後今回チート注意、種族値何それ状態。
その日クリアはクチバシティに来ていた。
気が合った現仲間、カモネギとヤドンをゲットしたクリアはそのままタマムシに直行、病院の保管場所に大切に保管されていた荷物や図鑑等の貴重品を人知れず返して貰ったクリアは、特に行く当ても無いのでとりあえずとクチバに来ていたのだ。
港町のクチバならそれなりに有益な情報も手に入るだろう、そう思っての行動だった訳だが。
「おーいねぎまー? ヤドンさーん?」
彼は今、絶賛行方不明中のカモネギとヤドンを捜索中だった。
ここしばらくはカモネギの"ねぎま"とヤドンの"ヤドンさん"を連れて歩いていたのだが、何故だかトラブルに巻き込まれる率が異常な事になっていたのである。
ついこの間も結構大変な目にあって――まぁそれ相応の見返りがあった為別段気にして無かったが、今にして思えば小さなものも合わせてやはり比較的トラブルが多い。
それもこれも、あのせっかちでいて心配性なねぎまと、のんびり屋のヤドンさんのコンビの所為だろう、とここ最近になってクリアはようやく気づいた。
ねぎまが興味本位に何かに首を突っ込んで、ヤドンさんがそれを持ち前のマイペースっぷりで拡大させる、理想のフォーメーションである。
――ちなみに、ニックネームは何時もの如くクリアの思いつきだ。
「ったく、今日は何やらイベントがあって見失いやすいから離れるなよって言っておいたのにねぎまの奴……」
ねぎまがいなくなればヤドンさんもいなくなる。この負の連鎖はどうにかならないものかとクリアは頭を抱えた。
しかし頭を抱えたからって二匹が帰って来る訳じゃない、というかむしろ奴等はこういう時こそ、クリアの気持ち等知った事では無い!、と豪語するかの如く今という
――となると、行き先は大方絞れる。
「……"サマービーチなみのりコンテスト"、ね……というか別になみのり出来るポケモンなんて自分で捕まえるか育てればいいだけの事だろ、わざわざこんなのに頑張って出るまでも無ぇよ」
切り捨てる様に言ったクリアは知らない、彼のこの世界において最も親しいのだろう人間がこのコンテストに出場してる事を。
そして当然の様に落ちてあったりする"ひでんマシン"をちゃっかり手に入れる道具運を持つクリアは知らない、それはそう易々と手に入る物では無いという事を。
「……で、コンテスト会場に来て見たはいいけどさ……何やってんだあいつら……?」
げんなりとした顔でコンテスト出場者の最後尾、ヤドンに乗ったカモネギを発見したクリアは再び頭を抱えた。
「面白いだろうあのポケモン達、ポケモンだけで参加させるなんてトレーナーも粋な事考えやがるね~」
「……全くですね、参加を認めたイベント関係者はちと前へ出ろやって感じですね……」
本気でヤドンさんに"なみのり"を覚えさせた事を後悔するクリア。
そんなクリアの心情とは裏腹に、観客の中にクリアの姿を発見したねぎまは、元気に羽で持ったネギをしきりに振ってくる。
「キャー! 何あのポケモン達可愛い~」
「わははは! いいねいいね、最高だねぇ!」
「絶対優勝しろよカモネギにヤドン~!」
(……なんなんだよこの街の連中は!?皆が皆頭の中がお花畑なのか!?)
