この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

5 / 26
第四話

カエル討伐を終え、俺たちはアクセルの街まで戻ってきていた

 

粘液まみれのアクアが泣いており、同じく粘液まみれのめぐみんがカズマにおぶさっている

傍から見たら誤解されそう……

 

「爆裂魔法は緊急の時以外は禁止な

 これからは、他の魔法で頑張ってくれよ」

 

カズマがめぐみんにそう注意すると

 

「使えません」

 

「は?」

 

「私は爆裂魔法しか使えないんです。他には一切、魔法は使えません」

 

……アークウィザードだったよなコイツ

それなのに他の魔法が使えないってどういうことだ

 

「……爆裂魔法が使えるレベルなら、他の魔法だって使えるでしょう?

 私なんか、宴会芸スキルを習得してからアークプリーストの魔法を全部取得したし」

 

宴会芸スキルってなにに使うんだ!!?

 

因みに俺の持っているスキルは『敵感知・潜伏・投剣・千里眼・壁走り』の5つを持っている

壁走りはたまたま王都からこの街に来ていた冒険者に特別に教わったものだ

なんでも、浪漫を求めて壁走りの修行をしていたら習得で来たとか

初級魔法も覚えることはできたが、魔法自体あまり使わないと思ったので習得していない

 

「私は爆裂魔法こよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです!爆裂魔法だけが好きなのです!!」

 

マジか……

とんでもない爆裂厨な子だな

 

カズマもめぐみんがダメな系だと分かり、かなり顔が渋くなっている

アクアはなぜか感動してるし

 

「そっかー、多分茨の道だろうけど頑張れよ

 ギルドに着いたら今回の報酬を山分けで、また機会があればどこかで会う事もあるだろ」

 

その言葉に、めぐみんはカズマにより強くしがみつき

 

「我が望みは爆裂魔法を撃つ事のみ。なんなら無報酬でも構わないと思っています」

 

何かささやきだしぞ、俺の報酬はいらないからさっさと引き上げるかな?

 

「おい離せ!お前多分他のパーティにも捨てられた口だろ、というかダンジョンにでも潜った暁には、爆裂魔法なんて狭いダンジョンじゃ使えないし、いよいよ役立たずだ!」

 

「もうどこのパーティも拾ってくれないのです!お願いです。荷物持ちでもなんでもしますから、私を捨てないで下さい!」

 

そんなカズマとめぐみんのやり取りを耳にしながら、静かにその場から立ち去ろうとしていた時

 

「やだあの男、あんな小さい子を捨てようとしてる」

「隣には粘液まみれの女の子も連れてるわよ」

「あんな小さな子を弄んで捨てるなんてとんだクズ達ね」

 

通りすがりの女性三人がこちらを見て声を上げた

 

………は?クズ……達?

ちょっと待て俺も含まれてんの!?

 

「よく見たら女の子は二人ともヌルヌルよ!一体どんなプレイしたのよあの変態」

 

「ちょっと待て!俺は関係ないぞ!!」

 

俺の弁解もむなしく、その女性たちの悲鳴で、本人たちには聞こえていない様子だった

 

そしてめぐみんは口元をにやりと歪めると

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから!先程のカエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ「よーし分かった!これからよろしくな!!」

 

結局カズマが折れる事になった

 

………ん?俺はって?もちろん逃げた!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

今回のジャイアント・トード討伐でレベルが上がり、俺は音速の剣を開放する事が出来た

 

「本当に報酬はいらないのか?」

 

「あぁ、レベルが上がっただけで満足だ。それに俺はまだ蓄えもあるしな」

 

「それは助かるけど、11万か。三人で分けると三万六千エリス程度…

 …はぁ、割に合わねぇ」

 

「俺も最初はそう思ったよ、しかも今みたいに爆発の剣が使える訳じゃなかったからな」

 

「ツバサのその剣が、転生特典なんだよな」

 

カズマが興味深そうに俺の剣を見ている

 

「正確には、その剣にはめ込まれている宝石が転生の特典な」

 

「これが?」

 

「そ、某漫画の主人公が持ってた不思議な石。全部で十通りの形態変化を持ってるんだ」

 

「十通り!?」

 

カズマはあの漫画を知らないのか。なら、驚くのも無理はないな

 

「ただし俺が今使えるのは、この鉄の剣とさっき見せた爆発の剣

 それから今解放されたばかりの音速の剣の三種類だけだな」

 

「それだけでも十分羨ましいよ」

 

カズマは机に突っ伏し、羨ましそうに再度剣を眺め始めた

 

「自業自得だと思うけどな」

 

「う、それを言われると何も言い返せん」

 

そんな話をしていると、ふいに後ろから声をかけられた

 

「募集の張り紙、見させてもらった」

 

振り返るとそこには、美人の女剣士がそこにいた

 

「まだパーティ募集はしているだろうか」

 

「ぼ、募集してますよ!ただ、あんまりオススメはしないですけど」

 

