お寺の息子   作:龍やん

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11話

 

はい!私九重迅は只今絶賛仕事中です!

 

ブランシュ討伐から約3週間。

 

何度か打ち合わせをし今日が仕事の日です!

 

十師族の会議、しかし今日の内容は会議と言うよりお食事会に近いらしい、族に言う立食パーティー的なやつだ。

 

同い年位の人もいるが、俺はここに仕事として来ているのでお喋りに興じている暇はない。

 

仕事の内容だが特に大したことをするわけではない。

 

今回俺が仕事として仕える七草真由美お嬢様のエスコートだ。

 

まぁ執事を想像していただけば分かりやすいかな

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着致しましたお嬢様」

 

車の後部座席のドアを開け手を取り、真由美さんが車から出てくる。

 

「ありがとう迅」

 

ちなみに真由美さんが俺を迅と呼んでいるのは、この十師族会議で俺の事を九重と呼ばれるのは色々不味いため。

 

ようは、顧客の信用の問題だ。

お忍びを護衛すると言うことは、その人の秘密を知るに等しい、その秘密を知ってる奴が会場にいたら、あまりいい気はしない。九重って聞くだけで敏感に反応する人がいるくらいだ。

 

それに、家の誰が護衛に行ってるかなんて一々覚えてない、だったら最初から九重と呼ばれなければ気がつかれない、なので家の寺では適当な偽名で呼ばせたりなど義務づけられている。

 

俺の場合はまだそんなに任務に着いてないため下の名前で呼んでもらってるけど

 

「迅さんお嬢様をお願いします」

 

名倉さんからインカムが入る

 

「了解しました」

 

本当なら名倉さんが同行するはずなのだが、

「九重様の方がお嬢様も気が楽だと思いますので」

と言われ今回は会場内まで俺が同行することになった。

 

席まで案内して真由美さんを座らせる。

 

「では、私は会場内の警備を確認して参りますので何かあればお呼び下さい」

 

「わかったわ」

 

心なしか少し楽しそうな表情だった

 

 

 

 

 

会場内を回ってる時に…

 

「パサっ」

 

目の前でハンカチを落とした女の人がいた

 

「すみません」

 

すぐに拾って駆け寄り

 

「落とされましたよ」

 

と引き留めハンカチを差し出す

 

「あら、ありがとう」

 

振り返った女性は、大人な美しさと少女のような可愛さ、そしてとても妖しい雰囲気を持った不思議な人だった。

 

「では、失礼します」

 

「待ちなさい」

 

呼び止められただけなのにとても重たい気がした

 

「なんでしょうか?」

 

あくまでニコッとしたまま振り替える

 

「あなた、どこかで会ったかしら?」

 

こんなやつと出会ってたら俺は忘れねーよ、でも知らないから初対面だな、多分…

 

「…申し訳ありません、どこかでお会いしたのかもしれませんが、僕自身覚えがなかったもので…」

 

ここは本当に申し訳無さそうに謝罪しとく

 

「そう…私の勘違いかもしれないわね、引き留めてごめんなさい」

 

「いいえ、お気になさらず、では」

 

俺は取り敢えず立ち去る

 

そのあと会場内をしっかり確認し真由美さんのとこえ戻った

 

 

 

 

 

戻ったのだけど何やら喋っていたので遠くから見ていた

 

 

「今年は息子が第三高校に入ってね、九校戦優勝すると息巻いていたからね」

 

「そうですか、私たちも今年で卒業なので全力で九校戦優勝を目指しています。お互い良い試合ができるといいですね」

 

「おお、いたいた、将輝こっちきて挨拶しなさい。

こいつが今年第三高校に入った息子です、」

 

「一条将輝です」

 

あれが一条家か

 

「第一高校で生徒会長をしてます七草真由美です、よろしくね一条君」

 

「よろしくお願いします」

 

「今九校戦の話をしてたんだよ」

 

「そうだったんですか、今年の第三高校は強いですよ!」

 

「第一高校も今年優秀な一年生が入ってきてくれました、九校戦が楽しみですね」

 

建前って奴っすか、ははは

 

 

 

と思っていたら電話が入った、七草家の当主様からだった

 

「どうされました、当主様?」

 

『どうだい?君の嫌いな十師族たちの会議は』

 

本当いい性格してるよな…別に嫌いじゃないんだからね!

