Fate/argento sister   作:金髪大好き野郎

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あー、そのー、えーと……遅れてメンゴ☆

読者→( #`Д´)=○)゚3゚)・∵.ウボァ←筆者

いやぁ、この頃マジで忙しかったんですよ。うん。特に必要ない疲労を強いられて創作意欲&執筆意欲マイナスという記録を残したのはいい思い出でした(白目

ぶっちゃけ他の方の小説読み漁っていたせいでもあるけどね!!

それはともかく(おい)、今回のハロウィンイベントは色々とネタだらけだったね。

フォウさん「やっぱりお腹だよお腹」
ヒトヅマニア一号「違う!私は人妻好きではない!・・・あ、そこのお嬢さん、どうやらお困りの様ですg(無言のロード・キャメロット)」
ヒトヅマニア二号「私は高く飛ぶ(I can fly)。(弓の衝撃で空を飛びながら)」
すまないさん「すまない・・・突然空に浮かび上がって本当にすまない・・・」
ヤンデレ三人組「「「溶岩遊泳余裕でした」」」

うーん、濃いなぁ・・・(遠い目)

追記

ランスロットの描写にミスが見受けられたので修正しました。


第二十八話・凶鳥、舞う

 深い闇を潜り抜けて、私の意識は覚醒する。

 景色は歪み、空気は赤熱し、焼かれた地面は赤みを帯びて上昇気流を発生される。空間ごと斬り裂かれ、同時に超規模の熱量によって焼かれた影響は想像以上にこの場の環境を蝕んでいた。

 

 あの緑生い茂っていたアインツベルンの森は、すでにその面影は無く。

 もう人の住めない焦土へと変わった大地獄の中で、私と言う人間はまだ形を残していた。

 

「く、はぁっ――――」

 

 しかし無事では無い。無茶な主従融合の反動で心臓の鼓動がおかしなほどに不安定になっている。まるで壊れたメトロノームの様に不規則な音色を刻み、確実に体へと苦しみを与えている。

 

「はぁ、っ……なん、とか、生きてはいるね…………」

 

 それでも生きている。神剣と乖離剣の余波により体中傷だらけで、神剣の一撃を放った反動で左腕が折れても、しぶとく我が身は生き延びていた。限定的に異界化した環境下でもまだ呼吸ができているのは、ひとえに鍛錬とこの身に融合した相棒(ハク)の加護のおかげだ。

 

 ……それも長く続きそうにはないが。

 

 急いでこの場を離れて体の治療に専念せねば、自身の存在を現世に留めている霊核の損傷は酷くなる一方だろう。恐らく今の私はどんな宝具であろうが真名解放するだけで命が危うくなる危険な状態。一刻でも早く応急処置を施さねば。

 

「英雄王は……っ、探す暇はないか」

 

 生きているかどうかはわからないが、せめて死亡の確認ぐらいはしておきたかった。

 時間と傷の状態に余裕があれば問題無く実行していただろうが、残念ながらそれはできない。生死確認をするつもりで自分の死を確定させるなど皮肉が過ぎる。

 せめて「しばらく大人しくしていますように」と祈っておく他ないだろう。自分が『コレ』なのだ、あの男も無事で済んではおるまい。

 

「――――待っててね、皆。もうすぐ、行くから…………!」

 

 折れた左腕を抑え、血の溢れる両足で体を支えながら私は明りの灯る新都の方向へと歩み出す。

 己を待っているであろう存在へと、少しずつ近づいて行く。それが、今の私にできる精一杯の行動であった。

 

 

 

 

 一方、ほぼ反対方向へと吹き飛ばされた英雄王も同時刻に意識を取り戻していた。

 紅蓮の地獄の上で焼かれながら、黄金の王は高らかに笑う。森の焼ける臭いや身を蝕む異界すら無視して、彼はただ月下で笑った。

 

 引き分けたのか、と。

 

「ふ、ははっ……フハハハハハハハハハハハハハハッ!! この我が慢心せず挑んでなおこの様とはな! 素晴らしい、まるであの時の様ではないか……!!」

 

 おもちゃを見つけた幼児の様に、英雄王は独り輝く笑みを振りまく。久しく忘れていた高揚。かつて出会った親友(エルキドゥ)と出会い三日三晩――――否、それ以上の時間を不休不眠で戦い続けた瞬間の如き高ぶり。もう感じることは無いと断じていた感情が湧き上がり、ギルガメッシュは天にも昇る気持ちで大の字に寝たまま月を見上げる。

 

「――――良い、良いぞ。此度の闘争、真に心躍る物であった。この我が最大の賛辞を贈ろう。キャスターよ、可能ならば全盛期の貴様と相見えたいものだな」

 

 劣化版(サーヴァント)でコレなのだ。全盛期(生前)はどれほどの者だったのか、全く想像がつかない。

 もしや『星を斬り裂いた』という偉業、本物なのではないか? ならば是非とも見せてもらいたいものだな、とギルガメッシュは笑みを崩さないまま上体を起こす。

 