観客達の人気を独占する手持ちポケモンズにクリアは三度頭を抱え、面白い位に計画が破綻していく様に彼は乾いた笑いすら零す。
というのもクリアはここ最近出来る限り隠れて動こうと努力して来たのだ。
きっと四天王のキクコは自分を殺したと思っているだろう――そう確信しているだろう、だからこそ自分の不意打ちこそが四天王に対抗する最大の攻撃と思って今日まで息を潜めてきたのだ。
――尤も、息を潜めていたのはトレーナーだけだったらしいが。
『……ではオープニングセレモニーに移りましょう! セレモニーは賞品のハクリューによるデモンストレーションです!』
司会の言葉に観客のテンションが盛り上がる。
同時にクリアのテンションは盛り下がる。
「っけ、こんなイベント潰れちまえばいいんだよ……」
何もかもが思った通りにいかない現状に、不貞腐れる様に言ったクリアだが、数秒後、
『……お、おやどうしたんでしょうか!?』
事態は急変、海は荒れ、参加者達が激流に飲み込まれていく。
「……え?」
突然のハプニングに会場は一気にパニックへ、嵐の様な異常気象に参加者達は逃げ惑い、観客達もわれ先にと走り出す。
「あれ、俺の所為? 俺が呟いたから? ねぇ答えてよおじさん」
「うるせー! つかお前もさっさと逃げろ!」
「……」
人混みのパニックの中、通りすがりの"火事場泥棒"っぽいおっさんに話しかけるクリア。
そしてそう言われて少し後、はぁ…、とため息をついて涙目でヤドンさんにしがみついているねぎまを助けに向かおうとした時だった。
件のハクリューが唐突に"はかいこうせん"を放ったのだ。
それも唯の"はかいこうせん"では無い、明らかにパワーアップした、なんらかのトレーナーによって鍛えられたポケモンの技だ。
(……なーんかキナ臭くなって来たな、さっさとねぎまを救出して……)
それを見たクリアは、心中そう呟きながらチラリとハクリューを見た瞬間――ドキリとクリアは再度心臓が止まるかと思った。
(って何で四天王のワタルがこんな所にいんだよ!?)
勿論声には出さない、まだ生きてる事をバレたくは無いのだ。
というかここまでの運の無さもある意味異常だろう、彼がまだ出会っていない四天王はシバ位のものだ、よくこれでここまで生き残れたものだ――まぁ一度は死んだが。
「よーしねぎま、ヤドンさんボールに戻れ」
どうにか四天王のワタルに気づかれる事無く二匹に近づけたクリアは、ねぎまとヤドンさんをボールに戻し、体を隠してワタルに視線を送る。
どうやら戦闘中らしく、誰かがワタルと戦っている様子だった。
(よし今なら気づかれる事無く逃げれるな、というか誰だよワタルに挑戦しようなんて馬鹿野郎は……)
呆れた様子で双眼鏡を取り出してその中を見つめ、そしてクリアはその目でよく知る顔の馬鹿野郎を視界に捕らえるのだった。
「そうか! お前がイエロー・デ・トキワグローブか!」
ワタルとイエローの戦いは終始イエローの劣勢だった。
最初はワタルに相手にすらして貰えず、必死に追いかけ攻撃してみるも、イエローはハクリューに囚われてしまい、ピカはハクリューの"はかいこうせん"に直撃してしまった。
「ちょうどいい、あいつを連れていけばあいつらも喜ぶだろう! ま、このワタルにはどうでも良い事だがな、フッハッハッハ!」
「そ、そんな事絶対にさせるものか!」
高笑いするワタルにイエローは叫ぶ。
ピカもピカで、つい先程習得した"なみのり"を使って水上でのバトルを可能とさせているが、しかし今はイエローが人質状態となっている、
「フハハハ! そんな状態でどうするって言うんだ!……それともにまた何かを失うのが怖いのか!」
「何かを失う……? 何の事だ! ボクは別に何も無くしてなんていない!」
そう言ったイエローに、不思議そうな顔でワタルは聞く。
「……ほう、まさか知らないのか?」
「だから何の事だって……」
「まさか知らなかったとはな……お前はクリアというトレーナーと親しかったと聞いていたが?」
「……クリア? どうしてそこでクリアが……」
ワタルの言葉にイエローの中の何かが揺れる。
その揺れは震えとなって声帯を伝わる。
「どうしてだと? それは奴が死んだからだ、まぁ手を下したのは俺では無いがな」
