九校戦4日目
俺は今日特に予定も無かったので、雫のスピードシューティング予選を見た後会場をぶらぶらしていた。
「スゲかったなスピードシューティング。」
俺は歩きながらつい、独り言を言ってしまった。
確かに雫も凄いんだけど、デバイスの調整をした達也がヤバかった。ありゃチートアイテムだわ。
あくまで、競技用であり実戦向きではないのだが、発想も凄いし何より無駄がない。
あんなの処理できるやつが使えば誰でも優勝出来ちゃうだろ…
まぁ処理出来るから優勝出来るんだけどな。
それに、雫だけじゃなく達也が担当した残りの二人も余裕で予選を通過した。
「やっぱりデバイスって大事なんだなぁ~」
俺はわかんねーけど。
「ちょっとそこのあなた!」
でも、やっぱり自分の体一つで勝ち上がってくスポ根系のヤツがいても良いと思うんだよね。
「ちょっと聞いていますの!?」
俺はそう言う風になりたい!!
「ちょっと!!」
あん?。
「ん?おれ?」
「ここには私と貴方しかいないでしょ!」
見知らぬ少女が言う。
「わりぃわりぃ、考え事してたわ。んで、なんかようっすか?」
「ここは三校のテントなのだけど?」
どうやら俺はボケーと歩いていて三校のテントの近くに来てしまったらしい。
「こりゃうっかり。ボーッとしすぎたみたいだな。」
そういい俺は回れ右してしれーっと去っていこうと思ったのだが…
「待ちなさい!第一高校の生徒よね?三校のテントの近くにいたってことはスパイかなにか?」
こんなアホなスパイがいるかよ…
俺がその気になれば三校の情報はおろか、あんたの今日の下着の色まで筒抜けだぞ?
「そりゃ誤解だ。俺はただボーッとしてただけだし。不快な思いをさせたなら謝ろう。」
だいたいこう言えば引いてくれるものだ。
「信用出来ないわね!それにあなた2科生よね?まさか第一高校は2科生をスパイに使うなんて…」
ダルいなお前!
そこは素直に受け取ってさよならするとこだろ…
「何事じゃ?」
増援とは…ついてない…
ぞろぞろ二人やって来た。
「申し遅れたわね、私は第三高校一色愛梨と申します。今来た二人は四十九院沓子と十七夜栞よ。」
おいおい、いきなり自己紹介始めたんだけど…
スパイの疑いを掛けてる相手にいきなり自己紹介とか頭弱いのかよ…
それに四十九院沓子って……もしかして。
「お主迅か!?」
やっぱりか!
「やっぱり沓子か!」
まさかこんなとこで知り合いに会うとは。いやはや世間は狭いな。
「じーん!久しいなぁ元気にしとったか?」
沓子は飛び付いて来て俺の首に捕まって一周すると正面に帰って来た。
「元気だぞ~沓子も相変わらずだな。」
頭をわしゃわしゃ撫でてやる。
「あのー沓子さん?紹介していただいてよろしいでしょうか?」
一色と名乗った子が困り顔で言う。
「おぉすまんすまん。コイツは九重迅!第一高校の…なに!?お主2科生なのか?うちに来とれば間違いなく1科生だったろうに。」
おいおいそれはないだろ…俺の制服の紋章を見て気がついたのだろうけど。
「そりゃねぇよ、魔法が使えないヤツが1科生なんてよ」
「うちは実力主義じゃからな!強ければなれる!」
沓子さんや、あまりに適当すぎるやろ…
「少々語弊がありますよ沓子さん。一定の魔法技能がないと1科生にはなれません。」
一色さんが嗜める。
そりゃそうだ。
「それにしても迅が2科生なんて余程第一高校は選手が充実しているんだな。または見る目が無いのか…」
沓子がやれやれといった感じで言う。
「まぁ見る目がない訳じゃないだろ、おれ新人戦出るし。」
「「え!?」」
「まことか!!何に出るんじゃ!?」
「クラウドボールとモノリスコード」
「あなた、クラウドボール優勝経験はありますの?」
俺の一言にすかさず一色さんが目を細めて聞いてきた。
「あるわけ無いじゃん初めてやるんだもん」
俺が真顔で答えると…
「沓子さん、どうやら第一高校は選手が充実してるんではなく足りないみたいですね。2科生、ましてはクラウドボール初心者を出してくるなんて。この競技はそんなに簡単な物じゃありません!なんなら私もクラウドボールに出場しますので、私のプレーをお手本にしても構いませんよ?」
おうおう言ってくれるね。
一色愛梨だったか?こんだけ言うんだ自信があるんだろう。
だったら真由美さん位退屈しない相手もいるかもしれないな。
「そんだけ言うんだから、第三高校は俺を楽しませてくれるだけの人が出てきてくれるんだろ?」
俺がニヤァとする。
「も…勿論ですわ!」
「そうかい、じゃあ言うことはもうないな、沓子は何に出るんだ?」
「バトルボートじゃ!」
「やっぱりそうか、頑張れよ応援してるぞ!」
コイツの家が水を司る古式魔法得意だったからな。
「おう!わしも応援してるぞ迅!」
「あ!それと、一応俺がスパイじゃないって説明しといてくれ」
「なんじゃ?またボケーっとしてなんかやらかしたのか?」
沓子さん鋭い…
「まぁそんなとこだ。それじゃあな」
雫のスピードシューティング決勝みなきゃ!