 改めて周囲を見渡せば、そこは地獄といっても差し支えない惨状が広がっている。事実、乖離剣と神剣の一撃が衝突した余波(・・)で焼かれたのだから無理も無い。二つの極撃が地球に直撃して居たら隕石衝突や火山噴火が可愛く見える被害が冬木市どころか日本含めたアジア諸国を襲っていただろうが。

 

「さて、そろそろ時臣めの契約を断つ時か。――――チッ、此処では『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』が使えん。我も一度ここから離れた方が良いか」

 

 周囲の空間が異界化・断裂しているせいで空間系の宝具の一切が無効化されている。正しくは『展開しても出入り口が歪み過ぎて碌に使えない』と言う物だが。

 何にせよ使えないのは揺るぎない現実。流石の英雄王も消滅寸前のダメージを負い、尚且つ宝具を使用不可になっていては不味い。直ぐに此処を離れるべき――――そう思考した瞬間、彼の感覚が『異物』の存在を感知する。

 

「――――?」

 

 それを確かめるべく振り向いてみれば、ギルガメッシュの視界の中に神父服を着た一人の男が移り込む。

 

 面に浮かんでいるその顔、何処までも感情が無く。

 双眸はまるで虚空の如き深い闇が広がっており。

 

 だが―――英雄王の目は確かにそのうちに眠る醜悪さを理解し、思わず顔を顰めてしまった。

 

「貴様……何だ?」

「お初にお目にかかります英雄王。我が名は言峰綺礼。今は時臣師の弟子という立場を持って、御身を補佐する役目を負っている身であります」

「時臣めの? ああ、確かに一人マスターの協力者がいると言っていたな。それが貴様というわけか」

「全く以てその通りでございます。どうかお見知りおきを」

「――――おい貴様、誰の命を持ってここに居る」

「それは時臣師の――――」

 

 その言葉でギルガメッシュの視線がより一層鋭く、そして冷たくなる。

 この期に及んでこびへつらおうとしている時臣に失望して? 違う。断じて違う。虚言を息を吐く様に呟く言峰綺礼を心の底から嫌悪しているのだ。

 そもそも、異界化しているこの場に生身で入り込んでくるなど時臣の補助があってもできるわけがない。

 恐らくもっと強大で悪質な何かが後ろに着いているのは間違いない、と英雄王は瞬時に読み取る。

 

 同時に理解する。言峰綺礼という人間の本質を。

 

「……何ともふざけた人間よ。他者の幸せを幸せと感じることができず、忌み嫌う物を慈しむ破綻者か」

「ほう……流石は英雄王。私の本質を一瞬で理解するとは」

「この我を誰だと心得ている。王の中の王である英雄王だと理解してなおその口ぶり、死ぬ覚悟はできているのだろうな?」

「…………クククハハハハハハ!! 何とも滑稽な様だ。これが人類最古の英雄とは、人と言う物は実に難しい」

「――――貴様ァ………!」

「ふむ、わからないのですか英雄王。――――私の行動は既に終わっているのですよ」

「何を――――」

 

 言っている。

 

 最後まで言い切ることなく、英雄王の言葉は断たれてしまう。

 彼の両足を蝕む異質な感覚によって。

 

 弾かれる様にギルガメッシュが視線を真下へ向ければ、そこには黒くよどんだ悍ましいナニカが自身の足元を覆っている光景が見えた。

 

 それは、この世の全ての『悪』を練り固めて溶かし込んだような泥。

 水銀の様に光沢を帯びた地上の物質とは思えないソレは確実に、着実に、ギルガメッシュという存在を構成するエーテルを侵食している。もう手遅れなほどに。

 

「なッ……!?」

 

 食っていた。変質させるのではなく、捕食。歪ませることができない故に、泥は英雄王という存在を食らい続ける。糧にし、いずれ訪れる災厄を解放するための生贄として――――

 

「貴ッ様ァ! よもやそこま、ガッ――――!!?!?!?!」

 

 それでもまだ上半身には届いていない。ならば幾らでもやりようはあると抵抗を始めようとしたギルガメッシュであったが――――その背中に人の手が生えたことで英雄王の動きは止まった。

 

 貫手。

 

 言峰綺礼の手刀がものの見事にギルガメッシュの胸を貫いている。

 

 ただの手刀ではあり得なかっただろうその現象。どうして現実に起こっているか。答えは簡単だ。残った一画の令呪による身体能力の増加。膨大な魔力を爆発的な身体強化に使う事で言峰綺礼の手は英雄王の強靭な――――瀕死寸前の手傷を負っているとはいえ――――肉体を貫いたのだった。

 

 もし『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』が使えていれば、綺礼はとっくの前に串刺しになっていただろう。だが使えない。周囲の環境が余りにも異質すぎるせいで展開することができなくなっている。

 

 つまり、英雄王にとっての二度目の死闘は意図せず彼の死因となってしまったのだ。

 

 綺礼も残り一画の令呪を使用してしまった事でアサシンとの契約が消えてしまったが、用済みの駒はもう必要無い。彼に取って既にアサシンはどうでもいい存在と化しているが故に躊躇なく令呪の消費を行えた。

