ネットを挟み俺は、相手の高宮と握手をかわす。
「さっきぶりだな」
「そうだね。お互い悔いのない試合にしよう!」
爽やか系イケメンですね。
高宮は俺と同じくラケットを持ってきていた。
「そうね、俺個人としてはわりと満足な感じなんだけど、上からの指示で適当な事は出来んからな。」
圧力掛けてきてんだよなうちの先輩方が…
特に真由美さん…
「新人戦クラウドボール決勝。第一高校九重迅君対第三高校高宮直君の試合を始めます。」
そうこう言ってるうちに試合開始の放送が流れる。
所定の位置に着き、カウントダウンからブザーがなりボールが打ち出される。
会場は静かだった。
ボールが俺のコートに入る。
ラケットを轟音と共に振り抜く。
ジャストミートしたラケットはぶっ壊れ吹き飛んだが、ボールはしっかり飛んだ。
初戦で相手の顔面に全力でぶちこんだ玉を高宮のコートの端に打ち込んだ。
俺ですら決まったと思ったのだが、打ったはずのボールはゆっくり俺のコートのネット際に落ちた。
相手のコートを見ると高宮も持っていたラケットを吹き飛ばしていた。ちなみに壊れては無さそうだ。
「やるねぇ」
俺はニヤァとしながら、高宮に言う。
「いやいや、僕の場合は加速術式使った動きだし、なにより反動軽減の魔法掛けてたからね。仮に見えてたとしてもこれは普通返せないよ。うわさどうり人間辞めちゃってるね。」
高宮が苦笑いしながら返してきた。
「別に辞めちゃいねぇよ。」
「全然見えなかった」
「ってか、迅に関しては今更もう驚かないけど、相手の高宮だっけ?かなりやるんじゃないか?」
エリカ君もレオ君も、あまりにハイレベルな戦いに驚いていた。
「そうだね。多分迅君も今の一球を返せないなら早々に試合を終わらせたと思うけど、これは楽しみだね。」
実際どれくらいの実力があるかを確かめるために、かなりエグ味のあるボールを打ったんだろうけど、それを高宮君は見事に返した。
これは、迅君も苦労しそうだね。
「でもたしか、あの高宮選手って、ラケットじゃなくて魔法主体だったはずだけど」
真由美君の一言で皆驚く。
「そうですね、高宮選手は魔法主体で、しかも相手や、状況に合わせて魔法を変える臨機応変な選手ですね。驚異的なのは彼はこの決勝まで、同じ魔法を1度も使ってないんです。つまり、1試合、1試合違う魔法を、何種類か使い分けてるんですよ。」
「それってかなりすごいよね?実際使い慣れた魔法ってのは絶対あるし、得意不得意っていうのは人によってあるから少しは偏るはずなんだ。魔法科高校に入って一年目の一年生がただでさえ試合数の多いクラウドボールで、同じ魔法を使わずに決勝まで来るって正直化け物だと思うよ…」
そうなのだ。達也君と幹比古君の言う通り、相手の高宮選手は魔法技能に関してかなり高い能力を持っている。それこそ十師族に匹敵するレベルでだ。
「迅大丈夫かな?」
無表情ながら少し心配そうに雫君が呟く。
「迅さんの事だから何か考えていると思いますけど、苦戦は免れないですね。」
深雪君も心配そうにしている。
さぁどうするかな迅君は。
「あれ?ラケットは?」
高宮がベンチにラケットを置きにいった。
「僕は基本的に魔法オンリーだからさ、ラケット使ったのは何だかんだ初めてだったよ」
どうやら爽やか君は、顔に似合わず好戦的らしい。
随分と舐められているようだなぁ。
「随分と自信があるようで何よりですねぇ」
飛びきり苦い顔で言ってやった。
この後試合は高宮君優勢で進んでいった。
セットカウント2-1で迅君が負けている。
「何とか1セット取ったけど、正直万策尽きたって感じだな」
「それでも凄かったです。ボールとボールをぶつけて軌道を変えたり、打ったボールの軌道上に二つ目に打ったボールを乗せて死角を突いたり、ある意味魔法よりも凄いものを見ました」
レオ君と美月君が言ったように、何とか奇策で1セット取った形だが、これがこの後通用するかどうかと言うとやはり厳しいものがある。あくまで奇策は奇策。意表を突いた攻撃なのだ。1度見れば対処される可能性はグッと上がる。
