新武将の野望in恋姫†無双 ROTA NOVA   作:しゃちょうmk-ll

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長らく放置してきましたが絶唱†漢女道聞いてたら書きたくなってきました。

どうせならやっぱ立志伝らしく有能武将いっぱい登用したいよね!

ってことでこれからオリキャラ、という名の他作品のキャラがたくさん出てきます、ご注意ください。

太閤要素薄めです。


第十話 年初めは浪人求めて全国行脚

長江河口部で黄蓋・孫策らと別れ、茶葉を入手した大和屋一行。初夏に吹く海風を受け、黄海を北上し現在は渤海との境目である青州、現在でいう山東省にあたる場所を進んでいた。

 

長江流域では水深が浅い部分や漂流物、江賊の襲撃など周囲警戒が厳重であったが黄海に出てからは帆を満帆に全速で航行している。

 

その為に人員的にいく分か余裕があり、タケマサは船員の中で実力のありそうな者たちに対してこれから予想される船上での戦闘に備え、早朝から船員同士での組み手を実施した。

 

船員の多くは荊州での活動中に勧誘したり引き抜いたりした人間であり、侠客や元江賊も多く、こぞって参加し船上では至る所で気声や得物をぶつけ合う音が響く。

 

前部甲板では非戦闘員かつ救急要員として陽花が待機していた。

現在は手持無沙汰のようで担いだ薬箪笥を下ろし欄干にもたれ掛かかりながら船上で思い思いの得物をふるう船員たちの様子を眺めている。

 

そんな彼女に組み手がひと段落つき休憩中であった杏命が声をかけた。

 

「そんなに見つめてだれか気になる人でもいたんですか?」

 

「あ、杏命さん。いやーあたしって出港直前に師匠からこの船の事知らされたんすよ。そんでその後すぐに寝込んでたじゃないすか。そんで復帰してからは師匠と茶葉の加工で医務室で缶詰だったんで他の人たちの事とか良く知らないんすよ。個性的な見た目の方が多いっすけど・・・」

 

「あーそう言われれば陽花さんと初めて会ったのって出港の直前でしたね。主だった皆さんは個性的なのは見た目や性格だけじゃなくて腕っぷしも立つ人が多いですよ。」

 

「せやで嬢ちゃん。水夫長のおっさんをはじめ、そこの杏命ちゃんや朱燐ちゃん、華佗先生ぇ、そして何よりオヤジ本人に漢女2人とエライ腕利きがおるんやでぇこの船には。ほんま、ついてきて正解やったわぁ~」

 

「良く言うぜ彩羽のネェさん。初めにオヤジに声かけられたときにはあんなに筋が通らねぇって怒鳴ってたのによ」

 

陽花と杏命に声をかけたのは伊月と彩羽と呼ばれた2人の女性であった。

 

彩羽と呼ばれた女は腰まである濃青色の髪と触覚のような2房が同じく腰まで伸びる髪形をしており赤いズボンのベルトには短刀を指している。

上半身は豊かな胸にさらしを巻き、紫地にド派手な大蛇の柄の着物を羽織っている。その眼光は鋭く赤い瞳が印象的である。

 

また伊月と呼ばれた女性は下腿まで伸びたボリュームのある黒髪をサイドテールでひとくくりにしており薄手の赤い服の上から上等な白い陣羽織を着ている。

彩羽と同じく圧を感じるような外見ではあるが凛とした美人でありその目は優しくどこか不思議な魅力を感じる女性である。

 

「なんや、そういう伊月ちゃんこそオヤジがカチコミかけてきたときに一番に殴り掛かったやないかい。」

ニシシィと悪そうな笑みを返す。

「うちら二人がかりでもかなわんよぉなごっつい漢がこないな立派な船こさえてやることと言えば、そりゃでっかい商いにでっかい喧嘩に決まっとるやないか。そう思うから伊月ちゃんも付いてきたんとちゃうか?」

 

「ふ、そうだな。」

 

彩羽の問いかけに対して伊月は小さく笑い答えた。

 

そんな彼女たちを見ていた陽花と杏命はといえば、

「ね、個性的な人たちでしょ?」

 

「て、ていうか明らかに堅気じゃないっすよね!いったいどこの組の方っすか!?」

 

ギロッ!!