 

「ガッ、フ――――」

「さらばだ英雄王。安心して、私の望みの礎になるがいい。――――せめてその魂に救いがあらんことを祈っているぞ、ギルガメッシュ」

「キ、サマ――――」

 

 最後の最後に強烈な皮肉を飛ばした綺礼。当然、英雄王の魂は聖杯によって消費される。救いなど訪れるわけがない。本質を知っていても尚その台詞、嫌味にしか聞こえないのは気のせいでは無い。

 英雄王は憤怒の声を上げることもまともにできず、躊躇なく綺礼の腕は抜かれ、その直後英雄王の全身は泥の中に呑み込まれた。

 

 聖杯戦争初の脱落者が発生した瞬間であった。

 

 最も優勝候補に近いサーヴァントが一番目に脱落するとは、何の因果か。

 

 

 

 言峰綺礼は地獄の中で静かに笑う。

 ただこの光景を「美しい」と想い、邪気塗れの童子は不気味な笑みを浮かべた。

 壊れた人形のように。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 遥か彼方、鳥すら飛ばぬ高高度の雲の中をデジタル暗号化された無線波で互いに囁きを交わす声があった。

 空を裂いて飛ぶは鉄で出来た大鷲(イーグル)。領域哨戒中のF15戦闘機に乗っている仰木一等空尉はヘッドホンから聞こえる声に耳を傾ける。

 

『コントロールよりディアボロⅠ、応答せよ』

「こちらディアボロⅠ、感度良好。何事だ?」

『冬木市警察より災害派遣要請。直ちに哨戒任務を中断し、急行されたし』

 

 災害派遣? ――――通信越しに聞こえるその声に、仰木は己が耳を疑った。

 ヘリや哨戒機ならともかく、『戦闘機』を呼び戻す災害とは一体どういうことなのか。まさか隕石でも墜ちたのではあるまいな、苦笑しながら仰木は問いかけた。

 

「コントロール、指令内容を明確にしろ。何がどうなっている」

『――――隕石が落ちてきたらしい』

「は?」

 

 笑みが固まる。まさか冗談で考えていたことが的中するとは思わなかったのだろう。

 が、そこでまたもや疑問が浮かび上がる。ただの隕石でどうして戦闘機が呼ばれるのか。普通なら派遣するのは調査隊などだろう。と、いうことは。

 

『もっと不可解なのは着弾点周辺の空間が異様に歪んでおり、ついでに冬木市新都内で何かしらの爆発が多数発生している。爆破テロの可能性がある』

「はぁ……? あんな小さな街でテロ? 大方最近頻発してるガス爆発か何かだろう」

『そんな頻繁にガス漏れが起きて堪るか。ともかく急行されたし。だが下手に刺激はするな。新都上空で遠距離からの観察に留め状況を報告せよ』

「了解。ディアボロⅠ、本気はこれより新都上空からの観察にあたる。通信終了(オーバー)

 

 通信を切って、仰木は深いため息をつく。

 ただの哨戒任務だったはずが、何故か不可思議な現象の観察任務に変わってしまった。さっさと帰って久しぶりにステーキでも食べようかと考えていた矢先にこれだ。ただの杞憂ならいいのだが―――と心の中で毒づき、両機のディアボロⅡへと通信を飛ばす。

 

「ディアボロⅡ、聞いての通りだ。進路反転、引き返すぞ」

『了解。……しかし隕石とは、物騒ですね。俺たちも飛んでいる最中に何かが上から降ってくるかも』

「ははは。笑えねぇジョークはやめろ。上から何かが降ってくるのは良いとして、亜音速飛行中の戦闘機に直撃するなんてどんな確率だ」

『それもそうですね。ま、さっさと終わらせて帰りましょう。俺、美味いパインケーキ作る店知ってるんですよ』

「ならデッカイステーキにウィスキーのおまけだ」

「『ハッハッハ』」

 

 本人たちに自覚は無いようだが、この二人何故か息を吸うように死亡フラグを建てているのは気のせいだろうか。

 

 操縦者たちの心中はどうあれ、アフターバーナーの轟音は高らかに空を貫く。鉄で出来た銀翼の大鷲は、変わらぬ雄姿を背に冬木市へと飛翔していった。

 

 

 ――――そんな姿は、およそ数分後に崩れてしまったわけであるが。

 

 

 二人のイーグルライダーは遠目で見ても分かる閃光の連続に自信の正気を疑う。

 

「……なんだ、あれは」

『……風と、光?』

 

 遠方、冬木市深山町郊外の森にて輝く紅い旋風と銀色の光。空では無く地上から見ても目立ち過ぎるそれは、何も理解出来ていない二人に唯一『ヤバい』という事だけを理解させていた。荒れ狂う紅い暴風。儚げに輝く一条の光。

 それらは――――何の全長も無く衝突した。

 

 瞬間発生する莫大な衝撃波。空間そのものが揺れているのではないかと思える程のそれは飛行中のイーグル二機を意図せずも一瞬で飛行不能へと陥らせた。

 

