Fate/argento sister   作:金髪大好き野郎

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遅れてソーリー。早めに投稿できると思ったがそんなことは無かったぜ!・・・あ、やめて石を投げないで!

と、冗談はさておき。本当のことを言えば少し学校祭的なものが近づいており、執筆時間があまり取れなかった影響でございます。あと私の創作意欲の低下と寝不足のせいでもあるヨ☆・・・あ、石はらめぇぇ(ry

そして前に投稿したプリヤと打って変わってシリアス風味。え?プリヤの方を投下しろって?したいのは山々だけどほぼ一発ネタのつもりだからプロットとかあまりまともに組んでいないんだ許してネ☆・・・石は石でも星晶石を(ry

茶番終了。それでは本編をどうぞ。


第二十七話・乱戦

 青い閃光が街を疾駆する。

 

 人々の目にも留まらぬ疾風の如き身のこなし。周りの一般人はその影すら認識できずに普段通りの日常を続けていた。

 疾く駆ける『ソレ』は公道を走る自動車の天上伝いにまっすぐ進んで行く。まるで何かから逃げる様に(・・・・・・・・・)

 

 数秒後――――轟音が周囲に反響した。

 

 猛獣が空高く吠えたように甲高い爆音の如きエンジンの駆動音は空を穿つように響いて行く。人々は瞠目する。黒い霧を纏って全てを蹂躙するように走行する二輪車を。明らかに一般の指定最高速度を一般常識ごとぶち抜いたような剛速。

 その莫大な衝撃波で周囲の車両を風圧で蹴散らしながら、悪魔めいた漆黒のモンスターマシンは地を走る。

 

「――――チィッ、しっつけぇぞテメェ!」

「ハッ、追いかけられては逃げ回るだけか? やはり狗は狗のようだなランサー!」

「んの……舐めやがってッ! ――――mannas(マンナズ)! teiwas(テイワズ)! isa(イサ)!」

 

 化物バイクに乗ったアルトリアに追跡されているランサーはお得意のルーン魔術を宙に刻み、周囲の人間へ守護と思考凍結、眠りを与える魔術を使用した。原初のルーンによる高度なルーン魔術はすぐさま人々の間に伝播し、数秒経たないうちに半径数キロ以内の人間を眠らせ害から、その身を守る膜に包む。

 

 流石はキャスター適正持ちの大英雄。魔術師でもないのにもかかわらずこの結果を叩き出して見せた。

 唯一の問題は自分を追いかけてきている地獄の修羅の様な女を振り切れないということか。

 

「ったく、相ッ変わらず女運だけは最悪だな俺は!」

「軽口を叩く暇があるのかランサー? ――――『卑王鉄槌(ヴォーティガーン)』!!」

「うおぉっ!?」

 

 宙を舞うランサーの肌を黒い魔力の刃が撫でる。空中で体制を変えることで紙一重で回避できたが、もしそれが胴体に直撃すれば容赦なく二等分にされていただろう。

 その事に脂汗を額に滲ませながら、ランサーは自身の獲物である紅い呪槍を構えた。

 

 今度はこちらの番だ。

 

 

「喰らって逝けや――――『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』ゥゥゥゥツ!!」

 

 

 お返しと言わんばかりにランサーは自身へ時速300Kmオーバーで迫るアルトリアへとマッハ2の呪槍を投擲した。相対速度は凡そマッハ2.3。常人ならば反応する前に木っ端みじんになる領域。

 

 空気を裂き、摩擦で赤熱しながら朱い輝きを放つ槍をアルトリアは正面に見据える。

 

 彼の大英雄が繰り出した一撃。その一槍、一度投げれば幾人もの心臓を穿ったと伝えられている。当然その謳い文句に虚偽など存在しない。アレは正しく自分の心臓を貫いて尚余る代物。そう確信したが故にアルトリアは自身の魔剣に魔力を集わせる。

 

 この距離では既に『卑王鉄槌(ヴォーティガーン)』などの宝具を使った迎撃は不可能。許されるのは単純な一撃のみ。ならば今繰り出す一撃に全てを乗せる――――!

 

「はぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁあああああああッ!!!」

 

 右腕を引き絞る。黒い旋風が暴れて唸る。我が身を貫く呪いの一撃を跳ね返さんとするため。

 

 放たれる渾身の突き。

 ぶつかるは大英雄の投擲。

 

 線では無く点である突きの衝突。そんなことはあり得ない。あり得るはずがない。限りなくゼロに近い接触面が一寸の狂い無くぶつかり続けて居るなど。偶然にしてはできすぎている。

 だがそんな常識ここでは糞食らえだ。超常存在同士のぶつかり合いで『当り前』などと言う言葉は悉く陳腐な物へとなり果てる。今もそうだ。人々の希望の象徴たる英霊の戦いに、そんな下らない物を持ちこんだところで意味などあるわけがない。

 

 拮抗する二撃。過剰な魔力が混じりに混ざって花火を散らし――――ついに強烈な爆発が生じる。

 

