この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第五話

カズマがクリスに潜伏と敵感知をギルド内で教えて貰った後、俺たちは冒険者ギルドの外に出て、次のスキルを教えてもらう事になった

 

「さて、それじゃあたしのイチオシのスキル、窃盗をやってみようか

 これは、対象の持ち物を何でも一つ奪い取るスキルだよ

 相手がしっかり握っている武器だろうが、鞄の奥にしまい込んだサイフだろうが、何でも一つ、ランダムで奪い取る

 スキルの成功確率は、スキルレベルとステータスの幸運に依存する

 強敵なモンスターと相対した時とか、モンスターの武器を奪ったり、もしくは大事に取っといたお宝だけかっさらって後は逃げたり

 色々と使い勝手のいいスキルだよ」

 

俺はもともと潜伏と敵感知のスキルは持っていたから、あまり興味なかったが

なるほど、これは使えるかもしれないな

 

いざと言う時に敵の武器を奪えるのは武器になる

まぁ、幸運に依存するスキルだから確実に奪えないのがデメリットだけどな

 

「じゃあ、まずはキミに使ってみるからね。スティール!」

 

クリスが手を前に出して叫ぶと同時にスキルが発動し、その手には小さな袋が握られていた

 

「あっ!俺のサイフ!」

 

カズマの財布だったのか

 

「どうだい?これがスティールだよ」

 

クリスはカズマに財布を返そうとしたが、その手を戻し

 

「ねぇ二人とも、私と勝負しない?キミ達も窃盗スキルを覚えて、あたしから何か一つ奪ってみなよ」

 

「お、おい、それはあんまりではないか?」

 

クリスの後ろからダクネスが心配してくれている

 

だがこんな面白そうな事、断れるかってんだ!

 

俺は何も返事もせず冒険者カードを取り出し、迷う事なく窃盗スキルを習得した

 

「どうやら君はやる気みたいだね。で、そっちのキミはどうするのかな?」

 

「……もちろんやりますとも!」

 

カズマも俺と同じように冒険者カードを取り出し、スキルを確認し始める

 

「えっと、敵感知・潜伏・窃盗・花鳥風月、……花鳥風月?」

 

花鳥風月なんて合ったか?いや、無かったはずだ

 

カズマは一体どこでそんなスキルを

 

「それは、さっきギルドであなたの仲間が宴会芸スキルだ」

 

仰々しい名前だな!?宴会芸のくせに

 

「宴会芸のくせに五ポイント!高っ!!…これはいらないな」

 

他のスキルは一ポイントなのに五ポイントも消費する意味って何?

てか、アクアは宴会芸スキルを全て取ったとか言ってたな

どれだけ初期ポイントがあったのか気になるぞ

 

カズマは習ったスキルを習得し終え、その顔に笑みを浮かべた

 

「さぁ!それで盗賊スキルはキミ達のもの、いつでもどうぞ!」

 

「じゃあ俺から行かせてもらうぞ」

 

先にスキルを習得した俺がクリスの前に立つ

 

「当たりはこのマジックダガー、四十万エリスはくだらない一品だよ」

 

四十万と聞いてカズマの目の色が変わった

確実に狙いに行くやつだな

 

「そして残念賞は、この石だ!」

 

クリスは両手いっぱいに石が乗せられていた

 

「ああっ!きったねぇ!」

 

カズマが抗議の声を上げるも、クリスは動じてはいない

むしろ楽しそうに笑っている

 

流石は弱肉強食の異世界だ

騙される方が悪い

 

……まぁ俺には関係ないがな

 

「あっと忘れてた。スティール!」

 

「えっ!?」

 

「キミにはまだスティールしてなかったからね

 これで公平だろ?」

 

クソッ!人が油断してる隙に!

 

「これって宝石かい?」

 

クリスの手には十字の形をしている見覚えのある宝石が乗っていた

 

――っ!!アレはまさか!!

 

俺は急いでテン・コマンドメンツを確認するが、そこには窪みしかなく

レイヴがどこにもなかった

 

「へぇ、キミのその焦りっぷり、相当大事な物らしいね」

 

「……無理を承知で頼むが、返してくれないか?とても大切な物なんだ」

 

「スティールで奪ってみなよ」

 

………くそ、これはカズマ以上に気合い入れないと今後に影響がでるぞ!

 

「……いくぞ、スティール!!」

 

俺はクリスに向かって手をかざし、その手を思いっきり握りしめる

 

頼む、戻ってこい!レイヴ!!

 

スティールが発動し、俺は自分の手の中身を確認する

 

「ああっ!折角のお宝がぁ!」

 

クリスの悔しがる声も、今の俺には聞こえていない

 

「……はぁ~、助かった」

 

安堵感の方が強かったからな

 

「そんなに安心するなんてね。相当なお宝のようだ

 さぁ、今度はキミの番だよ」

 

クリスは石を持ち直してカズマの方へ向く

 

「やってやる。スティール!」

 

俺とクリスがやったように、カズマも相手に手を突き出しスキルを発動させた

 

スキルは成功したらしいが、どうも様子がおかしい

 

クリスは自分の体を見ながら動揺してるし、カズマは空に向かって何かを広げている

 

「おおっ!当たりも当たり、大当たりだぁぁあああああ!!!」

 

「いやぁぁああああああ!!」

 

なんだ?カズマは一体何を奪ったんだ!?

 

「ヒィィィィヤッハァアアアアアアアアア!!」

 

「パ、パンツ返してぇ!!」

 

……………はぁ

 

嬉しさのあまりか、カズマはクリスのパンツをグルグルと回し続け

クリスはズボンを抑えながら、涙目で絶叫していた

 

なんだこのカオスは

 

「…な、なんという鬼畜の所業」

 

その光景を見てダクネスが口を開いた

 

「やはり私の目に狂いは無かったぁ!!」

 

「狂いしかねぇよ!てかそこの変態、いつまでパンツ振り回してんだ!

 いい加減返してやれよ!!」

 

 


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