対魔力スキルを発動していると言い換えればわかりやすいか。とにかく私以上の魔術が扱えるサーヴァントがあの場に居なかった以上、この線も無いだろう。
最後に三つ目。うん、たぶんこれだ。よくわからないが英雄王が何かやらかして私はそれに巻き込まれてしまった。凄まじい暴論であるがこれが一番納得できるのだから彼の英雄王の破天荒さがよく理解できる。理解したくないがな。
「はぁ……とりあえずここが何処か確かめ――――…………へ?」
自分の声に違和感を覚えた。
何というか、酷く幼いような声だ。何だ? 宴会の一発芸でヘリウムガスでも飲んだのか私は。
咄嗟に喉を抑えるが――――体の挙動にも違和感を覚える。
「…………は?」
嫌な予感を感じつつ、私は視線を自分の体に向けた。
細く小さい、白雪色の手。色自体は普段の私と変わりなかったが、その
本来ならば二十代前半ほどの女性相応に育っているはずの手は、何故か小学生ぐらいにまで縮んでおり――――それは腕だけでなく全身に及んでいた。
つまり、なんだ。
……なんか幼児化した。しかも裸。すっぽんぽん。フル・フロンタル。
「……落ち着け。心を平静にして考えるんだ。落ち着くんだ……素数を数えて落ち着くんだ。素数は自分と1の数でしか割れない孤独な数字……私に勇気をってそんなことやってる場合じゃない! 何なのコレ!?」
いやいやいやいや、おかしいでしょ。どうして何の脈絡も無く私幼女になってるの。神の意思なの? 神が私に幼女になれと囁いているの? 馬鹿なの? アホなの? 死ぬの? そんな神がいるなら一遍頭をタンスの角にぶつけた方がいいんじゃないかな(真顔)。……いや、本当にどうなってるのコレ。何で名探偵的なことになっているの。体は子供頭脳は大人ってか。HAHAHA、今ようやくコ○ン君の気持ちが分かったよ。笑えねぇよクソが。
「落ち着け……落ち着くんだ私……! 2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59、61、67、71、73、79、83――――だぁぁぁぁぁっ!! 何なのこれぇぇぇぇ!!」
色々な物が降り切れて、私は自棄気味に近くのゴミ箱を蹴り飛ばした。
TNTでも爆発したような炸裂音と共にゴミ箱が空の彼方へゴーイングアウェイしてシューティングスターしたがぶっちゃけどうでもいい。問題は私がどうしてこんな状態になっているかだ。
マスターであるヨシュアに念話を飛ばそうとするが、そもそも
「っ――――魔力は……アレ?」
すぐさま維持のために使っているであろう自前の魔力を確かめてみる。
が、全く減っていなかった。……は?
ちょっと待て。まさか、これ、
「……………………受肉、してる?」
引き攣った笑いで、私は狼狽した呟きを漏らすのであった。
情報を整理しよう。
現在私は受肉している。理由はわからないが肉体は幼児化し、凡そ十歳程度の肉体だ。勿論これはサーヴァントとは呼べない。体内を巡る数千の魔術回路から生産される魔力が何処にも消費されていないことから、そしてマスターとの
しかし本当の問題はどうして私がこんなことになっているか、だ。
生憎受肉する覚えはない。頑張れば行けそうではあるが、前準備などしたことも無い。そもそも英霊の肉体をそのまま再現するなど聖杯でもなければ実現不可能だろう。聖杯で、なけれ……ば…………。
……まさか。いやそんなまさか。
「あんの……英雄王ぉぉぉぉぉぉッ…………!!」
私は膝をついて憎悪が溢れんばかりの声を、どこに居るかもわからない
そう。思えば全てアイツから始まっていた。
こんな見覚えのない場所に居るのも、素っ裸で外に放置されているのも、幼児化しているのも全て、元をたどれば元凶は英雄王。あの成金、マジ許すまじ……!