 巻き上がる爆炎と粉塵。周囲に存在していた自動車たちが軒並み吹き飛ばされ地を転がる。守護のルーンにより傷ついたり中に居る民間人が負傷したりすることは無かったが、砕けたアルファルトの粉が舞い上がって一帯の視界が封じられてしまった。

 

 ランサーは目を瞑る。こうなってしまえばもう目は頼れない。今使うべきなのは己の感覚と嗅覚、そして幾たびの戦場で洗礼された直感のみ。

 

 複雑怪奇な軌道を描きながら戻ってきた愛槍を掴み、臨戦態勢になって一切動かないランサー。

 

 そして――――動いた。

 

 ――――だがそれは『敵』ではなく、囮であったが。

 

「何ッ!?」

 

 無人のバイクがランサーへと突っ込んでくる。反射的に跳躍して避けるランサーだったが、それが敵の思う壺だった。

 罠だと認識した瞬時にランサーの背筋をただならぬ悪寒が走っていく。

 

 振り返れば、狂喜の表情を浮かべた少女が居た。その右腕はあらぬ方向へと折り曲っている。間違いなく槍と衝突したことによる反動での骨折だ。しかし少女はそんな物知るかと言わんばかりの狂気に塗れた顔でランサーを睨みつけた。

 

 残った左手に黒い魔剣を、白い短剣を口に咥えて振りかぶり、少女はランサーの喉を刈り取らんと迫ってきている。美しくも醜く、華麗でありつつ凶悪な様は二律背反の体現。

 漆黒と純白の呪剣は月光を反射しながら弧を描きランサーへと迫る。

 

 一級の戦士の勘を持っているはずのランサーにどうしてここまで容易に近づけたか。それはアルトリアの宝具の一つである漆黒の外套『身姿は幻の如く(グウェン)』の効果による物。纏う事でBランク相当の気配遮断と軽度の認識阻害の効果を得る見隠しの布は見事その役目を果たした。

 

 だがランサーとて伊達に戦場を渡り歩いていない。

 彼は自分の感覚や経験全てを統合しアルトリアの完全な奇襲をギリギリのタイミングで見破った。もし気づいていなければ、この勝負の行方は決まっていただろう。

 

 逆に言えば、気づいた今ならば行く末は不明という事。

 

 二人が自分らの得物を構える。

 

 ランサーは紅く光る因果を逆転させる呪いの槍を。

 

 アルトリアはこの世の呪いを集約したような黒と白の剣を。

 

「アァァァァァァァァァアアアアアッ!!!」

「この一撃、手向けとして受け取りやがれ!! 『刺し穿つ死棘の(ゲイ・ボル)――――」

 

 果たして勝つのはアルトリアか。ランサーか。

 もしランサーの宝具発動より先に魔剣と呪剣の刃がその喉笛に届けば、勝つのはアルトリアだ。だがランサーの宝具が先に発動すれば、因果逆転の呪いは容赦なく堕ちた騎士王の心臓を抉る。

 

 どちらが勝つか。それとも相打ちか。

 

 その結果は――――二人の間に入った横槍により永遠に訪れることは無かった。

 

 

「「!?!?」」

 

 

 突然目の前が紅い雷撃(・・・・)に染まったことにより、二人は瞬時に距離を取る。

 勝負の邪魔をされたランサーは忌々し気な目で、その一撃をよく知っていたアルトリアは悲壮の混じった眼差しでこちらに向かってくる『ソレ』をみた。

 

「――――うっし、ギリギリ間に合ったー!」

「モードレッド、たださえ使える魔力が少ないのですから無茶させないでください……!」

「るっせぇ。おかげで間に合ったろ」

 

 粉塵の舞う中、エンジンの雄叫びを轟かせながらモードレッドとランスロットはバイクに跨りながらアルトリアとランサーを見つめている。バイクには赤黒い血管の様な物が表面を這っており、ランスロットの宝具である『騎士は徒手にてしせず(ナイト・オブ・オーナー)』によって疑似宝具化されているのが分かる。確かに宝具となったバイクならばモードレッドの乱暴な運転にも耐えられただろう。

 走行した跡のアスファルトは別問題であるが。

 

 円卓の騎士二人の跨るバイクはホンダ製の二輪車、ワルキューレ。彼の戦乙女の名を飾る鉄の騎馬であり総排気量1500CCの怪物。そんな物を宝具化し、剰えフルスロットルでかっ飛ばしてきたと聞けば魔術関係者は卒倒するだろう。死者が出なかったのが幸いだ。

 

「……モードレッドと、ランスロット。よく来てくれました」

「ええ。王が待っているのです、臣下たる私が駆けつけぬわけがないでしょう」

「俺も俺も!」

「ふふっ……それでこそです。そう、そうでなくては――――私を止める資格は無い」

「「っ――――」」

 

 穏やかな空気が変質する。先程までのアルトリアは臣下と対面する時の彼女であり、今の彼女は『敵を前にした』一人の王。その刃に一片の慈悲は無く、黒き王はかつての忠臣へと魔剣の切っ先を突きつけた。