「な――――!?」

『クッ――――ディアボロⅡ、航行不能! 機体が揺れてる……!?』

 

 エンジンや制御系統には一切問題は無かった。数キロ程離れていたが故に届いた衝撃波も比較的小さなものだったのだ。もし直撃して居れば二人は今頃木っ端みじんになり、残骸は冬木市へと降り注いでいただろう。

 

 それでも、小さな衝撃波でもF15を航行不能にさせるには十分すぎる威力を秘めていた。周囲の気流を乱され、その上機体が想定以上の振動を受けたことで機体バランスや推力が不安定になっている。このままでは墜落する。―――だがこの程度で墜ちるほど二人の腕は温くない。

 

 迅速なる判断で可能限界までバランスを維持しながら機体体勢を回復。かなりの高度を取っていたこともあって、市街地への被害は一切ない。伊達に戦闘機パイロットしていない、という事だ。

 

「くっ……ディアボロⅡ、機体の状態は?」

『は、はい。外部や内部の損傷は見当たりません。航行継続は十分に可能。――――仰木一等空尉、今のは一体』

「俺に聞くな……! コントロール! こちらディアボロⅠ、至急応援を――――」

『■■■■――――』

「クソッタレ、通信不能だ! 小林三等空尉、迅速に本部へ帰還する準備をしろ!」

『し、しかし任務は――――』

「意味不明な状況の中で任務もクソもあるか! 今俺たちがすべきなのは冬木市の現状を一秒でも早く本部に届けることで『ッ、何だ。機体の上に何か。って、人――――うわぁぁあああああああっ!!!』!? おい、ディアボロⅡ、応答しろ! 小林っ! 小林ぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 突然僚機が通信不能になる。たださえ現状の理解ができていないのに、現実は仰木の理解を待ってはくれない。次々と意味の分からない不可解な現象が起こっている。

 何だ、これは。本当に自分が見ているのは、現実か? ――――仰木の精神状態は既に不味い領域に達している。現実逃避ならまだいい方、不定の狂気にすら達しかけない精神だがその一歩手前で彼はどうにか押しとどまっていた。

 

 脅威が見えているならば、まだ心は容易く保てた。しかし見えない脅威と言うのはゆっくりと、そして確実に心を蝕んでいく物である。感情を向ける先がないのだから、何に対して恐怖しているのかもわからなくなる。

 それでも精神が形を保てているのは、彼は自衛隊の訓練により色々と鍛えられたおかげだろう。

 

 だからと言って事態が好転するという事は無いが。

 

『コン■ロー■よりディ■■ロⅠ、応答■よ、何が■こって――――』

 

 ノイズだらけの通信。その声は既に仰木には届いていない。呼吸は肩でするほど荒くなっており、手は震えている。その中で研ぎ澄まされていく五感。現実を見失わない様に、生存本能が彼を生かすためにアドレナリンを大量に分泌する。

 だからこそ、気づいてしまう。

 機体から伝わる、自然の物では無い異風な振動を。

 

 仰木は本能のまま振り返る。そこに何があったと思う。エイリアン? UFO? UMA? 全て違う。答えは――――人だった。いや、形こそ人成れど、仰木には理解できた。

 人であって人では無い。人の身では届かぬ存在だと、仰木は茫然とその『ヒト』を見つめた。

 

「――――失礼、少しお借りしますよ」

「は? ――――って、うぉぉぉおおおおああああああああああああああああああ!?!?」

 

 戦闘機の上に立っていた黒衣の人物は、あろうことか素手でキャノピーの強化ガラスを貫いた。思わず仰木は「は?」と声を出してしまったが、次の瞬間には座席ごと空に放り投げられていた。

 

 緊急脱出(ベイルアウト)。強化ガラスを貫通した手は一瞬で緊急脱出装置を起動するレバーを引いて仰木を空へと放り出したのだった。勿論すぐさまパラシュートが展開されて事なきを得るのだが、説明も何もなく空へと放り出された仰木はポカーンと絶句し――――

 

 

「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!?!?」

 

 

 心からそう叫んだ。

 

 また、僚機のパイロットである小林も同様に空へと放り出されていたことが判明し、再会後にとりあえず泣きながら抱き合ったとかなんとか。

 

 それを見ていた人間は「誰得だよ」とか思ったらしい。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 美しかった銀の翼が一瞬にして黒く悍ましい魔力に包まれ変化する。

 禍々しく操縦者――――アルトリアの全身から霧の如く溢れ出た『卑王鉄槌(ヴォーティガーン)』の魔力。それは彼女の鎧を構成する宝具でもあり、攻防一体の万能宝具。そして更に、自分だけでなく乗騎にすら纏わせることができるという万能性を秘めていた。

 本来ならばラムレイかドゥン・スタリオンに纏わせ、重装兵の突進の如き突貫攻撃を行うための隠し技であったのだが、アルトリアは既成概念を全て投げ捨て魔力とイメージを紡ぎ出す。

 

 形成されるは愛馬の馬鎧(カタグラフト)。F15はその限界性能を遥か上に叩き上げ、今だけ現存する全ての戦闘機を差し押さえる最強の鉄鳥と化す。

 異形にして壮麗なフォルム。力強く、しかして繊細なジェットエンジンの駆動音は怪獣の雄叫びセイレーンの歌の様な美しさを併せ持つという二律背反を此処に実現させる。更に魔力と風を圧縮して作り出された鏃の如き機首は空前絶後の空力耐性を得て、ついに空気抵抗からも解放される。

 

 ――――良し!