そしてその発言は、イエローを絶望の底へと叩き落した。
「死……う、嘘だ!」
「嘘じゃない、なんなら証拠写真でも見せてやろうか?」
ピッと一枚の写真をワタルは手放した。
それは風に流されてイエローの手に渡る。
「……嘘」
その写真はキクコが監視、録画していた動画の一部を映像化したもの。
イエローが見たそれは、ゴーストに舐められて、人知れず倒れ、そして瞳の光を完全に失い、変わり果てた
ちなみに映像はそこで終わっていた、それ以上の監視は必要無いとキクコが判断したからだ。
「どうやら本当に知らなかったらしいな、ならば感謝して貰おうか、このワタルが貴様の友の凶報を知らせてやったのだからな! フーハッハッハッハ!」
「……嘘だよ」
「ハハッ……何?」
「こ、こんなのデタラメだ! クリアが、あのクリアがこんな簡単に死ぬはずが無い!」
「何を言ってるんだ貴様は? 奴とて人間だぞ、あれ程の重症を受けた上での追撃なのだ、むしろ助かっていたとしたら是非とも出てきて欲しいものだな我が前に!」
「……嘘だよ、あの後すぐに……クリアは……」
写真から分かった。
あの分かれた時と同じ入院着のまま、彼は衰弱死していた。
もしもあの時別れなければ、そんな考えがイエローの中で生まれては消えていく。
「そうだ! 大方貴様等に心配を掛けたくないとかそういった理由だろう、ふん! 馬鹿な奴だ、こんな奴の為を思って行動したのだからな!」
「……そんな、クリア、クリアァ……う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ふん、泣き出すか、所詮は子供という事だな……いいだろう、そんなに会いたいなら会ってくればいいさ、ハクリュー"はかいこうせん"!」
いくら旅をしたからって、その中で強くなったからといってイエローがワタルやレッド達の様な人達と比べまだ子供だという事実は変わらない。
初めての友人の"死"、それは楔となって彼の心に打ち込まれ、強く強くイエローの心を締め付けていく。
そしてハクリューの"はかいこうせん"がイエローに打ち込まれ、盾になる様にピカが海上から飛び出した。
一緒に旅した大好きなイエローを守ろうとしての行動、だが――、
「ふん、そうすると思っていたぞ!」
が、ハクリューは一度イエローを離し、代わりにピカを捉える。
同時に"軌道を自由に変えられるはかいこうせん"は軌道を変え、落ちていくイエロー向かって直進する。
クチバの街に大きなクレーターを残す程の威力を持った"はかいこうせん"がイエローへと迫り、イエロー自身も、高所から頭から水面へと迫る。
そしてワタルが笑い、ピカが鳴いて、イエローも泣いた。
「……ごめんなさい、レッドさん……」
――クリア。一粒の涙が宙へと浮いて、瞬間"はいこうせん"によって一瞬で蒸発し、そしてイエローが後悔の言葉を呟いた時。
「……ったく、いつまで泣いてんだよ"イエロー"」
上空から一匹の黒い火龍が現れる。
黒い影の背に乗った少年は、イエローを抱き捕らえた状態で太陽を背に向けて立つ。
ワタルよりも高い高度にいる為、逆光が彼の姿を黒いシルエットにして、ワタルの認識力を惑わせる。
「……嘘、でしょ?」
ワタルの耳に届くのは謎のシルエットの声と、イエローの声、だがシルエットの主は分からない。
「……ええい貴様! 誰だ、姿を見せろぉぉぉ!」
その状況が気に入らなかったらしい、ワタルは怒りのままに"はかいこうせん"を謎の影に撃ち、シルエットはそれを急速に降下して避けた。
「本当は、姿を見せるつもりなんて無かったんだ」
「……き、貴様は……!?」
「だけど、目の前であんな光景見せられたら……」
「……何故だ、何故貴様が生きている……クリア!?」
「落ち落ち死んでもいられねぇよ!」
黒いリザードンに乗ったクリアは、薄ら笑いを浮かべてワタルにそう返事を返した。
「本当に、クリアなの?」
自分を抱きかかえる少年に、思わずそう質問をぶつけるイエロー。
震える声で尋ねるイエローに、
「……あぁ、俺だぜ、イエロー」
ワタルに向けて笑みとは違う、温かみのある笑顔でクリアはイエローに返した。
まるで亡霊でも見る様な目でイエローはクリアを見つめ、ワタルも同じ様な視線をクリアへぶつける。