「あぁん?なんやうちらみたいな善良な人間を捕まえて?うちめっちゃ傷ついたわぁ。あっちで酌の一つでもしてもらわんとこの心の痛みは治まらんわぁ」

 

彩羽は腰を落とし陽花に対してにじり寄って堂に入ったガンつけ。その眼力に腰が抜け怯んだ陽花はまさしく蛇に睨まれたカエルであった。

 

「ひ、ひぃ暴力反対っす!」

 

「おいネエさん、こわがってるじゃないか。それに侠客だったのは確かだろう。怖がらせて悪かったな、立てるか?」

 

伊月が差し出した手を掴み立ち上がる陽花。その手はしなやかなようで固く、戦う者特有の厚みと熱があった。

 

「あ、ありがとうございます。え、えっとなんてお呼びすればいいっすか?」

 

「自己紹介がまだだったな。わたしは丁奉、字は承淵、真名は伊月だ。船員同士よろしく頼む。」

 

「いやぁすまんなぁ~、杏命ちゃんから揶揄うとごっつおもろい言われたからついな。」

いたずらに成功した悪ガキの如く。言葉に誠意を感じさせない満面の笑みで共犯者を売り渡した。

あの腹黒忍者はいつか絶対泣かす。陽花の心のメモ帳に新たな項目が追加された。

 

「うちは李厳、字は正方、真名は彩羽や。嬢ちゃん、オヤジと一番付き合い長いんやて?お詫びに今度酒おごるさかい、オヤジの話聞かせてぇな。」

 

「私は呂範、字は子衡、真名は陽花っす。えーっとオヤジっていうのは・・・」

 

「船長のことさ。侠客の間では頭のことを敬意をこめてオヤジって呼んでた、その名残だ。わたしもよければ聞かせてほしい、あの人は何とも底が知れないからな。」

 

今まで陽花が接してきたタケマサという男はえらく単純な動機で行動するときもあれば深慮深謀を重ねた上で人を揶揄うこともある。少年の心を忘れないということは大事であるが老獪さをもってくだらないことをする。

 

そういうことも含めての“底が知れない”という評価であると陽花は認識した。

 

「師匠の話って言ってもそんなにお話しできることがあるかどうか・・・ってどこ行くんすか杏命さん!逃がさないっすよ、てか待てこらぁ!」

 

伊月と彩羽と真名を交換していた陽花ではあったが隣にいたはずの杏命がいないことに気づく。

彩羽に入れ知恵を暴露された杏命はすでに船室への扉近くまで退避していた。

 

逃がすまいと駆け出す陽花とそれを見送る彩羽と伊月。

 

「エラい揶揄いがいのある嬢ちゃんやったなぁ。あれがオヤジの弟子かいな。」

 

「医術を主に修めてるそうだ。前の疫病騒ぎの時に若くて腕の立つ薬師がいるって評判だったろう」

 

「あー、あれがあの嬢ちゃんかいな。あん時まではうちの一家も稼いどったんやけどなぁ。」

 

彼女らは以前荊州全域で活動する大規模な侠客一家の幹部であり、先の疫病騒動では高騰し中・下級住民に行きわたらなくなった医薬品の密輸入、時に襲撃・強奪を行っていた。

当然タケマサの関わる商家も標的となりブツをめぐってシノギを削り幾度となく対立した。

 

不可解に消えていく物資。こちらの動きの一手先を行く相手の動き。

そして見え隠れする第三の組織の存在。見定めるべき共通の敵。

盃を交わした組長と外部組織との繋がり。渡世の仁義と己が信念の間での葛藤。

すべてを操る黒幕への殴り込み。傷つき倒れたはずの仲間の助力。

渡世の仁義を果たすため、何より自身へのケジメのために立ちふさがる2人・・・

(そして捻りすぎていまいち盛り上がりに欠けるラスボス戦)

 

懐かしむように過去を振り返る彩羽だがすぐに切り替え伊月のもとに向き直る。

「まぁそんなことはどうでもええ。あの嬢ちゃんのおかげで今日は思う存分怪我ができるっちゅうわけやな。さぁ休憩は終わりや。本気でいくでぇ~伊月ちゃぁん!うちをたのしましてぇなぁ!」

 

「こいっ!気ぃ抜いてるとアンタでも怪我するぞ!」

 

互いに気炎を漲らせ短刀を抜き放ち躍りかかる彩羽と迎え撃つ伊月。二人の侠者の戦いは伊月が甲板清掃用のモップをあらかた壊し、乗り降り用の板梯子を振り回し始めて周りが止めに入るまで続くのであった。

 

 

 

「あはは、いったいどうしたんですか陽花さんそんな血相変えて。私はこれから会計部門の皆さんと今後の経営戦略について話合わなくてはならないのですが」

 

「半笑いで何言ってるんすかこの腹黒忍者ぁ!いちいちやることがこすいんすよ!」

 

「人聞きの悪い。あ、それとそこ危ないですよ陽花さん」

 

「え?」

 

視線を上に向けた杏命につられて足を止め上を向く陽花。

 

シャンッ!!