 

 その存在、既に物理法則など通用せず。原形を留めぬほどに手を入れられた銀の大鷲は異形となって空の覇者となる。今のF15ならば最新鋭機であるF22すら猛禽類から小鳥同然だ。

 

 対してランスロットの手腕も負けてはいなかった。

 

 彼は自身の宝具である『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』を使ってF15を疑似的な宝具へと昇華させていく。墨汁を垂らした染みの様に、戦闘機の表面を赤黒い血管の様な模様が広がっていった。ただの鉄柱や鈍らまでもを魔剣魔槍へと変貌させるランスロットの魔力はこの最新科学の結晶たる戦闘機を瞬く間に異形へと変貌させる。

 

 やがてその機体全てをくまなく支配し終えたランスロットは伝説の竜機兵(ドラグーン)よろしく機体背部に捕まったまま加速を開始した。本来F15に搭載されていないはずの推力変更ノズルからは紫色の炎が吹きあがり、漆黒の凶鳥は同じ異形の鳥へと真っ直ぐ直進する。

 

「――――行かせてもらいます、アーサー王ッ!!!!」

 

 黒騎士の咆哮と共に火を吹くのはF15の固定装備である右翼の付根前縁に存在している装弾数940発のJM61A1機関砲。六本の砲身が高速回転しながら雨霰の如く20x102mm弾を吐き出す。宝具化されたことによりその威力は本来のソレと比べて数倍以上に跳ね上がっている。まともに受ければ無事では済まないだろう。

 

「その程度か、サー・ランスロット! そんな物では私は落とせんぞ!!」

 

 攻撃を認識した瞬間、アルトリアの駆る凶鳥は急加速。

 

 大量の魔力を燃料として繰り出された爆発的なまでの急加速は数十Gという負担を搭乗者に与えるが、そんな物彼女にとっては少し苦しい程度の物に過ぎない。彼女は瞬間的にマッハ2.5を記録しながら20x102mm弾の雨を回避し、可能な限り速度を維持しながらの急旋回という自殺行為同然の曲芸を披露して強引に機首をランスロット機へと向ける。

 

 全弾回避を果たすと同時に左右翼化のパイロンからロケットモーターの火がまき散らされる。射出された二発のスパローミサイルは返礼とばかりに異形の弾頭を向けながらランスロットの駆るF15へと襲い掛かった。

 

 それを迎撃しようとランスロットはM61A1の弾丸を叩き込むが――――ミサイルは依然無傷。

 当然だ。その弾頭は鋭く先鋭化された鎧に包まれており、余程の角度からでもなければ戦車の主砲すら往なす(・・・)だろう形状だ。いくら弾丸を浴びせようがアレでは掠り傷しかできまい。

 

 ならば、とランスロットは同じくパイロンから宝具化されたスパローミサイルを射出した。その速度流星の如し。カナード翼を歪ませながら凄まじい精度で射出されたミサイルはランスロットへと飛来してきたミサイルに着弾。爆発する。

 街を照らす爆炎。強烈な魔力が籠った26ポンドの炸薬はカラフルな炎を残して破片を散らせる。

 

 黒煙の中交錯する二機の凶鳥。すれ違ったことを確認した直後にランスロットはノズルの推力を強引に変更し、普通ならばGで全身の臓器が潰れていても可笑しくないほどの無茶苦茶なインメルマンターンで機首を巡らせる。

 

 即座に機銃掃射。赤黒く光る凶弾の雨がアルトリアの乗騎へと襲い掛かった。

 

「ッ――――」

 

 息を呑みながらも素早くバレルロールしながらの乱数回避軌道。さながら白鳥の様に優雅に、そして猛禽類の如く猛々しく空を飛ぶさまは圧巻と言う他に無かった。

 

「王よ! 一体何が貴女をそこまで追い立てる! 何故そんな無残な姿になっても尚、歩みを止めないのですか!」

「………そう、ですね」

 

 戦闘中だというのに、アルトリアの声は酷く穏やかだった。別に余裕があるわけでは無い。この戦いを軽んじているわけでもない。ただただその声には――――達観というモノが詰まっていた。

 何かを悟った。そんな声にランスロットは無意識に喉を鳴らす。

 

「――――きっと、責任から逃れたかったのでしょう」

「……逃れたかった?」

「はい。……サー・ケイも、モードレッドも、姉さんも、皆私の選択の末に命を落としました。私は恐らく、それを認めなくなかった。背負いたくなかったのです。自分のせいだと……思いたくなかった」

