この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第三話

カズマと出会った一週間後

 

俺はウィズの店を手伝っていた為、クエストに出かけてはいなかった

これまでの報酬で蓄えもあったしな

 

なので俺のレベルはまだ9のままだ

 

「ツバサさん、今日はお店の手伝いは大丈夫ですから、久しぶりにクエストに出かけてはどうですか?冒険者の本業はそちらですし」

 

「そうだな、レベルももうすぐ上がりそうだし悪くないか」

 

そうですよと背中を押され、俺は装備を整えギルドへ向かうことにした

 

 

 

「さて、なんのクエストを受けるかだが、……ん?」

 

クエストボードに向かおうと思っていたが、ギルドの奥にあるテーブルに数日前に会った転生者と女神を見つけた

 

「よう、えっと、カズマだったか?」

 

「え?あっ!ツバサじゃないか!」

 

「ツバサ?ってアンタ!!」

 

俺に気が付いた女神がテーブルを飛び越え俺の胸倉をつかんできた

 

「アンタがギルドに案内しただけでどこかに行くから、すっごい恥をかいちゃったじゃないのっ!」

 

「いきなり何のことだ!」

 

「あー、それについては俺が説明するよ」

 

カズマはギルドで別れた後の経緯を簡単に教えてくれた

 

まず金がなかったこと、これに関しては俺も同じ目にあったわけだし特に同情する気にはなれなかった

金がないから近くにいたプリ―ストに宗派を聞き、アクシズ教(アクアを崇拝する宗教)だったら金を貸してくれと頼んだところ、そのプリーストはエリス教(金の単位にもなっている女神らしい)だったらしく、おとなしく引き下がろうとしたがエリス様のご加護と言う事で金をもらったとのこと

 

その金でどうにか冒険者になったものの、ここら近辺は平和なためギルドに依頼するような仕事が無い、そのため日々土木作業に励んでいた

 

「で、昨日ジャイアント・トードの討伐クエストを受けたが二人では限界があると思い

 パーティメンバーの募集をかけたと」

 

募集内容を確認してきたがひどいものだった

 

『急募!アットホームで和気藹々としたパーティです!

 美しく気高きアークプリースト・アクア様と共に旅をしたい冒険者はこちらまで!』

 

その後はこのパーティに入ってなんたらという胡散臭いフレーズが書かれてあった

そして最後に

 

『採用条件:上級職の冒険者に限ります』

 

この文章でパーティに入りたいというやつがいたらただのもの好きだろ

 

「募集の張り紙、見させてもらいました」

 

「「え?」」

 

え、マジで?あの募集内容で来たの?

本気でパーティ募集しているようには見えないあの張り紙で!?

 

黒マントに黒いブーツ、左手には杖を持ち、トンガリ帽子をかぶっているところを見ると、魔法使いの冒険だと思われる

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者」

 

いきなりポーズをとったと思ったら、今の口上である

中二病なのか?

 

「えっと、…………冷やかしにきたのか?」

 

「ち、ちがわい!」

 

めぐみんと名乗った少女にカズマが突っ込んだ

その子は慌てて否定したが、正直俺も冷やかしにしか感じなかった

 

「……その赤い瞳、もしかして紅魔族?」

 

「いかにも。我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が爆裂魔法は山をも崩し、岩をもくだ…く……」

 

めぐみんはセリフを言い終わる前に倒れてしまった

 

「お、おい!どうした?」

 

ぐぎゅるるるる~

 

「もう、三日も何も食べてないのです。……なにか、食べさせていただけませんか?」

 

空腹で倒れただけか、てかこんな子が三日も食べられないって

異世界恐るべし、コッチではこれが普通な奴もいるのか

 

「飯なら俺がおごってもいいぞ」

 

カズマ達もいろいろ苦労してるみたいだしな、飯をおごるくらいどうってことはない

 

めぐみんに飯をおごるついでに自分の分も注文する

その食事の最中、紅魔族についてアクアが説明してくれた

 

「彼女達紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ

 ……そして、大抵変わった名前を持っているわ」

 

めぐみんって本名なのか

 

「変わった名前とは失礼な。私から言わせれば、人族の名前の方がよほど変わってると思うのです」

 

「……ちなみに、両親の名前は?」

 

「母はゆいゆい。父はひょいざぶろー」

 

此の親にして此の子ありって言葉はこういう時使えるんだなと、しみじみ感じたのは初めてだった

 

「…………とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな?」

 

「おい、私の両親の名前について言いたい事があるなら聞こうじゃないか」

 

カズマがめぐみんの親の名前を聞いて何か言いたげだったが、そのあたりをグッと堪えたらしい

俺も紅魔族の名前には違和感しか覚えなかったが……

 

 

 

 

「冒険者カードは偽造はできないんだし、彼女は上級職のアークウィザードで間違いないわ

 強力な攻撃魔法を使えるのよ、パーティに入れて損はないと思うわ」

 

俺とめぐみんが食事をしている正面では、カズマとアクアがめぐみんの冒険者カードを見ながら相談していた

 