顔面目掛け、短く空を斬って模擬剣が落下し、おお陽花よ死んでしまうとなさk「のわぁぁっ!!」になりかけたところで寸でで気がつき慌てて飛びのき尻もちをつく。

 

落ち来たのはやや長めで両刃の剣であった。模擬剣ということで刃はつぶされているが重さは鉄剣のそれである。

パンピーに毛が生えた程度の耐久力しかない陽花にとっては当たれば洒落にならない。たんこぶで済むのはギャグ補正のかかった人間だけである。

 

「危なかった出すね陽花さん、私の注意が無かったら大怪我ですよ。」

 

「注意するときはもう少しテンション上げてほしいっす!!寝ぐせ指摘するのと同じ感覚で命救われるって結構複雑っす!」

 

「いやぁさすがは陽花さん、わたしが見込んだことはある。今日もキレッキレですね。」

 

「いつの間にそんな見込まれ方されたんすか!?」

 

陽花、本日2度目の腰抜けであった。出会ってそう時間のたってない二人ではあるがすでに関係性というかパワーバランスが形成されつつある。餌を前に尻尾を振っている子犬につい意地悪して噛みつかれるイメージである。

 

「大丈夫!?ごめんなさいね、怪我はない?」

 

そんな二人のもとに模擬剣の持ち主が慌てて駆け寄り、腰が抜けている陽花の顔や体をあちこち触って怪我がないか確認する。

 

白に近い灰色の髪を後ろで一纏め結い、動きの邪魔にならないよう短めの皮と鎖帷子でできたジャケットを着た若い女性だ。

かわいらしいというより綺麗、美しいといった表現を思わせる整った顔立ちや目元を強調するアイシャドウ、そして左目の下にある一筋の赤い傷跡が彼女の美貌にアクセントを加えている。

 

「えっと、大丈夫っす・・・あなたは?」

 

「わたしは凌統、字は公績、真名は白燕っていうの。あなたはたしか呂子衡だったわね。ごめんなさい、父と鍛錬をしてたら剣を落としちゃって」

 

「は、はい真名は陽花っていいます。よ、よろしくおねがいします。」

 

この船に乗ってからあったことのないタイプの女性だったこともありつい敬語で返してしまう陽花。

彼女が襄陽から知り合った主な人間と言えば妖怪やら仙人やらわからない師匠に熱血医師と漢女2人、同じ弟子である腹黒忍者に飲兵衛、褐色おっ〇い2人にYAK〇ZA2人とイロモノばかりであった。

 

ただまっすぐ自分を心配してくれる彼女のその瞳と思いやりあふれる心を感じ思わず、

 

「お姉様、って呼んでもいいですか・・・?」

 

「はい?」

 

どうやら自分自身もイロモノ枠だということを失念していたようである。

 

 

 

「なにやってる白燕!早く上がってこい!」

 

頭上から彼女を呼ぶ水夫長の声がかかる。

 

「あ、わかったわ父さん!じゃ、それじゃね陽花、また話しましょ。」

 

「はい・・・」

 

そのまま白燕はマストの縄梯子を駆け上るような速さで昇るとそのまま組み手を再開した。

 

なお、彼らが戦っているのは甲板から10メートルはある見張り台近くのロープ、アスレチックにある格子状に組まれたロープの遊具を想像すると分かりやすい。

それの格子の目を成人男性の足がすっぽ抜けるぐらいの大きさにして潮風を足した環境で時に相手の足を払い、時にバク転で攻撃を躱しながら剣劇を続けている。

 

その様子を呆然と見上げる陽花と杏命。

 

「な、なんちゅう・・・」

 

「凄いですよね。私も不安定な足場での身のこなしには自信がありましたけど彼らを見ていると自信なくしそうです。あ、水夫長が白燕さん投げ飛ばしてますね、そして普通に受身とってますよ」

 

大陸は広い、そう実感する二人であった。

 

 

 

「おーい杏命~そろそろ交代だぁ!それと陽花、ちょっと用事があるから来てくんねぇか!」

 

「あっはいすぐ行くっすよ!」

 

「やれやれもう交代ですか。すみません先に行きますね陽花さん。」

 

後部甲板より朱燐の声がかかる。足早に向かう杏命に続いて陽花は急いで薬箪笥を担いで向かおうとするがふと疑問が浮かぶ。

たしか後部甲板には華佗にタケマサ本人もいるため怪我人の手当てであればわざわざ自分を呼ぶ必要はない。

 