 

「……どうしても、戦わねばならないのですか」

「はい。申し訳ありませんお二人とも。ですが今だけは、私の我が儘に付き合ってください。王では無く、私個人からの願いです。……お願いします」

「王よ……」

「父上……」

 

 自分でも、自分を止められない。頑なに塗り固められてしまった決意は既に独りで溶かすことはできず、その決意を溶かすにはかつての仲間が『折る』事が必要だ。自己の否定では意味がない。だが自分だけでなく、信頼し合った仲間となら、家族とならば――――きっとできる。この歪んだ想いを正すことができる。

 

 そう信じて、アルトリアは血涙を一条だけ零しながら口を閉ざした。

 

「――――おいおい、俺との戦いはどーすんだ騎士王サマよ。まさか中断とは言わねぇよな?」

 

 しかしここでランサーは頬をビクビクさせながら横やりを入れた。彼としては今まで繰り広げていた死闘を邪魔された挙句『此処でお終い』などと言われるのは『死ね』と言っているのと同義だ。戦士としての誇りが耐えられない。

 そんなランサーの発言で少しの間だけ珍妙な空気が流れ――――それは一本の矢によって引き裂かれる。

 

 

「――――『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』」

「何ッ!?」

 

 

 ランサーが振り向きながら槍を一閃。その刃に捻じり狂った矢の先が叩き付けられ、爆発。巨大な爆炎がランサーの身を包み込む。しかしランサーはその寸前に持てる全ての脚力を発揮して爆発の範囲内から離脱した。多少体に傷はついたが、掠り傷と大差ない。

 

 舌打ちしながら、ランサーは矢の飛んできた方向を凝視した。そこには紅い外套を纏った一人の男が黒い弓を構えて立っていた。

 何故かその顔には皮肉気な感情が漂っており、本能的に嫌悪感を覚えたランサーの額に数本青筋が浮かぶ。

 

「俺に向かって容赦なく攻撃を加えるとはな、何モンだテメェ……。サーヴァントか? ――――いや、待て。テメェ、さっき飛ばしてきた矢は、まさかッ!!」

「フ……言いたいことがあるなら言ってみればどうだ? アイルランドの大英雄」

「何で、何でテメェがアイツ(フェルグス)の剣を持ってやがる!!」

 

 アーチャー、否。エミヤが飛ばした宝具は彼の剣豪フェルグス・マック・ロイの持つ剣、カラドボルグ。

 

 正確にはその投影品であり改造品だ。類似しているのは精々刃がドリルになっている事ぐらいだ。が、表面を伝う輝きは紛れも無く、そびえたつ巨大な三つの丘を真っ二つに斬り裂いた魔剣のモノ。フェルグスと戦友として共に戦場を潜り抜けたあのクー・フーリンが見間違うはずがない。

 だからこそ、ランサーは激昂する。何故見知らぬ輩がその剣を持っており、剰え遠慮なく砕いた(・・・・・・・)のか。偽物とはいえ戦友の得物で攻撃された挙句自爆させられたのだ。激怒しないはずがない。

 

「ああ、そう言う事か。安心してくれたまえ、アレは本物では無く私が作ったただの贋作だ」

「そういう問題じゃねぇ……! テメェ何者だ! どう見てもケルト出身って面はしてねぇだろうに、何処でその剣を手に入れたァッ……!」

「質問が多いぞランサー。聞きたければ、力づくで聞いてみればどうだ? そちらの方が君としては有り難いだろう?」

「――――ぶっ殺す」

 

 ランサーから放たれる野獣の如き濃密な殺気。狂戦士にもにた風貌で、ランサーは呪槍片手にエミヤへと歩を進めていく。これでランサーの注意はアルトリアから無事逸れることとなった。エミヤ渾身のニヒルな笑いが炸裂したおかげだ。

 代わりに今のクー・フーリンは本当にバーサーカー化しかけないほど気を立たせているが。

 もう令呪でも使わない限り止められない。

 

「……貴方は、一体?」

「何、通りすがりの正義の味方だ。君は気にせず自分の事に集中してくれたまえ」

「はぁ……?」

 

 状況が飲み込めなかったアルトリアだが、とりあえず邪魔なランサーを引きつけてくれるならばそれでいいと視線を逸らした。

 彼女としてはランサーは他のサーヴァントを引き付けるための餌に過ぎない。そのために右腕を犠牲にしたのは少々痛いが、数々の戦場を潜り抜けた騎士王が片手を失った程度で雑兵になり下がるわけがない。

 

 その風格、その威圧、その闘気――――一切の衰えは無く、希薄だけならば全盛期並みに達している。

 

 人間の極地に存在している円卓の騎士にとっても、今の彼女は『強敵』に相違ないだろう。

 

 

「――――ですが、ただ剣を交えるだけでは味気ないですね。……ああ、ではあの鉄の鳥を借りましょうか。あれならばきっと極限の戦いを繰り広げることができる……!」

 