「……アーサー王」

 

 機首が上方を向く。二機のF15は高速で冬木の空を駆け上がり、やがて雲の中へと突入していく。

 眼下に広がったのは高高度の世界。雲の海とも呼べる幻想的な光景は月明りに照らされて、本物の海にも勝るとも劣らない神秘を放つ。

 

 だが――――それが今のアルトリアの心を満たすことは無かった。

 

「――――みんなの笑顔が見たかった」

 

 でも、最後に見たのは屍の山だった。

 

「――――穏やかで平和な国を作りたかった」

 

 そして、詰み上がったのは波乱と喧騒を孕んだ国だった。

 

「――――皆の死を、意味のある物にしたかった」

 

 だが、その死は理想を果たせなかったことで無に潰えた。

 

「――――ただ私は……皆が卓を囲んで笑顔で食事ができる、そんなありふれた光景を見たかっただけなんですよ。でも、世界はそれを許さなかった。剰え、全てを奪った。そう、全てを。……この気持ちは、一体どこに向ければいいのですか? 何年も詰み重なったこの激情を……どこで晴らせばよいのですか?」

 

 人の感情と言う物は複雑だ。単純なようでいてその性質は不可解にして怪奇。幾何学模様のように規則正しいようで、しかし怪奇現象のように理解不能。

 理想であれと願われ、清く正しく誠実な在り方を貫いていたアーサー王を復讐鬼にまで堕とした感情は常人では考えられないほどの濃密な物だ。年単位で重なり、混ざり、生まれてしまったソレは一日二日で消費できるような代物では無い。

 

 間違っているのは理解している。

 

 ――――それでも、彼女は諦められないのだ。

 

 見続けた願いを。

 

 手に届かなかった理想を。

 

 それが諦められたのならば、一体どんなに楽だっただろうか。

 

「憎いですよ。世界が。壊したいほどに」

「…………」

「だから、お願いします。ランスロット。貴方たち(・・・・)で私を、止めてください」

 

 涙が、雲海に墜ちる。

 

 誰にも見向き去れないような、そんな小さな光景は――――確かにランスロットの心を揺らした。

 涙を流して請う我が主の頼みを、一体誰が断れるというのだ。

 

「顕現せよ、『無毀なる湖光(アロンダイト)』」

 

 F15の表面を覆っていた赤黒い模様が消える。ランスロットの宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』が解除されたのだ。理由はただ一つ。彼が持つ最強の宝具――――湖の乙女より授かりし剣を使うため。

 

 ランスロットは慣性だけで飛行を続けているF15の背部に左手だけでしがみ付きながら、空いた右手に愛剣である聖剣アロンダイトを具現化する。相変わらず汚れ一つない純白の剣は月光を反射していつもより美しく輝いている。

 そして担い手の魔力が乗れば、その刀身は仄かに青き輝きを帯び始めた。放たれる光は、さながら光に照らされた無垢な湖の様に透き通っている。

 

 これぞ湖の騎士が編み出した、彼の持つ対人戦最強の奥義。

 

 

「――――最果てに至れ、限界を越えよ」

 

 

 アロンダイトに掛けられた過負荷により、聖剣が内包している魔力が漏れ始める。身体能力向上に使用していた莫大な魔力が刀身の表面をコーティングし、濃密な熱量となって空を照らす。

 

 

「――――『卑王鉄槌』、極光は反転する」

 

 

 それを見たアルトリアは直感スキルに従ってインメルマンターン。強烈なGに耐えながら片手だけで機体にしがみ付き、自己修復により元通りになった方の右手に魔剣を携えながらランスロットへと真っ直ぐ突っ込む。例えるならば、チキンレース。唯一違うのは二人が乗っているのが自動車じゃなくて戦闘機であり、尚且つ両者共に身どうだに軌道を逸らすつもりが皆無だという事だ。

 

 勿論、このままでは正面衝突で綺麗に空中分解コースまっしぐらである。しかし二人は英霊。己の持つ最高の一撃をぶつける以上、そんな事実に意味はない。あるものか。

 

 

「――――王よ、この光を御覧あれ!!」

「――――光を呑め……!!」

 

 

 溢れ出す災厄の光と美麗なる湖光。凶鳥に跨る二人の剣士は広大な空の上で――――刃をぶつけた。

 

 

「――――『縛鎖全断・加重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』!!」

「――――『鏖殺するは卑王の剣(エクスカリバー・ヴォーティガーン)』!!」

 

 

 振り抜かれた漆黒の極光。石柱の様に太く、夜よりも黒い光は全てを飲み込みながら湖の騎士へと迫る。

 見るも悍ましいソレを前にしてもランスロットは怖気づく気配も見せず、その極光へと自身の剣をぶつけた。膨大な魔力の奔流と魔力を圧縮して作り出された光の剣はいともたやすく斬り裂いて見せる。

 