そして波の音だけが辺りを支配する。
そんな空気の中、耐え切れなくなったのか少し肩を落としながらクリアは、
「……なんだよお前等、俺が意を決して颯爽と登場したのに、みんながみんなノーコメント? せめて反応プリーズ?」
「……いつものクリアだ」
「うん、それどういう意味イエロー?」
まだまだ驚きを隠せないといった感じのイエローだが、同時に確かな安心感も生まれていた。
どうしてそんな感情が生まれているのか、そこまで親しい間柄だったか、なんて疑問も生まれるが、今のイエローはそんな無粋な疑問は全て心の引き出しの奥へとしまった。
そして"黒くなったエース"の背に足を降ろすと、思い切り彼を抱きしめた。
もう離れない様に、もう二度とさっきまで感じていた不安感を感じない為に。
「……ったく、しっかり捕まってろよイエロー、落ちたら大変だし……じゃあまずは、ピカの奪取といきますか」
今でもワタルは目の前で起きた現象が信じられなかった。
確かに死んだと思っていた、証拠も上がっている人間が、イエローを助け、あまつさえ今から自分に対して牙をむこうとしている。
俄には信じられない現実だが、クリアの一言でワタルはスイッチを切り替える。
「……ふ」
ワタルに対して、最強のドラゴン使いに対して牙をむこうとする亡霊を再び地獄へ追い返すべく。
「フハハハハ!! いいだろう亡霊! ならば再度、貴様を地獄へと送ってやろう! このドラゴン使いのワタルが!」
「あぁいいぜ、来いよ、手持ちもそのハクリューだけじゃ無いだろ?」
「ふっ、亡霊如きこのハクリューだけで十分だ、何にしても今オレの手持ちはこいつだけだしな!」
「そ、なら俺も、こいつ一体で十分だな」
言ってクリアは一体のポケモンを出す。
だがそのポケモンをワタルが見た瞬間、
「……貴様、このオレを"なめて"いるのか!?」
「あー今その言葉俺に対しては禁句だぜ四天王、つーか俺なりにもそれなりの敬意は払ったつもりなんだがな」
「そんな間抜けそうなヤドン一匹でか!? 冗談も休み休み言え!」
「……ほう? ヤドンさん馬鹿にするとお前、今から痛い目見るぜ?」
そう、クリアが出したポケモンはヤドンのヤドンさん一匹だけ。他に移動手段として"リザードンとなったエース"も出してはいるが、エースをこの戦闘に使う気等今のクリアには無かった――正確には"必要無かった"。
だがしかしワタルが怒るのも無理は無いだろう、せめて進化系のヤドランなら勝負も見えるだろうが、その進化前のヤドンでしかも、
「つー訳で一つ頼むぜヤドンさん!」
「……やー?」
「よしオッケーだって!」
「ちょっと待ってクリア!? その子今何も分かって無かったよ!? 多分今その子"何が?"って聞き返したよ!?」
マイペースに適当な事を言うクリアに、すぐ傍でイエローが思わずツッコミを入れる。
そんな馬鹿げた漫才を見せられれば、誰だって馬鹿にされてると思うだろう。
我慢できなくなって、ゴミを見る様な目でクリア達を見つめたままワタルは、
「ハクリュー! "りゅうのいか」
「ヤドンさん"なみのり"!」
だがワタルが攻撃に出ようとした瞬間、彼とハクリューを完全に飲み込んでしまう様な高波が発生する。
「り"だ!」
だがワタルは少しは驚いたものの、その高波を"りゅうのいかり"で弾き飛ばす。
水しぶきが舞い、波が揺れ、一瞬クリア達が見えなくなり、次に見えた時には、クリアのヤドンさんは水の上に立っていた。
「っな……」
「ヤドンさん、お次は"フラッシュ"!」
だがクリアは攻撃の手を緩めない。
急激な強い光によって一瞬視力を奪われるワタルとハクリュー、そしてその一瞬の隙に、
「ヤドンさん、もう一度"なみのり"だ!」
再び襲い掛かる高波に、今度はワタル達は直撃してしまう。しかも、
「さぁ、ピカは取り返したし、そろそろフィニッシュといこうか」
ハクリューが力を緩めた一瞬の隙に、高波を操り上手くピカを自信の元へ引き寄せたらしい。
イエローがピカを抱きしめ、そしてピカを回復させる。
そして波が元に戻り、海中からずぶ濡れのワタルが姿を現す。
「……許さん、許さんぞ貴様!クリア! ハクリュー!」
「……ヤドンさん」
激昂し、ワタルは叫ぶ。
「"はかいこうせん"!」