 

 そう、ただの戦いでは駄目だ。

 かつての理想を捨てるには限界まで追い詰められなくてはならない。無数の剣が身体に突き立つように、四肢をもがれ竜の炎で焼かれるように、星の極光が目の前に迫るように。全てを賭して戦い、負ける必要がある。ならば普通の戦いなどでは駄目だ。全てを使い切るには、全てを使う戦いでは無くては。

 

 ならば空を飛び回る鉄の鳥を使おう。空を華麗に飛び回るあれを駆るならば、さぞかし手ごたえのある死闘ができそうだ。――――中々に頭のネジがぶっ飛んだ思考でアルトリアは魔力のジェットでビルを駆け上がり、空へと飛んでいく。

 

 ……鉄の鳥(戦闘機)の搭乗員への気遣いは何処にあるのだろうか。

 

「行きますよモードレッド!」

「おう! ――――……ん?」

 

 それを真似て二人もビルを駆け上がり空へと出ようとしたが、モードレッドはある影を視界の端に捉える。

 

 雷撃を飛ばしながらこちらへと猛進してくる二匹の牡牛に巨大な戦車を。

 

「――――AAAAAAALaLaLaLaLaLaie!!!」

 

 ライダーだった。何のつもりかは知らないがこちらへ突っ込んできている。このままでは二人とも戦車に撥ね飛ばされて致命傷を負うだろう。

 そこからのモードレッドの行動は素早い物だった。

 

「ッ――――ぶっ飛べランスロ!!」

「はっ? ――――ウボァ!?」

 

 そう認識した瞬間モードレッドはランスロットの背中を蹴り上げて強引に空へと叩き上げ、自分を地へと落とした。直後、紙一重で無数の雷電が両者の間を暴風と共に過ぎ去っていく。

 モードレッドの蹴りによってランスロットはビルの屋上にたどり着いた。しかし反対にモードレッドは地表へと逆戻りしてしまっている。もう一度昇るのは簡単だが、そうすると空飛ぶ戦車に乗ったライダーが妨害してくるだろう。

 

 思わずモードレッドは大きく舌打ちした。肝心な時に邪魔が入ってしまうとは――――

 

「ライダー、外れたぞ!」

「わかっておるわい、坊主。セイバー相手にあんな雑な攻撃、最初から当たるとは思っておらん。だが、だからこそ燃え滾るわい!」

「あーもうっ、せめて最初の攻撃で一人は落とせたのに……」

 

 よく見ればライダーのマスターもまた同乗していた。こんなサーヴァントの混戦が起こっている場所によくも生身で来れた物である。それは仕方なくという諦めからか、それとも己のサーヴァントが絶対に勝利するという一種の確信を持っているかは定かでは無い。

 

 だがモードレッドとしては好機。マスターが表に出ているならばライダーの動きもいくらか制限されるという物。マスターを直接狙うつもりはないが、相手が動きのパターンを狭めてくれるというなら好都合。

 

「テメェ、ライダー! 俺の邪魔をすんじゃねぇ!!」

「ほほう。アレを避けるとは大した奴よ。それに免じてこの場を引いてもいいが、そうするとお前さんはアヴェンジャーのところに向かうのだろう?」

「……それがどうした」

「余はあの小娘に少々申し訳ない事をしてしまったのでな。これは余なりの謝罪だ。セイバー、貴様を此処で足止めして見せよう。何、この征服王イスカンダル、貴様の相手にとって不足は無い」

「んのクソがッ……いっつもいっつも変なタイミングで現れやがって! ぶっ飛ばしてやる!」

「それでこそだ、セイバー!」

 

 豪快な笑みを浮かべてライダーはそう答えた。

 既に交渉の余地は無い。後に残るはどちらが勝つか負けるかの現実。消して覆しようのない戦場の鉄則がふたりのなかで花火を散らせる。

 

「距離を取れライダー! 射程外から一気に押し込むぞ!」

「了解だ坊主!」

 

 青い雷電を散らしながら、イスカンダルは腰に差した佩刀『キュプリオトの剣』を抜き放ちモードレッドから大きく距離を取り始める。恐らく宝具である『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』を発動するつもりだろうか。ならばモードレッドは正面から迎え撃つまでと、王剣クラレントを静かに構え直す。

 

 今ぶつかろうとしている二人を見て、ビルの屋上に居るランスロットは急いで援護に向かおうとする。しかし彼は見た。モードレッドの決意に満ちた目を。『さっさと行け』というメッセージは確かにランスロットへと届いた。

 任せたのだ、己の父を。本心では今にも自分が向かいたいと思っているはず。だが彼女は自覚している。自分では『凶星(アルトリア)』に届かないと。ならば任せるしかないだろう。

 

 円卓最強の名を翳す黒騎士(ランスロット)に。

 

「……承りました、モードレッド。全身全霊を以て――――王の理想を打ち砕きましょう!」

 

