「し…勝者、九重君」
私は何が起きたのか分からなかった。
最初試合は私優勢で進んでいた。
迅君は身体能力でボールをラケットで返してくる。
それに対して私は魔法、ダブルバウンドで返していた。
それに、九重君は忍術や幻術を使える。勿論その警戒もしていたので、マルチスコープを開幕から使っていた。
ボールが増えていくにつれて迅君は激しく動き回っていた。
それでも正確に返してくるあたりが人間離れしている。
流石に8個になっても返してくるのには驚いたけど、私の有利は揺るぎないと思っていた。
しかし、9個目のボールが迅君のコート内に放たれた時違和感を感じる。
何故か返したボールがすべて同じタイミングで迅君のコートに入ったのだ。
それも、迅君の持つラケットに向かって吸い寄せられるように一点に。
それを迅君はラケット一振りで9個を同時に打った。
私はその放たれた9個のボールを返すために魔法を展開しようとした。
その瞬間、ボールが加速したかのように一瞬で私の目の前に迫ったように見えた。
勿論びっくりしたが、それでも冷静に魔法を発動させたはずだったのだが、魔法は発動せず9個のボールは私のコートに落ちた。
2セット目は一進一退の攻防で迅君のコートに3個私のコートに2つ落ちていた。
コート内で3つのボールを打ち合う。
私はダブルバウンドの他に別の加速系魔法も混ぜながら試合をリードしていたのだが、あり得ない位バテていた。
最終的には押しきられ逆転され負けてしまった。
「流石真由美さんめっちゃ強かったわ~」
正直この作戦が上手くいかなかった場合成す術なく負けていた。
「いまだに何故負けたか分からないわ…」
「聞きたいですか?」
その一言に真由美さんの他に周りにいた奴等も頷く。
「まぁただの奇策ですけどね。真由美さんが最初からダブルバウンド以外の魔法を使ってたら俺は負けてましたよ。」
「どういうこと?」
真由美さんが首を傾げる
「真由美さん本選でも、ダブルバウンド以外使ってなかったじゃないですか?
だから使えた奇策なんすけど、ダブルバウンドって反射みたいに返ってくるんで、場所もそうですけど、ボールの威力もある程度こっちで調整できるんですよ。
相手が真由美さんじゃなければ、パワーやスピードでゴリ押しするんですけど、スピードシューティング優勝している真由美さんにはどんなに速いボールを打っても知覚能力と魔法力で返されちゃうんですよ。
だから奇策のためにわざわざ調整して全部のボールを、壁にぶつけたり威力を調整して、真由美さんにバレないように、最後俺のラケットに集まるようにしたんです。」
皆呆然としているなか…
「いったい何のためにそんな手の込んだ事をしたんだ?」
桐原先輩が皆の疑問を代弁した。
「意識を逸らすためですよ。真由美さん、最後ボールがいきなり目の前に現れたように見えませんでしたか?」
「見えたわね。9個のボールがいきなり目の前に現れたように…それが一番気になったわ。あれは忍術?」
真由美さんが真剣な顔をして言う
「忍術って言うよりは、手品みたいなもんですね」
「手品?」
「本当は近くに見えたんじゃなくて、
「「!?」」
「あの瞬間、真由美さんは9個のボールを打ち返すためにボールから、一瞬自分の魔法展開に意識をもってかれたと思うんですけど、そのあとボールに意識を戻したときに、視界いっぱいにボールが広がって、それ以外に目がいかなかったんじゃないですか?」
「確かに言われてみれば…」
「それにマルチスコープも使ってたんでよりいっそうボールが
ボールが自分に向かって飛んできているのは分かっているので、ボールが鮮明見えただけで、想定している距離より近いと勘違いしたんですよ。俺としては反射的に目を瞑ってほしかったんですけどね。」
勿論ボールを目立たせるために自分の気配を消して、周りに目が行かないように軽い幻術はかけたけどね。
そこは流石真由美さんと言うべきだ。冷静に対処しようとしていた。
ちなみに最後真由美さんがバテたのは、魔法を併用していたのもあるが、精神的なものも勿論ある。
誰もが魔法を発動できなかったり、その理由が分からなければ精神的に追い詰められる。
その他にも小技として、ダブルバウンドに対してボールに凄まじい回転をかけることによって、ただボールの飛んできた方向に対してだけベクトルを逆転させるのではなく、そのボールの回転にも作用させることによって、ただボールを返させるよりも魔法発動に負荷をかけられるのでは?と思い実行していた。
今回はその辺が上手くハマった感じだ。
「全部迅君の掌の上だったのね…」
真由美さんが疲れたように肩を落とした。
「まぁ俺みたいに普通に魔法を使えない、なんちゃって魔法師は頭を使わないとね!」
「いやいや、その前に身体能力がゴリラの2乗とかどんな悪夢だよ…」
俺の言葉に桐原先輩が呆れながら言う。
鍛えてますから!!
