この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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今回はほぼオリジナルで、ブラックファングとの戦闘になります
一応、とある人物の気配だけ登場します



第八話

ゾンビメーカーの騒ぎが合った次の日

 

今日はキャベツ収穫の時の報酬が支払われると言う事で、朝早くから多くの冒険者達がギルドに顔を出していた

もちろん、俺もその中の一人だ

 

「さて、報酬も貰ったし、朝飯食ってクエストにも出かけるかな」

 

クエストボードで依頼を確認しようと思い、そちらの方に移動しようとすると

 

「なんですってええええ!?」

 

突然ギルド内に聞き覚えのある声が響き渡った

 

あまり関わり合いたくないが、気になってしまったものはしょうがない

俺は向きを変え、カズマ達の下へ向かう

 

「カズマ、アクアに一体何があったんだ?」

 

「さあな、だが面倒事なのは確かだ」

 

ある意味絶対的な信頼を得ているな、あの駄女神は…

 

「なんでレタスが交じってるのよ!!」

 

「わ、私に言われましても!」

 

ルナさんも大変だよな、あんな奴に絡まれるなんて

 

アクアは諦めたのか、こっちに近づいてくる

 

「カーズマさんっ!今回の報酬は、おいくら万円?」

 

「……百万ちょい」

 

「「「ひゃっ!」」」

 

カズマのパーティメンバーが驚き絶句している

 

キャベツ収穫のクエストってボーナスかと思ってたが、この反応を見る限りそうでもない気がしてきたな

 

「カズマ様ー!前から思ってたんだけれど、あなたってその、そこはかとなくいい感じよね!」

 

「特に褒める所が思いつかないなら無理すんな」

 

そんな微妙な褒め方じゃなかったら、まだ借りられる可能性は合ったかもな

少なくとも俺には通じんが、貸す相手はちゃんと見極める

 

その後のやり取りも聞いてはいたが、アクアはこの酒場に十万近いツケがあるそうだ

てか十万も貰えなかったって事は、キャベツは十玉以下しか収穫できなかったって事になるな

 

めぐみんやダクネスの方に眼をやると、杖が新しくなっていたり、鎧も新調されている様だった

つまりアクアだけがこんな目にあっていると言う事だろう

女神なのになんて運の無さだ…

 

「よし分かった!貸してやるから黙ろうか!!」

 

何か弱みを握られたのか、結局カズマはアクアに金を貸すことになったらしい

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「カズマ、早速討伐に向かいましょう!新調した杖の威力を試すのです!!」

 

「そうだな、俺もゾンビメーカー討伐じゃ、結局覚えたてのスキルを試す暇もなかったしな。とりあえず、掲示板の依頼でも見てみるか」

 

カズマの意見に、全員が掲示板へと移動する

 

が、しかし……

 

「何だこれ、依頼が殆ど無いじゃないか」

 

普段なら掲示板に多くの依頼書が貼られているものだが、今日はほんの数枚しか張り出されていなかった

 

「ルナさん、今日の依頼って少なくありませんか?」

 

俺は近くにいたルナさんに、この依頼の少なさについて聞いてみることにした

 

「…申し訳ありません。実は最近、魔王の幹部らしき者が、街の近くの小城に住み着きまして。その影響で、この近辺の弱いモンスター達は隠れてしまい、仕事が激減してしまったんです」

 

かなり申し訳なさそうに説明してくれた

 

他の冒険者からも苦情的なものがあったのだろうか?

しかし、コレばっかりはルナさんを責めても仕方ない事だからな

 

俺は軽く礼を伝え掲示板の前にいるカズマ達に事情を説明した

 

カズマ達は残っている高難易度のクエストを受けるのは危険だと判断し、撤収してしまった

 

掲示板に残っている依頼で達成できそうなものはないかと物色してみるが

どれもこれも俺にはちょっとキツイものばかりだった

 

「でも何かやらないと金がないからなぁ」

 

実は最近、そろそろウィズの店を出ようかと考えていた

初めは宿でも取ろうかと思ったが、思いのほか高く諦めた

ならばどうすればいいかと、散々考えた結果

 

自分の家を持てばいい、と思い至った

 

自分でもとんでもない結論に達したなとしみじみ思う

一応、空き家を色々見て回ったが、中々俺好みの家は見付からなかったのは、ちょっとした誤算だ

 

そもそもこの世界に、日本風な家がある事を期待した俺が馬鹿だった

この中世的な街中になぜ、日本風な家があると思ってしまったのか

 

それでも俺は諦めきれず、とある小説で出て来た「無いんだったら自分で作ればいいのよ!」と言う、某団長様の言葉を思い出し

その手があったか!と、全力で鍛冶スキルを習得した

 

これにより大工工事がいとも簡単に出来るようになった

テストと言う事で、ウィズの店の棚や看板などを新しくしたり

色々試して、どうにか瓦なども造れる事を確認した

 

なので今は、土地や自分の家を造る資材の為に資金がいるのだ

 

…逆に考えれば今この状況は資金を稼ぐ良いチャンスなのでは?

