この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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アニメ版ではカットされてしまったゾンビメーカーの話です
お楽しみください!


第七話

ウィズに街の外れにある共同墓地に付いて来て欲しいと頼まれて数日が経過していた

 

「ツバサさん。以前話した頼み事、今夜いいですか?」

 

「ああ、良いぜ。ところで、何で墓地に行くんだ?しかも夜に」

 

「あまり街の人に見られたくないので、詳しいことは墓地に移動しながら話します」

 

そういうとウィズは店の方へと戻って行った

 

ふむ、夜までどうするかな

とりあえず冒険者ギルドに顔を出してみるか

 

ギルドに向かっている途中、武具店から見覚えのある二人組が出てくるのが見えた

 

「あれ、カズマか?」

 

「ん?ああ、ツバサか」

 

カズマの恰好はこれまでのジャージ姿ではなく、この世界の服装

つまり冒険者の恰好をしていた

 

「これで俺も、ちゃんとした冒険者らしく見えるだろ」

 

「そうだな、ジャージ姿じゃ恰好付かなかったからな」

 

「それに俺、初級魔法も覚えたんだぜ!これからは魔法剣士っぽくいこうと思ってさ

 行くぜ、クリエイトウォーター!」

 

カズマは近くの川めがけてスキルを発動させた

 

「へぇ~、なんか便利そうな魔法だな」

 

「興味があるなら俺が教えてやってもいいぞ」

 

「……ふむ、俺はいいや、今のところ魔法がいるって状況でもないし」

 

折角の誘いだったが断らせてもらった

覚えておいて損はないが、今あるポイントは何かしらの為に取っておきたかった

 

「じゃあ覚えたくなったら何時でも言ってくれよ。ただし、授業料はもらうけどな」

 

「初級魔法なのにせこいな」

 

「なんとでも言え、俺の懐はいつでも寂しいんだよ」

 

なんか聞いてて可哀想になってきた

 

「あ、そうだツバサ、両手剣スキル持ってるだろ?今度教えてくれよ」

 

「は?そんなの持ってないぞ」

 

「「えっ?」」

 

今まで黙っていたアクアまで声を上げる

 

「…両手剣スキルを持ってないって、どういうこと?普通スキルがないと、命中率なんて皆無なんですけど」

 

そういうものなのか

……ってあれ?てことはもしかして、ダクネスは両手剣スキルを持ってないって事になるんじゃ

仮にもクルセイダーだろ、持ってるのが普通じゃないのか?

 

「ツバサはスキルなしで、アレだけの剣技が使えるのか」

 

「いや、多分『聖石使い』ってスキルのおかげだと思う」

 

「聖石使い?聞いたことないな」

 

「それもそうだろ、冒険者カードを貰った時には既に持ってたんだからな

 固有スキルってやつだと思うぞ」

 

おそらくレイヴを使用するにあたって必要なスキルだと思っている

 

「固有スキルか、羨ましい」

 

カズマが物欲しそうな目でこちらを見てくる

 

「自業自得だろ、そこの女神を連れて来たんだから」

 

その後も他愛ない話をしながら冒険者ギルドに向かった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「どうだ?」

 

「おおっ、見違えたではないか」

 

「カズマがちゃんとした冒険者に見えるのです」

 

ギルドに着くとめぐみんとダクネスがいた

 

「はっはー、これでいっぱしの冒険者に見えるだろ」

 

カズマは早速メンバーに見せびらかしている

 

「キャベツ狩りの時に知り合った剣士や魔法使いから、片手剣スキルや初級魔法を教えて貰ったからな

 盾は持たずに、魔法剣士みたいなスタイルで行こうと思う」

 

「では早速、討伐に行きましょう!」

 

「そうだな、じゃあ、ジャイアント・トードが繁殖期に入っていて、街の近場に出没してるらしいから『カエルはやめましょう!!』」

 

アクアとめぐみんがカズマの言葉をさえぎって拒否してきた

 

「ああ、そういや二人とも頭からぱっくりいかれてたもんな

 流石にトラウマになるわな」

 

「それならアンデッド狩りなどどうだろうか?」

 

アクアとめぐみんが頭を抱えている最中、ダクネスがクエストの提案をしてきた

 

「「アンデッド狩り?」」

 