 ランスロットもまた決意に満ちた形相を作り、燃え滾る怒りを胸にその身を風に乗せる。

 

 空に浮かぶ鉄の鳥を『借りる』ために。

 

 

 

 銀の王剣の切っ先をライダーに向けながら、モードレッドは小さくため息を吐いた。

 

 本音を言えば自分が向かいたかった。だけど自身の力不足は誰よりも自分がよく理解している。長らくあの人(アルフェリア)に鍛え上げられたアルトリアの強さは、高々数年程度しか経験を積んでこなかった自分では届かない。後を任せたランスロットも近接戦「だけ」ならアルトリアに勝っているだろうが――――総合力ならば負けている。

 勝てる確率は三割程度か。二人掛ならもう少し勝機はあったが、ライダーが分断させてくる以上それは叶わぬ望みと言う奴だ。可能性としてはさっさとライダーを撃退して合流することぐらいか。

 

 が、仮にも英霊。征服王とまで謳われた英傑が一筋縄で葬れるとは思っていない。

 短期決着を望むなら、此方も相応の犠牲を覚悟しなければならない。

 

「――――ハッ、それがどうした……!」

 

 覚悟などとっくの前にできている。

 ならば、自分がすることはただ一つ。目の前の敵を一秒でも早く葬ること。

 

 風を切りながらライダーが戦車を駆り突貫してくる。その存在からモードレッドは一瞬たりとも目を逸らさない。

 

 剣を構える。己の切り札を繰り出すために。

 

 

「――――見るがいいセイバー。今から貴様に見せるのは我が王道、我が人生、我が物語! 共に同じ夢を目指して散った朋友たちは、今、余の呼びかけに応じて此処に集う! 彼方にこそ栄えあり(ト・フェロティモ)……いざ行かん、万里の彼方まで!!」

 

 

 しかし切り札を切るのはライダーとて同じだった。彼を中心に膨大な魔力の奔流が巻き起こる。

 空間が軋む。まるで何かに侵食されていく(・・・・・・・・)ように。

 

 

「見よ、我が無双の軍勢を! その肉体は既に滅びた。しかしその絆と夢、紡がれし伝説は悠久の時を越えてもなお不滅! 時空を超え、此処に顕現するは伝説の勇者たち!」

 

 

 叫び声に応じて逆巻く風はより一層勢いを増す。条理ならざる理は熱風を巻きよせ、ついに現実を侵食した。

 現実ならばここは巨大ビル群に囲まれた場所。夜空を包む闇と一筋の月光が差す夜の世界。――――そのはずだった。

 

 だが今は違う。

 

 照りつける灼熱の太陽。晴れ渡る蒼穹の彼方。吹き荒れる砂塵に霞む地平線。コンクリートで作られたビルなど影も形も存在していない。まるで夢だったかのように。

 

 これこそライダーの最強の切り札にして魔術の奥義、固有結界。

 

 その名を――――

 

 

「括目せよ!! 我が友との絆の結晶――――『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』をォォォッ!!!」

 

 

 ライダーの切り札、『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』。晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠と、生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚し、全てを蹂躙する征服王の歩んできた生涯の結晶その物。

 

 固有結界とは本来魔術の最奥に存在する秘技。そして、ライダーは魔術師ではない。が、彼は仲間たち全員で心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。即ち征服王イスカンダルにしか許されない大結界。同じ夢を目指した友を呼び寄せ、蹂躙制覇を此処に成し遂げる。

 

「すごい……」

 

 その圧倒的迫力に、ウェイバーは思わずそう漏らした。

 

 固有結界を展開したことでは無い。数万もの人間がこのように心象風景を共有したことであり、そしてそれを実現して見せた征服王イスカンダルの手腕を。カリスマを。人徳を。

 漢の姿を。

 

「ぬはははははは! さぁ見よ我が友らよ! 目の前に居るのは彼の円卓に座する赤雷の騎士! 相手にとって不足は無し! ならば制覇するのが道理であろう、あの強敵を!」

『然り! 然り! 然り!』

「そうとも! 皆の者、蹂躙せよ! 往くぞ往くぞ往くぞ往くぞぉぉぉぉぉぉおぉおおお――――――――ッ!!!」

 

 

『AAAAAAAAAAALaLaLaLaLaLaLaie!!!!』

 

 

 容赦なく躊躇なく下されるライダーの号令。そしてそれに応える天地が震える鬨の声。かつてアジアを東西に横断した無敵の軍勢の雄叫びが、この場全てを震撼させた。

 

 その遥か向こうでただ一人佇む紅白の鎧纏いし一人の騎士は動かない。

 

 戦いを捨てているわけでは無い。その眼に在る闘志は未だ健在。否、軍勢を前にした時より轟々と燃え上がっている。全身からは竜の心臓により生産された魔力が漏れ始め、その両手に握る銀の王剣は内部で増幅された魔力を荒れ狂う暴風の様に赤い雷撃と共に噴き出す。

 

「――――俺は、お前を握るにふさわしくないかもしれねぇ」

 