 

高難易度の依頼しかない、つまり達成してしまえば簡単に稼ぐ事が出来る

 

「………よし、これに行くか」

 

俺はブラックファングと呼ばれる。巨大熊討伐に向かった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

潜伏スキルを使って茂みに隠れているが、これはヤバい

 

正直ここまで巨大とは思わなかった

 

一年ほど前に二.五メートル、四百キロのヒグマが発見されたと、ニュースで見た事があったが

コイツは優に四~五メートル程はあるだろう

実際こんなにデカい熊を見たら、何も考えられず直ぐに逃げ出すだろうな

 

ズシンッズシンッと、一歩一歩の音が尋常じゃない恐怖心を煽り立てる

 

一瞬だけ目が合った瞬間、死を覚悟したぐらいだ

 

「……しかしコイツを倒せば六十万エリス、地道に稼ぐより随分と楽ができる」

 

自分にそう言い聞かせ、テン・コマンドメンツをシルファリオンへ変化させ、タイミングを計る

 

キョロキョロと辺りを見渡しているところを見ると、完全に俺を見失っている

チャンスは一回しかないだろう

 

……というか俺の精神が持たん、あんな巨大な熊を前にして逃げ出さないだけでも褒めて欲しいものだ

 

一撫でされれば俺の体は簡単にバラバラになるだろう

こんな人気の無い山の中で死ぬのは真っ平ごめんだ

 

距離は目算で十メートル程か…

 

熊は俺のいる位置から徐々に離れ始めている

 

俺は今の距離を保ちつつ、ゆっくりと移動し、熊の視覚に回り込む事に成功した

 

ゆっくりと深呼吸し、どう攻撃するか手順をイメージで確認し、シルファリオンを熊に向けて構え

熊めがけて駆け出した

 

俺の潜伏スキルが外れるのと同時に巨大熊がこちらに気付き、咆哮を上げる

一瞬怯みかけたが、どうにか踏ん張る

 

巨大熊が振り向きざまに右前脚で俺を薙ぎ払おうと襲ってくるが、俺はそれをジャンプし

巨大熊が四つん這いだった事も幸いし、飛び越える形になった

 

考えていた作戦とは違うが、このチャンスを逃す訳にはいかない

 

俺は咄嗟にシルファリオンを全力で振り、熊の背中に二十四発の斬撃を叩き込んだ

 

「グアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

巨大熊は苦しみ悲鳴を上げる。俺は着地と同時に再度、怯んでいる熊めがけて突っ込む

 

「一気に終わらせてやるぜ!」

 

エクスプロージョンに変化させ、何度も剣を振り、休む暇もなく熊の体が爆発してゆく

 

流石に俺自身が爆発に耐えられなくなってきたので、一度距離を取る

 

「グルルルルッ!」

 

煙は晴れてはいないが、唸り声が聞こえてくる

 

手を休めれば反撃されて勝つ確率が一気に下がる

そう思い、俺は次の技を使う

 

「爆・速・連携!爆龍の十二翼!!連弾!!」

 

俺は爆竜の十二翼を何度も発動させ、次々と無数の爆撃が襲い

爆煙の中から熊の悲鳴が聞こえてくる

 

「……ハァ、ハァ、ハァッ、やったか?」

 

熊の声が聞こえなくなったところで手を止め、煙が晴れるのを待つことにしたが

 

煙が晴れる瞬間、ものすごいスピードで立ち上がった熊が襲い掛かってきた

 

「――っ!!」

 

咄嗟に元の鉄の剣でガードするが、その衝撃は凄まじく、俺は後ろの木に叩き付けられた

 

「がっ!ゲホッ…くそ」

 

その衝撃に、一瞬だけ意識が飛んだが

俺は膝をつき、剣にしがみ付いて、どうにか倒れる事だけは回避できた

だがもう、ここから逃げ出す体力はない

木に叩き付けられた時に切ってしまったのか、腕や頭から血が流れ出ている

そのせいか、目も霞んで見える

 

どうせ死ぬならガードなんてしないで、おとなしくバラバラにされた方がマシだったかもなと、そう思いながら熊の方に眼をやるが

 

様子がおかしい、熊はこちらに近寄ってくる様子はなく、その場に立ち止まっている

それに巨大な体を支えている脚はプルプルと震えている

 

それを確認した瞬間、熊はズシンッ!!と地を揺るがしながら、俺の目の前に倒れこんだ

 

「…なん…だ?」

 

俺は何が起こったのか理解するまで、少し時間が掛かったが

巨大熊が目を見開き、舌をダラリと垂らしているのを見て、熊が絶命しているのを確認する事が出来た

 

そしてその熊の背中には、俺が付けたものではない、別の傷跡があった

 

つまり俺は誰かに助けられたと言う事になる

 

「…一体誰が助けてくれたんだ?」

 

俺は即座に辺りを見渡すが、人の気配なんてものは無かった

 

声やスキル名を聞く事が出来たら、それを手掛かりに探すことも出来ただろうけど

それが聞こえなかったって事は、俺が一瞬意識を失った時に発動させたのだろう

 

「……はぁ、考えても仕方がない。とりあえずギルドに報告だな」

 

俺は回復ポーションを使って、ある程度回復した後

街へと戻り、報告を済ませた

 

報酬金は俺が倒した訳ではないので断ったのだが、倒した人物が特定できない為、俺が倒したと言う事になるらしく

報酬金を受け取ってしまった

 

嬉しいには嬉しいが、どうにも納得いかないので

いつか助けてくれた人に会えたら、この報酬金は譲ろうと思った

 

因みに、血だらけのまま魔道具店に帰ってきた俺を見て、ウィズが悲鳴を上げたのは

また別の話




戦闘シーンを上手く書けず申し訳ない…
もう少し長く書きたかった

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