「そんじゃ皆さんありがとうござます!これで新人戦に対して戦いかたや感触も掴めたので、良いとこまで行けそうです」
(いやいや、お前より強いやつがいたらそいつ人間辞めちゃってるから!)
皆が何故か溜息をついていた。
3日目
俺は皆で女子の本選バトルボートを見に来ていた。
渡辺先輩が出場している。
服部先輩が出ている男子の方も見に行きたかったのだが、生憎時間が被っていたので、委員会の上司を優先した。
レースは渡辺先輩がリードするもほぼ団子状態。
「さすが七校。手強い!」
「あれって去年の決勝カードですよね?」
と、となりで雫と美月が喋っている。
観戦スタンドから見える最後のコーナーに差し掛かったとき、俺は何故か嫌な感じがして咄嗟に立ち上がる。
そのとたん何処からか悲鳴が上がる。
「オーバースピードだ!!」
と、誰かが叫ぶ。
渡辺先輩の直ぐ後ろにいた七校の選手がオーバースピードで曲がりきれずそのまま渡辺先輩に突っ込む。
渡辺先輩も何とか対応しようとするが、唐突に水面が不自然に凹み渡辺先輩のボードを飲み込む。
この時には既に俺は走り出していた。
渡辺先輩はバランスを崩し七校選手と激突。
そのままフェンスに飛んでいく。
「間に合え!!」
俺はまず、フェンスと二人の間に体を滑り込ませ、渡辺先輩をキャッチ、それと同時に七校選手も小脇でキャッチし、フェンスを足場に踏みとどまり何とか二人を助ける。
「あっぶねー」
とりあえず二人をおろしたところで運営委員会と達也がやってくる。
七校選手に怪我はなかったが、渡辺先輩の方は肩と足を怪我していた。
肩は七校選手とぶつかったとき、足はボードが飲まれた時に捻ったのだろう。
二人とも気絶していた。
「二人ともたいした怪我はしてないですけど、ショックで気絶しています。大事をとってこの後の競技には絶対出さないで下さい。」
運営委員会の方にそう言い俺は達也を呼び寄せその場を後にした。
「達也、どう思う?」
「事故にしては不自然な事が多かった」
俺の問に、最初から聞かれるのを分かってたかのように達也が返す。
そうだ、あんだけ渡辺先輩について行ける七校選手がブレーキを掛けないわけがない。
ブレーキが間に合わなかったのなら、もう少し何とか曲がろうや、止まろうなどの動作が見れてもよかったのだが、あまりにも唐突に、あたかも
渡辺先輩がバランスを崩したのも、あのときの水面は変だった。
「やっぱりそう思うか…」
「まだ断定はできないがな」
俺の呟きに達也が答える。
「俺は妨害があっと観ている。誰を狙ったのかは定かではないけどな。それが相手の魔法によるものなのか、CADによる細工なのかも分からないが。だけど細工による物という可能性がある以上エンジニアとして達也もデバイス面では警戒しといてくれ。俺は第三者の方を警戒する。」
「分かった。」
その日の夜…
「もしもし」
『やぁ迅君どうしたんだい?』
「親父、早くもちょっかいをだされたよ、うちの高校の先輩が怪我をした。」
『競技中にかい?』
「ああ、随分手が込んでいたように見えたな。俺が間に合わなかったら大惨事になっていた。」
『そうかい…その辺の動きはこっちからも探ってみるよ。何か分かったら連絡するよ』
「分かった。あと、九島の爺さんがいたよ」
『そうかい、なんか言ってた?』
「八雲殿は元気か?って聞かれたよ。意味わかんないくらい元気だっていったら笑ってたよ」
『そっか。そう言えば明日から新人戦だね。』
「ああ…何故かクラウドボールにも出ることになってしまった。」
『おお!そうかい!日程は?』
「2日目だな。」
『……そうか!』
なんだ?今の変な間は。
「まぁそう言う事だからなんだか目立たずにって難しくなったわ」
『だったら逆に目立ちまくって九重寺の事を宣伝してくれてもOKだよ』
ケタケタ笑いながらうちのハゲ親父はふざけた事を言い出した。
「…まさかそんな考え方があったなんて。何だかめっちゃテンション上がってきた!」
『あくまでも、最終手段だよ?一般人には刺激が強すぎる事も起きるかもしれないからね、そういうのは隠密に頼むよ?』
「了解!」
ブチップープー
「2日目の迅君のクラウドボール…絶対見に行こう!!」
そう心に誓ったハゲであった。
オリジナルの展開を入れると話がすすまねぇ…
内容が意味わかんないようになってないか心配です…
あくまでも魔法の知識はよく分かっていません!
なので頭可笑しいこと書いてたらすんません。
次回から新人戦!迅君のゴリラっぷりに御期待ください!あと八雲さんも出す予定です!