「くっそぉ……今度会ったら問答無用で顔面に神剣叩き込んでやる……。とにかく此処は何処か確認しなきゃ。えーと、服は魔力で編んで……あ、あれ?」
体の魔術回路を起動させようとする。しかし、手ごたえが無い。
もう一度回路のスイッチを入れてみるが、稼働し始めた回路は僅か5、6本程度。かつてのモノと比べると雲泥の差と言わざるを得ない。
「な、何で……!? いや、そうか。ああ、クソッ。幼児化しているからまだ魔術回路が開かれてないんだ……!」
私が生まれた時の肉体年齢は15前後。それ以前の状態となれば不明ではあるが、少なくとも魔術回路は開かれていない。
魔術回路は通常、修行によって自力で抉じ開けるか他者の手を借りることで稼働状態に持ち込める。要するに他人に補助してもらわねば、碌に修行もしていない状態の今の体で抉じ開けられる魔術回路など十本にも満たないのだ。これは不味い。非常に不味い。食料や寝床の確保以前に人前にすら出ていけない。非常に由々しき事態だ。
「えっと、何か身を隠せる物……は、あった」
運よく私は『ソレ』を見つけることができた。確かに『アレ』なら大丈夫だ。水には弱いが耐久性も保温性もバッチリ。いざとなれば寝ることすらできる万能道具。
最早宝具と言っても過言では無い現代技術の結晶を手に、私は日が暮れ始めた街へと躍り出る。
出来るならば衣服を確保するために――――
◆◆◆◆◆◆
俺の名前は衛宮士郎。穂群原学園の高等部に通うごく普通の高校生だ。
他人と違うところを上げるとしたら、強いて言うなら義理の妹やメイドが家に住んでるぐらいかな。男の友人たちにはよく羨ましがられるけど、正直男女比が偏り過ぎて居心地が少し――――って、誰に話しているんだか俺は。
「ふぁあぁぁ~」
「――――衛宮、昼だというのに欠伸か。ちゃんと睡眠は取ったのだろうな?」
「ん? おお、一成。帰りか?」
校門前でばったり出会ったのは、この学園の生徒会長にして俺の数少ない友人、柳洞一成。小姑みたいに少し小うるさい奴だが、頼りになる良い奴だ。何の縁か、今では偶に弁当を作ってあげたりする仲になっている。その度に「塩が足りない」「卵巻きが焦げているぞ」とか言われるのは正直勘弁……。
と、そう言う話じゃなかった。
俺は弓道部の活動を終えて今から帰るところだ。一成も生徒会長だからやること沢山あるし、帰りが遅くなると気がある。どうせなら一緒に帰ろうかと誘おうとしたが――――
「すまんな衛宮。まだ仕事がある故に、此度は共に帰宅はできん」
「え? どうしてだよ」
「……この前入ってきた留学生とやらの問題でな。後は、そいつらが来た直後に何故か増え始めた不可解な器物損壊の後処理を――――」
「あぁ……大変そうだな」
「まったくだ。そういうわけで、申し訳ないが衛宮には一人で帰宅してもらうことになる。この埋め合わせはまたいつか」
「わかった。頑張れよ~」
校舎へと帰っていく友人に手を振りながら、俺は学校の駐輪場にある自分の自転車を引っ張って帰路につく。
通い慣れている道で俺が考えるのは今日の献立か、冷蔵庫の食材の具合だ。痛んでいる物は無いか、今日はどんな料理を作るか。そんなことを考えるのは少し女々しいだろうか。
「でもセラは和食苦手だしな……。いや、美味しいけど」
それでも和食を食べたいのは日本人の性。これだけは譲れない。朝起きて暖かい味噌汁を一杯啜る。それだけで一日分の活力が湧き上がるという物だ。健全な肉体は健全な食事によって生まれる。運動部に所属している以上、俺も体の管理は怠ってはいけな――――い?
ふと俺は視界の端に何かがちらついているのを見つける。
いや、見間違いだ。そうに違いない。じゃないとこんな光景説明つかない。何せ――――
道端の上で段ボールがカサカサと動いている光景なんて、幻覚でも見ているとしか言えないだろう。
しかし残念ながらこれは現実。紛れも無い現実。
顔を引きつらせながら、俺は目を何度もこすってソレを見るが様子が依然変わらない。
何だろうか。子供たちの間で流行っている新しい遊びか何かか? それとも伝説の傭兵ごっこなのか?