ハクリューが今現在使える最強技を、軌道を変え、かつクチバの街に大打撃を与えた程の威力を持つ"はかいこうせん"を。
恐ろしい程の破壊力を持った光線が蛇の様にウネリながら、四方八方退路を絶つ様な威力でクリアとイエローと、そしてヤドンさんに襲い掛かってくる。
――が、
「ヤドンさん……"それ位"、見極められるよな?」
「……やー」
「イエロー、今ヤドンさんは何て?」
「多分、"余裕"……って」
そんなハクリューの"はかいこうせん"に対して、"それ位"程度の認識でクリアもヤドンさんも臨む。
そのあまりの自信に、イエローもワタルも言葉を失った。
「オーケー、ヤドンさん、"かいりき"だ」
あまりにも軽々しく、ヤドンさんの背後を狙った"はかいこうせん"はその軌道を完璧に見切ったヤドンさんによって弾き返されるのだった。
「……クリア、良かったの?」
海上にてピカの"なみのり"に乗るイエローは、同じくヤドンさんの"なみのり"に乗るクリアに言う。
「んー? ワタルを逃がした事か? なら仕方無いさ、深追いして返り討ちにあっても嫌だし……攻める時は、万全の状態になってからでないと」
「そう……うん、そうだね」
イエローは思う、この数日間で、一体彼…クリアに何が起こったのかという事を。
数日会わなかっただけで、いくら相手が本気じゃ無かったとはいえあの四天王を軽々と撃退してしまえる程になっているのだ。
そんな人が変わったかの様に強くなったクリアに怪訝な視線を向けるイエローだが、
「ん?……あぁ、さっきのは気にすんなよ、ヤドンさんが凄すぎるだけだから……これでも一応、うちのナンバー3だし」
「う、うんそうだよね……って3番目!? その強さで!?」
「だよなー驚くよなー、俺も驚きだし」
「いや驚くのはボクの方だよ!? いつの間にかエースが進化してたと思ったら、クリアはいつの間にか何故か物凄く強くなってるし、しかも死んだって聞いたから……」
「うん、一度死んだけど?」
「ちょっとそれどういう事!」
バン! と大きな音がした、イエローがピカの"みがわり"サーフボードを蹴った音だ。
ボードからジャンプして、すぐ近くを泳ぐ――というより波に滑る様に乗るヤドンさんに乗ったクリアのもとへと飛ぶ。
当然の事ながらクリアはイエローの行動に驚き、ながらも放って置く訳にはいかず、海に落ちない様にイエローを抱き止め、ヤドンさんにしがみ付かせる。
そんな突然のイエローの行動にピカはフラツキながらも何とかバランスを保ち、そしてボードを蹴ってクリア側の"なみのり"に乗っかったイエローを若干呆れながら見つめた。
「ちょ、いきなりこっち来んなイエロー!ヤドンさんが水中に……沈んでる!?」
「ごまかさないで! さっきまでワタルの嘘だと思ってたけど、本当に死んだって……じゃあ今ここにいる君は幽霊!?」
「実体あるだろ実体が、なんか知らんが生き返ったんだよ」
「生き返ったって……」
「いやー、俺もよく分からないんだけどな、なんか炎がなー……いや、なんだっけ?」
「え、そこちゃんと覚えててよクリア」
「って言われてもなぁ……というかいつの間にお前は俺に対して呼び捨てになってんだよ?なんか敬語も取れてるし」
「……それを言うならクリアだって……会ってからずっとボクの事"イエロー"って呼ばれてるの気づいてるよ?」
「……あ、マジだ」
「気づいてなかったの!?」
そこで一旦会話は途切れ、お互いの顔を見合ったまま数秒過ぎ、そして何が可笑しいのか二人して大笑いした。
二人の笑い声が大海原に響き渡って――すぐに半分以上水中に浸かっててヤドンさんの限界を感じたクリアは、慌ててイエローを強引にピカのボードに移動させるのだった。
そうして、海を渡って二人はついにグレン島へと足を踏み入れる。
それと同時に、二人の旅に終わりが近づいている事を、二人はまだ知らない。
絵に描いた様なひでん要員で無双したかった結果がこれだよ!
そしてこの時点で実はクリアのパーティは六体フルでいます、エースがリザードンに進化してるという事もあってあえて抜かしたエピソードがあるんです、気が向けば書くと思います。
ヤドンさん強いよヤドンさん。
ではでは、感想等も心から待ってます。マンボーでした。