 収束された魔力は赤雷となって刀身を包み、空を穿つように延びた。その勢いは止まらない。普段なら既に止まっているはずの魔力の放出は通常値をはるかに超えても尚止まる気配は存在しない。

 限界を、越えている。

 

「――――けど、そんな俺にも譲れないモンはある。だから、さ……お前の全力、此処で見せてみろ! クラレントォ!!」

 

 ミシリと、モードレッドの全身から異音が立ち始めた。肉体が既に臨界点を突破し、限界を迎え始めている。骨は軋み、筋肉は裂かれ、それでも彼女は止まらない。止まれない。譲れない物がそこにあるのだから。

 眼前に迫るアレは、彼女の中の『王の理想像』とは真逆に存在する者だ。ああ、確かにそんな王もいるだろう。国の安寧では無く国民と共に夢を目指す。理想では無く夢を貫く。それも王という物の一つ。

 

 だけど。

 

 だとしても。

 

 モードレッドは目の前の存在を認めない。

 かつて認めた存在は理想に折れて地に墜ちた。だけどまだ空へ上がれる。なら、目の前の『王』を討ち、堕ちた星を空へと帰す。自分にできることは、ただそれだけなのだから――――

 

「…………故に、そのためならばこの体を捨てること厭わず」

 

 限界突破。クラレントのリミッターを解除し、肉体への負担を考慮せず放つ絶大な一撃。生前は生きるための理由があったが故に使う事は無かったが、今ならばできる。

 自分の全てを出し切ることが。

 

「薙ぎ払え王の剣。永久に潰えぬ王の威光を、その身を以て此処に示せ――――!!」

 

 空まで伸びる赤雷の剣を振りかぶる。

 迫り来る眼前の軍勢を全て残らず蹴散らすために。

 

 そして――――王剣の一撃は払われた。

 

 

 

「――――『悠久に掲げ燦然なる王輝(クラレント・リミテッドオーバー)』ァァァァァァアアアァアアァァアッッ!!!」

 

 

 

 真横に薙がれた一条の紅雷。地平線の彼方まで伸びる一撃は灼熱の砂漠を焼き尽くすように撫で、その上で迫り来る軍勢を蟻を蹴散らすがごとく薙ぎ払った。数万の人間が飴細工のように融けて吹き飛んでいく様は安間の一言だ。

 

 ――――しかしライダーだけはその一撃から逃れていた。

 

 空を駆ける二匹の牡牛が雷撃の射程外、上空へと逃れたが故に可能な回避。もしライダーが乗っていたのが『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』ではなく馬の神と謳われるブケファラスであったのならば彼は臣下共々消し飛んでこの聖杯戦争から脱落していた。

 

 そして今、彼は生き伸びたうえでモードレッドの間近に至ることができている。距離にして約三〇〇メートル。ライダーの駆る戦車ならばその距離を詰めるのに一秒すら必要としない。円卓の騎士であるモードレッドでも二頭の飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)の体当たりを正面から喰らえばどうなるかは想像に難くない。

 

 モードレッドは大ぶりの一撃を放った。普通ならば反撃は不可能。勝負は決まった。

 

 

 

 ――――繰り出したのが普通の攻撃ならば(・・・・・・・・)

 

 

 

「アァァァアアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」

「なぬ――――ッ!?」

 

 剣を振り抜いたはずのモードレッドはその勢いを殺さずそのまま体を回転させる。よく見れば彼女の剣から噴き出でている赤雷はその勢いを今だ静めていない。

 

 そう――――攻撃はまだ続いている。

 

「ライダー! 令呪を以て命ずる!」

「――――チェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエストォォォォォオオオッッ!!!」

「僕を連れてこの固有結界から退避しろォッ!!」

 

 体を回転させて放つ全力の唐竹割。縦に振り抜かれた王剣は、切っ先から伸びる雷撃で灼熱の太陽に照らされた蒼穹の空を引き裂く。

 

 膨大な魔力を雷撃に変換しての十字を描く大斬撃(・・・・・・・・)。一点集中と真横への放射を兼ね備えた捨て身の奥義は彼の無双軍団を文字通り消滅させて見せた。

 その発生源であるライダーは、吹き飛ばす前に令呪を使って撤退されてしまったが。

 

「っ、はぁ……はぁっ…………チクショー、逃げられたか。まぁ生きてるだけなんぼだけどな……。ははっ、少し無理し過ぎちまったか……?」

 

 ライダーとその臣下たちによって維持されていた固有結界はその魔力源を失ったことにより崩壊し、周囲の景色は見事元通りとなる。先程と全く変わらない月下の新都だ。燦々と太陽に照らされた砂漠も、地平線まで広がる青い空ももう消えた。

 後に残ったのは魔力の過剰生産と多量消費により困憊状態に陥っている小娘一人だけ。

 

「――――ったく。このタイミングで召喚か。キッツイなぁ……。ま、もう一仕事、がんばってみますか」

 