 両者の宝具のランクは共にA++。並の英霊ならば直撃すれば命は無い超級宝具であるが、同じランクである以上その威力は拮抗する物がある。が、アルトリアの『鏖殺するは卑王の剣(エクスカリバー・ヴォーティガーン)』は圧縮した魔力を放出する宝具。ランスロットの『縛鎖全断・加重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』は聖剣に内包された莫大な魔力を圧縮したモノ。

 同ランクである以上その威力はほぼ同じであり――――放出では無く圧縮する以上魔力の濃度はランスロットの方が上を行く。魔剣の極光を斬り裂けぬわけがなかった。

 

 ――――だが、そう簡単に事が済むはずもなく。

 

「クッ――――!!?」

 

 視界が晴れると、ランスロットの乗るF15は様々な個所が融解し、小爆発を起こしていた。ランスロットが斬り裂いたのは飽くまでも自分を呑み込む範囲の極光のみ。自身の乗るF15の全体をカバーすることは彼一人ではとてもじゃないが無理であったのだ。こればかりはリーチの問題上仕方ない事だろう。

 

 間髪入れずにアロンダイトを霧散させ『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』でF15の各部を補強するランスロットであったが、所詮は焼け石に水。完全に壊れるまでの時間を稼ぐ程度しかできない。

 とはいえ、原形をとどめているだけよく耐えたと褒めていい。魔剣の一撃を受けてまだ形を残せていたのは残留したランスロットの魔力の影響だが、それでもF15は完全な爆発まで数秒と言う時間を作ってくれた。

 そしてその数秒は、ランスロットが相手の機体に飛び乗る(・・・・・・・・・・)には十分すぎる時間である。

 

「礼を言います、未来の鳥よ。――――フッ!!」

 

 ランクA++という超人的なランスロットの敏捷は、一瞬でその身を音速の域を突破させ、真正面から突っ込んできたアルトリアの乗騎に音も無く飛び乗らせた。一瞬だけ驚愕するアルトリアであったが、竜の背中を飛び移りながら空を血の色に変えていた生前のランスロットを思い出して「出来て当然か」と小さく微笑する。

 

「行きますよ、王ッ!」

「来い、ランスロット!」

 

 己の持つ二つの宝具を封じ、ランスロットは再度『無毀なる湖光(アロンダイト)』をその手に顕現させた。穢れ無き純白の刃は担い手に迫る漆黒の凶刃をいともたやすく受け止め花火を散らす。

 

 戦闘機の背部という狭い足場の上での戦闘。並の英霊でも悪地以前の問題であるその環境の上でも、二人は平然とその手に握る剣で高速戦闘を繰り広げる。

 舞うように美しく、しかし獣の闘争の様に荒々しい。不安定な足場の上でよくもそんな戦いを続けられるものだ、と第三者が居ればその様を称えていただろう程に繊細で大胆な剣戟。互いに己の積み上げてきた経験と技量全てを持って相手を斬り伏さんと剣を振るう。

 

 そんな戦いが凡そ三十秒続けられた頃だろうか――――ついにアルトリアの剣が弾かれ、大きく跳ね上がる。決定的な隙。それを見逃すほどランスロットは甘くない。

 

「これで――――ッ!」

「まだだッ――――『その愛は恩讐の彼方に(アウェイクン・オーバーロード)』ォォォォッ…………!!」

 

 バギバギッ、何かが割れるような異音と共にアルトリアの肌を何かが侵食する。黒く染まる肌。顔の右半分まで黒い侵食は彼女の体を覆い尽くし、その地力を数倍に跳ね上げる。

 更に右目は白眼が黒化し、色彩は銀へと変貌する。見るだけで他者を威圧する覇王の魔眼。全身に圧し掛かる重圧に、ランスロットは思わず小さく肺に溜まった息を漏らす。

 

「アァァァアァァァァアア■■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!!!」

「グゥゥゥゥッ!?!?」

 

 跳ねあがっていた剣が爆発したような勢いでランスロットへと振り下ろされた。辛うじてそれを受け止めるランスロットだったが―――その圧倒的な力に押し負ける様に、彼の体はF15の背面上からはじき出される。ギリギリで右翼の付け根部分を掴んだが、それだけで勢いは相殺しきれず、F15の固定武装JM61A1を引っこ抜きながらランスロットは雲の海へと墜ちていく。

 

 アルトリアは残された微かな理性を全て動員し、ジェットエンジンを吹かして雲の中へと墜ちていったランスロットを猟犬の如く血走った眼で追いかける。

 

 数秒もしないうちにF15は雲の下へとたどり着く。

 

 待ち受けていたのは――――宝具化したJM61A1の銃口を向けたランスロットの姿だった。

 

 

「アァァァァァァサァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア――――ッ!!!」

 

 

 耳の張り裂けそうな咆哮と共に放たれる怒涛の鋼の雨。直感スキルが発動し、本能が「避けろ」と告げたがもう遅かった。毎分一万二千発を誇るJM61A1は容赦なく20x102mm弾を排出し、F15を紙屑の様に食い尽くす。見る見るボロボロになって行く鉄の凶鳥は見事コントロール不能に陥った。もう軌道を曲げることすらできない。このまま自由落下し、墜落を待つだけである。