「お、おーい」
『ひっ!?』
一瞬大きくビクリと震えると、段ボールのような形容しがたき何かはその場で動きを止めた。
軽く指で突いてみても何も反応が無い。ただのしかばねのようだ。
……もしかして隠れているつもりなのかもしれない。
(! そうか、かくれんぼか! もしかしたら一緒に遊んでいた子達と彷徨ってて逸れたのかもしれない。なら助けないとな!)
こんな時間まで子供が外を出歩いているのは余り良くない事態だ。そこから得られる結論は、恐らく集団と溢れて迷子になったのだろうと俺は確信する。
その時俺の心に炎が灯った。「助けないと」という使命感に似た正義感が心を震わせ、俺は居ても立ってもいられず段ボールに手をかけ、そのまま持ち上げた。迷子になって怖がっている子供の姿を幻視して。
『あ、待っ――――』
「大丈夫。俺は君の味方…………だ、から…………?」
約コンマ一秒で俺の思考は凍結した。
だって足元に移っていた光景は、裸で蹲っている子供の姿だったから。日本人とは思えない銀色の髪に柔らかそうな肌。まるでミケランジェロの彫刻の如き黄金比を備えている肉体美――――おい待て、何考えているんだ俺は。……ちょっと待て、違う。俺はロリコンじゃない。確かに妹の事を『綺麗だな』と思う事はあるにはあるがそれは飽くまで家族としてであって、ってそんな事考えている場合じゃない!?
「うぉぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおッッ!!!」
思考が復帰した次第俺は持ち上げていた段ボールを全力で元の位置に戻す。
あれこそ正しくパンドラの箱。絶対に開けてはいけない代物だ。開いてしまったその瞬間、俺は死ぬより酷い目に遭うことになる(社会的な意味で)。もう手遅れな気がするけど。
が、かといって見なかったことにして放置するのも駄目だ。チラッと見ただけだが恐らくあのパンドラの箱の中身は少女。夜な夜な裸で徘徊するなど、居るかもしれない変態共の格好の獲物だ。それだけは許せない。
しかし自分ができることなど限られてる。だけど、できることはある。ならばまずはそれから始めよう。
俺は制服の上着を脱いで、そっと段ボールの隙間からそれを差し込んだ。
数秒後、上着は段ボールの中に引き込まれモゾモゾと動く音がする。大体三十秒ほどだろうか、俺が冷や汗を流しながら段ボールを見つめていると、ついにその中身が自分から外へと姿を出し始めた。
流れる水の様に、そして白銀の如く輝く銀髪。余計な物が一切存在しない精錬され、完成されたその体。
――――人間味の無い美しさが俺の目を魅了する。
「あ、あのー」
「へっ? な、なんだ?」
若干声を上ずらせながら俺はどうにか返事を返した。そしてどんな言葉が出てくるか身構えて――――直後出てきた言葉に思わず絶句する。
「此処、何処ですか?」
…………どうやら、本当に迷子らしい。
「……なんでさ」
今まで存在していた日常が一瞬にして叩き壊されたような錯覚を覚えながら、俺は頭を抱えてそんな言葉を漏らしてしまう。家に帰るだけのはずだったのに、一体何処をどうやったらこんなことになったんだ。
半ばあきらめた様な気持ちになりながら、俺は謎の少女に少しだけ付き合うことにした。
嘘でしょ、という言葉が脳内で暴れ回る。何でアイツが此処、いやこの時代に居るんだ。
いやすでに生まれているから居ること自体はおかしくない。問題は――――何故『衛宮士郎』が高校生の姿でここに居るんだ、と言う事。
今は1990年代であり、彼は大体6歳程度のはず。それがこんなに成長した姿で? あり得ない。だけど目の前の光景は確かに現実。ならば答えは一つ。
タイムスリップ。時をかける少女的なアレか。アレは過去にしか飛んでいなかったが。ああじゃあドラえもんか。あははははは――――……本当にどうなっているの………?