その結果3セット目は高宮選手に取られた。
「このままじゃ厳しいわね…」
エリカ君が言うように、このままでは迅君の敗北は目に見えていたが…
「そのわりには凄い落ち着いているな。負けている奴には見えない」
「確かに、何だか楽しそうね。」
達也君と真由美君が迅君を見てそう呟く。
「彼は一応魔法師の卵としてこの第一高校に入り、九校戦に出ているからね。流石の迅君も魔法無しで優勝出来るとは思ってないと思うよ。」
それに、このまま魔法を使おうが使わなかろうが、競技に出て決勝まで進んでる時点で目立たず穏便にとはいかないだろうからね。そろそろ腹を括る頃じゃないかな。
僕の言葉に敗北ムードだった皆が少し持ち直す。
「やっぱり魔法無しだと限界あるよねぇ…」
俺は思わず苦笑いしながら呟く。
正直俺は魔法が苦手だ。めっちゃ苦手…
だけど、全く使えないと言う訳ではなく、CADが体質によって使えないから通常の魔法を使わないだけであって、使えないことは無い。
ただ、それはあくまで普通の魔法ならの話しでだ。
はぁ…やるか
気合いを入れ、俺は高宮の方を向きニヤッと笑った。
「いやいや、ここまでやられるとは思ってなかったわ。退屈どころかかなりenjoyしちゃってるわ。」
俺の一言に高宮も、とっても爽やかなイイ笑顔を向けながら返してくる。
「僕もとっても楽しいよ!だけど最後は僕が勝たせてもらうよ。」
その自信に満ち溢れた物言い、負ける気は無い様だった。
「そうかい。なら俺も良いもの見せてやるよ。まぁ見えたらの話しだけどな。」
ブザーがなり第4セットが始まった。
高宮のコートにボールが入り魔法が発動される。
加速系の魔法だ。
あっという間に俺のコートの端に迫るが…
「さて、見えたかな?」
ラケットの轟音と雷鳴が響き渡った頃にはボールは高宮のコートに落ちていた。
「あれって確か…」
「迅さんの魔法でしたよね?」
爆発音に驚きながらも、エリカ君とほのか君が口を開く。
「そうだね迅君の魔法だね。」
僕の言葉に、皆はあまり要領を得ない顔をしている。
「何をしたんですか?」と、美月が聞いてきた。
「別に凄い事をしたわけじゃないよ。達也君は分かったかい?」
そういいながら、達也君の方を見ると、パッと見いつもと変わらず無表情に見えるが、目は少しばかり驚いている様子だった。
「身体能力強化ですか?」
「流石だね達也君。よく分かったね。」
「正確に言えば分からなかったです。魔法の発動兆候、周りに対して事象改変の跡もない。それなのにあの動き…。わかったのはただの消去法ですよ。」
それでも当ててしまう達也君は流石だね。
「え!?ただ身体能力が上がっただけ?」
エリカ君が驚いている。
まぁ、あんだけ派手な音を立てて、ただ身体能力が上がっただけです。って言ったらそりゃ別の意味でびっくりするだろう。
「確かにただ身体能力が上がっただけかもしれないが、あの、ただでさえ人間離れした迅の身体能力が更に上がったと考えたらそれだけで脅威だろ。」
達也君がわかりやすく解説してくれた。
「「あぁ、確かに。」」
どうやら満場一致で納得してくれたらしい。
このセットを力技で押し切り。
セットカウント2-2の同点。
試合は振り出しに戻った。
「本当はこれで終わるはずだったんだけどなぁ。」
邪悪な笑みを浮かべながら一言漏らす。
本当にここまでやる気は無かったんだよね。
「正直めっちゃ楽しかったからお礼に最後
始まる前までは正直負けてもいいかな?と少し思っていたところもあったが、ちょっと火が着いたわ。
結果最終セット9-0で高宮君はボールを捉える事すらできなく試合は迅君が勝った。
とりあえず言い訳させてください。
めっちゃ仕事忙しくてそれどころじゃありませんでしたスンマセン。
オマケに何度も内容ぶっ飛んでもう良くわからなくなってました。
でもまだ書きたい事沢山あるのに...となったので頑張って書きました。
とりあえず続きは沢山考えているので途中で挫折せずに書ききります!
これからもよろしくお願いします!!