なんでも、ゾンビメーカーなるアンデッドが出没し始めたらしく、街に被害が出る前に討伐してほしいという内容のものだった

ゾンビメーカーとは、死体に乗り移ってゾンビを操る悪霊らしい

出現時間は夜か、って事は俺は今回参加できそうもないな

 

「ツバサはどうする?今回は俺達とパーティ組むか?」

 

「悪いなカズマ、今日の夜は用事が入ってるんだ」

 

「そうか、まぁ無理しなくても、俺達だけで討伐できそうな相手だから問題はないか

 よし、そうと決まれば今夜の準備だ!」

 

そう言ってカズマ達はゾンビメーカー討伐の準備へ出かけた

それを見送った後俺は、ジャイアント・トードのクエストへと向かった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ジャイアント・トードを後一匹潰せば依頼達成か

 

俺はテン・コマンドメンツを見て考える

 

「やっぱ今のうちに練習しといたほうがいいよな」

 

俺は最後の一匹にとあるものを試してみることにした

 

「行くぜ、爆・速・連携!爆龍の十二翼!!」

 

俺はカエルに向かって十二発の音速爆撃技を放った

無事全弾命中し、煙が晴れるとカエルは黒焦げの状態でひっくりかえっていた

 

「よし、一度覚えれば簡単に出せるな

 依頼も達成したし、ギルドに報告してウィズの手伝いかな?」

 

俺は今後の予定を確認しつつギルドへ向かった

報告や討伐したカエルの回収依頼などを行った後、ウィズが出かけるというまで店の手伝いに徹した

 

「では、そろそろ墓地へ向かいましょうか」

 

店の片付けが終わった所でウィズがそう言ってきた

 

「了解、何か準備するものはあるのか?」

 

「いつものように装備をしっかりしてくれれば問題ないですよ」

 

「そうか、じゃあすぐに準備済ませるな」

 

俺は手早く準備を済ませ、店の外で待っているウィズと合流する

 

「それでは行きましょうか」

 

俺はウィズに連れられ、街の外れにある墓地へと向かい始めた

その道中、今回俺を連れていく理由について、ウィズが説明してくれた

 

「実は今から行く墓地には、お金がなくロクに供養してもらえず彷徨っている魂が多いいんです」

 

「確か街のプリーストがそういう供養をするんだったか?そっちに任せればいいんじゃないのか?」

 

「…その、街のプリーストさん達はお金が第一でして、お金のない人達は後回しにされるんです。それにこんな外れの方まで出向く人も居ませんし」

 

「なるほどな。でもウィズは金ももらわずボランティアでやってるんだろ?何故だ」

 

ウィズの表情が一瞬暗くなった気がしたが、すぐ元の表情に戻り

何かを決意したかのような表情で俺の前に出て立ち止まった

 

「あの、これから言う事は他言無用でお願いします!」

 

「……他言無用の話を居候の俺にしてもいいのか?」

 

「ツバサさんなら誰彼構わず言いふらすような真似はしないって、一緒に住んでて分かりましたから」

 

俺はいつの間にやら相当な信頼を得ていたようだ

 

「分かった。誰にも言いふらさないし、ウィズに対する態度も変えないよ」

 

その言葉にウィズは安堵し、口を開いた

 

「実は私、リッチーなんです」

 

……………は?

 

「……えっと、アンデッドの王と言えば分かりますか?」

 

「いや、大丈夫だ。意味は理解してるから

 そうかウィズってリッチーだったのか」

 

「あれ?それだけですか?もっと驚かれるかと思ってたんですが」

 

ああ、俺の反応が薄かったから戸惑っていたのか

 

「約束しただろ、ウィズに対する態度は変えないって、それに街の人とあれだけ仲良くやってるんだ。害が無い事ぐらいわかるよ

 それで、今回俺を連れて来た理由は?」

 

「え?あ、そ、そうですね。えっと、それでですね、リッチーの私としては哀れと思い、こうして定期的に出向いていたのですが、私の魔力に反応して目覚めちゃう死体達を討伐しに、冒険者の方達が来るようになってから、落ち着いて除霊が出来なくなってしまったんです」

 

「それで俺に、護衛に付いて欲しいって事か。自分がリッチーだと知られない為に」

 

「そう言う事です」

 