美人を前にしたせいか、カズマの声が若干裏返っていた

 

「希望者が来たんなら帰るよ。俺には関係ない話だからな」

 

「お、おう、またな」

 

俺はカズマと別れ、魔道具店へ帰った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして次の日

俺は午前中の店の手伝いを終え、冒険者ギルドへ足を運んだ

 

なにやら中が騒がしいと感じていたが、アクアが宴会芸を披露しているからだった

 

「何やってんだアイツ……」

 

「ツバサー!」

 

二階で宴会芸をしているアクアを眺めていると、カウンターの方から声をかけられた

 

「ようカズマ、昼飯か?」

 

「それもあるけど、今スキルについて話してたところなんだ」

 

カズマの隣では、めぐみんが骨付き肉を食べていた

俺もそれにするかな?たまには昼からガッツリいくのも悪くないだろ

 

「ツバサは何かスキル持ってるのか?」

 

「あぁ、俺は――」

 

俺は今持ってるスキル、それからスキルの習得法を話した

壁走りを話した時の、それ使えるの?的な目はやめてほしかった

 

「じゃあやっぱり慎重に選ばないとだめか」

 

「あ、ツバサに一つ質問があったのですがいいですか?」

 

思い出したかのようにめぐみんが声を上げ、質問してきた

 

「私とアクアがカエルに食べられた時、爆裂魔法を使いませんでしたか?」

 

「アレか、アレは魔法じゃなくて、この剣の力」

 

「その剣!?」

 

めぐみんがありえないものを見る目でこちらを見て来た

 

「嘘じゃないぞ、俺はこの目でしっかりと見たからな」

 

カズマがそう言うと、めぐみんは杖を握り勢いよくカウンターから飛びのくと

 

「そんな邪道な物!今すぐ葬り去ってやりますっ!!」

 

杖を構え詠唱しだした

 

「まてまてまて!ここで爆裂魔法なんて撃ったら大変なことになるぞ!!」

 

「私にとっては些細な事、そんな剣が存在している事の方が問題なんです!」

 

どこまで爆裂魔法好きなんだ

 

「安心しろ、音速の剣も解放されたし、めぐみんの前では使わないようにするから

 それで勘弁してくれ」

 

「………………いいでしょう、次エクスプロージョンを使おうものなら

 その剣、粉々に粉砕しますからね」

 

何とか妥協点を見つけ、事なきを得たが

粉々にされるのは勘弁願いたい

これ作る時どれだけ親方に頭下げたことか

 

「そんな条件出してもいいのかよ」

 

「心配するな、爆速の連携技で何とかごまかすから

 実際エクスプロージョンより使える技だからそんなに痛手ではないし」

 

心配してくれるカズマにそう説明した

 

「探したぞ」

 

昨日と同じ声が後ろからかけられた

振り向くと、やはり昨日の女剣士がそこにいた

 

なにやらカズマは引いているようだが、俺が帰った後何かあったのか?

 

「昨日は飲みすぎたと言って、すぐに帰ってしまったが」

 

あ、なるほど断ったのか

確かにその方がいいかもな、こんな美人が残念パーティに入るなんて可哀想だし

 

「いえ、お気遣いなく」

 

カズマも此処まで食いつかれるとは思ってなかったのか、若干の焦りが見える

 

「ならば、昨日の話の続きをさせてもらおう。私をあなたのパーティにいれ「お断りします!」んはぁっ!即断、だとっ!?」

 

………え?なんか反応がおかしかった気がするが

まさかな

 

「あはは、駄目だよダクネス。そんな強引に迫っちゃさ」

 

笑い声と共に、突然金髪の女剣士に声をかけたのは銀髪の女性だった

…カズマの周りって女性率高くね?

 

「あたしはクリス、見ての通り盗賊だよ。このことは友達なんだ」

 

女剣士よりは話しやすそうな感じだな

頬の傷は盗賊稼業でついたのか?

てか盗賊って言っちゃっていいものなの?

 

「さっきから聞いてたけどキミ、役に立つスキルが欲しいみたいだね

 盗賊系のスキルなんてどうかな?習得にかかるポイントも少なくてお得だよ。何かと便利だしね」

 

「へぇ~」

 

カズマはちょっと興味ありげだった

 

「どうだい?今ならクリムゾンビア一杯でいいよ?」

 

安いな!

 

クリムゾンビアとは、この世界のビールを指している。酒なので滅多に注文しない

ちなみにクリムゾンネロイドという飲み物もあるが、コッチはただの炭酸系でアルコールは入ってない

ただ飲んだ後にシャワシャワする。うん、シャワシャワするのだ

 

「より、お願いします!すみませーん、こっちの人にキンキンに冷えたクリムゾンビア一つ!」

 

こうしてカズマはクリスに盗賊系のスキルを教わる事となり、ついでにスキルポイントに余裕があった俺も教わる事となった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。