「――――起きたら記憶喪失で、服も何もなかったからここまで段ボールを被ってやってきた、と。信用できそうな人物を探して」
「あ、はい。後、服になりそうなものを探して……」
「なるほどな」
私は混乱しながらも士郎君に『記憶喪失ですっ裸で外に放り出されていたので服になりそうなもの探していました(要約)』という、割と適当な嘘を伝えていた。我ながら適当すぎると思うが、現在の状況に合致しそうなのはそんな下手な言い訳しかなかったのだ。それに半分は本当だし。
その話を聞いた士郎君の目が、なんだか決意に満ちた物に変わる。
何故か猛烈に不穏な予感が胸を満たした。これは、もしや。
「……じゃあ、俺ん家来るか?」
「はい?」
「助けになりそうな人もいない。親も見当たらなければ覚えていない。無一文。服も俺が貸した上着だけ。寝床も無し。……そんな状態じゃあ、何もできないだろ」
「いやまぁ、そうですけど」
「なら、俺が助ける。駄目か?」
「しかし、迷惑が……お金もかかりますし」
「そんな物、俺が何とかするよ。大丈夫、ちゃんと同居人は説得して見せるから。君は遠慮しなくていい」
なんかグイグイ来るなこのもとエ○ゲ主人公。アレか、フラグを建てに来ているのか。私までその無意識の毒牙の餌食にするつもりか。胸キュンさせちゃうのか。……そんな感情今まで生きてきて一切感じたことなど無いがな!(ただしアルトリア&モードレッドを除く)
でも寝床やその他必需品の確保ができておらず、獲得できる環境の確立に手間取っているのも確かだ。
実は廃ビルとかで魔力で服を編むために何日か魔術回路を開く修行でもしようと思っていたのだが、受肉しているためか現在空っぽの胃が悲鳴を上げている。これだから人間の体は。サーヴァントの頃だったほうがまだ色々便利だった……無い物を強請ってもしょうがない。
少しだけ良心が絞まるが、此処は世話になった方が色々と円滑か。
「……なら、少しの間だけ、お世話になってもいいですか?」
「勿論! 大船に乗ったつもりで居てくれ!」
満面の
その後私は士郎君の自転車に乗せられて彼の自宅へと連れて行かれた。
恐らく彼の家は、あのだだっ広い武家屋敷なのだろう。同居人である藤村大河の説得についても、私が上目遣いで「お願いします……!」と子犬の様に涙目で訴えればきっとたぶんなんとかなる、はず。あの人が身よりもない子供を放り出すとは思えないし。間桐桜についても子供だし、大丈夫。
しかし長く世話になるわけにはいかない。秘密裏に資金源を確保し、別邸を土地ごと買収して工房に変えながら自分が何故こんな事態に陥っているのか調査を…………アレ、えっと、待って。え、ここ何処。ちょっ、ちょちょちょ、エミヤ=サン。私の記憶ではあなたの家は西洋風の二階建てでは無かったはずなんですが。何でここで止まって――――
「着いたぞ、此処が俺の家だ。一緒に暮らしているのは妹と、後メイドが二人。両親は今海外に行ってて居ないんだ。だから説得は割と簡単に――――ん? どうかしたか?」
「……あのー、妹さんのお名前は?」
「へ? ああ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。長いからイリヤ、って呼んでる。血は繋がってないけど、自慢の可愛い妹だ。今年で十歳になる。もう家に帰ってるはずだから、挨拶してやってくれ。見たところ君も同じぐらいみたいだし、いい友達に――――」
魂が抜けた様な錯覚を味わった。
薄々感じてはいたが、ああ全く、嫌になるよ。どうして私の人生には『平穏』という二文字が存在しないのか。恨むぜ神様。いや抑止力。座でドンパチやったとき本気で潰しとけばよかったかな…………。
トリップはトリップでも飛んできたのは
落ち着け。落ち着くんだ。素数を(ry。
不味い。非常に不味い事態になった。事態の把握が正確ならば私が元居た世界に帰るのは非常に難しくなる。何せ平行世界だ。渡るのはそれでこそ公式チートで第二魔法使いの
確かこの世界では聖杯戦争は取り壊されたはず。ああクソ、最後に読んだのが大体数十年前だから覚えてない……! 時間が流れ過ぎて転生前の知識が所々摩耗している。こんな肝心な時に役に立たないなんて……! とにかく何か策を建てないと。
平行世界を渡る方法を探さねば――――
「――――おっ、おい!? 大丈夫か! 具合悪いのか!?」