 

「どうと言われましても…特に思うことは御座いません」

 

『そうかい、娘はなにをしてる?』

 

「一条家の当主様とその息子さんとしゃべられてます」

 

「ちょっと代わってくれ」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「第三高校は実力主義なので、1年でもあまり関係なく色んな事を任されますね」

 

一条将輝が何やら第三高校を語っていたが…

 

「お話の途中にすみません、お嬢様当主様からお電話です」

 

野面でぶったぎりました、サーセン

 

「すいませんちょっと失礼します」

 

真由美さんがその場を去って行った

 

「すみません一条様、お話の腰を折ってしまって」

 

取り敢えず謝っとく

 

「いや、気にしてません、」

 

どうやら、人柄は良いそうだ、ほらすぐに囲まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真由美さんを追いかけて行くと、電話は終わったらしいがなんか複雑そうな顔をしていた

 

「どうされましたお嬢様?」

 

「え?あ、大丈夫よ!」

 

そうは見えないが…

 

「そうですか」

 

「あら、あなたさっきの」

 

とても柔らかくそして人を惑わせそうな声がし振り向くとさっきのハンカチの人がいた。

 

「四葉真夜さん!?」

 

うちのお嬢様がめっちゃ驚いていた

 

ってかこの人が四葉の…

 

「あなたは確か弘一さんの娘…真由美さんだったかしら?」

 

凄く興味無さそうに言う

 

「弘一さんは今日は来てないみたいね」

 

「はい、私が代理で来ました」

 

「なるほど、では先ほどハンカチを拾ってくれたあなたは真由美さんの護衛でしたのね」

 

「はい」

 

そこに四葉家の執事であろう人が四葉真夜のもとへ駆け寄ってきた。

 

一言二言交わし…

 

「少し急用ができました、もう少しお喋りしたかったのですがしょうがないですね」

 

あ、結構です!

 

「また会えるのを楽しみにしてるわ」

 

それは、どちらに向けて言ってるのだろうか…

 

「では、さようなら真由美さん、あと……切り裂きジャック(ジャック ザ リッパー)

 

どうやら俺に向けて言ってたらしい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議と言う名のお食事会は終わり、場所は七草邸

 

「はぁ…疲れた…」

 

思わず声に出てしまうくらい精神的に疲れた

 

プルルル

 

電話が鳴った、親父からだった。

 

「もしもし」

 

『お疲れ様迅君、会議はどうだった?』

 

「仕事はちゃんとこなしたよ、色々あったけどな…」

 

『何かあったのかい?』

 

「四葉家の当主さんが来てたよ」

 

『それはまた珍しいね…』

 

「ああ、俺は顔を覚えてなかったからさ、ハンカチを落としたから拾って渡したんだけど、それで目をつけられたみたいでね。懐かしい呼び名で呼ばれたよ…」

 

『大変だったみたいだね』

 

電話先でケラケラ笑っている…

 

「笑うなよ!めっちゃ疲れたよ、おまけに真由美さんにもきかれちゃったし…俺の平穏が音を立てて崩れて行った気がしたよ…」

 

『災難だったね、でも全部過去の事だ、気にしないことだね』

 

「ああ、分かってるさ。明日には帰れるみたいだから」

 

『了解、迅君の好きな海鮮料理食べに行こうか』

 

「ありがとう、テンションちょっとあがったよ」

 

『じゃあ、引き続き頑張って』

 

「はいよ」

 

プープー

 

言うてももうそんなにやることもないんだよな

 

コンコン

 

「どうぞ!」

 

「お疲れ様迅君」

 

「お疲れ様です真由美さん、どうしました?」

 

「いや、なにやってるかなーと思って」

 

ちょっと緊張してるようだ

 

「仕事の報告で電話してました」

 

「そう、迅君はいつくらいから家の仕事を手伝っているの?」

 

「1年半くらい前からですかね」

 

「そう…やっぱり大変?」

 

「まぁ俺はそんなに任される事はないんで、そんなでもないですけど、仕事柄人の身や命を守るんでやっぱり気は張りますよね」

 

仕事終わると疲れたって実感するしな

 

「そっか、なんか同じ年代に思えないのよね」

 

「そうですか?」

 

「うん、ブランシュの時もそうだったけど、面倒くさそうに見えてもやることは人一倍キッチリこなすし、どこか達観してる」

 

そうかな?

 

「そんな事言ったら、達也とかそれこそ真由美さんだって同じですよ」

 

「確かに達也君もそうだけど、どこか冷たいのよね」

 

「まぁヤツは起伏が少ないですしね」

 

「だから、二人を見ると自分が凄く子供っぽく感じちゃうのよ」

 

「そんな事ないと思いますけどね、今日だってしっかり当主さんの代理をしっかり努めてたじゃないですか!凄い立派でしたよ!」

 

急に言われてびっくりしたのか、段々赤くなりうつむきながら…

 

「…ありがとう」

 

照れてやんの

 

「照れてますね?」

 

「しょうがないじゃない!あまり面と向かって言われることもないし、七草家の長女として当たり前にこなさないといけないもの」

 