 その小娘(モードレッド)も十数秒後、何かに呼ばれたように空間から姿を消した。気配遮断や光学迷彩の類では無く空間転移。令呪による強制召喚だろう。今頃彼女は己のマスターの元に居るはずだ。

 

 これにてライダーとセイバーの戦いは終了する。

 周りに被害こそなかったが、間違いなく互いに全てを賭けた死闘であったのは、確かだった。

 

 

 

「あっちゃあー……しくじったかぁ」

 

 さも心底悔しそうな声で、どうにか生き残ったライダーはそう呟いた。自分のマスターを小荷物でも持つように抱えながら、近くの信号機に鉄棒の様にぶら下がっていたのである。見たところ、怪我らしい怪我はない。小さいやけどの跡は無数に見受けられるが。

 

「……負けちゃったか」

「おう。まさかあの攻撃に続きがあるとは余も予想できなかったわい。しかし、それ即ちこのイスカンダルの予想を超える一撃。ならば『敵ながら天晴』と称賛するしかあるまい」

「確かにあの攻撃は予想外だったけどさ。……悔しいなぁ」

 

 ウェイバーもまた悔しそうな声を漏らす。あの時、二人は勝利を確信していた。だからこそその次に起こった現象に驚愕し――――それでもウェイバーは咄嗟の判断で逃亡することに成功したのだ。令呪という貴重なブースターを犠牲に。

 しかし命あっての物種というヤツだ。死んだら元も子もない。

 

 が、犠牲になったのは令呪だけでは無い。ライダーの宝具である二頭の神牛と巨大な戦車は、あの赤雷に呑み込まれて塵も残らず消滅した。Aランクオーバーの対軍宝具の一撃だ。残る方がおかしい。

 九死に一生を得た二人であったが、主力兵器が犠牲になった以上戦力の低下は免れないだろう。

 

 それでもウェイバーは己のサーヴァントがそう簡単に仕留められるわけがないと信じている。

 ライダーもその意を汲んだのか、いつも通りの笑みをウェイバーに見せた。何事も前向きに、ということかもしれない。

 

 そんな二人は戦いの余韻に浸り――――ウェイバーの方が先にあること(・・・・)に気付いた。

 割と由々しき事態に。

 

「な、なぁライダー。僕たち、どうやって家に帰るんだ?」

「そんなもん『タクシー』とやらを使えばいいだろう」

「確かに運転士が居ればそれもできたさ。だけど、さ――――この場の全員ランサーの魔術でぐっすり眠ってるよ! 誰が運転してくれるのさ!? ていうか僕、今財布無いんだけど!?」

「何故だ?」

「戦車に乗ってるときに無くさないようにだよ……」

「う~ん……なら歩いて帰るしかあるまい?」

「…………だよなぁ」

 

 これから歩くであろう長い道のりを想像しながら、ウェイバーの深いため息が新都の静寂に響いた。

 

 

 

 

 

 一方、その場所からかなり離れたビル群の屋上にて青と赤の影が交錯し合っていた。

 言わずもがな。守護者として召喚された錬鉄の英霊エミヤとランサーもとい、ケルト神話に名を残す大英雄クー・フーリンの戦いだ。

 

 エミヤは弓で、ランサーは槍で。しかしランサーの持つ矢避けの加護のせいかエミヤの弓は全くと言っていいほど当たらない。本人の素のスペックもあってか、攻撃の届かないエミヤは後退しながらの戦いを強いられてしまっている。

 

 一方のランサーは飛んでくる屋の爆発などに足止めされながらも着実にその距離を詰めていた。第五次聖杯戦争(あり得た正史)と比べて彼のスペックは倍近くに跳ね上がっているのだ。近接戦など挑んでみろ。即座にその身は紅い呪槍で貫かれるだろう。

 

「全く、平行世界でも君と戦う羽目になるとはな。ここまで来ると奇妙な縁を感じるな、ランサー」

「はぁ? なに訳のわからんこと抜かしてやがんだテメェ」

「何、この世界の君とは関係の無い話だ。――――だが相変わらず油断が許される相手ではない様だ。流石は大英雄といった所か」

「ハッ、ホント、ムカつくぜテメェ! 人を小馬鹿にしたような口調でよォッ!」

 

 ランサーが飛んできた異形の矢を弾き飛ばす。黒に染まった刺々しい一矢は呪槍の一撃を腹に叩き込まれて空高くに吹き飛んだ。――――直後、その鏃はランサーに向き直ることとなる。

 

「な――――」

「噛みつけ、『赤原猟犬(フルンディング)』!」

 

 放たれた矢はエミヤの投影で作り出した、北欧の英雄の振るいし魔剣フルンディング。一度狙った獲物は死ぬまで追いかけ続けるその姿は正しく猟犬。黒い矢は紅く光りながら獲物(ランサー)へと再度飛来する。

 

「――――しゃらくせぇッ!!」

 

 それに対しランサーは超速の蹴りを叩き込んだ。筋力B+から繰り出される大砲染みた一撃は魔剣の矢を容易く破壊する。何たる怪力か。大英雄の称号は伊達では無い。

 