 

 ――――だが、アルトリアは加速を止めなかった。

 

 軌道を変えることはもうできない。だが速度を調節するだけの機能はまだ残されている。それを駆使し、アルトリアはアフターバーナーを吹かして正面に居るランスロットへと朽ちかけのF15で突っ込んだ。

 

「ランスロットォォォォォォォオ■■ォ■■■■■■■■■■ッッ!!!!」

「な――――がはッ!?」

 

 未だ原形をとどめていたF15の機首がランスロットの胴体と激突した。ミシリ、と彼の体から嫌な音が響く。音速の鉄の塊が突っ込んできたのだ、常人ならば既に死亡している。それをたかが肋骨数本で留めているのだから「まだ」マシな結果だ。

 

 そしてF15は速度を緩めない。どんどん落下していく。その速度実にマッハ3。音すら容易に置き去る超音速で垂直に落下する鉄の鳥は、傍目からは一体どんな風に見えているだろうか。

 

 不幸中の幸いというべきか、直下にあるのは未遠川。

 住宅街などの類では無く水場であったのがせめてもの救いか。これが人の住む区画であったならば、間違いなく大惨事が広がっていただろうことは言うまでも無い。

 

 ――――超音速のF15が広大な水面に叩き付けられる。

 

 夜の冬木に木霊する爆発にも似た轟音。水面を大きく抉り、瀑布を逆さまにしたような巨大な水しぶきを辺り一面に散らす。それこそ遥か向こうに位置する住宅街を雨が降った様に降らすほどに。

 

 

 

 それから数秒後、アルトリアとランスロットが水面へと浮かび上がる。

 アルトリアの方はどうにか意識は保っていたが、明らかに衰弱している様子だ。流石の英霊でもマッハ3で水の中に突っ込むのは無理があったらしい。

 そんな衝撃を全身に叩き込まれたランスロットは見事体中の骨を折られ、白目を剥いて気絶しているが。

 

「は、ぁっ……はぁっ……ま、た、勝ってしまったッ……!」

 

 だが、この結末はアルトリアの望んだ物では無い。

 彼女は負ける必要がある。折れる必要がある。この手に抱いた理想を捨てるために。死闘の末に『叶わない』と自身へと思い知らせるために。

 

 しかし勝ってしまった。――――それではだめだ。

 

 おぼつかない足取りで精霊の加護により水面の上に立つアルトリア。そんな彼女の耳が小さな足音を捉える。

 

 一般人の物では無い。

 それは、明らかに洗練された武人のそれ。

 

 アルトリアがそれを聞き間違えるはずもない。共に過ごしてきた最愛の人の足音を――――

 

 

「――――……お待たせ、アル」

 

 

 満身創痍の姉がそこには居た。

 全身が傷だらけで、服のいたる所に血を滲ませ、片腕が折れても尚立ち続けている(アルフェリア)。最早立っていることすら奇跡と言ってもよいそんな状態でも、彼女はその双眸に闘志をたぎらせて愛剣(コールブラント・イマーシュ)の切っ先をアルトリアへと向ける。

 

「……遅いですよ、姉さん」

「あはは、ごめんね。ちょっとしつこい男に絡まれちゃって。……ま、時間を稼いでくれたランスロットにはお礼を言うべきかな」

 

 同じく精霊の加護を受けたアルフェリアは顔色一つ買えずに水面の上に降り立つ。

 

 共に満身創痍。

 万全の状態とは言い難い二人であったが――――その表情に憂は無い。むしろ、笑っている(・・・・・)

 

「さて、最後の姉妹喧嘩だよ」

「そうですね。これで、最後です」

「なら―――」

「最後らしく――――」

 

 

 

「「――――派手に締めくくりましょうかッ!!!」」

 

 

 

 今だ戦いは終わらない。

 それは、終わりへの足音か。それとも――――更なる悲劇への幕開けか。

 

 だとしても、

 

 

 今ここに超級サーヴァントの激突が起こることは、避けられない事象であった。

 

 

 ――――世界一傍迷惑な姉妹喧嘩が、今始まる。

 

 

 

 




とりあえずやりたいこと全部ぶっこんでみた。後悔はしていない(キリッ

ようやく記念すべき一人目の脱落。しかもAUO。予想できた人いるかな?
令呪ブーストされた麻婆の一撃でご退場となりました。原作の方では契約して居た仲なのに、この小説では険悪以前に殺害してされる関係に・・・どうしてこうなった(白目

まぁ静謐ちゃんが解放されたからいいよね!(鬼畜

聖杯から切り離されたことで腹ペコになっているアンリマユに呑み込まれたAUO。果たして再登場の機会は訪れるか・・・?


話は変わりますが、何というか、一番やってみたかった航空機戦色々とカオスなことになってしまいましたね。そして結局負けるランスロ。そりゃマッハ3で水面に叩き付けられれば気絶するか。・・・いや、何で死んでないんだコイツ。


さて、次回で(たぶん)三日目の大乱闘は終了になりそうです。


・・・・え?三日目?(;´・ω・)

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