それを当たり前にこなせる人がいったいどれ程いるのかってことなんだよね

 

「それを当たり前だと思えるのがもう凄いですよ」

 

「迅君は違うの?」

 

「俺の場合は仕事ですからね、割り切ってますよ」

 

「でも、やっぱり辛いと思う事はあるでしょ?」

 

「辛いとは思わないです、無事に終わればいいなとは思いますけどね」

 

「それはそうだけど、少しでも恐怖とか、嫌だとか思ったりしないの?」

 

「割り切ってますからね、真由美さんの家が十師族でその長女だからって言うのとかわんないですよ」

 

「すごいわね…私はそう思えない、どうしても嫌だとか、場合によっては怖いとも思う…

迅君はブランシュのアジトに一人で行った時何とも思わなかったの?」

 

「恐怖的な感情はまったくなかったですね、さっさと終わらそう位に思ってましたね」

 

「それってもう凄いっていうか、普通じゃないわね」

 

普通じゃないね…

 

「普通じゃない…ですか…」

 

「あ、ごめんなさい…」

 

自分がわりと失礼な事を言ってるのに気が付いたらしい

 

「確かに俺は普通ではないですね」

 

「え…?」

 

「まぁ真由美さんは後々知る事になると思うので先に話しときますよ」

 

「え?」

 

「俺は生まれが特殊だったんですよ、詳しくは言えないですけど。」

 

「簡単に説明すると実験動物みたいな感じですかね」

 

「!?…」

 

意味がわからないよ、って表情をしている

 

「普通の人間のようには扱われず、ただ機械のように人を殺すため訓練をし、薬物を投与され、研究者たちの研究意欲を満たすための道具として生きてました」

 

「そして、俺が13歳になったある日、九重八雲に助けられそのまま引き取られました」

 

俺は淡々と語った、真由美さんは凄い戸惑っているようだ

 

まぁそうだよねいきなりこんな、胸くそ悪い話を聞かされたんだそうなるわ…なんか罪悪感が…

 

「そうだったんだ…」

 

「だから、真由美さんが俺の事を普通じゃないって言うのは間違ってないです、ただそれは、俺はそういう過去があったから辛く感じなかったり、割り切れたり出来るってだけなんです。」

 

「逆に俺から見たら真由美さんは、十分すごいですよ」

 

「……そうなんだ…ごめんなさい、良く知りもしないで酷いことを言って」

 

「いいんですよ、真由美さんの反応が普通ですから、それに真由美さんのお父さんは、どこまでかは分からないですが俺の事を知ってたみたいなので」

 

「うん…」

 

「会議の時、当主さんからの電話、あれは俺の事を調べろとかそんな内容だったんじゃないですか?」

 

「……」

 

図星っすね…

 

「世の中、異端なる物は排除されますからね…」

 

「まぁ余り深く考えても仕方ないので気にしないで下さい、真由美さんが悪いんじゃなくて、世の中が悪い、そう考えましょ!」

 

「ごめんなさい…」

 

「俺は謝られるような事を真由美さんからされた訳じゃありません」

 

「…でも」

 

「だったら今度俺に上手い海鮮料理を奢って下さい!」

 

「え!?」

 

「おれ、魚介類が好きなんで!期待してます!はい、この話終わり!」

 

「あ!あと当主さんに、あんまり余計な事するとうっかり命を落としちゃうぞキラッ、とでも言っといてください!」

 

これが、冗談で済めばいいけどね…

 

「フフフ、分かったわ」

 

「そうそう、笑ってた方がいいっすよ辛気臭いの似合わないから!」

 

「ありがとう、じゃあ私は部屋に戻るわ!何かあったら呼んでね」

 

「はい、お休みなさい」

 

「うん!お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

特に何もなく帰って来た七草当主に挨拶をして、俺は家に帰った。

 

 

「ただいまー」

 

「お帰り迅君!お疲れ様」

 

「七草の当主に会ってしっかり挨拶してきたぞ」

 

「そうかいそりゃあ良かった」

 

「やっぱりあまり好かれてはないのな」

 

「なんか言われたかい?」

 

「いやとくには、ただ雰囲気がね…」

 

「そうか、まぁ海鮮料理食べに行こう!」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七草邸…

 

「九重迅はどうだった?」

 

「…」

 

「なにか聞けたか?」

 

「ええ…彼の過去の話をちょっと」

 

「まぁ、時代が生み出した悲しい産物だよ」

 

「あと、あんまり余計な事をするとうっかり命落としちゃうぞキラって言ってたわよ」

 

「マジで?」

 

 

しばらく眠れない夜を経験する七草家当主であった




本当はもっと早く投稿したかった…

ってかやっと書き終わった…

てか、文字数が…

取り敢えず入学編終わり!



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