「だ、大丈夫です。少し眩暈がしただけなので、オールオッケー。バッチリ。ワタシ、ゲンキ。OK?」
「お、おう……なんか棒読み口調だけど、大丈夫そうだな。良かった。じゃあ、入るぞ」
扉が開かれる。
大丈夫だ。冷静でいい。いつも通りの私でいいんだ。きっと何とかなる。また皆と合える。だから――――だから――――私、は……。
(――――今は、目先の事に集中しよう)
強制的にスイッチを切り替えた。思考が一気にクリアになる。
そうだ。これでいい。安心しろ私。いつも何とかしてきたじゃないか。今回もそうするだけだ。
拳を固く握りながら、私は士郎君に案内されるまま彼の家宅の中に入る。
第一印象は『普通』だった。悪い意味では無い。穏やかで静かな、落ち着ける雰囲気があるという事だ。日常と言い換えた方がいいだろう。良い家だ。悪くない。
しばらくして誰かの足音が聞こえてくる。玄関横の扉から現れたのはエプロン姿の白髪美人。ルビーのような赤眼は本物の宝石のように美しい。そんな彼女は微笑を浮かべながら士郎君に「お帰りなさい」と呟き――――隣に居た私を見て一気に顔を引きつらせた。やっぱり迷惑――――
「なっ、な、ななな……!?」
「ただいま、セラ。実はさっき――――」
「――――幼女誘拐犯現行犯逮捕ォォォォッ!!!」
「へ――――げぶぁっ!?」
華麗なまでにスムーズに決まったジャーマンスープレックス。士郎君の後頭部からゴリッと鳴ってはいけなさそうな音が静かに響き渡る。死んでないよね?
「ついにやらかしやがりましたね士郎! 何時かやると思っていましたよ! ええ、いっつも女の子を周りに置いてるのに、それに飽き足らず自分好みの幼女を誘拐! これは矯正が必要なようですね、このロリコン・アンド・シスコン!」
「ま、待ってくれ、セラ! 話を聞いてくれ!」
「問答無用!」
「なんでさ!? って、いたたたたたたたたたたぁ!?」
流れる様にアームロック。それ以上はいけない。
そんな夫婦漫才から五分経つと、流石に頭も冷めたのか漸く士郎君を解放するセラさん。
しかし速攻で正座させられる。士郎君、哀れ。
「……それで、これは一体どういうことですか士郎? こんな無垢な子供を家に連れ込むなんて。……まさか本当に拉致してきたのではないでしょうね……?」
「ちっ、違う違う! あの子は、その……記憶喪失で、身寄りがないんだ。彷徨っていたところを俺が偶然見つけて、事情を聞いたから引き取ろうと思って」
「ひ、引き取る? しかしそれは……」
「頼むセラ。この子を此処に置いてやってくれ。あの子には、行くところが無いんだ。この通り!」
「士郎……」
そう言ってセラさんに土下座までする士郎君。見ていてこっちが苦しくなる。いくら子供とはいえ、見ず知らずの他人のためにここまで出来るのか……? よく、わからない。自分がこの好意に甘えていいのか。
……いや、甘えて良いわけない。こんな自分が誰かの世話になるなど――――
「はぁ……わかりました。奥様には私から連絡してあげます」
「ほ、本当か!?」
「ええ。流石にそこまで真摯にお願いされたら、断るに断れませんよ。それに、あんな小さな子供を放り出すなんて、私にはとてもできません」
「よ、よかった。本当によかった……!」
――――なんか黙っている内に色々と話が進んでいた。
え、いいの? こんな怪しい子供引き取ってもいいの? 考え直すなら今の内……。
「ん~? 二人とも何してるの? 夫婦喧嘩?」
「ッ!? リズ! からかうんじゃありません! これは真剣な話し合いです!」
「ふーん。……? その子誰? 士郎とセラの隠し子?」
「ブッ!?」
「リィィィズゥゥゥゥゥゥ!?!?!?」
ワケガワカラナイヨ。一体何がどうなってこんな展開になっているんだ。
引き取ってくれるというなら、それに越したことは無いが。
苦笑のまま棒立ちしていると、リズ――――リーゼリットさんが私の方に近付いて、バッと持ち上げた。
「…………ん~、よし」
「へ、ぶっ!?」
と思いきや行き成り抱きしめられた。豊満で柔らかい感触が顔を覆う。ついでに呼吸が困難になる。おっぱいに包まれるって、快楽と苦痛が同時に襲ってくる物なんだなぁ……。生前、周りに女性らしき女性(胸の大きさ的な意味で)が殆どいなかったから何というか、斬新だ。あ、いや、別に貧乳が悪いって言いたいわけじゃなくて――――うっ、そろそろ息が……!!