確かにウィズがリッチーだとバレたら街は大騒ぎになるだろうな

モンスターなのだから倒せという輩も現れるだろう

 

俺が護衛を了承したところで、共同墓地へと到着した

 

「それでは、これから除霊を行いますので、ツバサさんは周囲の見回りをお願いします」

 

「了解だ、何かあったら呼んでくれ、すぐに戻って来る」

 

俺はウィズと別れて墓地の中を歩き始める

 

やっぱ異世界でも夜の墓地ってのは気味が悪いな

それに加えて土の中から這い出てくるゾンビが一層恐怖感を与えてくれる

これがウィズの言っていた、勝手に起きてくるっていう現象か

確かに、こんな事が起こってるのに冒険者が動かない訳ないな

 

ここまで考えたところで、俺はある疑問が浮かんできた

 

冒険者が動くと言う事はクエストが設定されているはずだ

……確かカズマ達が昼間、ゾンビメーカー討伐のクエストを受けるとか言っていたような

 

っ!やばい、早くウィズのところに戻ら――

 

「ちょっとあんたぁぁぁ!!」

 

俺が気付いた時には既に手遅れだったようで、共同墓地にアクアの叫び声が響き渡った

 

大急ぎで戻ると、アクアにゾンビ諸共ウィズが浄化され始めていた

その光景を見た瞬間、俺はシルファリオンを構えアクアに突っ込んで行った

 

「何やってんだてめぇはっ!!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ありがとうございました…」

 

「いや、間に合ってよかったよ」

 

どうにかウィズが成仏せずに済んで安堵した

 

「なぁツバサ、どうしてアンデッドを助けたのか聞かせてほしいんだが」

 

ちょっと困惑気味にカズマが聞いてくる

まぁ当然こんな反応になるよな

 

「カズマっそんな奴の言い分を聞く必要はないわ!アンデッドに味方する冒険者なんて、この場で葬った方がいいわよ!」

 

「お前は黙ってろ」

 

俺はウィズに説明してもらった事をそのままカズマ達に伝えた

その際、俺がウィズと出会った経緯なども含めて

カズマ達ならウィズの正体を明かしても分かってもらえるだろう

 

「だからツバサがウィズの護衛に付いたって事か」

 

「そう言う事だ、別に悪事を働いてる訳じゃないから見逃してくれないか?」

 

「話はわかった。でもゾンビを呼び起こすのだけは止めてくれないか?

 俺達はゾンビメーカーの討伐で来たんだし」

 

「あー、その事なんだが」

 

「あの子達は呼び起こしてるわけではなくて」

 

俺が説明しようと思ったんだが、ウィズが説明してくれるようだった

ただアクアに怯えて俺の背に隠れながらだが

 

「死体が私の魔力に反応して、勝手に目覚めちゃうんです

 私としては、ここで彷徨う魂が天に還ってくれれば、来る理由もなくなるのですが」

 

その言葉に対し、俺とカズマは少し考え

 

同時にアクアの方を向いた

 

「え?なに、二人とも」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「よかったな、アクアが定期的に除霊に行ってくれることになって」

 

「はい、悩みが一つ解決してスッキリしました」

 

「そりゃよかった。……ところでウィズ、実はリッチーだって聞いた時から疑問に思ってた事があるんだが」

 

俺は一つの疑問をウィズに振ってみることにした

 

「何でしょうか」

 

「リッチーってアンデッドの王だろ?て事は、魔王と繋がりが合ったりするのか?」

 

「あ、まだ言ってませんでしたね。私、魔王軍の幹部の一人なんです」

 

………マジか

もしやとは思っていたが、これはリッチーだと明かされた時よりも驚きが隠せねぇ

この事がアクアに知れたら大変なことになるな

いや、アクアだけじゃなくて、冒険者全員にバレる訳にはいかないな

 

「…とんでもない事実を知っちまったな」

 

「墓地へ行くときも言いましたけど、ツバサさんが信用できる人だから話したんですよ」

 

無垢な笑顔でそう言ってもらえるのは嬉しいが、信用し過ぎるのもどうかと思うんだがな

そう思い、俺は絶対に言いふらさないと固く誓った

 







なんかメインで書いてる小説よりも生き生きと書けるのは気のせいだろうか……

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