「確かにこの子の魔力値、高いな」

 

「それに女の言う通り本当に爆裂魔法が使えるのなら、それは凄い事よ

 習得が極めて難しい爆発系の魔法の、最上級の魔法だもの」

 

「おい、彼女とかこの子ではなく、私の事はちゃんと名前で呼んで欲しい」

 

食べ物口に含みながらも、呼び方に関しての抗議をし始めた

 

「……わかったよめぐみん、それ食ったらジャイアント・トード討伐に行くぞ」

 

カズマはめぐみんに右手を差し出し、めぐみんは笑顔でその手を取り、互いに握手を交わした

 

「そのクエスト、俺も行っていいか?どのクエスト受けるか悩んでたところなんだ」

 

「ああ、構わないぜ。チート持ちがパーティに入ってくれるのなら大歓迎だ」

 

「いや、参加するのは今回だけで、メインパーティを組む気はないぞ」

 

「えっ!?なんでだよ!」

 

俺の問いにカズマが声を上げる

まぁ、当然の反応だろうな

 

「俺は冒険者稼業の他にもやってる事あるしな」

 

「この世界で何をしてるのかすごく気になるが、今回は諦めよう

 でもいつか俺のパーティに入ってもらうからな」

 

案外あっさり引いたな、何かあるんじゃないか?

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります

 準備が整うまで、あのカエルの足止めをお願いします」

 

めぐみんは平原のど真ん中にいる紫色の巨大ガエルを杖で指した

 

てかカエルにもいろんな色がいるんだなと、再確認させられた

 

カズマがカエルの足止めをしようと戦闘態勢に入ったとき、別の方向からもう一匹のカエルがこちらに向かってきているのが見えた

 

「めぐみんは遠い方のカエルを魔法の標的にしてくれ。近い方は………。おい、行くぞアクア」

 

「ちょい待った。カズマはめぐみんの方に付いてくれ、俺がアクアと近づいてくる方を殺る」

 

「そうか、分かった。おいアクア、ツバサの足引っ張るなよ」

 

「私が足を引っ張るですって!?誰に向かってそんなこと言ってるのかしら、私は女神よ?むしろ私の足を引っ張るんじゃないか心配なんですけど」

 

酷い言われようだな、まぁ俺もカズマと同じ『冒険者』なんだけど

これでもカエルは何十体も倒してるんだ

今更カエルごときに後れを取るかってんだ!

 

「……女神?」

 

めぐみんが不思議そうに声を上げた

 

「を、自称している可哀想な子だよ

 たまにこういった事を口走る時があると思うけど、できるだけそっとしておいてやって欲しい」

 

カズマの言葉に、同情の目でアクアを見るめぐみん

 

「打撃が効き辛いカエルだけど、今度こそ女神の力を見せてやるわよ!」

 

半泣き状態のアクアがカエルに向かって走りだしてしまった

ヤケクソ気味にカエルの腹に拳を叩き込もうとするが、その拳は届くことなく

アクアはカエルにパクッといかれてしまった

 

「「……………」」

 

その様子に俺とカズマはあきれた表情で見ていた

 

「流石は女神、身を挺しての時間稼ぎか」

 

カズマがそう呟くと同時にめぐみんの準備が完了した

 

「これこそが、究極の攻撃魔法!エクスプロージョンッ!!」

 

めぐみんの杖の先から放たれたそれは、遠くからこちらに接近してくるカエルにぶつかると

目も眩む様な光と轟音と共に、カエルは爆裂の渦へと飲み込まれた

 

煙が晴れると、カエルのいた場所は巨大なクレーターができており、その爆発の凄まじさを現していた

 

「これが魔法の威力か」

 

俺がめぐみんの魔法の威力に感動していると、今の轟音と衝撃からか、一匹のカエルが地中から這い出してきた

 

「今の爆音で目覚めたみたいだな。カズマ、めぐみん、一度離れる……ぞ?」

 

俺が離脱の為に声をかけようと、めぐみんの方を向くと

めぐみんは倒れていた

 

「「え?」」

 

「我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえに、消費魔力もまた絶大

 ……要約すると、限界を超えた魔力を消費したので、身動き一つ取れません」

 

「「えぇ~」」

 

「近くからカエルが湧き出すとか予想外です。やばい食われます

 すいません、ちょ、助け……」

 

助けを求めてきたが、最後まで言い切ることはなく、カエルに捕食されてしまった

 

「お前ら食われてんじゃねぇ!!

 ツバサ、助けに行くぞ!」

 

「おう!」

 

俺は背中のテン・コマンドメンツを手に取り、形態を変化させカエルに向かって勢いよく振り下ろした

 

「まさか技名が被るとはなっ!エクスプロージョンッ!!」

 

俺がカエルを倒した直後、カズマの方に加勢に行ってやろうかと思ったが

二回目と言う事もあり、手際よくカエルを倒していた

 

とりあえずこれで、カズマが受けた依頼は達成かな?

 

俺はこの時、あまり考えず爆発の剣を使ったが、これが後で一波乱を生む事になろうとは思いもしなかった


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