「この子、私の妹にする」
「「はぁ!?!?」」
「可愛いから」
「いや、可愛いからって……まぁ、もう家に住むことになってるけどさ」
「そうなの? それじゃあ一緒にお風呂入る~」
「待て待て待て! もう少し順序と言う物を……というか顔! 顔青くなってる!?」
「あ、ごめん」
「――――ぷはっ、お、おっぱいに溺れ死ぬかと思った……!」
死因:おっぱいとか末代までの恥物だよ。割と気持ちよかったけど(小並感)。
リズさんの腕の中から解放された私は呼吸を整えながら、三人が並んでいる光景を見た。家族が仲良く談笑している光景を。
憧れた、一幕を。
それを見ていて、なんとなく、悔しかった。
「――――みんな~、どうかしたの? なんか色々変な音が部屋まで聞こえたんだけど……」
「あ、イリヤさん。実は士郎さんが子供を拉致……じゃなかった、拾ってきちゃいまして」
「ふぇ? 拾った? ――――あ」
「……ど、どうも」
最後の住人が現れた。
銀髪赤眼の無垢で天真爛漫そうな少女。一見すれば人形のようにも思える程美しいその少女は、少し驚いたような顔をして私を見つめた。
「その、行き成りすぎるかもしれませんがイリヤさん。――――彼女は、新しい『家族』です。仲良くしてあげてください」
「えっと、その……よ、よく状況が飲み込めないんだけど。なんとなく分かった! こほん……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです! よ、よろしくお願いします!」
「……かぞ、く」
灰色がかっていた世界に色がついたような気分だった。
こんな私を――――家族だと、認めてくれるのか。そう思うと、頬を熱い滴が伝う。
私も自身の名前を答えようとする。しかし、こんな未熟な自分では『自分の名前』すら
それまでは、欠けた名を掲げよう。
「……私は、アルフェ。よろしく、イリヤ」
「うん! よろしくね、アルフェ!」
名前は欠けた。でも、それでも。
大切な何かを、埋められたような気がした。
「ところで士郎、どうしてあの子は貴方の制服の上着を着ているのですか?」
「え? いや、出会ったとき何も着ていなかったから俺のを貸して――――…………あっ」
「…………士郎? まさか、見たのですか?」
「違う! 違わないけど違うんだ! 不可抗力だ!」
「うわ~、士郎は変態さんだぁ~」
「お、お兄ちゃんの変態! どうせ見るなら私――――なっ、なんでもない!」
「ちょっ、待ってくれ! セラ、その手に持った掃除機を置いて一旦話を」
「
「なんでさアッ――――――――――――!!!」
今日もアインツベルン家は平和です。
長期間で作成していたからネタの密度が濃い・・・。そして一話で3なんでさを記録した士郎君。流石本家。格が違うぜ!
この外伝の次回が何時になるかは正直ワカラナーイ。気が向いたら作っていくとか、そんな方向性で行きたいと思います。実質亀更新です。思いつきで書いただけだしね。シカタナイネ(´・ω・)
それでは次回をお楽しみに。(´・ω・`)ノシ