「ったくよォ、さっきからチマチマと攻撃しやがって。それでも貴様英霊か!」

「いや、神代に近い時代で生きた化物()と一緒にして貰いたくはないのだが。まぁ、私の様に遠くから攻撃することしか能の無い英霊もいるという事だよ、ランサー」

「……そうかい。了解した。近づく気はさらさらないってことだな。ハッハッハ――――ならテメェの遠距離戦(得意分野)に合わせてやるよ。感謝しな」

「ッ――――」

 

 ぶわり、とランサーの纏う空気が震えた。ただならぬ圧力がエミヤの全身を圧迫する。

 しかし既に経験済みであるエミヤに隙は無かった。故に彼は彼らしく、自分の最も得意とする防御策を繰り出すだけだ。過去に一度止めた一撃。なら、防げぬ道理はない――――!

 

「オォォォオオォォオォオオオオオッ!!!」

 

 飛び上がるランサー。投擲する姿勢を終えた手には紅い呪いを纏う一本の槍。血を浴びたように、炎であぶられたように赤色に禍々しく光る槍は、その切っ先ではるか遠くのエミヤの姿を捉える。

 ボゴン。そんな異音がランサーの右腕から響いた。ルーン魔術による筋力強化。瞬間的にAランクすら凌駕する筋力で、ランサーは全力を以て眼前の敵を葬り去る。

 

 

「逝っちまいな――――『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』ゥゥゥゥゥッ!!!」

 

 

 自らの肉体を崩壊させるほどの投擲。限界を越えて放たれた紅い槍は担い手の激痛を対価に、満ちる殺意を以て錬鉄の英霊へと飛翔する。直撃すれば命は無い。

 

 故に、防ぐ。

 

 

I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)――――『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』ッ!!」

 

 

 呪言と共に現れる七つの花弁と光の盾。エミヤの持つ最強の防御宝具がここに現れた。

 

 ギリシャ神話にてトロイの英雄ヘクトールの一投を防いだと云われるこの宝具。その逸話ゆえに投擲宝具に対しては無類の硬さを誇る。ならば投擲であるランサーの一撃は容易く防がれる――――わけもなかった。

 

 一枚目。紙の様に貫かれた。

 二枚目。一秒すら持たなかった。

 三枚目。一瞬で破砕した。

 四枚目。既に言わずともわかるだろう。

 五枚目。数舜で爆砕。

 六枚目。数秒拮抗したが貫かれる。

 

 気づけば残り一枚だ。エミヤは正直舐めていた。あの大英雄の一投を。過去にたった一度だけ防ぐことができたが故に、心のどこかで慢心していた。だが投影に手は抜かなかった。完璧な造りだと断言しよう。――――しかしクー・フーリンはそれをいとも容易く越えてみせた。

 

 ――――ミシリ。

 

 最後の七枚目に亀裂が走る。そして槍の勢いは未だ殺せない。

 

「――――まさか、ここまで追い詰められるとはな。しかし、まだだ。まだ終わらん!」

「っ、野郎……!」

 

 突き出した右腕を左手で押さえながら、エミヤは自嘲気味に呟く。

 だが、まだ諦めていない。譲れぬ意地がある以上、何が何でも此処は耐えて見せると彼は自身に誓う。大英雄の全力を止めて見せると。

 

 

 

「ッォォオオオォォォオオオオォォオオオォアアアアァァァアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 ――――ついに、最後の七枚目が割れた。

 

 盾を突き破った槍はその勢いを消していた。エミヤの最後の尽力によって、どうにか槍は止められたのだ。防ぎ切れなかった衝撃波はエミヤの右腕をズタズタに捻じり折っていったが。

 

 だが問題はソレでは無い。

 ランサーの一撃を受けて割れた光の盾は内包していた魔力を一気に周囲へと放出する。抑止力のバックアップにより無制限の魔力供給を受けていたエミヤの渾身の一作。――――それが一気に解放されたりしたら一体どんな現象が起こるだろうか?

 

 答えは簡単。

 

 

 大爆発、である。

 

 

「んな、テメェェェェエッ!!」

「――――フッ、決着はお預けと言う奴だ。ランサー」

 

 

 高層ビルの屋上が光に包まれる。

 桜色の大爆発は、華やかに夜空を照らしたのであった。

 

 

 

 

 




いやぁ、濃い回でしたねぇ・・・(自画自賛)

ぶっちゃけ途中から面倒くさくなってバッサリ切り詰めました。後悔はしてない(キリッ
いや正直生死を伴わない戦闘のために一話丸々使うとか冗談抜きでダレるんですよ。折角の因縁の対決的な感じな物はこの際圧縮圧縮ゥ!しました。(∩´∀`)∩ゴメーンネッミ☆

・・・忙しすぎて折角クリア一歩手前まで来たペルソナ5をクリアできない悩みに駆られる今日この頃。時間をッ・・・!時間をくださいッ・・・!!

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