お寺の息子   作:龍やん

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6話

「お待たせしました」

 

達也がアタッシュケースからCADを出し演習室の中央へ歩いてくる。

 

「いつも複数のストレージを持ち歩いてるのか?」

 

服部先輩が興味無さげに聞く。

 

「ええ、汎用型を使うには処理能力が足りないので」

 

「ふん」

 

達也が自虐的に言うと、服部先輩が冷笑をかえす。

 

「ちなみに九重君はどっちが勝つと思う?」

 

会長が楽しそうに聞いてくる。

 

「まぁどっちが強いとかは分かんないっすけど、服部先輩が負けますね」

 

「どうしてそう思うんですか?」

 

妹ちゃんが不思議そうに聞く。

 

「まぁ簡単に言っちゃえば油断しすぎ。あと過信しすぎ。」

 

「服部は入学以来負け無しだぞ?」

 

渡辺先輩も正直服部先輩が勝つと思っているみたいだ。

 

「それはほとんどが1科生との試合じゃないですか?」

 

「そうだな、そもそも2科生と試合なんて殆ど無いからな」

 

「まぁそうでしょうね、見てればわかりますよ!」

 

 

 

「ではルールを説明する。合図があるまでCADの起動は無し。直接攻撃間接攻撃問わず死に至らしめる術式の禁止。回復不能に至らしめる術式の禁止。武器使用は禁止。素手はあり。一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合は試合終了。ルールを破ったら負け。その時は私が入り力ずくで止めるから覚悟しておけ!以上」

 

 

 

 

「始め!」

 

試合は一瞬で決した…

 

バタン…

 

ほらね。ってか今体術だったよな?まさか親父の言ってた二人目って…

 

 

「し…勝者、司波達也」

 

 

 

「今の動きは、あらかじめ自己加速術式を起動していたのか?」

 

渡辺先輩が焦っている。

 

「いえ、その可能性がないのは渡辺先輩が一番良く分かってると思いますが、あれは正真正銘身体的な動きですよ」

 

「それは私も証言します!あれは兄の体術です。兄は忍術使い九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

やっぱり…

 

「やっぱりそうか、親父の言ってた第一高校に弟子がいるって達也のことか」

 

「「え??」」

 

「え?」

 

なんか変なこと言ったっけ?

 

「九重君のお父さんってあの忍術使い九重八雲さんなの!?」

 

会長が驚いている。

 

「そうっすけど言ってなかったでしたっけ?」

 

「あぁ言ってなかったな」

 

達也が言う。

 

「まぁいいよそんな事は」

 

((そんなことじゃねーよ!))

 

 

 

 

「服部先輩の敗因は試合を始める前から勝ったシュミレーションをしていたからですね。要は心の持ちようですよ」

 

「そりゃ誰だってシュミレーションくらいするだろ」

 

「それは()()()()()シュミレーションですよね?服部先輩は最初の前提がもう勝っちゃってたんですよ。その上でどう倒すかをシュミレーションしたんで、予想外のことが起きてあっさり足元を掬われたんですよ」

 

「なるほど、ところで服部を倒したのはなんだったんだ?」

 

渡辺先輩がたずねる、それは俺も気になるな。

 

「あれも忍術なの?」

 

「あれは魔法ですよ。服部先輩は酔ったんです」

 

「波の合成ですか」

 

市原先輩が答える。

 

「でもそのためには座標、強度、持続時間に加えて振動数まで変数化するとなると……まさかそれを実行したんですか!?」

 

スゲーなそんな魔法もあるのか…たしかに理論上は可能だろうけど。

 

「多変数化は学校での評価にはないですからね…」

 

「なるほど目が曇ってたのは俺の方だったのか。司波さん身内贔屓などと失礼なことを言って申し訳ない」

 

いつの間にか起き上がった服部先輩がフラフラこちらに近づきながら謝る。

 

「私の方こそ生意気なことを…申し訳ございません」

 

「はんぞー君大丈夫?」

 

「ちょっと朦朧としますがまぁ大丈夫です」

 

「それに九重の言ってたこともあながち間違ってない。俺はどこかで勝ちを確信していた…」

 

その心の持ちようが戦いだと致命的な隙を産んだりするんだよね。

 

「まぁとりあえずこれで一件落着、そろそろお開きに…」

 

「待て!迅、俺と模擬戦しないか?」

 

(ここで迅の力を測っておきたい)

 

「は?」

 

今日に限ってこのシスコンめっちゃ好戦的じゃん…

 

「それは良い案ね、どっちにしろ九重君にも模擬戦してもらうつもりだったから」

 

「なんでだよ」

 

「九重君も2科だから?」

 

「差別かよ…」

 

あんまり戦うの好きじゃないんだけど…逃げられそうもないからなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「九重君準備はできた?」

 

「まぁ、あと生徒会長さん2つお願いが!」

 

「なにかしら?」

 

「まず試合時間を5分に設定してください」

 

「あとここで見たもの聴いたものは他言無用でお願いします」

 

「分かったわ約束する!」

 

「んじゃ達也お手柔らかにな」

 

「こちらこそ」

 

 

 

 

「始め」

 

渡辺先輩の声で試合が始まる。

 

「達也がどれぐらい体術を修めてるかみてやるよ」

 

「それならこちらから行かして貰う!」

 

俺の目の前にまるでワープしたかのように一瞬で達也が現れそのまま右の正拳突き

 

誰もが直撃したように見えただろう…

 

達也の拳は空を斬り、伸びきった拳の先に迅が立っていた

 

「へー縮地か!なかなかやるねぇ」

 

と言いながら俺は印を結び達也の目を見る。

 

「!?」

 

達也は面食らったような顔をしたがすぐに追撃。

 

あれ?今一応幻術で俺が5人位に見えてるさずだったんだけど?