「迅どこいってたんだよ!」
「ちょっと知り合いに会ってな。話をしてたんだよ」
「その知り合いって九校戦の選手?」
レオ、エリカが話しかけてきた。
「ああ、第三高校の四十九院沓子って子。バトルボートに出るって言ってたからほのかと戦うな!」
ほのかの顔が一瞬強張る。
「強いんですか?」
美月が聞いてくる
「競技を見た訳じゃないから分かんないけど多分良いとこまで行くんじゃないかな。緊張するタイプじゃないから失敗することもないだろうし。会ったら紹介するよ。」
この後競技が始まるまでしばらく喋っていた、
スピードシューティング決勝…
結果から言うと雫が優勝したんだが…
なんと、2位がエイミィ3位が滝川さんと第一高校が表彰台を独占。
喜ばしい事なんだが…
選手もそうだけど、達也無双しすぎじゃね?
なんだか大学の方から新しい魔法を登録したいと打診が来てるらしい。
普通にスゲーよね。
相変わらずのチートっぷりっすね。
第一高校ミーティングルーム…
「男子スピードシューティング…森崎君が準優勝したけど」
「残りの二人は予選落ちか…」
私の言葉に摩利が続く。
「男子と女子で逆の結果になっちゃったわね」
「そんなに悲観しなくても良いと思いますけど。点数では女子の貯金が効いてますし。」
私の言葉に今度は鈴音が続く。
「確かにあまり悲観的になるのは良くないがな…」
十文字君が言う。
「しかし、男子の不振は早打ちだけではない。波乗りでも女子の予選突破二人に対して男子は一人…」
「将来的にズルズル行くと不味いな。」
「確かに明日のクラウドボールはともかく他はそうね…」
私も摩利や十文字君と同意見だ。
「うん?どういうことだ?」
十文字君が聞いてくる。
「なにが?」
なんか変なこと言ったかしら?
「クラウドボールは問題ないのか?」
摩利が不思議そうにしている。
ああ、そう言うことね。
「そう言えば言ってなかったわね。明日のクラウドボールに
迅君が出るじゃない?彼クラウドボールに出る一校選手と試合させてくれって言ってたでしょ?」
「ああ、言ってたな。」
摩利が答える。
「あれ、昨日の競技終わりにやったのよ。新人戦に出る一年から順番に全員と2セットずつ試合をしたんだけど、新人戦に出る一年には1セットも取れずに負けたんだけど、そのあと本選が終わった2、3年は迅君にボコボコにされたわ。一応女子の本選優勝した私ですら1セットも取れなかったわ」
「「!?」」
「真由美が1セットも取れなかったのか!?」
摩利、凄い顔している…そりゃあ驚くわよね…
「1セット目なんて1点も取れなかったのよ。自信無くすわ…」
「そうか、だったら期待できそうだな。」
十文字君がそう言う。
戦ったからわかるけど、期待とかの前にあれに勝てる人は間違いなく人間辞めてるわよ…
「そんだけ強いのにどうして1年生には負けたんでしょう?」
鈴音が首を傾げている。
「慣らすのが目的だったのと、ボコボコにしたら新人戦前なのに自信無くしちゃうと思ったらしいわよ」
「「あぁね…」」
皆でハモっていた。仲良いわね…
新人戦2日目…
今日は待ちに待った新人戦クラウドボール!
俺のユニフォームは勿論甚平!
相手は第五高校らしい。
試合はクラウドボール一回戦最終試合。
「結構客多いな。」
「最後の試合だからな終わった奴も見に来てるんだよ」
達也がそう言う。
「そうだよな!まぁゆったり楽しんで来るよ」
なんて喋っていると…
「お前が俺の最初の相手かウキョキョキョキョ!」
なんだコイツ…なんかムカつく…
「よ…よろしく」
あまりの不快感に思わずどもる。
「相手が2科生とか楽勝だなウキョキョキョキョ」
…
「ってか恥ずかしくねぇーのかよウキョキョキョキョ」
…
「俺だったら絶対出ないね。無様に負けるからウキョキョキョキョ」
…うっ…ぜぇぇえ!!
俺は達也にひっそりと一言言った。
「予定変更だ。一球で終わらす。」
「お…おう」
(めっちゃ殺気でてんな)
「一回戦最終試合、第一高校九重迅君対第五高校モブサキモブ汚君の試合を始めます」
ここには今俺とエリカ、美月、雫、ほのか、深雪、レオ、幹比古、まぁ全員いるな。
「達也君、迅緊張してた?」
エリカがニヤニヤしながら聞いてきた
「いや…殺気立ってたな…」
「え?」
「始まりますよ!」
ほのかが言う。
ブザーがなり、最初のボールは迅の方へ飛んだ。
その瞬間迅の姿がブレ、ボールが消えた。
迅が歩いてコートを去っていく。
「え!?何?どういうこと?」
エリカがテンパる。
「おい!相手を見ろ!」
レオが大きい声で叫ぶ。
相手をよく見ると、顔面にボールがめり込んでいた。
しかもそのボールが出てこないのだ。
相手は立ったまんま動かない。
思わず俺を含め皆が言う。
「「うわぁ…」」
迅が言ってた一球で終わらすってこういうことか…
((絶対怒らせないようにしよう…))
こうして迅君の新人戦初試合は2秒で終わった。
八雲「迅君…やり過ぎだよ…」
なぜ沓子ちゃんと迅君を知り合いにしたかって?
優等生の沓子ちゃんが可愛かったからです!
あとは、あまり原作に関わりがないからです。
ちなみに作者は水波ちゃんと真由美さんも好きです。