生命をやり直す為に   作:望夢

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みんなここにいるを目指してみたいけど、それじゃあファフナーじゃなくなっちゃう気がしなくもないけど、一応ひとつの犠牲を回避しちゃってみた。


生命をやり直す為に6

 

 竜宮島、アルヴィスCDCではスフィンクス型C型種によって破壊される島の対応に追われてい た。

 

 フェストゥムの複数同時侵攻。想定していな かった訳ではない。しかしそれに対応するには圧倒的に準備不足だった。

 

 元々、不完全な状態で敵を島に招いてしまった。危機回避の為の作戦も、多くの犠牲を支払って手に入れられたのは半年という時間。

 

 正規の訓練を受けていたパイロットは戦う前に喪い、今のパイロットは訓練を始めたばかりのひとりの少年だけ。他のパイロット候補たちも居るが、とても実戦に出せる状態ではなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ、早く竜宮島に戻らないとならないのに」

 

 スフィンクス型A型種を1体倒すだけでも精一杯だというのに、マークエルフを駆る真壁一騎は3体のスフィンクス型A型種を、島の防衛兵器であるノルンとファフナーの飛行支援機であるリンドブルムと連携して迎撃していた。

 

 島に新たな敵が現れた事は一騎の耳にも入っている。

 

 ファフナーのパイロットは自分だけしか居ない。こうして島の外で戦ってしまっている今、島を守るファフナーが居ない。

 

 それは一騎に焦りを生んでいた。

 

『落ち着けマークエルフ、島の防衛にはマークゼクスが出ている。今は目の前の敵に集中しろ』

 

 その焦りはクロッシングで繋がっているジークフリード・システムの総士にも伝わっている。

 

「マークゼクスって、誰が乗ってるんだ?」

 

 パイロット候補生に関しては総士に言われて目を通したが、今訓練を受けている4人の中にマークゼクスに乗る予定のパイロットは居ない。

 

『……今は目の前の敵を倒すんだ。島の方は心配ない。俄には信じがたいが、新国連側のファフナーが救援に駆けつけている』

 

 一瞬マークゼクスのパイロットを明かそうかと迷う総士だったが、身体の弱い彼女がマークゼクスに乗っていると知れば一騎が余計に焦りかねない事を考慮し、総士は一騎に目の前の敵を倒す事だけに傾注出来る様に言葉を紡ぐ。

 

 まだ新国連のファフナーと通信したわけではないが、今の島の現状は多少の不安要素はあれど来援を断れる余裕はない 。

 

「島以外のファフナーが……?」

 

『そうだ。だから今は集中しろ。でなければお前が倒される』

 

 大切な友にその様な言葉を送ることしか出来ない自身の無力さが歯痒い。ファフナーに乗る事が出来れば今すぐにでも戦場に赴いて仲間と共に戦いたい気持ちは、総士の中に膨れ上がっていくばかりだ。

 

 それでも飛び出す事はせずに、座してジークフリード・システムの中から少しでも戦況を有利にする為に思考をフルで回転させる。

 

 だがどう思考を巡らせても、あちらを立てればこちらが立たず。こちらを立てればあちらが立たずという袋小路に陥りそうになる思考を再考し、なにか方法はないかと模索する。しかし現状を打開するにはやはり圧倒的に動かせる有効な戦力が不足していた。

 

 最悪、ファフナー1機を犠牲に、気化爆弾のフェンリルを使いフェストゥムを倒す事で片方の戦況を決着させようという案まで考えつく始末だった。

 

 確かにそれで今を切り抜けられるが、その今後の事を考えればベストとは言えない。島で保管しているコアに限りがある以上、可能な限りファフナーの損失は防がなければならない。

 

『…ザザッ……こち…は、人類…参謀…部直属、特務隊、ペルセウス隊所属、マナ・バートランド。戦線に加わります』

 

 リンドブルムの回線を通じて、総士の耳に聞こえてきたのは聞き覚えのある少女の声だった。

 

 しかしそんなはずはない。その彼女は今自身の足下のCDCでオペレーターをしているはずだ。

 

「人類軍のファフナーか」

 

 ジークフリード・システムの中で総士は呟いた。蒼く彩られた細身の機体。背中に四角柱のブースターを背負うファフナーは、手に持つライフルから弾丸を放つが、その弾丸はスフィンクス型A型種の身体に強い衝撃を与えて後退させるが、身体を貫くには至らなかった。

 

「あの距離から(あて)るのか……」

 

 見たところ中距離支援用のライフルの様だが、それをかなり距離の離れている遠距離から放っていた。

 

 直撃を受けた2体のスフィンクス型A型種が人類軍のファフナーの方へ向かっていく。

 

「敵が……」

 

 敵を倒すのではなく、敵の注意を引き付ける行動。スフィンクス型が標的を変えると直ぐ様一定の距離を保ちつつ射撃を加えて牽引する様に人類軍のファフナーは放れていく。

 

『一騎! 今の内に』

 

「ああ。……でも、向こうのファフナーは」

 

『今は自分の事を考えろ。スフィンクス型1体なら、そこまで時間は掛からないはずだ』

 

「助けに行きたきゃ、目の前の敵を倒してからか」

 

 自分の事は無頓着で、周りの者を助けようとする姿勢はパイロットとしてあまり褒められるべきではないだろう。特に竜宮島は戦力に限りがある。

 

 目の前のスフィンクス型を倒した後、速やかに島に戻ってきて欲しいのだが、島にも救援に人類軍のファフナーが現れ、マークゼクスと共闘し、スフィンクス型C型種を追い詰めている。

 

 先の切迫していた状況から一転、僅かばかりの余裕がある今は一騎を人類軍のファフナーへの援護に向かわせる事も出来る。

 

「これでっ、どうだああああ!!」

 

 マークエルフのルガーランスが、スフィンクス型A型種の胸を刺し貫き、そのコアを撃ち抜く。

 

「総士、島は!?」

 

 消え去るスフィンクス型には目もくれず、一騎の言葉が総士の頭に響く。

 

『こちらももうじきカタが着く』

 

 マークゼクスの援護を受け、上空から強襲を仕掛ける蒼と白に彩られたファフナー。

 

 ルガーランスを突き刺し、暴れるスフィンクス型C型種の放ったワームスフィアに右足を持っていかれるが、マークゼクスがマインブレードを手にしながらぶつかり注意が逸れた時、ルガーランスに似た形状の――ティターン・モデルも使っていたガンドレイクを突き刺し、コアを撃ち貫くと、島の脅威は去った。

 

「なら、俺は助けてくれたファフナーの方に向かう」

 

『……ああ』

 

 人類軍に借りを作ったままでは、そこから切り込まれかねない。ならば出来るだけその借りを精算しておく必要がある。真壁司令も今回の事には否とは言わないだろう。

 

 

 

 


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