組み手の相手、ととも考えたが先ほどの様子を見る限り自分では全く相手になりそうにない。

今度はなにをやらされるのやらやら、と半ば予想外のふりに妙に慣れつつある自分が少しだけ嫌になった。

 

「っと来たっすよ師匠。何の用・・・ってかどうゆう状況っすかこれは?」

 

後部甲板は船の舳先より幾分高くなっており階段を昇って最初に目に入ったのはうつぶせで白目むいて大の字に倒れている鉢巻を巻いた若い男。

その周りでは茶を飲んでいるタケマサと腰を下ろしている朱燐に杏命、彼女らと同年代の橙色の長い髪を発育のいい女性、やや年下で赤橙色のショートヘアの少女、大柄で活発な印象をうける男がいた。

そちらはなんとなく予想がつくので問題ない。

 

もう一方では船の縁でタケマサB、Cに漢女2人、チラチラとこちらをうかがう華佗と鮮やかな桃色の髪の少女が並んで腰掛け釣り糸を垂らしその後ろにはバカでかい鮫が横たわっている。

 

またやや離れたところには眉間に皴を寄せ不機嫌そうに七輪で魚を焼いている灰髪で眼鏡の少年と苦笑いで切り身を皿に盛りつけている女性、大量の皿を背に日傘の下で悠々と茶を飲む女性というよくわからない構図であった。

 

「お、来たか陽花。おい!お待ちかねの美人薬師の登場だぜ」

 

「なんのことっすか?ていうかその鮫はいったい・・・ってえ!?」

朱燐の手招きに答えた陽花の返事。その言葉に白目を向いていた男の耳がピクリと動く。

その動きは大きくなり四肢の痙攣が始まり胸が反りあがるほどの鼓動が起こる。

 

バンッ!!

 

響いた音はおそらく床をはねた音。体すでに陽花への突入態勢に入っていた。

その時確かに彼は己が肉体のみで音の速さへと迫ったのである。

 

「おっねぇぇっさぁぁん!!!僕の傷ついた心と体にあなたの薬という名の愛とぬくもりを塗り込んでくださああぁぁ・・・?」

 

そのまま一直線かに思えたが徐々に勢いをなくし陽花の前に四足で着地し目をぱちくり、じっと顔を見つめる。

「なぁ4~5歳年上のお姉さんとかいたりしない?」

 

「え、いや、いないっすけど・・・」

 

顔からつま先まで視線を下げもう一度胸元まで上げた後、だくだくと血涙を流しその場に倒れ伏した。

 

ジタバタ、ゴロゴロと自身の血涙の海の中を転げまわる。ちなみ掃除用のモップは伊月の手により無残にもその姿を変えカリスティックとして進行形で酷使されている。

 

「ちぃきぃしょぉぉぉ!!そんなこぉったろぉとおもったよぉぉぉ!!!」

もがきながら地の底から響くような深い悲しみと絶望を感じさせる声で叫ぶ。

 

おいてめぇさっきどこを二回も確認してその反応をしやがった、と陽花の眉間にしわが寄る。

 

「いつもそうや!!資本家は甘い嘘で労働者を騙すっ!!男の純情を踏みにじりやがってぇわいのムチムチボインな美人女医のイケナイ触診を返sグボッ!!」

ほとばしる熱いパトスの少年を神話にしたのは薬箪笥での顔面への一撃。

これは流石に答えたのか手足をぴくぴくと痙攣させるが沈黙させるには至らず。

 

「・・・あのすんません薬師さん、体中痛いんで手当お願いしてもいいでしょうか・・・?」

 

「ししょぉー、こいつ海捨ててもいいっすよね~?」

 

あぁかつてここまで他人の命を軽く、どうでもいいと感じたことは少女の人生においてなかった。

この瞬間、彼女は大事なものを失いそして確かものを得た。

それが乱世へと向かう寒い時代が産んだ悲劇の一つに過ぎないとしても・・・

 




??「変な終わらせ方すんなー!オチが雑だぞーなめんじゃねー!」
??「アンタは大人しくしてなさい!」ガスッ


続きは今書いてるんですぐに出せるかもです。

後半のキャラは次話に詳しく書きますので元ネタが分かった方は感想欄にどんどん晒していってください。お願いします何でもしますから!

関係ないですが一通り分かった方は5月に出る予定の初代ダクソのリマスター版で作者と一緒に鮮明になったクラーグ様鑑賞ツアーに参加しませんか?
参加費は一回につき人間性1つと大変お安くなっておりますのでふるってご参加ください。皆様のご応募お待ちしております。

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