 

「もしかして幻術見破った?凄いな流石良い目をもってる」

 

(コイツ俺の目のことまで…)

 

その追撃をさらっとかわし、迅と達也の距離が空く。

 

達也がCADを構えそのまま引き金を引いた

 

終わったと誰もが思ったみたいだが、俺は大きく腕をひらいて…

 

パァァァン…

 

猫騙しをした

 

「何?今の?」

 

「もしかして波の合成を上から叩いてつぶした!?」

 

市原先輩流石ですね

 

「たしかに少しでも干渉出来れば効果は著しく落ちるとは思うけど、目に見えるものじゃないのよ?」

 

会長が信じられないような面持ちだった。

 

その後2、3度俺と達也は打ち合ったが、結局決着はつかず5分がたった

 

「それまで!引き分けだな」

 

「ふー何時もの鍛練より気合いが入ったな」

 

「ちょっと九重君、聞きたいことがたくさんあるんだけど?」

 

「ハイハイ解説ですね!ではまずなにが聞きたいですか?」

 

「そうね…一番最初達也くんが九重君に迫った動きは何?瞬間移動に見えたけど」

 

「あれは縮地って言って相手の意識の隙をついて接近する身体捌きですよ」

 

「じゃあ九重が避けた動きも?」

 

「そうですねその応用です!」

 

「そのあと幻術がどうのって言ってたけど…」

 

「あぁ、あれは本当は印を結んで視覚に訴えた幻術を掛けて、達也には俺が5人に見えてた筈なんですけどね。即効で破られました」

 

たははと笑いながら言う。

 

「そんな事が…その幻術を掛けられる九重君も凄いですけど即効で解く司波君も凄いですね」

 

「まぁ俺は簡単な、ちょっと撹乱するくらいのしか出来ません、だから解き方を知ってれば簡単に解かれてしまうこともありますけど、それにしてはかなり冷静でしたね」

 

多分達也の目が特殊なんだろうけど余計なことは言わない方がいいな…

 

「あと最後の魔法を九重が破ったのは?」

 

「あぁ、あれはたまたまです!」

 

「「は?」」

 

「あれは波を上からぶっ叩けば消せんじゃね?って思って、大体の位置は三半規管の近く、まぁ顔の近くかなと思って!あとは勘です!」

 

「勘で防げるって…」

 

生徒会長が呆れる

 

「はい!これで一応俺等の実力は示せたと思いますがまだ風紀委員入りに反対しますか副会長?」

 

「いや、文句はない、むしろ失礼な物言い許してもらいたい…」

 

服部副会長が申し訳無さそうに言う

 

「気にしてないんで大丈夫っす」

 

「俺も気にしてないです!」

 

「そっかそれはよかった、これからは偏見はしないようもっと自分を高めよう」

 

「がんばれはんぞー君」

 

 

 

そのあと二人は風紀委員の説明を受けて帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司波家

 

「お兄様、コーヒーが入りました」

 

「ありがとう深雪!」

 

「お兄様…」

 

「どうした?」

 

「今日の九重さんとの模擬戦お兄様はどう感じましたか?」

 

「そうだな正直体術では全く敵わないなだろうな」

 

(かなり手を抜かれていたからな…)

 

「そうですか…お兄様の力がもっと人前で出せれば…」

 

「はぁ…深雪、お前が俺の代わりに悔しいと思ってくれればそれだけで俺は十分だ、それに俺の能力は機密事項だしょうがない」

 

「お兄様」

 

「さぁもう寝よう!明日は朝早く九重寺に鍛練に行く!一緒に来てくれるか?」

 

「もちろんですお兄様!!」

 

深雪さんはチョロインでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重家

 

「なぁ親父!この間言ってた二人って遥ちゃんと達也だろ?」

 

「そうだよ達也君方は聞いたのかい?」

 

「いんや、色々あって模擬戦したんだわ」

 

「それは興味深いね!どっちが勝ったんだい?」

 

「引き分けだよ!達也も全力って訳じゃなかったしな。ただ体術に関しては流石に俺に分があったな」

 

「そうかい、使ったのは体術だけかい?」

 

「いや、幻術も使ったけど即効で解かれた!ありゃなんか特別な目してんな!死角からの攻撃もキッチリ防ぎやがった」

 

(流石迅君鋭いね)

 

「迅君は()()()()()はつかったのかい?」

 

「説明が怠かったから使ってない!」

 

「くれぐれも()()()()使っちゃだめだよ!」

 

「分かってるよ!ケジメだからな!誰かを守るときにしか使わん」

 

「そうかい!あ!あとあしたの護衛の、打ち合わせだけど6時にホテルの503号室、もう迅君の資料は向こうの当主に渡ってるから合言葉とかはとくにないよ!」

 

「了解!」

 

「じゃあそろそろ寝るわ!」

 

「うん!おやすみ!」

 

 

 

 

 

 

 

 


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